前回に続き、新人警察官のリアルな1日をレポートする日常編の後編をお送りします。
日常編の前編は下記のリンクからご覧ください。
>>【関連記事】「警察官の仕事を知る!新人警察官のリアルな1日|日常編①」
今回は日常編ということで、新人警察官が警察学校卒業後に勤務するごくごく一般的な交番勤務について紹介しています。
警察学校卒業後は必ず2年間地域課で勤務することになりますので、警察官ならば誰でも経験するのが交番勤務なのです。
もちろん通報の内容や事件の多さは都道府県によって違いますし、同じ都道府県でも地域によってまったく違います。
そのため、警察官の仕事は一概に語れない難しさがあるのですが、仕事の基本的な部分は変わりません。
中でも新人警察官は大変な立場にあり、しばらくは上司についていくのに精一杯だと思います。
そんな新人警察官がどんな1日を送るのか、実体験をもとに構成していますので、少しでも参考にしてもらえれば幸いです。
この記事では前回に続き、新人警察官のリアルな1日について詳しく紹介します。
目次
PM5:00 交番に戻る|落とし物が届く
大きな事故の処理を終え、交番に戻りました。
ここでも上司がコーヒー好きの人ならば、交番に戻ったのと同時にすぐにコーヒーを出すようにしましょう。
「1日何回コーヒー出すの?!」と思われるかもしれませんが、基本的には食後+休憩の5回~6回くらいでしょうか。
冗談のように聞こえますが、本当にコーヒーが好きな上司は多かったです。(長時間勤務の眠気覚ましにもなるため)
コーヒーの作り方に関してもコーヒーメーカーを使う場合やフィルターにお湯を注ぐタイプの場合もあり、その交番によって違いがあります。
コーヒーを飲まない人は作り方がまったくわからないと思いますが、事前に予習しておくといいでしょう。
コーヒーを作る際、コーヒー粉やフィルターを使用する場合は残量に注意が必要。いずれも定期的に確認をしておかないと、いざ作ろうとしたときになくなっていることがある。
もちろん、これらを忘れずに補充するのも新人警察官の役目となる。(お金は折半となる)
そして、休憩しながら先ほど受理した事故に関する書類を作成します。
事故の書類を作成していると、交番に来訪者がきました。
交番に来訪者がきたとき、一番に出ていくのが新人警察官の役目です。
来訪者に「どうされましたか?」と用件を尋ねると、落とし物を届けに来てくれたことがわかりましたので、落とし物の手続きを行います。
落とし物の手続きを行うのは簡単そうに見えるのですが、実は色々と気を付けなければいけません。
仮に落とし物が現金であった場合、拾った人がそのお金をもらう権利が発生するので、この権利についてしっかりと説明しなければいけません。
さらに多額の現金であった場合はしっかり相手の目の前でお金を数えて、金額に間違いがないことを確認する必要があります。
この辺りを適当にやってしまうと「警察官がネコババした!」という疑いを持たれる可能性も大いにあるからです。(実際にそのような不祥事も起きています)
>>【実録警察学校】第1話「集団でバスに乗っていざ警察学校へ…」
PM6:00 早めの夕食|夜に備える
落とし物の手続きと事故の書類作成を終え、早めの夕食をとることになりました。
警察官の仕事全般に言えることですが、その中でも特に交番勤務は食事のタイミングがとても大事になります。
それは通報があれば食事の途中でも出動しなければいけませんし、一度食事のタイミングを逃すとしばらくお預けとなってしまうことが多々あるからです。
ですので、仕事中の食事は食べれるときに急いで食べるというのが基本になります。
警察学校で急いで食事をとらされる理由はここに繋がっているというわけです。
夜の食事についても食べるものは人によってまったく違う。交番によっては勤務員全員で弁当を注文することもあるし、一人が代表してコンビニに買いに行くこともある。
こういったところでも買い出しを頼まれるのは新人警察官の役目となる。
