警察官の仕事といえば誰もが大変な仕事をイメージすると思いますが、それはほぼイメージ通りで間違いありません。
警察官志望者もそこは覚悟していることだと思いますし、楽な仕事だと思って警察官を目指す人はいないでしょう。
警察官の恋人や家族も間近で警察官の働きぶりを見ているとその大変さがよくわかることだと思います。
警察官の仕事で大変だと思う場面は数多くありますが、その中でも周りから見て気になるのは警察官の残業時間や休日出勤についてだと思います。
激務な仕事でもあまり残業がなければそこまで苦ではありませんし、休日出勤がなければプライベートもしっかり確保できます。
この2つについては働いていく上で非常に重要なことであり、就職や転職を決める際に重要視するものでもあります。
実際、警察官の恋人や家族の方は「なかなか帰ってこない」「急に休みが仕事になった」という経験が一度や二度あるはずです。
警察官はいつ仕事が終わるのか?
警察官にプライベートはあるのか?
そんな気になる警察官の勤務事情について、この記事では警察官の残業や休日出勤について解説し、どれくらいの残業や休日出勤があるのかを紹介します。
警察官という職業について
まず最初に警察官という職業について、知っておいて欲しいことを説明していきます。
警察官は地方公務員なので、当然ながら労働基準法にのっとった勤務になりますが、必ずしもすべての勤務がその範囲内に収まるわけではありません。
一般的に労働に関する法律は「1日の勤務は○時間以内」、「1日○時間休憩をとらなければいけない」など、その要件は細かく定められています。
公務員はこれらがきっちり遵守されているイメージが強いかもしれませんが、警察官は公務員の中でも少しばかり特殊な公務員に分類されるかもしれません。
なぜなら警察官は
- 24時間365日通報に対応
- 常に開庁している警察署
- 0にならない事件や被害
など、特殊な条件がいくつも揃っているため、他の職業と比較することが難しいのです。
警察官なら誰もがこのような条件で働くことになるので、残念ながら「労働基準法が…」なんて言っている場合ではありません。
残業をしても仕事が終わらない場合はそのまま署で寝泊まりすることもあります。
警察官になるならば、このような環境で勤務しなければならないことを覚悟する必要があるでしょう。
警察署によって忙しさは異なる
警察官の仕事は所属する警察署によって忙しさが異なり、通報が多い警察署であればそれだけ忙しくなる。
また、ときに警察官は休日出勤をする必要が出てくる場合も全然あります。
詳しくは後述しますが、「休みの日だから仕事はしない」ということが通用しないのも警察官の特徴と言えます。
なぜなら警察官は法律の下で仕事をする立場なので、どうしても自分都合で働けない点が大きいからです。
仕事量は事件や通報の件数によって大きく左右されるため、自分のペースで働くことはなかなか難しい面があります。
これは警察官と交際する恋人も覚えておかなければいけないことであり、「予定が全然合わない」ということは受け止める必要があるでしょう。
警察官の残業時間は?
