警察官の仕事は様々な部署が存在し、それぞれ警察官が活躍する場がたくさんあります。
警察官を目指している方の中には「○○課で働きたい」と既にイメージを持っている方もいるでしょうし、逆に「警察官の仕事がよくわからない」と思っている方もいるでしょう。
ただし、警察官採用試験の面接では
- どこの部署で働きたいのか
- 警察官になったらどんな仕事がしたいのか
- 警察官の仕事をどこまで知っているのか
という質問が必ずあるので、警察官を目指すならば警察官の仕事については深く知っておきたいところです。
そこで今回は刑事課の仕事について紹介していきます。
ドラマや映画で題材にされることも多い刑事ですが、現実でも刑事は警察官の仕事の中で一番の花形と言われる部署です。
警察官にとって要のポジションであることは間違いないですし、それだけ重責を担う仕事でもあります。
実際に刑事に憧れて警察官になる人は多く、警察官志望者の中では白バイと並んで大人気の部署となっています。
では、実際に刑事課の仕事とはどういったものなのか。
ドラマや映画のように華やかな仕事なのか?勤務体系や休日はどうなっているのか?
この記事では刑事課の仕事について詳しく紹介し、ドラマでは決して映し出されない刑事課の本当の姿についても解説していきます。
目次
刑事課の勤務体系・休日

まずは刑事課の勤務体系や休日について紹介します。
刑事課は基本的に月曜から金曜までが仕事になる日勤勤務で、なにもなければ大型連休なども休日となります。
そのため、刑事課は土日+祝日が休日となっているのですが、月に3~4回程度は警察署に泊まって勤務をする当直勤務が入ってきますし、残業が長引く影響でそのまま署に寝泊まりすることもあります。
なぜ刑事課に当直勤務があるかというと夜中に大きな事件が入った場合、地域課(交番やパトカー)だけでは対応しきれないからです。
事件が起きたときに指揮をとるのは刑事課になりますので、警察署には常に刑事課の刑事が待機している状態となっています。
同じ警察官から見ても刑事はとても頼りになる存在。なぜなら誰よりも事件を経験しているし、書類作成にも秀でているためである。よって、事件の判断が難しいときや迷うときは必ず刑事に相談するという流れになっている。
原則として刑事課の休みはあってないようなものですし、刑事を目指すのであれば休日のことを気にしていてはいけません。
急ぎで捜査をしなければいけない事件があれば休日はありませんし、逆に休日に大きな事件が起きればどこかに出かけていても呼び出しを受けます。
これは刑事課の宿命ですので、刑事を目指すならばプライベートを犠牲にする覚悟が絶対に必要となってきます。
また、ときには長期間に渡る張り込みや犯人の尾行などで勤務時間がかなり不規則になることもあります。
もちろん特になにもやることがなければ休日は普通に過ごすことができますし、定時で帰ることもできますが、忙しい警察署の刑事はかなりの激務であることは覚えておきましょう。
上司が休日出勤をして当たり前だと考えている人ならば、その部下は休みたくても休めないのが現実。逆に”やるときはやって、休むときは休もう”という考えの上司なら柔軟に対応してもらえる。
刑事課の残業や休日については上司によって左右されると言っても過言ではない。
やはり刑事課は常に事件を抱えているような状態ですので、長時間の残業が当たり前ですし、どうしても休日出勤しなければいけないことが多いのも事実です。
私が所属していた県警で一番忙しい警察署の刑事課に入った元上司がいますが、普段は終電ギリギリまで仕事をして、それでも時間が足りないから休日出勤するのが日常だと言っていました。
また、刑事の激務を経験したことがある別の上司は「なんのために働いているのかわからなかった」とも言っていました。
そのため、忙しい警察署の刑事だと家族との時間すらなかなか取れなくなりますので、家族の反対を受けて刑事課から他の部署に異動した人もいたくらいです。
刑事課の仕事はやりがいも面白味も大きいですが、警察官の仕事の中で最も激務な部署であることは間違いありません。
刑事課に入るためには?

