2023年5月、警視庁の警察官が相次いで自殺するという悲しいニュースが報じられました。
1つ目の悲報は首相官邸で警備にあたっていた25歳の機動隊員が拳銃自殺を行ったという衝撃的なニュースでした。
場所が場所だけに色々な憶測が飛び交う形となりましたが、現状では自殺の見方が強まっています。
この衝撃的なニュースから約1週間後、今度は新宿署に勤務する30代の男性巡査長が飛び降り自殺を行うという悲劇が起きました。
わずか1週間の間で警視庁の警察官が相次いで自殺するというニュースは世間に大きな衝撃を与えました。
今回の2つの自殺だけでなく、警察官が自殺する事案は全国で発生しています。
これらは多くの場合が拳銃を使う自殺となっており、なぜそのような結末になってしまうのかは真相の究明が求められます。
警察官は子どもが憧れる職業で常にランクインする人気の職業で、誰もが知っている存在でもあります。
そんな誇り高き警察官の自殺がなぜ相次いでいるのか?
警察官の自殺の背景にあるものとは?
この記事では元警察官が相次ぐ警察官の自殺について考察し、厳しい上下関係や閉鎖的な組織について解説していきます。
- 【警察官採用試験】なぜ警察官を目指すのか?~警察官になりたい理由とは~
警察組織の特徴
まず始めに警察組織の特徴について解説していきます。
誰もが知っている警察官という職業ですが、その警察官の内部まで知っているという方はほとんどいないでしょう。
警察官はドラマや映画で題材にされることが多いですし、定期的に警察24時などで特集が組まれますので、警察官がどんな仕事なのかというのはイメージしやすいです。
しかし、これらで見る警察官はあくまで表向きな部分だけで、言ってみれば良い部分しか見ることができません。
テレビで華々しく活躍する警察官を目にして、まさかそんな人たちが自殺をするなんて想像もつかないはずです。
元警察官として、本記事ではあえて警察官の裏側について切り込んでいきます。
私自身は25歳のときに都市部の県警に入り、警察官を8年勤めて退職しました。
8年という期間は警察組織を理解するのに十分な期間で、組織については良いところも嫌なところもたくさん見てきました。
警察組織を端的に表現すると
- とにかく上下関係が厳しい
- 階級社会で閉鎖的な組織
と表現することができます。
警察官は超体育会系の組織なので、とにかく上下関係が厳しいです。
若手警察官はいいように使われる場面が多いですし、ありとあらゆる雑用をこなしていかなければいけません。
先輩や上司から厳しい言葉を浴びせられることも珍しくなく、ときには人格を否定されるような暴言を受けるときもあります。
実際、これによってメンタルをやられる警察官は数多く見てきました。
今の時代はわかりませんが、当時は日常茶飯事でした。
この上下関係は階級に基づいており、階級が1つ違うだけでそこには大きな壁が存在します。
上司の指示には絶対に従う必要がありますし、「ノー」と言うことは基本的に許されません。
また、警察組織に外部からの目や意見が入ることは滅多にないので、非常に閉鎖的な組織になります。
上司に逆らえず、ただひたすらに指示に従うだけという環境は精神的に追い込まれやすいことは間違いないでしょう。
警察官として勤務しているとこのような環境が当たり前なので、誰かが異を唱えるということはありません。
警察官ならば受け入れるしかないため、余計に誰にも相談できず一人で悩みを抱えがちです。
精神的に追い込まれて休職する同僚は何人も見てきましたし、中には退職に至るケースもありました。
残念ながら警察組織はこのような特徴があるので、警察官を目指すならば覚悟が必要です。
なにより大切にして欲しいのは悩んだら誰かに相談する、一人で抱え込まない、ときには逃げ出すということです。
絶対に誰かは味方をしてくれる存在がいるはずなので、悩みを吐き出すということが大事になってきます。
なぜ警察官の自殺が相次ぐ?
