警察官を目指している人の中には警察官になったらやりたい仕事や希望の部署が決まっているという人も多いと思います。
逆に言えば、警察官を志望するくらいですからそれくらいの目標があって当然なのかもしれません。
また、警察官採用試験の面接でも
- 刑事になりたい
- 白バイに乗りたい
- 機動隊に入りたい
などと志望理由を答える人も多いはずです。
警察官の仕事は多種多様な部署があるので、それだけ個々の警察官が活躍する場が多くあります。
その中で、警察官志望者に人気の部署と言えばやはり白バイと刑事が圧倒的人気です。
では実際に警察官になって、希望通りの仕事ができる確率はどれくらいなのか?
また、警察官になったら必ず希望の部署に入ることはできるのか?
この記事では警察官になってからどのように部署が決まるのか、また希望の部署に入れる確率はどれくらいなのかについて解説します。
警察官の数は各都道府県によって異なりますし、キャリア形成もそれぞれで異なると思いますが、私が勤務していた都市部の県警を例に交えながら解説していきます。
目次
まずは地域課からスタート
まず始めに警察学校を卒業した後の流れについて解説していきます。
警察学校を卒業するとそれぞれが各警察署に配属され、警察官としての実務がスタートします。
警察学校では決められたカリキュラムの中で授業や訓練をこなしますが、ここからは常に何が起きるかわからない状況となります。
警察学校とは一気に立場が変わるので、強い意志を持って仕事に臨まなければいけません。
警察署では地域課(交番やパトカー)に配属となり、いよいよ警察官としてのデビューを迎えます。
どれだけ優秀な人材であろうがどんな希望を持っていようがいきなり刑事課に配属になるわけではなく、警察学校を卒業してから最初の2年間(2年半)は必ず地域課での勤務となります。
これは術科採用者(柔道・剣道)やサイバー人材採用者も一緒で、警察学校卒業後は誰でも地域課からのスタートです。
ですので、警察官の仕事は交番勤務からスタートするということを覚えておきましょう。
地域課の仕事は交番かパトカーで勤務をすることになるので、警察のすべての仕事が集約されていると言える。事件や事故、市民への対応など地域課で勤務をしているとあらゆる通報が入るため、警察官の基本を身に付けることができる。
最初に地域課からスタートするメリットとしては警察官としての基礎が身に付くというところが一番大きいと考えます。
数多くの事件を経験して司法書類の作成要領について学ぶことができますし、市民にどのように対応していけばいいのかも勉強できます。
また、警察官がどのような仕事をするのかも理解できるようになる上、他部署の仕事にも触れることができるので、地域課で経験を積むことはとても大事になります。
地域課の仕事はすべての部署の仕事が集約されているといっても過言ではないため、警察官としての基礎を学ぶのに適しています。
さらに地域課で2年間勤務することにより
- 警察官としての礼儀
- 上下関係の厳しさ
- 警察官としての体力
なども身に付けることができます。
警察学校を卒業した後の流れについては下記の記事で詳しく解説しています。
希望の部署に入るためには?