刑事課も他の部署と同様、警察学校を卒業してから地域課での勤務で実績をアピールすることが大切です。
警察学校を卒業してから2年間は地域課での勤務となりますので、たくさん検挙をして刑事課の幹部に名前を知ってもらうことが最大のアピールとなります。
地域課で仕事をしていると刑事課の人と一緒に仕事をする機会も多いので、そこで「私は刑事課を希望しています」と話しておくのもいいでしょう。
アピールが必要な理由は白バイと同じように刑事課も人気のある部署だけに誰でも入れるわけではないからです。
希望したからと言って必ず入れるわけではありませんし、実際に「刑事になりたかったんだよな~」と刑事になる夢が叶わなかった先輩たちもたくさん見てきました。
地域課での勤務を終えた後、そのまま帰宅するのではなく刑事課に寄って雑用を手伝うのがよくある手段。刑事課は忙しいので少しでも雑用を手伝ってくれる存在が貴重なため、いきなり行っても歓迎されることが多い。
これは自分の存在を刑事課の人たちに知ってもらえるし、わずかながら刑事課の仕事にも携われるので一石二鳥となる。
また白バイと同じく、刑事課においても20代のうちに入っておくのがベストです。
30代でも入れないことはないですが、若ければ若いほど選ばれやすい傾向にありました。
アピールとしては地域課での勤務を終えた後に刑事課に顔を出してなにか手伝いをするというのが最も有効な手段です。
地域課で24時間勤務を終えた後の話ですので、体力的にとてもしんどいのは事実ですが、これくらいのことをやってようやくアピールになります。
プライベートな時間を削ることになりますが、私が所属していた県警では多くの人がそういった段階を踏んで刑事課に入っていました。
刑事課 盗犯係

ここからは刑事課の各係について紹介していきます。
盗犯係はその名のとおり窃盗犯(泥棒など)の捜査を担当する係です。
日本で一番多い犯罪は窃盗犯ですので、それに伴って小さな事件から大きな事件まで対応することが多い係です。
窃盗犯というと万引きから空き巣、さらには置引きや自動車窃盗、下着泥棒など犯罪の種類が多いのも特徴です。
そのため、地域課で勤務していると接することが多い係でもあります。
地域課で勤務をしていると自転車盗や自動車盗などの身近な被害を受理することが多いが、これらの担当は盗犯係となる。
そのため、自然と盗犯係とは顔見知りになる人が多いので、刑事課を目指すならばまずは盗犯係と接点を持つことから始めるのも1つの手段である。
窃盗犯の事件は現場に多数の証拠が残っていることも珍しくなく、その証拠を用いた地道な捜査が必要になります。
ときには盗難品が売られている可能性のある質屋や中古販売店などを回ることもありますし、犯行現場付近の防犯カメラの映像を集めるために歩き回ることもあります。
1つ1つの捜査を地道に行い、確実に犯人まで近づいていく過程は面白いと思います。
盗犯係のスペシャリストが集まっているのが本部の捜査三課にあたります。
警察署の盗犯係だけでは対応できないような大きい事件の場合は捜査三課と合同で捜査を行うこともあります。
刑事課 強行犯係

強行犯係は殺人事件・性犯罪事件・放火事件など凶悪な犯罪を担当する係です。
刑事課の中でも要の係となりますし、経験豊富な刑事が集まっていることもあり、刑事課のエース的な存在です。
強行犯係は大きな事件を扱うことが多いので、1つ事件が起きるとすぐに休日がなくなってしまいます。
特に殺人事件などは迅速な捜査が必要になりますので、1か月や2か月休日がなくなることも当たり前です。
ニュースで取り上げられるような社会的反響の大きい事件を捜査することもあり、それだけやりがいも大きいのが特徴です。
被害者から感謝される場面も多いですし、凶悪な犯人を捕まえることができるのが醍醐味と言えます。
強行犯係は担当する事件が大きいものばかりなので、ある程度の経験や階級が必要となる。そのため、若手警察官がいきなり強行犯係に抜擢されることは珍しい。
強行犯係のスペシャリストが集まっているのが本部の捜査一課にあたります。
捜査一課と言えばドラマや映画の題材になることもあり、まさに花形の仕事と言えるでしょう。
ある程度の経験や階級でないと捜査一課には入ることができないので、捜査一課に入ることを目標に刑事を頑張っている警察官も多いです。
捜査一課は立てこもり事件が発生したときに犯人との交渉役(ネゴシエーター)を務めますし、世間を驚かせるような事件があったときも捜査を担当することが多いです。
また、大事件が発生したときには特別捜査本部を設置し、総力を挙げて事件解決に挑むことになります。
ひとたび特別捜査本部が立ち上がるようなことになれば、長期間休みはとれませんし、旅行などの予定もすべてキャンセルしなければいけません。
それだけ激務な部署ですが、事件を解決したときのやりがいは格別なものがあるでしょう。
刑事課 暴力団対策係