次になぜ警察官の自殺が相次ぐのか?について考察していきます。
元警察官として、警察官の自殺のニュースを見る度に悲しい気持ちになります。
警察組織や警察官についてよく知っている立場だけに余計に色々と考えてしまいます。
これだけ全国の警察官が自殺に追い込まれるということは何かしら原因があるはずです。
警察官の自殺が止まらない状況について、元警察官の私が考える理由は大きく2つです。
- 周りに相談しにくい
警察組織は上下関係が厳しいだけでなく、チームワークを大切にする職場です。
警察官の仕事はどんなことでも一人では完結させることができず、1つの仕事に対して複数の警察官で対応することが当たり前です。
また、お互いがお互いの命を守り合う関係なので、周りとの連携は欠かせず、ときにはプライベートでの付き合いもあります。
そのため、警察官は非常に仲間意識が強く、結束力が強いのが一般的です。
チームワークを大切にすることや仲間意識が強いことは悪いことではありませんが、その一方で情報の伝達が早いという特徴もあります。
これを言い換えると”噂話がすぐに広まる”という意味で、些細な話でもどんどん周りに拡散されていきます。
こうなるとちょっとした悩みでも周りには相談しづらく、一人で悩みを抱えがちです。
「こんなことを周りに相談していいのか」と疑心暗鬼にも陥りやすいと言えます。
また、上下関係が厳しいだけに人間関係の悩みを相談したところで、耐えるしかないという見方も多く出るでしょう。
相談しにくい環境が心身ともにダメージを蓄積していくことになると考えます。
- 簡単に退職を決断できない
警察官は警察官採用試験に合格しなければ務めることはできず、誰でも簡単になれるわけではありません。
警察官採用試験に合格し、厳しい警察学校での生活を乗り越えた者だけが警察官として勤務できるため、制服を着て働く喜びは格別です。
また、警察官は地方公務員ということもあり、その安定感は抜群です。
必ず給料は支給されますし、ボーナスも年2回支給され、さらに福利厚生も充実しています。
そんな環境で勤務していると、例え嫌なことがあっても簡単には退職を決断できません。
そもそも警察官を退職するということは「なぜ?」と疑問に思われることが一般的ですし、周りにも相談しにくいものでしょう。
デリケートな問題だけに家族にも相談しにくいので、退職するべきなのかどうか一人で抱え込んでしまいます。
嫌なことがあれば退職…という決断が簡単にできない事情があり、自らを追い詰めやすい環境なのかもしれません。
退職さえすれば悩みも解決できることが多いと思いますが、命を引き換えに考えてしまう警察官は多いのではないかと考えます。
警察官は昼夜を問わず働かなければならず、肉体的にも精神的にもタフさが求められる。一度心身のバランスを崩すと回復させるのも容易ではない。
元警察官として伝えたいことは警察官がすべてではないということです。
誰しも悩みを持っていることでしょうが、最悪のところまで追い詰められる必要はありません。
その場から逃げ出すこともできますし、一旦休むこともできます。
警察官を退職したところで何ら問題ありませんので、ここだけは経験者として伝えておきたいです。
追い詰められたらどうすべきか
最後に追い詰められたらどうすべきかについて解説します。
警察官の激務な仕事はモチベーションが高くないと続けていくことは難しい部分があります。
通報や事件は次から次へと休む暇なく舞い込んできますし、元気がないとついていくことができません。
心身ともに追い詰められている状況では非常に辛いものがあるでしょう。
正直に言えば、私自身も人間関係で悩んだことは何度かあります。
毎回出勤するのが憂鬱でしたし、上司に会うことも嫌でした。
このときは何とか時間が解決してくれましたが、あのまま悩みが続いていたらもっと追い詰められていたかもしれません。
そんな経験からも打開策を3つ紹介していきます。
- 異動を待つ
警察官は年に2回の異動があるので、嫌な上司がいてもずっと一緒に働くわけではありません。
異動のタイミングによっては短い付き合いで済む場合があるため、そこを目標にすることができます。
重い悩みの場合はそこまで待つ余裕がないかもしれませんが、1つ打開策として考えられます。
逆に自分自身が異動することもあるので、打開できるチャンスは決して少なくありません。
- 信頼できる人に相談する
警察組織は相談しにくい雰囲気ですが、それでも信頼できる先輩や上司は一人はいるはずです。
「この人なら」という方に思い切って相談することは非常に大事になります。
悩みを打ち明けることで少し気は楽になりますし、一緒に打開策を考えることもできます。
場合によっては係や部署を異動することができるかもしれないので、そのような存在の人がいれば一度相談してみましょう。
- 気にせず休む
打開策が見つからない場合は気にせず休むようにしてください。
ワンクッション置くことで気を休めることができます。
追い詰められている状況で無理に働く必要はありませんし、そのタイミングで直属の上司に相談してもいいかもしれません。
休職というのは立派な制度として認められているので、誰に何を言われようが自分自身の権利です。
逃げ出すことを恐れず、じっくり考える時間を作ることも大事だと考えます。
警察官だからといってスーパーマンではありません。
誰もが悩む可能性はあるので、悩むことが悪いことだと考えないことが重要です。
まとめ
今回は相次ぐ警察官の自殺について、私自身の経験談も交えて考察を行いました。
今現在、警察官として悩んでいる方に少しでも参考になれば幸いです。
市民の命を守る立場の警察官が自ら命を絶つ事件は本当に衝撃が大きいものがあります。
また、自らの命を守る拳銃を使っての自殺は悲しい以外に言葉が見つかりません。
1つでもこのような悲報がなくなることを願います。