
警察学校での厳しい生活を乗り越え、無事に警察学校を卒業した後の流れについてはこれから警察学校に入校する方にとってとても気になることだと思います。
まず、結論から言うと警察学校を卒業するとすぐに現場での勤務が始まります。
警察学校の卒業式はとても感動的なものですが、卒業後は警察署に直行することになるので、すぐに気持ちを切り替えなければいけません。
憧れていた警察官の仕事が間もなくしてスタートするからです。
警察学校ではあくまで警察学校内での訓練や授業しかありませんでしたが、警察学校卒業後は一人前の警察官として現場で勤務することになります。
警察学校での生活はあくまで通過点であり、実は警察学校を卒業した後の方が何十倍もの困難が待ち受けているのが現実です。
では、実際に警察学校を卒業した後の流れはどうなっているのか?
警察学校を卒業した後はどんなことに気を付けていけばいいのか?
この記事では元警察官が警察学校卒業後の流れについて紹介し、警察官として準備すべきことや考え方について詳しく解説します。
目次
卒業後は警察署に直行する

警察学校の卒業式は基本的に教官や在校生(先輩や後輩)が全員参加し、盛大に行われます。
私も初任科生のときは多くの人が見守ってくれる中で卒業式を行いましたし、初任補修科のときは後輩の初任科生の卒業式に参列しました。
また、初任科生の家族も出席することができるため、和やかな雰囲気で門出を祝福してもらえます。
卒業式では最後の校歌を大声で歌ったり、思い出写真のスライドショーを見たり、さらには同期生と記念写真を撮ったりする時間もありました。
このように警察学校の卒業式は辛かった生活を思い出す上、感動的な雰囲気になるので、卒業式のことは今でも鮮明に覚えていますし、号泣したことも記憶に新しいです。
しかし、そんな感動的な警察学校の卒業式ですが、いつまでも卒業の余韻に浸っている時間はなく、終了後はすぐに赴任する警察署へ直行することとなります。
警察学校の卒業式が行われる2週間くらい前には赴任先の警察署が発表される。赴任先が決まった後は赴任先の警察署に挨拶の電話をしたり、荷物の搬送をしたりする。
警察学校を卒業するときには既に赴任する警察署が決まっているので、独身の男性警察官ならば事前に独身寮に荷物を運ぶ必要があります。
私の場合は車の運転をしないよう言われていたので、卒業の数日前に親に警察学校まで来てもらい、親と一緒に赴任する警察署の独身寮に荷物を運びました。
なお、独身の男性警察官の場合は警察学校を卒業したら赴任先の警察署の独身寮に入寮しなければいけません。
警察署の独身寮については下記の記事で詳しく解説しています。
卒業式が終わるとすぐに警察署に直行することとなるので、感動的な卒業式から一転し、すぐに気持ちを切り替えなければいけません。
卒業式が終わったからと言って家族と一緒に家に帰るわけではありませんし、お祝いのご飯を食べに行く時間もないのです。
ここで覚えておいて欲しいことは警察学校を卒業したといっても、残念ながら警察署においては立場は圧倒的に一番下ということです。
そのため、警察署に赴任してからは
- 新人らしく元気で明るい対応
- 新人らしい機敏な行動
- 積極的に仕事を覚える姿勢
などが求められますので、今一度気を引き締める必要があります。
まずは警察学校に迎えに来てくれた警察署の担当者にしっかりお礼を言い、新人らしい態度で顔と名前を覚えてもらえるようにしましょう。
警察学校に迎えに来る担当者は警務課の人である場合が多いので、今後色々な場面でお世話になることがあります。
警察学校卒業後はどこに住む?