暴力団対策係は、主に暴力団に関連した事件を担当する係で、いわゆる”マル暴”と呼ばれる刑事です。
近年では山口組の分裂に伴う暴力団同士の抗争事件が全国各地で発生しており、多忙を極める係です。
当然ながらひとたび暴力団の抗争事件が起きれば休んでいる暇はありません。
暴力団対策係の面白さはなんと言っても暴力団を相手に仕事ができることや暴力団の世界について詳しくなることです。
警察官をやっていても暴力団と接する機会はさほど多くありませんので、暴力団対策係での勤務は貴重な体験だと言えます。
暴力団の情報を得るためには暴力団と親密な関係にならなければいけない。そのため、ときには暴力団と接触する機会もあり、そこでいかに情報を得られるかが大事になってくる。
ただし、暴力団とあまりにも深い関係になった挙げ句、暴力団への情報漏洩などの問題で逮捕されてしまう警察官がいるのも事実。やり方を間違えれば大きな問題に発展する危険と隣り合わせの仕事でもある。
暴力団対策係のスペシャリストが集まっているのが本部の捜査四課や組織犯罪対策課になります。
捜査四課の刑事の見た目は暴力団とさほど変わりありませんし、同じ警察官から見ても怖い存在です。
暴力団の風貌に負けないようにわざと丸坊主にする人もいるくらいで、見た目が大事になる部署でもあります。
暴力団に一歩も引けをとらない迫力で暴力団事務所を家宅捜索する場面をニュースで見たことはあるかと思いますが、現場によってはあれくらいの迫力を出さなければいけません。
勢いがあればできてしまいそうに見えますが、実際のところは暴力団を相手に仕事をすることは捜査四課の刑事でも命がけの仕事になります。
悪質な暴力団であれば警察官の個人情報を収集していますし、自分の家が暴力団に知られている可能性も否定できません。
そうなると本人だけならまだしも家族にも危害を加えられる恐怖もあるため、簡単に務まる仕事ではありません。
実際に暴力団から脅迫を受けて退職した警察官もいましたし、使命感だけでは決してやりきれない仕事でもあるでしょう。
刑事課 知能犯係

知能犯係は特殊詐欺や汚職などを担当する係で、どちらかと言えば難解な事件が多いイメージです。
全体的に詐欺事件というのは法律の線引きも難しく、検挙に至るまでは膨大な時間をかけて捜査を行います。
また、選挙違反や汚職事件は政治家を相手にすることもあり、警察の捜査が選挙妨害にあたってしまう可能性もあるので、捜査は慎重を極めます。
知能犯係は”事件が起きたからすぐ検挙”というわけではなく、徹底した裏付け捜査を必要とします。
検討に検討を重ねて犯罪と断定するにも時間がかかりますので、経験や知識がモノを言う係です。
刑事課の知能犯係は一筋縄にいかない事件ばかりを取扱うため、捜査する側の知識や経験が必須となる。また地味な捜査も多いため、決して人気のある部署とは言えないが、知能犯係は知能派のデキる刑事が多い。
例えば政治家を相手にする場合、”警察が捜査をしている”という情報が表に出ればその政治家にとっては大きなダメージとなります。
犯罪に該当していなかった場合、政治家から抗議を受けることも考えられますし、訴えられてしまう可能性だってあります。
また、選挙違反かどうかという部分は表向きな部分だけではわかりませんし、警察が犯罪と断定するのは容易なことではありません。
そのため、知能犯係の取り扱う事件は刑事課の中でも判断が難しいものが多いです。
知能犯係のスペシャリストが集まっているのが本部の捜査二課になります。
選挙違反や汚職事件の捜査は大規模なものになるため、警察署の知能犯係だけでは対応しきれません。
そのため、こういった事件を捜査するときは本部の捜査二課とタッグを組んで行うことになります。
また事件判断に迷うときなども最終的に判断を下すのは本部の捜査二課になるため、まさに知能犯のスペシャリストが集まっていると言える部署です。
刑事課 鑑識係

ドラマや映画で見る機会も多いと思いますが、鑑識係は事件現場で鑑識作業を担当する係です。
鑑識係は事件現場に残ったわずかな証拠も見逃さずに採取しなければいけないので、かなり細かい作業が多いですし、地味な仕事も多いです。
また、指紋や足跡は大切に扱わなければいけないので、丁寧な仕事ぶりが求められます。
その反面、事件現場では鑑識係が一番最初に現場で鑑識作業をしなければいけないので、誰よりも現場での仕事に携わることができます。
さらに鑑識係は変死体を扱うことも多く、変死体に残されたわずかな証跡も事件解決に結びつけます。
鑑識係は事件現場で指紋や足跡を採取する仕事が印象的だが、実は自殺や変死など変死体を扱う機会の方が多い。中には腐敗した変死体もあるため、潔癖症の人には少し難しい仕事かもしれない。
鑑識係のやりがいとしては鑑識係の活躍によって解決できる事件があることです。
事件現場にはまったく証拠がないときもありますが、その中でもわずか髪の毛1本から事件を解決したり、犯人に結び付く証拠を発見したりします。
鑑識係は手先の器用さよりも、証拠を大事に扱う気持ち、丁寧に仕事をする姿勢が大事になります。
意外と言っては失礼ですが、鑑識係は人気が高い部署で、私の周りにも希望者はたくさんいました。
刑事課 総務係

