
警察学校の生活が厳しいことはよく知られていることですが、その生活に耐えられず退職する人はどれくらいいるのでしょうか。
現実的な話をすると、苦労して警察官採用試験に合格し、憧れの警察官となったものの、警察学校で退職してしまう人は少なくありません。
私が知っている限りだと、全体の約1割が警察学校で退職してしまいます。
これよりもさらに退職者が多い場合もあり、退職者の数についてはその期生によって異なると言えるでしょう。
退職者が多い期生だと全体の約2割が警察学校で退職してしまうことも珍しくありません。
警察学校で退職してしまうと、以後再び警察官になることはほぼ不可能です。(採用試験を受験し続けても合格することは難しい)
そのため、「警察学校で退職=せっかく警察官になったのに脱落すること」を意味します。
警察学校で退職というのはこれから警察学校に入校する方にとって、とても不安に感じる部分だと思います。
「自分は警察学校の生活に耐えられるのか…」
「警察学校を辞めたくなったらどうしよう…」
このように警察学校での生活に対して不安に思っている方は多いのではないでしょうか。
では、実際のところ、警察学校を退職する人の主な理由はどうなっているのか?
1つの参考としてもらうため、この記事では元警察官の経験談を含め、警察学校を退職する人の主な理由について解説します。
警察学校入校=警察官

まず、最初に知っておいて欲しいことは警察学校入校=警察官になるということです。
警察学校は学校という名称がつくので、どうしても学生のような身分を想像してしまいがちですが、実は全然違います。
警察学校は警察官採用試験の合格者が必ず入校する場所ですが、警察学校に入校した時点で身分は警察官となり、毎月給料が発生しますし、職業も公務員となります。
そのため、警察学校は学生気分で勉強をするところではなく、給料をもらいながら警察官としての基礎を身に付ける場所なのです。
変な話ですが、身分は公務員となるため、もし警察学校入校中に犯罪を犯せば当然ニュースになりますので、身分が変わったという自覚を持つことは大切です。
警察学校は義務教育とは違い、入校したからといって全員が卒業できるわけではない。給料は税金で支払われているため、授業や訓練についていけない者は退職を迫られることもある。
警察学校は現場で働けるように新人警察官を養成する機関なので、中途半端な気持ちではやっていけない。
給料が出ている以上、警察学校ではそれ相応の結果を出さなければいけません。
警察学校での結果とは
- 厳しい訓練に耐える
- 試験でいい点数をとる
- 各種検定に合格する
等が該当します。
警察学校では授業や訓練に参加し、試験で結果を出してようやく仕事をしていると言えます。
つまり、警察学校で結果を出せない人=仕事をしていない給料泥棒というのが当たり前の考えなので、結果が出ない以上は退職を余儀なくされることもあります。
なんとなく生活しているだけでは卒業することができない場所であることを1つ覚えておいてください。
退職理由①パワハラ、追い込み

ここからは私の経験談+先輩や後輩から聞いた実話をもとに警察学校を退職していった人たちの主な理由について紹介していきます。
警察学校退職の主な理由の1つ目は「教官からのパワハラ、追い込み」です。
警察学校における教官の存在は絶対的であり、なにがあっても教官には逆らうことはできず、言われたことに従うしかありません。
教官と初任科生の間にはとにかく厳しい上下関係がありますので、初任科生は圧倒的に弱い立場にあるのが現実です。
そのため、教官からパワハラに近い行為を受けることも珍しくなく、それが原因で退職する人は多いです。
逆に言えば、教官の厳しい指導についていける人でなければ警察学校は続かないでしょう。
教官から怒鳴られることは当たり前であり、きつい言葉を浴びることも普通。教官からの攻撃は容赦がなく、警察学校ではこれに耐えていかなければならない。
あくまで警察官として精神的に成長させるためであるが、ときにその狙いを逸脱することもある。絶対に逆らうことができないため、ただ従うしかない。
警察学校において、教官から
- てめぇ早く辞めろ
- お前なんていらない
- いつまでここにいるの?
等と厳しい言葉を浴びることは普通です。
教官もあえてこのような厳しい言葉をかけているのですが、こういったことに耐えられないと警察学校ではやっていけません。
私自身もこれまでの人生でここまで厳しいことを言われたことは警察学校が最初で最後でした。
そのおかげで、警察学校を卒業して現場で働くようになっても強い精神力を保つことができましたが、いきなりこのようなことを言われてショックを受ける人もいるでしょう。
また、協調性がない、結果が出せないという人は日常的に教官から追い込みをかけられますし、教官だけなく同期からも追い込みが始まります。
追い込みとは必要以上に教官や同期から個人攻撃をされ、退職を強要されることです。
結果が思うように出せなかった同期は教官からの追い込みが毎日続いたため、最終的に耐えきれず退職してしまいました。
実際のところ、一般的に考えれば教官の行為というのは完全にパワハラですし、一般企業であればすぐに訴えられてしまうようなことです。
ですが、警察学校ではこれが当たり前ですので、耐えるしかありません。
逆に言うと、これくらいのことに耐えられないと現場で働いていくことが難しいというのも事実なのですが…。
退職理由②いじめ