警察学校では全寮制の生活でしたが、警察学校卒業後はどこに住むことになるのでしょうか。
これはTwitterでもよく頂く質問なのですが、警察学校卒業後は独身かどうかで住むところが変わってきます。
先ほども少し紹介した通り、独身の男性警察官であればほぼ間違いなく赴任先の警察署の独身寮に入ることになります。
親の介護が必要など特別な理由がある場合は独身寮を免除されますが、免除されるためには上司を説得できる明確な説明が必要です。
まれに独身寮がない警察署や独身寮の建て替え中などの場合で入寮しなくて済む場合はあります。
恋人がいる人は「警察学校を卒業したらすぐに恋人と同棲する」と考えている人がいるかもしれませんが、そう簡単にいくものではないので覚えておきましょう。
- 独身の男性警察官
ほぼ全員が独身寮に入居することになるため、警察学校の寮から荷物を運ぶ。ただし、必ず担当者に「○月○日の○時頃に荷物を運びます」と事前に連絡しておく必要がある。
- 既婚の男性・女性警察官
家族と一緒に住んでいる家から警察署に通うことになるため、特別に準備することはない。
- 独身の女性警察官
女性用の寮が完備されている警察署であれば寮に入れるが、まだまだ女性用の寮は少ないので、独身の女性警察官はしばらく実家から通う人が多い。県外出身者であれば、警察学校を卒業するまでにアパートを探す必要がある。
せっかく警察学校を卒業したのにまだ自由になれないのは精神的に辛いですが、独身の警察官ならば誰もが通る道です。
独身寮は様々な規則があり、寮によって門限なども違いますので、独身寮に入る場合は寮のルールをしっかり覚える必要があります。
警察学校を卒業しても色々な制限がありますが、それを含めて警察官ですので、まだまだ修行の身であることを覚えておきましょう。
独身寮は確かに不便なことが多く、私自身も大嫌いでしたが、振り返ってみるといい思い出もいくつかあります。
期生の近い先輩や後輩とお互い愚痴を言い合ったりして仲良くなりやすいですし、独身寮は決して悪い事だけではありません。
警察学校卒業後に準備すべきこと

警察学校を卒業した後に準備すべきことは色々あります。
生活用品を今一度揃えることはもちろんですが、社会人として必要なものも買っておく必要があります。
しかし、赴任先の警察署に行く前になによりも準備しておきたいことは身だしなみです。
これからお世話になる警察署の先輩や上司たちに与える第一印象が悪いと、それだけでマイナス評価からのスタートとなってしまうので、まずは身だしなみをきっちり整えておきましょう。
男女とも髪を短く整えることは当然で、男性ならばひげもしっかり剃っておく必要があります。
警察学校も卒業間近になると教官から怒られる機会が減るので、ついつい身だしなみが乱れがちです。
卒業気分のままで警察署に赴任するといきなり上司から雷を落とされる可能性もありますので、十分注意が必要です。
新人警察官を待っている先輩や上司は「どんな新人が赴任してくるのか」ということをとても楽しみにしている。それだけ新人警察官は注目を浴びる存在なので、しっかりした身だしなみで赴任する必要がある。
私自身は警察学校を卒業するときは独身でしたので、赴任先の警察署の独身寮に入ることになりました。
基本的な生活用品は警察学校で使っていたものがそのまま使えるのでよかったのですが、すぐに買いに行ったのは布団です。
布団をわざわざ実家から運ぶのも手間だったので、独身寮に入ってから一番最初に布団を買いに行ったのは今でも覚えています。
独身寮の近くにホームセンターなどがあればいいですが、ネットで買うならば一式がセットになっている布団が圧倒的におすすめです。
そして、次に準備したいのが文房具類です。
警察学校を卒業した後はいよいよ現場での勤務が始まりますが、警察官はメモ帳+ボールペンを必ず持ち歩いていなければいけません。
とにかく現場ではメモをする機会が多いですし、新人警察官はなにかとメモをしなければいけないので、メモ帳とボールペンをセットで持っておく必要があります。
ただし、メモ帳とボールペンはよく消耗するものですし、特にボールペンはよく失くしますので、安いもので十分です。
