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【警察官2名死亡】長野立てこもり事件 最悪の結果を防ぐことはできなかったのか?元警察官が殉職事案を考察

2023年5月25日、衝撃的であまりにも悲しいニュースが飛び込んできました。

長野県中野市において、男が刃物や猟銃を使用して計4名が死亡する悲劇が発生し、うち2名は現場に駆け付けた警察官でした。

男はその後に自宅に立てこもりましたが、警察の説得により投降し、殺人容疑で逮捕されました。

警察官が2名殉職する悲劇となり、全国の警察関係者に衝撃を与えたことだと思います。

未だに詳しいことはわかっておらず、これから捜査が進められるところですが、犯行動機や真相の解明が待たれます。

今回、2名の警察官が死亡する事件はなぜ起きてしまったのか?

また、警察官が死亡する事態は防ぐことはできなかったのか?

この記事では元警察官が今回の殉職事案について考察し、元警察官として様々な角度から検証します。

現場到着時に発砲された

今回の事件において、最初の110番通報は「女性が刺された」という内容のものでした。

この通報を受け、長野県警中野署の警察官2名がパトカーで現場に到着すると、犯人の男はパトカーの運転席に向かって猟銃を発砲しました。

警察官が撃たれたのは現場に到着してすぐの出来事だったとのことで、予断を許さない緊迫した現場だったことがわかります。

銃撃された警察官2名はその後に2名とも死亡が確認され、最悪の結末となってしまいました。

現場に駆けつけたのは地域課の警察官です。

地域課は交番やパトカーで勤務していますが、通報が入れば一番に現場に駆け付けるのが役目です。

一番に現場で駆け付けるということは一番危険な状態であるとも言い換えられます。

通報に対応することが地域課の警察官の使命ですが、どれだけの経験を持っていても毎回違う現場となるので、その危険度に変わりはありません。

一番に現場に駆け付けることが危険な理由は以下の通りです。

  • 現場がどういう状態なのかわからない
  • 犯人がどんな凶器を持っているかわからない
  • 犯人がどこに潜んでいるのかわからない
  • 通報内容がまったく違う可能性がある
  • 対応方法を瞬時に判断しなければならない

どんな状況かわからない状態で現場に到着することがいかに危険かが分かって頂けたと思います。

このような状況で、今回の事件は到着して間もなく銃撃を受ける結果となってしまいました。

現場に到着したらまずは現場の様子を確認するものですが、その余裕すらなかったのでしょう。

また、「女性が刺された」という110番通報でどれだけ重大な事件かは重々把握していたことだと思います。

しかし、犯人が猟銃を所持していることまでを予測することは困難です。

今回の事件は様々な不運が重なっての悲劇だと考えられます。

殉職は防げなかったのか?

警察官が勤務中に命を落とすことを殉職(じゅんしょく)と言います。

当然のことながら悲しい出来事でしかありません。

警察官は市民を守る最後の砦と称されますが、絶対に自分自身が命を落とすことがあってはなりません。

なぜなら、例え今回の事件のように最終的に犯人が逮捕されたからといって、警察官が犠牲になっていては本当の解決とは言えないからです。

誰も命を落とさずに犯人を確保することが警察官の務めでもあります。

今回の事件は他にも2名の市民が犠牲になっており、日本でこんなことが起きるのか?というレベルの衝撃的な事件です。

今回の殉職事案は防ぐことができなかったのかについて、元警察官の視点で解説します。

  • 猟銃を予期できたか?

これに関してはとても困難だったと考えます。

現場に到着して間もなく銃撃されていることもあり、予期することは不可能に近いでしょう。

最初に現場に到着する警察官の役目としては現場はどのような状況なのかどんな事件なのかを確認して報告することです。

この報告を受けた通信司令部が様々な判断をすることになるため、一番手の警察官には現場の状況を即報することが求められます。

また、状況が不明確な中で犯人のすぐ近くにパトカーを停めたことも不運だったと言わざるを得ません。

「女性が刺された」という通報なので、警察官がやるべきことは人命救助犯人の確保です。

もちろん前者を優先すべきなので、現場付近で被害者を見つけることに注力することは間違った判断ではありません。

まさかそこで銃撃されるなんてことは誰一人予期できなかったでしょう。

  • 防弾装備は用意できなかった?

通報内容からすればどうしても刃物を考えてしまうので、防弾の装備を準備することも難しかったと考えます。

そもそも防弾チョッキや防弾ヘルメットというのは常に着用しているわけではなく、銃器の使用が想定される場合にのみ着用するものです。

もちろん必要な装備としてパトカーには積んでありますが、私自身も8年の警察人生で着用したことは1度あるかないかでした。

防弾の装備は非常に重く、身動きをとることも容易ではありません。

犯人の男が用意周到に計画したことだったかもしれませんが、現場の状況を確認する余裕がなかったことも不運と言えます。

  • 複数人で対応できなかった?

唯一、殉職を防げる可能性があったと考えるのが複数人での対応です。

今回はパトカー1台が現場に先着しておりますが、複数の警察官で対応することができていれば結果が違ったかもしれません。

複数の警察官で現場の状況&犯人の動きを確認する、複数のパトカーで犯人の視線を逸らすといったことが手段としては考えられます。

ただし、女性が刺されているという状況ですので、他のパトカーを待っている余裕はなく、人命救助の観点からすれば単独でも間違いではありませんでした。

長野県警は規模の大きい警察ではないので、自動車警ら隊や機動捜査隊もすぐには駆け付けられなかったことだと思います。

お亡くなりになられた2名の警察官の方は使命感の強さから現場に急行したことは間違いありませんので、とても悔やまれる結果です。

これらの観点を踏まえても現場に一番で到着する警察官がどれだけ危険な状況かがわかる。

想定できない事象が多くあったと考えられるため、今回の殉職事案を防ぐことは容易ではなかったことがわかります。

元警察官としても今回の通報があれば同じような動きをとっていただろうと考えています。

「とにかく女性を助けなければいけない」「現場で犯人を確保しなければいけない」

指令を受けて現場に向かうときにはこのような思考になっていて当然です。

今回の事件の真相の解明が待たれるところです。

命の危険が伴う仕事

今回の殉職事案を防ぐことは難しかったと思いますし、殉職された2名の警察官のとった行動には問題がないと考えられます。

改めて感じたのは警察官は命の危険が伴う仕事だということです。

今後、このような事件は全国どこで起きても不思議ではなくなります。

すぐに模倣犯が現れる可能性も否定できません。

今回の事件を抜きにしても警察官の命を狙っている者は一定数いるはずです。

警察官である以上、現場から逃げ出すわけにはいかないので、通報があれば対応していくしかありません。

現役警察官の方やこれから警察官を目指す方は今一度、命の危険がある職業だということを認識する必要があると考えます。

今回の殉職事案を無駄にしないよう、より一層の対策が待たれるところです。

noteACT

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