次に希望の部署に入るためにはどうすればいいのか?について解説します。
警察官なら誰もが最初の2年間は地域課で勤務することを紹介しましたが、そこから希望の部署に入るために大事になってくるのが実績です。
希望の部署がある方はただ単に働くだけでなく、実績を気にするようにするのがポイントになります。
地域課では検挙の件数や取締りの件数が必ずノルマとして設定されていますし、その結果は個人の実績として明確に出ます。
一生懸命に仕事をしていれば実績は上がりますし、まったく仕事をしていなければ実績は低調になります。
その差は如実に現れますので、誰が実績を出しているかは結果を見れば一目瞭然です。
そもそも実績が低調な警察官=仕事熱心ではないということですので、幹部から見ても「別の部署に行っても真剣に仕事をしないのではないか?」という風に見られてしまいます。
そのため、地域課で一生懸命働いて結果を出し、「私はこんなにやる気があるんですよ!」と多くの人に知ってもらうことが希望の部署に行くための最良の手段となるのです。
刑事課希望ならたくさん検挙をして刑事課の幹部に名前を知ってもらわなければいけないし、白バイ隊員になりたいなら誰よりも取締りをして実績をアピールする必要がある。なにも実績がないのに「刑事になりたい、白バイに乗りたい」と言っても説得力に欠けてしまう。
実績を出すことで何が変わるかというと自分の存在を幹部に知ってもらえることです。
どれだけ「この部署に入りたい」と思っていても、最終的にそれを決めるのは警察署の幹部になりますので、名前を知られていなければ何も始まりません。
地域課では様々な事件に対応しますし、職務質問で自ら犯人を検挙することもできますので、実績を挙げられるかどうかは自分次第です。
希望の部署への思いがどれだけ強いかは大事な要素になるでしょう。
逆に言うと希望の部署に入りたいなら最初の2年で結果を出して、早く目標を叶えることに越したことはありません。
あくまでも希望の部署への道は自分で切り開くものだと考えておきましょう。
配属から2年後が最初の分かれ道
警察学校を卒業して警察署に配属され、2年間(2年半)の地域課での勤務が経過したとき、警察官として最初の分かれ道がやってきます。
それは警察学校を卒業して2年後というのは警察官として初めて異動の対象になる時期であり、早ければそこで地域課から別の部署に異動する人もいます。
そのため、今回の記事で最も伝えたいことは警察学校を卒業して最初の2年がとても重要な2年になるということです。
地域課で2年間(2年半)の勤務が経過すると異動のリストに名前が載ることになり、部署を異動する最初のチャンスがやってきます。
ここで異動できるかどうかは以後の警察人生を左右するといっても過言ではなく、運がいい人ならここで白バイに異動になる場合もあります。
逆にここで異動のチャンスを逃してしまうと翌年からは自分の後輩の世代が異動の対象になってくるため、一気にライバルが増えることになってしまいます。
ですので、いかに最初の異動のチャンスで希望のルートに乗れるかが大切になってくるのです。
また、ここで1つ覚えておきたいことは地域課で2年間の勤務が経過したとき、宿命となるのが機動隊or管区機動隊or留置管理課への異動です。
これについてはまた別の記事で詳しく解説したいと思いますが、機動隊or管区機動隊or留置管理係は希望者が非常に少ない部署となっています。
その理由としては
- 機動隊&管区機動隊
上下関係がとても厳しく、訓練も多いため希望する警察官は少ない。任期は2~5年程度。
- 留置管理係
被疑者の世話役で食事や入浴などの準備をする。1日中室内での勤務となり、牙を向いてくる被疑者もいる。
機動隊や留置管理係は警察組織にとって必ず一定数の警察官が必要な部署であり、勤務員は毎年入れ替わります。
機動隊は警察署での勤務に比べてさらに上下関係が厳しいですし、過酷な訓練や勤務が待ち受けているため、「機動隊に入りたい!」と自ら志願する若手警察官は少ないです。
留置管理係も被疑者の世話役ということで気遣いなどが難しい仕事ですし、仕事中はずっと留置場(室内)での勤務となるため、希望者は多くありません。
また、被疑者への言動を誤ったりするだけで重大な問題へ発展するため、非常に責任の重い仕事です。
このようなことから希望者が少なく、毎年一定数の若手警察官が希望していなくても異動となる部署になっています。
ですので、地域課で2年の勤務が経過したタイミングでいきなり機動隊に入隊する可能性もあることは覚えておきましょう。
任期を終えれば見返りも
機動隊や留置管理係での任期を終えると希望の部署へ行ける可能性が高くなる。これは不人気な部署で任期を全うした見返りのようなもので、実はこのようにして希望の部署に行くのが近道でもある。