次に警察官の残業時間について詳しく解説していきます。
警察官の仕事は部署によって勤務時間が異なり、出勤時間も退勤時間も部署によってさまざまです。
また、警察署の規模によって忙しさが違いますし、事件や通報の件数も違います。
さらに都道府県によって仕事の大変さが変わってくる面もあります。
そのため、警察官の残業時間について一概に比較することは難しいのですが、私自身の経験も含めて紹介していきます。
- 忙しい部署
刑事課、生活安全課、交通課、地域課は通報・事件・相談によってその日の仕事が決まるので、先を読むことができません。
そうなると、退勤間際に通報が入ることがあれば、休憩時間に相談が来る場合もあります。
特に大きな警察署の刑事課は次から次へと事件が発生するため、仕事をしても処理しきれないことが多く、必然的に残業も多くなります。
そういった警察署で働く刑事はお泊りセットを署のロッカーに入れており、いつでも署で寝泊まりする準備をしているほどです。
”その日なにが起きるかわからない”というのは警察官の大変なところで、残業が発生する大きな要因ともなっています。
ですので、平均残業時間を算出することができず、言ってしまえば仕事が終わるまで帰れないというのが正解かもしれません。
もちろん刑事課だけでなく、その他の部署でも同じことが言える。ただし、その中でも刑事課は残業時間が多い傾向にある。
- 落ち着いている部署
警務課、警備課、地域課総務係、交通課総務係は比較的落ち着いて働ける部署です。
警備課は災害や外国人犯罪などが発生した場合は別ですが、頻繁に通報に対応するということはあまりありません。
警務課は署の受付や裏方業務が多いので、よほどのことがない限り長時間の残業は発生しませんし、現場に出ることもありません。
また、地域課や交通課の総務係は事務作業が中心なので、同じく現場にはほとんど出ません。
そのため、いずれも落ち着いて働ける部署だと言うことができます。
私の経験上でもこれらの部署の方が夜遅くまで残業しているところはほとんど見たことがありませんし、そこまでの仕事がありません。
毎日定時というのは難しいでしょうが、それに近い勤務が可能です。
警備課は国際イベント(サミットなど)の警備業務を担う部署なので、そういったイベントがある際は準備で1年前から忙しいこともある。
やはり警察官になるなら残業時間を気にしていてはいけません。
「予定があるので先に帰ります」
「事件の処理は明日やります」
というのは一切通用しないことを覚えておく必要があるでしょう。
被害者や相談者がいるのに「もう退勤時間なので明日来てください」ということは言えません。
また、逮捕するような事件があれば48時間以内に検察官に送検する手続きをとらなければいけないので、すぐに手続きを進める必要があります。
もちろん何もなければ残業をしなくても済みますが、着替えが終わって家に帰るまではなにが起きるかわからないことは想定しておきましょう。
残業代については完全に0というわけではありません。
残業代を考えてくれる上司による面もありますが、ある程度は考慮してもらえます。
ただし、警察官の残業代は残業したらその分だけ支給されるわけではありませんし、他の人とのバランスも含めて調整されるものになります。
課によって予算の配分が決まっているので、必ずしも満足いく残業代がもらえるわけではない点は覚えておきましょう。
警察官の残業時間については
- 日によって大きく変わる
- 1日の動きは読めない
- 部署によって異なる
といった様々な要素が絡むため、その時々で柔軟に対応する心構えを持っておきましょう。
ちなみに私自身の残業最高記録は24時間勤務後の約8時間です。
警察官の休日出勤は?
ここからは警察官の休日出勤について解説していきます。
最初に結論を言っておくと、警察官なら休日出勤が発生することは十分に理解しておく必要があります。
なぜなら先ほど残業時間について詳しく解説しましたが、休日出勤はその残業の延長になるからです。
長時間の残業をしても終わらなかった仕事については休日出勤で対応するしかありません。