もちろん、夕食後もコーヒーを出すタイミングを伺うようにしてください。
なお、上司がコーヒーを飲まない人であればコーヒー出しの作業はまったく必要がないので、人によって違うということを覚えておいてください。
夕食をとったら少し休憩し、夜の仕事に備えます。
このあとも朝まで仕事は続きますので、食べ過ぎには注意です。
>>【関連記事】「警察官への転職ってどうなの?元会社員の経験者が詳しく解説」
PM7:30 パトロールに出発|不審者を見つける
夕食をとってエネルギーをいっぱいに補充したら、夜のパトロールに出発します。
地域課の警察官にとってパトロールは最も重要な仕事の1つです。
パトロールしている姿を市民に見せることによって市民の安心に繋がりますし、犯罪者は警察官の姿を見て犯罪をやめようとするかもしれません。
「警察官がしっかり見てますよ」というのを周囲にアピールすることは犯罪抑止にも交通事故抑止にもなるのです。
パトロールに出かけたら不審者を見つけることに集中し、不審者を見つけた場合は積極的に職務質問をします。
職務質問は地域課の警察官の最大の武器ですので、積極的に行うようにしましょう。
職務質問は警察官にしかできないことなので、警察官のやりがいの1つでもあります。
パトロールを行っている途中で、交通事故が発生したと指令を受けました。
これくらいの時間は交通量も多く、交通事故が発生しやすい時間帯でもあります。
パトロールの途中でしたが、交通事故の現場に向かいます。
この日、3件目の交通事故の対応です。
交通事故は頻繁に対応しますので、やるべきことをしっかり覚えなければいけません。
新人警察官でもある程度慣れてくれば1人で行動することになるので、1人でも困らないよう仕事を習得していく必要があります。
一般的な交通事故であったため、処理はすんなり終わりました。
パトロールを再開しようとしたところ、またも指令が入りました。
どうやら交番に落とし物を届けてくれた人がいるそうなので、落とし物の手続きをするために一旦交番に戻ります。
>>【合わせて読みたい】「警察学校で困らないために!警察学校で注意すべきこと5選」
PM9:00 交番に戻る|再度パトロールへ
交番に戻り、落とし物の手続きを行います。
落とし物については夕方にも一度対応しているので、思い出しながら手続きを行います。
1度で仕事を覚えることは難しいですが、それでも一度やったことは段々とできるようにならなければいけません。
何回やってもできない場合、厳しい上司であれば「さっきやっただろ!」と怒られてしまいます。
上司に怒られることを恐れると、わからないことでも聞くことができなくなってしまう。ところが、わからないまま仕事を進めてしまうと取り返しがつかないことが起きる可能性もある。
わからないことがある場合は素直に上司に聞いた方がいい。
先ほど対応した交通事故と合わせ、書類を整理します。
基本的にこの辺の雑務は新人警察官の役目で、自分が書類を整理している横で上司は休憩しているという形になります。
もちろんわからないことがあれば質問をしますし、あまりにも量が多い場合は上司と一緒に行うこともあります。
ただし、上司がベテランであればあるほど動きは鈍くなっていくので、自分が一生懸命仕事をしていかなければいけません。
書類の整理が終わったら、再びパトロールへ出発します。
夜はやることがなければパトロールと休憩を繰り返すという形になります。
ただ、人によってはまったくやる気のない上司もいますので、休憩ばかりしている警察官がいることも事実です。
この辺は自分ではどうしようもないですし、新人警察官であれば上司に従うしかありません。
自分で選ぶことはできませんが、新人警察官のときに付く上司は本当に大事です。
仕事ができる人であればとても勉強になりますが、まったく仕事をしない人に付いてしまうと仕事が覚えられません。
PM10:30 通報が増える|酔っ払いの対応も
午後10時30分にもなると、外の人通りはだいぶ減ってきます。