総務係は主に捜査書類の管理を担当する係です。
刑事課の管理する捜査書類は膨大な量ですし、地域課が作成した捜査書類も最初は総務係に提出されます。
例えば被害届という捜査書類だけでも、大きな警察署になれば1日で10枚以上が提出されます。
この被害届に誤字や脱字がないかをチェックするのは総務係の仕事ですし、紛失のないよう管理するのも重要な仕事となります。
- 捜査書類のチェック
特に地域課から提出された書類を細かくチェックし、誤字脱字や作成方法に間違いがないかを確認する。
- 捜査費の管理
刑事課が使用する捜査費(予算)を管理する。
- 他の係の応援
総務係は便利屋のような使われ方もされることがあり、盗犯係や知能犯係などで人手が足りないときに応援に入ることもある。(家宅捜索などは人手が必要になる)
総務係は捜査書類に触れる機会が多いので、勉強のために新米刑事が配属されることが多いです。
よって、刑事デビューが刑事総務係という人も珍しくありません。
総務係は基本的に内勤ですが、当然ながら他の刑事と同じように当直勤務はありますし、事件があれば応援で現場に行くこともあります。
また、書類のチェックは本当に細かい誤字脱字を見なければいけませんし、その間違いを本人に指摘しなければいけないので、キツい性格の人が多かった思い出です(笑)
刑事課 薬物・銃器対策係

薬物・銃器対策係は覚せい剤・大麻などの違法薬物や銃器類の捜査を担当する係です。
覚せい剤の使用者を1人逮捕し、そこから捜査によって売人や裏組織を摘発することもありますし、薬物使用者の自宅にガサに行くこともよくあります。
ときには違法薬物の売買現場に張り込むこともあります。
また、地域課の警察官が職務質問で薬物所持者を発見した場合、現場で薬物の検査をするのも薬物係の仕事になります。(警察24時でもよく見る場面です)
違法薬物は裏で取引されることが多くなかなか表には情報が出てきませんが、わずかな情報をもとに捜査を進めていきます。
それでも地道に捜査を重ねて犯人を検挙できるところがやりがいと言えます。
薬物事件は1人を検挙するとその者が使っていたメモや携帯電話のデータから多くの関係者に結び付くことがある。巨大な薬物組織に行きつくこともあり、大量の覚せい剤を所持している売人を検挙できる場合もある。
また、日本では拳銃に関する事件は多くありませんが、検挙するときは実際に拳銃を目の当たりすることになるので、非常に貴重な経験と言えます。
とても特殊な犯人を相手にしますので面白味はありますが、一筋縄ではいかないことが多いのも特徴です。
その仕事の特殊性から薬物銃器対策係が刑事課の中でも割と人気が高い係となっています。
刑事課 機動捜査隊

最後に機動捜査隊を紹介します。
機動捜査隊は本部の部署になりますが、二人1組で覆面パトカーに乗って管内を走り回る仕事になります。
機動捜査隊は市民から見れば警察官であることはまったくわかりませんが、事件が起きたときにはパトランプを出して緊急走行で現場に向かいます。
警察官でありながらすべて隠密に行動できる部隊となっており、パトカーでは対応できない事件などに対応します。
- 犯人の尾行
パトカーでは犯人に気付かれるので、機動捜査隊が尾行を務めることが多い。
- 事件捜査の指揮
機動捜査隊は経験豊富な刑事が多いため、重要事件が発生した場合に現場に急行し、現場で指揮をとることもある。
- 犯人の所在確認
犯人の住所がわかっている場合、あらかじめ機動捜査隊が秘匿で犯人の所在を確認することもある。
機動捜査隊は経験豊富な刑事が多いので、簡単に入れる部署ではありません。
刑事としてある程度の能力や執行力が求められるため、機動捜査隊に入りたい場合はまず刑事として経験を積んでいく必要があります。
余談ですが、最初に説明した通り、機動捜査隊は一見すると警察官であるかどうかはわかりません。
そのため、仕事中は好きなときに好きなところへ食事に行けるので、グルメに詳しくなることが多いそうです。(それに伴って出費も多いんだとか)
まとめ
今回は刑事課の仕事について紹介しました。
刑事になりたくて警察官を目指している方は多いことだと思いますし、実際にそれだけ人気がある仕事です
激務であることは間違いありませんが、やりがいも大きい仕事です。
人気があるだけに希望者全員が刑事になれるわけではないので、まずは刑事課へのアピールを頑張りましょう。
刑事課は休日があってないようなものですし、普段の残業時間も長時間に及ぶことがあります。
その辺りも含めて刑事の仕事になりますので、中途半端な気持ちでは決して務まる仕事ではありません。
刑事を目指すのであれば理想だけを持つのではなく、厳しい現実があることは覚悟しておきましょう。
刑事に憧れているのですが…。刑事ってどんな仕事をするんですか?