多くの警察官が愛用しているボールペンはジェットストリームの2色+シャーペンのボールペンです。
警察官は黒色と赤色のインクを使うことが多いですし、併せてシャーペンもよく使います。
この2色+シャーペンがセットになっているのがジェットストリームのボールペンなので、多くの警察官が使っていますし、私もずっと使っていました。
(先ほども書いた通り、ボールペンはよく失くすので何度も買い直すことになります)
そして、警察署に赴任すると仕事だけでなく、雑用についても先輩から教えてもらうことになるので、教えてもらったことはメモをする癖を付けておくといいです。
1回聞いただけではなかなか覚えられませんし、何度も同じことを先輩や上司に聞くと怒られます。
警察官は上下関係に厳しいので、「教えたことは1回で覚えろ」というタイプの上司も珍しくありません。
なにより、メモをしておけば後から何回でも見直すことができるので、教えてもらったことを復習することもできます。
そのほかに警察官として持っていると便利なアイテムについては下記の記事で詳しく解説しています。
警察署での教養からスタート

冒頭でも少し説明しましたが、警察学校での卒業式を終えると配属先の警察署へ直行することになります。
これまでは自分の所属は警察学校でしたが、この日をもって所属が配属先の警察署に変わります。
警察学校で送り出された後は警察学校から各警察署に向かうわけですが、その距離は本当に様々です。
警察学校から一番近い警察署であればすぐに到着しますし、逆に一番遠い警察署なら高速を使っても1時間以上かかる場合もあります。
この警察署に到着するまでの時間がなんとも言えない気持ちで、とても緊張していたのを覚えています。
最初に赴任した警察署は警察学校から1時間程度かかる距離であったため、道中では疲れもあってうたた寝してしまったのを覚えている。
このことを怒られることはなかったが、警察署が近付くにつれて緊張感が高まり、迎えに来てくれた担当者からも「最初は元気よく挨拶するんだよ」と言われた。警察署に向かっているあのときの緊張感は今でも忘れられない。
警察署では初任科生の到着に合わせて署員がロビーに集まり、盛大に初任科生を迎え入れます。
そして、警察署に到着すると多数の署員が見守る中、「○○巡査以下○名は、本日警察学校を卒業し、○○警察署に配属となりました」と赴任の申告を行います。
これが警察署での最初の挨拶となりますので、もちろん元気よく大きな声で行わなければいけません。(代表者1名)
ここで元気のない挨拶をしてしまうと、「今回の初任科生は大丈夫か?」と思われてしまうので、申告者に選ばれた場合は思い切って声を出すようにしましょう。
この後はいきなり交番勤務につくわけではなく、まずは幹部による教養から始まります。
署長や副署長などから警察官についてや仕事についての話を聞き、他にも警務課長や地域課課長といった幹部からも色々と教養を受けます。
また、他にもたくさん手続きがあるので、書類を書いたり、ロッカーに荷物を運んだりと慌ただしい時間を過ごします。
私の場合はこのような教養や手続きが2日ほど続きました。
警察学校卒業後最初の2年間は必ず地域課での勤務となるので、最初は交番勤務からスタートします。
実際に交番勤務が始まるのは警察学校卒業後2~3日後になると思います。
タイミングによっては卒業式の翌日から勤務が始まるという場合もあるので、心の準備だけはしっかりしておきましょう。
数日後には交番勤務が始まる

警察署での教養、各種手続きが終わるといよいよ交番勤務が始まります。
長く憧れていた警察官として、遂に現場に出ることになるのです。
警察学校での厳しい生活を乗り越えてきたからこそ、現場で働く喜びは大きいと思いますし、警察官の制服を着て働くことは今までに感じたことがない感覚でしょう。
制服を着ていざ交番へ…といきたいところですが、勤務につく前に絶対にやっておかなければいけないことがあるので、注意が必要です。
警察官の世界は非常に礼儀に厳しく、特に新人警察官が礼儀を怠ると大変なことになりますので、「知らなかった」では済まないことを覚えておきましょう。
- 上司や先輩への挨拶