逮捕するような事件が休み前に発生すれば、そのまま休んでいるワケにはいかず、やむなく休日でも出勤して処理していく必要があります。
また、残業があまりない地域課総務係や交通課総務係でも行事やイベントがあれば休日出勤して対応することになりますし、どの部署でも休日出勤する機会はあります。
刑事課や生活安全課などの休日出勤は当然発生するものだが、3交代の地域課でも休日出勤はある。署の幹部によっては休日出勤で取締りを行うよう命じられることも。
実際、私自身も地域課で勤務をしているときは何度も休日出勤を経験しました。
地域課で休日出勤をすると
当番(24時間)→非番→休日出勤→当番(24時間)…
という流れになり、非常にハードな1週間になってしまいます。
そのため、単純に休日出勤はキツかった記憶があります。
休日出勤についても特に刑事課で働く場合は覚悟をしなければいけません。
先ほど説明しましたが、逮捕事件が発生すると最初の48時間以内が大きな勝負となるため、大事件であればゆっくりしている暇はありません。
一気に様々な捜査を行う必要があるため、大人数で仕事に取り組む必要があります。
よって、刑事課ならば休日に呼び出しを受けることも珍しいことではないことを覚えておきましょう。
残業代と同じで、代休についても上司の判断によって変わります。
「休日出勤した分はしっかり代休をとろう」という考えの上司であれば若手警察官にも代休は与えられますが、「休日出勤?そんなの当たり前でしょ?」という考えの上司なら代休の取得は難しいです。
そもそも警察官は上下関係が厳しい組織ですので、上司が代休をとらなければ部下が代休をとることはなかなかできません。
残業代や休日出勤の代休は上司によって考えが違うことは知っておく必要があります。
私自身の経験では代休というのはあまりとった記憶がなく、文句を言わず休日出勤をこなしていた記憶が残っています。
ただし、警察官も働き方改革がかなり進んでいるので、今後は代休をしっかりとるという流れになっていく可能性は十分にあります。
激務な警察署&楽な警察署
続いて、警察官の仕事で激務な警察署と楽な警察署について解説します。
警察官の仕事は都道府県や警察署の規模によって大きく難易度が異なるため、一概に比較することはできませんが、わかりやすいところで比較していきます。
警察官志望者の中には将来働きたい部署ややってみたい仕事をイメージしている人も多いと思いますので、少しでも参考にして頂ければ幸いです。
本当に警察官の仕事は警察署によって忙しさが異なるので、すべてに当てはまるわけではないという点に留意してください。
- 激務な警察署
まず、大前提として人口が多い都道府県の警察署は忙しい傾向にあります。
人口が多い地域というのはそれだけ110番通報が多く、事件や事故も当たり前のように発生します。
特に人口が多い都心部や繁華街を管轄する警察署は間違いなく激務です。
激務な警察署の地域課は次から次へと入る通報に対応しなければならず、繁華街なら夜から早朝までは息つく暇もありません。
このような警察署の地域課で勤務する場合、「3日に1回の当番日は寝れないものだと思え」という格言があったほどです。
地域課の大変さに伴い、刑事課・生活安全課・交通課も同様に激務になります。
地域課が事件を受理する場合は刑事課など専門部署と連携することが多い。よって、地域課が忙しい警察署はその他の部署も忙しくなる。
激務な警察署で受理する通報の数は他の警察署とは次元が違います。
中でも忙しさを極めるのは刑事課ですが、激務に耐えられず刑事を辞めてしまう警察官も珍しくはありません。(他の部署に異動)
「今日も家に帰れなかった」
「家族との時間がまったくとれない」
これが激務な警察署で働く刑事からよく聞こえてきたリアルな声でした。
こういった警察署に異動になった場合は「すべてを仕事のために尽くす」という覚悟を決める必要があるでしょう。
激務な警察署では残業時間や休日出勤を気にしている余裕もありません。
【警察官の仕事】刑事課の仕事内容・勤務体系・休日などについて紹介 刑事になるためには?