警察学校退職の主な理由の2つ目は「同期からのいじめ」です。
警察学校は同期との集団生活となるため、個人のわがままが通用しないところです。
嫌なことがあっても周りに合わせなければいけませんし、クラスで決まったことには従わなければいけないので、個人プレーは許されません。
そのため、警察学校で最も必要になってくる要素は同期とうまくやっていく協調性と言えるでしょう。
協調性をもって同期とうまく生活していくことがなにより大事であり、同期とうまくやっていけないと警察学校での生活は一段と難しくなります。
また、警察学校はすべてが連帯責任となるため、一人が失敗をするとそれはクラス全員の失敗ということになります。
なので、クラスに迷惑をかけないように行動することも大事になってきます。
警察学校のクラスは1つの部隊と考えられているため、何事も連帯責任となる。できる人だけできればいいというわけではなく、全員が同じ方向を向かなければいけない。
誰かが不祥事や問題を起こせばその影響はクラス全体に波及するため、クラスから干されるのは当たり前の流れとなる。
警察学校は個人プレーが許されない場所なのですが、それでも個人プレーに走ってしまう人がいるのが現実です。
具体的には
- クラスで決まったことに従わない
- 自分のことしか考えない
- 面倒なことをやりたがらない
- 同じ失敗や問題行動ばかりをする
等の行動が個人プレーに該当します。
楽に生活したい気持ちは大いにわかるのですが、残念ながら警察学校ではこれらの行動がご法度となっています。
そのため、こういった行動をとる者は自然とクラスから干されるようになります。
また、試験で毎回赤点をとる、訓練で同じ失敗ばかりするといったこともクラスに迷惑をかけてしまうので、干される原因になります。
警察学校ではすべてが連帯責任となりますので、一人でもこういう同期がいると迷惑な存在と思われてしまうのがどうしても致し方ありません。
こうなると教官からの追い込みはもちろんのこと、同期生からも追い込みを受けることになり、結局は生活がしづらくなって退職するというパターンがあるのです。
これも先ほどのパワハラと同じで、一般的に考えればいじめに該当することだと思います。
しかし、給料が出ている以上は全員が同じ方向を向き、全員が同じように結果を出していかなければいけません。
よって、警察学校では周りと同じことができない者がクラスから干されるというのは現実的に起こる場所なのです。
退職理由③不祥事

警察学校退職の主な理由の3つ目は「不祥事」です。
実は警察学校で意外と起きてしまうのが不祥事で、不祥事を理由に警察学校を去る人も珍しくありません。
警察学校では不祥事を起こさないように注意したいですし、被害を受けないようにすることも大切です。
冒頭で警察学校入校=警察官の身分と説明しました。
そのため、警察学校にいるのはすべてが警察官になるわけですが、悲しいことに色々な不祥事が起こってしまうのです。
警察学校で起きる不祥事については下記の記事で詳しく解説しています。
起こした不祥事が犯罪に該当する場合、即退職になると考えておいた方がいいでしょう。
身分は警察官ですので、たとえ警察学校といえども不祥事を起こせばそれがニュースになる可能性も十分にありますし、逮捕される可能性もあります。
そんな不祥事を起こしておいて、そのまま警察学校に残るなんていうことはほぼ不可能ですので、立場を自覚するようにしてください。
- 窃盗事件
他人の現金や装備品を盗む不祥事が最も多い。これは立派な窃盗罪なので、最悪の場合は検挙されることもある。
- 暴力事件
気に食わない同期生に我慢できず、手を出してしまう者がいる。警察官が暴力事件を起こすのはもってのほかなので、これも大きな処分を受ける。
- 休日の不祥事
つい休日に気が緩んでしまい、プライベートで事故や事件を起こす場合が多い。休日においても緊張感を保つべき。
警察学校では厳しい規律の下で規則正しい生活を送らなければいけませんが、休日は唯一、思いっきり羽を伸ばせる時間となります。
もちろん十分にリラックスするべきですが、ハメをはずしすぎるのはNGです。
実際、私が知っている範囲でも
- ひき逃げ事故、酒気帯び運転
- わいせつ事件
- 飲酒に絡むトラブル
等を休日に起こし、警察学校を去っていった人たちはいました。
警察学校入校中はなかなか自由もありませんので、つい気が大きくなってしまいがちですが、ストレスと上手に付き合っていくことも大切です。
退職理由④現実逃避