繁華街であればこの時間でもたくさん人が行き交っていますが、一般的な住宅街であればほとんどの人が家にいる時間です。
しかし、多くの人が家にいるからこそ細かい通報が増えてくる時間帯でもあります。
通報の内容としては
- 上の部屋がうるさいから注意して
- 公園で騒ぎ声がする、注意してきて
- 酔っ払いが歩道で倒れている
など、細かい通報が多くなってきます。
虚偽の通報でない限り、警察官は現場に行って確認しなければいけません。
こういったことにも対応しなければいけないのが地域課の警察官です。
通報があれば基本的には対応しなければいけないが、「これは本当に警察官が必要なのか?」と思える通報が多いのも事実。不要な仕事もしなければならないのが警察官の宿命。
適正な110番利用が浸透してもらいたい。
文句を言っていても始まらないので、確実に1つ1つ解決していきましょう。
通報に対応したら、「こういう場合はこう対応する」「こうやってアドバイスする」など対応の要領をしっかり覚えるようにしてください。
通報に対応して、その後どうするのかというのは現場の警察官が判断しなければいけないことです。
最初は上司のやり方を見ているしかありませんが、「自分ならどうするか?」ということも考えておかなければいけません。
>>【合わせて読みたい】「こんな上司に要注意!実在した個性的な上司たち」
AM2:00 慣れない勤務に睡魔が…|仮眠時間へ
通報に対応していたらいつの間にか日付が変わり、午前1時になりました。
誰しも眠気が増してくる魔の時間帯です。
朝から働き続けてこの時間なので、疲労も蓄積されています。
特に新人警察官の場合は夜型のリズムにはまだ慣れていないため、パトカーの助手席で寝てしまうこともあります。(私も何度も経験あり)
私自身、会社員から警察官に転職し、夜型のリズムに慣れるまでがとても大変でした。
これを理解してくれる優しい上司もいますが、厳しい上司であれば居眠りなんて許されません。
運転席から鉄拳が飛んでくることもあるので、眠くならないよう自分なりに対策することが大事です。
眠気対策として、コーヒーやエンジードリンクに頼ることも考えておきましょう。
私がやっていた眠気対策はカフェインの錠剤を飲むことです。
錠剤なら水さえあれば一瞬で飲むことができるので、新人警察官のときは居眠りしないようによく飲んでいました。
実際に使っていたものを紹介しておきます。
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午前2時になり、先に仮眠をとっていたグループと交代に就く時間がきました。
一旦はここで仕事が終了になります。
交代するグループの人たちと引継ぎを行い、仮眠をとります。
なお、仮眠時間については警察署によって異なりますので、必ず午前2時に交代が就くというわけではありませんし、通報があれば寝れなくなります。
特に仕事が残っていなければ寝る準備を行い、上司と一緒に寝ます。(同じ部屋で寝ることになるため、いびきのうるさい上司の場合は最悪…。)
ちなみに仮眠をとっている時間でも重要事件が発生すればすぐに起こされます。
また、対応していた事件が長引けば仮眠時間はなくなりますし、必ず仮眠できるわけではないことを覚えておきましょう。
起きてすぐ出動できるよう早く着替えられるようにしておくのも大事です。
>>【合わせて読みたい】「警察官の仕事ってどれくらいきついの?残業、休日、人間関係などを解説」
AM6:00 起床|掃除・片付けを行う
仮眠から起床する時間となりました。
上司よりも先に起きて、着替えを始めます。
そして上司が着替え終わったら、2人分の布団を片付けます。
コーヒーを好む上司であれば、すぐに朝のコーヒーをいれましょう。
上司がコーヒーをたしなんでいる間、新人警察官は交番の掃除・ゴミ捨て・片付けを行います。
ゴミなどを残しておくと次の係の人から怒られてしまうので、交番の掃除は大事な仕事です。