- 楽な警察署
激務な警察署がある一方、楽な警察署が実在するのも事実です。
楽な警察署は警察官の数も少ないですが、事件や通報の数も圧倒的に少ないです。
これは田舎にある警察署や人口が少ない地域を管轄する警察署に見られる傾向です。
こういった警察署では「1日勤務してなにも通報がなかった」という日も珍しくありません。
むしろ事件が発生する方が珍しいという勤務になりますので、心身ともにストレスは少ないでしょう。
必然的に残業も休日出勤もほとんどなく、きっちり定時で帰れる場合がほとんどです。
楽な警察署は天国と称されることが多く、天国への異動を希望する警察官も多いのが特徴です。
残念ながらこのような警察署は人気で倍率が高いので、異動できる確率はかなり低い傾向にあります。
楽な警察署で勤務を続けるとそれだけ実戦から遠ざかってしまうため、仕事を忘れてしまうことが増える。逆に激務な警察署で勤務を続ければ仕事ができる警察官になれる。
楽な警察署で勤務をすることは体に優しいことは間違いありませんが、徐々に実戦の感覚が鈍ってしまうというデメリットが存在します。
定年間近のベテランにとっては天国でしょうが、若手や中堅にとってはあまりいい環境とは言えません。
激務な警察署と楽な警察署ではそれぞれメリット・デメリットがあることも覚えておきましょう。
警察官としての心構え
最後に警察官としての心構えについて紹介します。
ここまで警察官の残業や休日出勤について解説してきましたが、みなさんはどのようなイメージをお持ちになったでしょうか。
様々な感想があると思いますが、「警察官の仕事は楽そうだ」と思った方は少ないはずです。
長時間の残業があり、ときに休日出勤もある仕事が楽だと思える方はいないでしょうし、今回の記事を読めば「警察官の仕事は大変そう」と思うのが普通です。
実際、私自身が約8年の警察人生を経験し、心身ともにとても疲れました。
やりがいのある仕事が多かったのも事実ですが、いつも疲れていた記憶が強いです。
警察官の仕事はとにかく”なにかあれば動く”という仕事なので、1日の予定が読めないところに難しさがあります。
落ち着いて仕事をしたい人には向いていないですし、臨機応変に動けない人にも向いていない仕事です。
それだけ市民から頼りにされている証拠ですが、仕事を中心に考えていける人でなければ続かない仕事でしょう。
警察官は目の前に仕事がある以上、簡単にノーと言うことはできない。「予定があるから残業できない」、「出かける予定があるから休日出勤できない」というのも通用しない。
よって、警察官を目指すならば残業代や休日出勤の代休というのは気にしていてはいけません。
もちろんこれらはしっかりと与えられるべきですが、警察官という特殊な職業においてはなかなかすべてが規定通りになりません。
警察官はそれだけ大変な仕事ですし、ギャップを感じないためにも覚悟はしておく必要があります。
苦労して警察官になったのに「想像していた仕事と違った」というのが一番もったいないです。
しかし、これだけ厳しい言葉が並ぶと「自分に警察官が務まるのか…」と不安に思う方もいるかもしれません。
最初は誰もが警察官の職場環境に戸惑うものですが、これは働いていけば慣れるものですので、その点は安心して頂きたいです。
警察官は誰にでも務まる仕事ではないので、勤務を続けていくうちに自覚も芽生えるようになります。
経験を積めば積むほど強い警察官になりますし、”悪を許さない心”も次第に強くなっていくでしょう。
警察官の仕事が大変なのは間違いないですが、誇り高き職業であることも忘れないでください。
まとめ
今回は警察官の残業や休日出勤について詳しく解説しました。
今回の記事をまとめると
- 警察官は残業や休日出勤が当たり前
- 残業代や代休が必ずしもあるとは限らない
- 警察官の仕事は自分のペースで働けない
- 残業や休日出勤は断れない
ということになります。
楽な勤務になる警察署は実在しますが、異動する警察署は自分で選ぶことはできません。
また、楽な警察署で働けばストレスは少ないでしょうが、実戦から遠ざかってしまうデメリットも存在します。
警察官を目指すならば残業や休日出勤を気にしていてはいけませんし、これらを当たり前のようにこなせるようにならなければいけません。
特に激務な警察署で勤務をすることになればそれなりの覚悟が必要です。
「そんなきつい仕事は自分には無理だ」と考えてしまうかもしれませんが、警察官になれば必然的に受け入れていくしかないので、今の時点で心配になる必要はありません。
”習うより慣れろ”です。
いざ警察官になってから現実とのギャップを感じることが一番勿体ないので、リアルな勤務事情を紹介しました。
警察官志望者やこれから警察官を目指す方に少しでも参考になれば幸いです。
警察官の仕事は残業や休日出勤はどれくらいあるんですか?