結局のところ、私が所属していた県警では”機動隊か留置管理係を経験する”というのが希望の部署へ行く一番の近道でした。
また、”昇任して巡査部長になる”というのも希望の部署へ行ける可能性が高まることでした。
どうしても行きたい部署がある人はあえて機動隊や留置管理係を選ぶのも有効な手段と言えます。
希望者同士での争いとなる
次に希望の部署へ入るためにはライバルに勝たなければならない点を解説します。
1つ知っておいて欲しいことは人気の部署=希望者が多いということです。
もし、あなたの希望する部署が刑事課や白バイ隊員だった場合、それは同じように希望をしているライバルが多いというです。
そのため、余計に地域課での実績でアピールをする必要がありますし、そのライバルよりも優秀な実績を残さなければいけません。
他の人に比べてどれだけ実績が良くてもライバルに勝っていなければ意味がありません。
白バイ隊員を例にしてみましょう。
白バイ隊員は警察官の仕事の中で最も人気がある部署と言っても過言ではなく、「白バイに乗りたくて警察官になった」という人は多いです。
白バイ隊員の仕事として主となるのが取締りです。
瞬時の判断で違反を見つけ、的確な運転技術で違反者を止めることが必要になるので、必然的にその能力が求められる仕事でもあります。
そうなると
- 地域課でどれだけ取締りの実績があるか
- 運転技術は確かなものか、事故はしていないか
などが見られることになります。
つまり同じ白バイ希望のAさんとBさんがいた場合、実績のある人の方が声はかかりやすいということです。
なので、まずは同じ警察署に希望する部署が被っているライバルはどれだけいるのか、その中で自分はどれくらいの位置にいるのかを知ることが大事になります。
また、自分の希望する部署に空きがないとなかなか入るチャンスはないでしょう。
警察官の仕事は定数というものが決まっており、”この部署には何人”というのが大体決まっています。
そのため、タイミングによっても希望の部署に入れるかどうかは変わってきます。
よって、実際に白バイ隊員になるためには
- 実績を残して幹部にアピール
- 白バイの研修に参加させてもらう
- 研修の中で良好な成績を残す
という段階を歩む必要があるので、決して平坦な道のりではないでしょう。
そのため、白バイ隊員を希望したからといって必ず希望通りになる世界ではないのです。
白バイ隊員に限った話ではないですが、希望が通らずやりたい仕事ができていない警察官もたくさん存在します。
よって、希望通りの仕事ができなかったときのことも考えておく必要はあるでしょう。
非番や休日を使ってのアピールも大事
先ほどから”実績で幹部にアピールすることが大事”と解説していますが、希望の部署で働くためにもう1つ大事なことを紹介しておきます。
それは自分の存在をアピールすることです。
希望の部署に入るために実績が大事であるといっても、やる気を出して頑張ったところでどうしても結果が伴わないことがあります。
そのような場合、実績だけを見ればライバルに勝てないことが十分にあり得ます。
”やる気を出して仕事を頑張ったのに結果が出なかった…”
では、こういったときにはどうするべきなのか?
それは”幹部に自分の存在を知ってもらう”という手段を考えることです。
若手警察官の進路の決定権を持っているのは自分が所属している警察署の幹部になりますので、実はその幹部たちに自分の存在を知られていなければ土俵にすら上がれません。
大きな警察署であれば警察官の数が多いですし、幹部から顔と名前を覚えてもらうことはなかなか容易ではありませんが、存在を知られていなければ話にあがることすらないのです。
よって、希望の部署に入るためにはその希望の部署の幹部に存在を知ってもらう必要が出てきます。
その部署の幹部がまったく知らない若手をいきなり自分の部署に入れるわけにはいかないので、事前にある程度の面識は必要になってくる。逆に言えば、その辺りの幹部と顔見知りになれれば可能性は高まってくる。
例えば、交通課に入りたいなら交通課長、刑事課に入りたいなら刑事課長に”そこの部署に入りたいです”というアピールを積極的にする必要があります。
そのためには
- 質問や用件があれば積極的にその部署に顔を出す
- 非番や休日を使ってでもその部署の仕事を手伝う
という手段が最も効率的と言えます。
希望の部署に積極的に顔を出し、手伝いや雑用を繰り返すことによって必然的にその部署の幹部に自分の存在を知ってもらえるようになります。
もちろんこれをしたからと言って必ず認めてもらえるわけではありません。
しかし、なにもしないよりかは遥かに効果的で、その部署の人と仲良くなれば事件の捜査を手伝わせてもらえることがありますし、その部署の飲み会に参加することだってあります。