交代を行った後は次の係が交番を使用するため、きれいな状態で引き継がなければいけません。
片付けや掃除を早く終わらせるコツは普段から整理整頓をしておくこと。使ったものは元の位置に戻す、机の上に物を出しっぱなしにしないなどを心がけておけば、片付けは楽になる。
紛失防止にもなるため、整理整頓は常に意識しよう。
そして規定の時間になったら立番(りつばん・りゅうばん)を行います。
立番とは、交番の前や交差点に立って周囲を警戒する仕事です。
みなさんも1度は見たことがあるのではないでしょうか。
立番は「ただ立っているだけ」に見えますが、実はこの立ってるだけがなかなかキツイ。
厳しい上司であれば「1時間立っとけ」と言ってくることもありますし、寝起きということもあり意外と体力勝負です。
交番で勤務する警察官は規定で決まっているため、必ずこの立番を行わなければいけません。
>>【合わせて読みたい】「パワハラ、いじめ、不祥事…警察学校を退職する人の主な理由とは?」
AM9:00 次の係と交代|勤務終了
朝の時間帯になにも通報がなければ、荷物を持って警察署に戻ります。
ただし、通勤の時間帯は事故が多いので、警察署に戻るまでは気を引き締めて勤務を続けましょう。
この日に勤務する係の警察官に無線機などを引き継ぎ、交代完了となります。
仕事としては一旦ここで終了です。
ここからの通報は次の係の警察官が対応することになります。
交代が完了するときは一番ほっとする瞬間でもあります。
例えば午前8時30分に交代する予定だった場合、午前8時29分に事件が発生すれば残業して対応しなければならない。
警察官の仕事は最後の最後までなにが起きるかわからない緊張感がある。
前日の仕事の残りや書類の作成があれば、ここから残業することになります。
この日は平穏な1日であったため、残業する必要は特にありません。
先輩や上司は交代が完了次第、順次帰っていきますが、新人警察官が帰るのは一番最後です。
無線機の片付けなどすべての作業が終了してようやく帰れます。
これくらい平穏な1日であれば、午前10~11時の間に仕事は終わるでしょう。
また、先輩や上司から誘いがあれば、ここから昼食を食べに行ったり、昼から飲みに行ったりします。
なにもなければあとは着替えて帰るだけです。
緊張感のある1日を過ごし、ここから翌日までは休みとなります。
ちなみに仕事終わりの日を非番、次の日の休みを週休と言ったりします。
非番はとても解放感を感じますので、仕事が終わり次第遊びに出掛ける若手もいます。
最初のうちはとても疲労を感じると思いますので、ゆっくり体を休めることも大事になります。
解放感から羽を伸ばし過ぎて不祥事を起こす新人警察官も多いので、その点は要注意です。
まとめ
新人警察官の1日に迫る「日常編」を2回にわたってお送りしました。
限りなく現実に近いものを書きましたが、皆さんはどのように感じられたでしょうか。
「警察官って大変だなあ」「意外と楽じゃない?」など様々な意見があると思います。
今回紹介したのは本当にごくごく一般的な勤務例ですので、毎回このような勤務になるわけではありません。
さらに忙しい交番or暇な交番によって仕事の流れはまったく変わりますので、あくまで1つの例として参考にしてください。
基本的には通報によって忙しさが変わるものなので、その日によっても忙しさは変わってきます。
新人警察官は仕事以外にも覚えることがいっぱいであることをお分かり頂けたでしょうか。
とにかく大変な立場には間違いありませんので、1つ1つを確実にこなしていきましょう。
上司によってその大変さも変わってくるのですが、警察官ならば誰しもが必ず通る道です。
最初の1~2年は修行だと思って乗り切るようにしてください!
地域課での仕事は職務質問ができるかどうかによって大きく変わってくる。職務質問をうまくやるためにはコミュニケーション能力が必須となるので、相手とうまく話せない場合は苦労することになる。