警察学校退職の主な理由の4つ目は「現実逃避」です。
これはもはや単純な理由で、ただ「この生活から逃げ出したい」という思いから退職に至ってしまうケースです。
警察学校では教官に怒られながら集団生活を送り、さらには厳しい訓練に耐える日々が続きます。
また、平日は外出することもできませんし、都道府県によっては携帯電話も週末しか使えないというところもあります。
はっきり言って、警察学校はとても特殊な生活になるので、日常生活との違いからカルチャーショックを受ける人も少なくありません。
自由を完全に奪われる生活になるので、誰もが「家に帰りたい」と思ってしまうものです。
そうなると衝動的に「もう辞める」という考えに至ってしまいやすいので、突然退職してしまう同期がいるのも事実です。
警察学校は集団生活になるので、一人が退職すると集団で不安な気持ちに陥りやすい。実際、昨日まで一緒に頑張ってきた同期が突然いなくなるのはショックも大きい。
そのため、警察学校では退職の連鎖が続くこともある。
同期の実例を紹介しておきます。
私の同期だったS君は30歳で警察官に転職した”高齢の新人警察官”(クラスで最年長)でした。
S君は入校してすぐに怪我をするなど、スタートにつまずくことはあってもなんとか必死にクラスについてきていました。
しかし、その後も色々とクラスに迷惑をかけることが続き、最年長としてふさわしい行動ができず、S君自身悩む時間が多くなりました。
S君の表情からも悩んでいる様子が伝わってくるほどで、周りが心配するほど顔色も悪くなっていく日々。
そんなある日、S君の表情が急に明るくなり、吹っ切れた様子で「諦めがついたよ。警察官の制服を着ることができたし、退職します。普通の生活に戻りたいね(笑)」と言い残し、警察学校を去っていきました。
まさにこれが突然の退職です。
このときのすっきりしたS君の表情は今でも忘れられません…。
警察学校を辞めたくなったらどうするべき?

ここまで警察学校を退職する主な理由について解説してきましたが、実際に入校して退職したくなったらどうするべきなのでしょうか。
警察学校を辞めたくなることは珍しくなく、誰でも一度は考えたことがあることだと思います。
実例として私の同期でも最終的には残りましたが、途中で退職することを教官に報告していた者は数人いました。(後に気持ちを入れ替えて、無事に卒業しています)
そのため、強い気持ちを持っていたとしても、警察学校で生活していく過程で迷いが生じることはあり得ます。
そのため、警察学校を辞めたくなったときの対策法を紹介しておきます。
警察学校を辞めたくなったら、まず最初に「警察官になった意味」を思い出してください。
なんとなく警察官になった人もいるでしょうが、多くの方はやりたいことや目標があって警察官になったことだと思います。
警察学校を辞めたら警察官としてはそこで終わりなので、もう1度原点について思い出すといいでしょう。
そして、さらに今後の人生についても考えると答えは出やすいかもしれません。
警察官としてやりたいことがあるのに警察学校を去るわけにはいきませんし、長く警察官を続けたいと思っているなら警察学校は通過点としなければいけません。
また、警察学校を退職した瞬間に無職となりますので、自分自身のキャリア形成もしっかり考えるといいと思います。
警察官に憧れて警察学校に入校したとしても、警察官の世界が想像と違う場合は多々ある。それでも続けるのか、辞めるのかは個人の自由だが、決して無理をする必要はない。
心身の故障を抱えながらも続ける必要はないので、最終的にはあくまで1つの職業として考えるようにしよう。
「警察学校の生活が一番楽」という話を聞いたことがあると思いますが、これは警察学校を卒業してみて初めてわかることです。
私自身も警察学校で辛いと思うときは何度もありましたし、退職していく同期を見て「この生活から抜け出せていいなぁ…」と思ったこともありました。
それでも警察官になった意味、原点を振り返り、私は警察学校を卒業することができました。
退職していった同期たちが今なにをしているのかはわかりません。
あの頃より成功しているかもしれないし、退職して失敗だったと思っている同期もいるかもしれません。
最終的に決断をするのは自分自身となりますので、周りに流されず決断するようにしてください。
まとめ
今回は警察学校を退職する主な理由について解説しました。
今回紹介した退職理由は割と多いパターンですが、実際のところ、退職の真相は本人にしかわからないことです。
ですが、警察学校に入校する誰しもが一度くらいは悩む問題だと思います。
決して無理をする必要はありませんし、自分自身に嘘をついてまで続けるほどのことでもないでしょう。
警察官がすべてではありません。
警察学校を辞めたくなったら、もう1度なぜ警察官になったのかを思い出し、退職したあとのこともイメージしてみてください。
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警察学校では様々な困難に直面することだと思いますが、今回紹介した実例も1つの参考としてください。
これから警察学校に入校する方、将来警察官を目指している方に少しでも参考になればと思います。