同じ交番でお世話になる上司や先輩に事前に挨拶を済ませておくことは絶対に欠かせない。
- やるべきことの確認
新人警察官は誰よりも早く出勤して朝の準備を行わなければいけない。最初は期生の近い先輩と一緒に雑用をやることになるが、なにをやるべきなのか確認しておく。
- 管轄区域の確認
警察署に赴任すると自分が勤務する交番が決められている。まったく知らない土地であれば、事前に交番の管轄区域について調べておく。(どこになにがあるか、方角、主要な交差点など)
しばらくの間は上司や先輩に付きっきりで仕事を教えてもらうことになるので、事前にお世話になる人への挨拶は必須です。
出勤する日に初めて顔を合わすというのでは遅いので、事前に挨拶ができるように調整する必要があります。
少し挨拶が遅れてしまうだけで激怒されることも珍しくありませんし、スタートでつまずくのはもったいないです。
いきなり印象も悪くなってしまうので、挨拶だけは欠かさないようにしましょう。
また、ポイントとしては警察学校を卒業したばかりの新人らしく
- 機敏に行動する
- 明るく元気のいい対応をする
- 何事も積極的に動く
ということを意識することが大事です。
市民からはベテランも新人も関係ない

いざ制服を着て交番勤務が始まったところで、残念ながら新人警察官は右も左もわかりません。
警察学校で一通りの授業や訓練を受けてきたといっても、やはり実戦はまったく違います。
警察学校で身に付けた知識がすぐに現場で使えるわけでもありませんし、率直に言えば新人警察官はまだまだ戦力にならない存在です。
ところが、一般企業なら「新人だからゆっくり仕事を覚えればいいよ」という雰囲気なのですが、警察官は違います。
制服を着て働いている以上、市民から見れば新人警察官でもベテラン警察官でも見た目は同じ警察官なので、悠長なことを言ってられないのです。
さらに警察官は命の危険が伴う仕事ですし、いきなり凶悪な犯人と対峙する場面もあるので、新人警察官でもすぐに仕事を覚えて戦力にならなければいけません。
警察学校は慣れてしまえば楽な生活であるが、現場での勤務は常になにが起きるかわからない世界であるため、警察学校とはまったく違う。
また、警察学校で勉強したことがすべて通用するわけではなく、現場は現場のやり方がある。決して「警察学校ではこうやって習ったのですが?」と言ってはいけない。
ついつい「自分はまだ新人だから」と受け身に思いがちですが、警察官の仕事はそうではいけません。
基本的には上司や先輩が付きっきりで仕事を教えてくれますが、場合によっては自分1人で判断しなければいけない場面もあります。
警察官が仕事で失敗した場合や法律に違反した場合、国家賠償請求などで市民から訴えられることも全然あり得ます。
それは新人だろうがベテランだろうが関係ありません。
「新人だからわからなかったよね、仕方ないよね」なんていう優しい言葉をかけてくれる人もいないでしょう。
ときには新人警察官でも自分の判断で動かなければいけない場面は必ずあります。
現場では瞬時の判断が求められるので、新人の判断ミスが大きな失態に繋がる可能性もあります。
それだけ警察官は大変な仕事ですし、重責を担う仕事なので、「自分は新人だから」という気持ちでやってはいけない仕事です。
まとめ
今回は警察学校を卒業した後の流れについて詳しく紹介しました。
警察学校の卒業式はこれまでの気持ちがこみ上げてくるので、とても感動的なものになりますし、間違いなく一生の思い出になります。
私自身も警察学校の卒業式のことは今でも鮮明に覚えています。
それでも警察学校を卒業した後はいよいよ現場での勤務が始まります。
卒業式を終えたら赴任先の警察署に直行しますので、いつまでも感動的な卒業式の余韻に浸っている余裕はありません。
そして、警察署に配属になったら新しい生活が始まりますし、新しい先輩や上司があなたのことを待っています。
最初は色々と忙しいですが、スタートダッシュで失敗しないよう、今回紹介したことを実践してみてください。
警察官として現場で働くことは警察学校とはまるで違う世界になりますので、しっかり気持ちを切り替え、現場の仕事に慣れるようにしましょう。