結局は実績だけでなくコネも必要になるため、そのような人脈が非常に大事になるのです。
地域課での仕事をやりながら休日を潰すことになるのでとてもハードですが、夢を叶えるためには必要なことなのかもしれません。
実際、どうしても刑事になりたかった後輩は地域課の仕事が終わった後に積極的に刑事課に顔を出し、疲労がある状態でも刑事課の仕事を手伝っていました。
その努力が認められ、刑事課長からお墨付きももらって無事に刑事課に入ることができました。
警察官としての実績ももちろん大事なのですが、実はそれと同じくらい人脈というのも大事な要素になってくるのです。
年齢がネックになることも…
警察官のキャリア形成において、実績+人脈が必要なのは確かですが、それと同じくらい見られてしまうのが年齢です。
これは警察官に限った話ではありませんが、やはり年齢が若ければ若いほどチャンスは多いですし、年齢を重ねれば重ねるほど進路も限られてきます。
例えば、同じ刑事課を希望している25歳のAさんと30歳のBさんがいた場合、実績や能力に差がなければ若いAさんの方が声はかかりやすいと言えます。
特に理由はないのですが、
- 若ければ若いほど鍛えがいがある
- 若い人材の方が使いやすい
- 年齢を重ねると余計なプライドがあって扱いにくい
といったことは考えられます。
よって、転職して警察官になる場合、警察官としてのキャリアは不利になる可能性があることは覚えておきましょう。
地域課から別の部署へ異動した場合、警察官としての経験があっても新しい部署では1からのスタートとなる。地域課で積み上げてきた実績は関係なくなり、その部署においては新人と同じ立場に戻る。
こういった事情もあり、年齢が若い者の方が扱いやすいという面があるのは間違いない。
また、「今年は希望の部署に入れなかったけど、来年は頑張ろう」と悠長なことを考えていると手遅れになることがあります。
当然ながら次の年になればまた新しい後輩が入ってくるので、今度は後輩も希望の部署に入りたいライバルとなるのです。
すなわち1年が経過すればそれだけライバルが増えますし、自分も歳をとってしまうので、チャンスは小さくなってしまうのが現状です。
実際に年齢がネックになって希望の部署に入れなかった先輩たちをたくさん見てきました。
年齢を重ねれば重ねるほど不利になっていくこともあるので、特に転職組の方はなおさら最初の2年を大事にするべきだと言えます。
年齢制限がある部署もあるので、警察官のキャリア形成には年齢も大きく関係してくることは覚えておいてください。
警察官への転職については下記の記事で詳しく解説してます。
希望の部署に入れる確率は?
では結局のところ、警察官になって希望の部署に入れる確率はどれくらいなのか?
申し訳ありませんが、答えはわかりません…。
ここまで色々書いておいてこんな結論で申し訳ないですが、8年警察官を経験して色々見てきた結果、希望の部署に入れるかどうかは運の要素が大きいと思いました。
その理由としては
- 希望の部署に空きはあるのか
- 同じ部署を希望しているライバルはどれくらいいるのか
- 人脈はあるのか
など様々な要素が関わってくるので、そのタイミングの事情によって大きく変わってきてしまうからです。
なので、警察官になったからといって必ず希望の部署に入れるわけではありませんし、逆に運よくすんなりと希望の部署に入れることもあります。
ただ自分の努力次第では希望の部署に入れる確率を上げることはできるので、今回紹介したことも含めて実践していけば自ずと道は開けるかもしれません。
やることだけはしっかりやっておき、チャンスに備えておくことが大事だと思います。
また、希望の部署に入れなかったとしても、警察官としては職務を続けていかなければいけません。
そこでどう気持ちを切り替えていくかも大事になってくるでしょう。
まとめ
今回は警察官になって希望の部署に入れる確率について解説しました。
その確率は運による要素が大きく、そのタイミングによっても変わるため、必ずしも希望の部署に入れるわけではないことは覚えておきましょう。
場合によっては年齢が関係してくることもあるので、警察学校を卒業してから2年間でどれだけ努力できるかは大きなポイントとなります。
希望の部署に入るためにやれることはたくさんあるので、確率を上げられるかどうかは自分次第です。
結局のところ、努力をしていなければなにも進みませんし、目標を持って仕事に取り組むことが大事だと言えるでしょう。
また、希望の部署に入れなかった場合には気持ちを切り替えなければいけませんし、そのときにどうするのかも考えておく必要があります。
これから警察官を目指す方は今回の記事を参考に希望を実現するために頑張ってください。
希望の部署には必ず入れるんですか?