警察官の仕事には様々な部署がありますが、警察官を志す人の中で一番人気を誇る仕事と言えば白バイ隊員です。
「白バイに乗りたくて警察官を目指している」「白バイに乗ってマラソン大会の先導をやりたい」など、警察官を目指す理由が白バイという方も多いでしょう。
実際、私の先輩や後輩でも白バイ希望の警察官はたくさんいました。
そんな大人気の白バイですが、残念ながら希望したからといって全員が白バイ隊員になれるわけではありません。
そもそも警察学校卒業後2年間は必ず地域課での勤務となりますので、警察官になってすぐに白バイに乗ることもできないのが現実です。
白バイに憧れている人も多いと思いますが、まずはこのことを覚えておいてください。
白バイ隊員を希望する警察官は非常に多いため、それだけ狭き門となる。人員の枠にも制限があり、希望者全員が入れるわけではない。
「白バイに乗りたかったのに乗れなかった…」と夢破れた先輩もたくさん見てきたので、白バイ隊員になるためにはライバルとの競争に勝ち抜かなければならない。
さらに白バイ隊員になるためには様々な要素が必要になり、警察官になる前から準備しておいた方がいいこともあります。
そんな大人気の白バイ隊員について、この記事では白バイ隊員になるために必要なことを紹介し、実例も交えながら白バイ隊員になるための方法を詳しく解説します。
なお、希望の部署に入るための方法は都道府県によって若干の違いがあると思いますので、あくまで私の実例をもとに書いている点に留意してください。
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白バイ隊員とは?
一般的にも知られている白バイ隊員ですが、所属する部署としては交通機動隊となります。
交通機動隊は交通課のプロフェッショナルが集まるところで、白バイはもちろん、覆面パトカーでの活動も行います。
白バイ隊員の主な仕事は交通取締りとなり、大型バイクに乗って幹線道路などで違反者に目を光らせます。
覆面パトカーに乗って取締りを行うこともありますが、いずれにしても違反者を見つけることが一番の仕事と言えるでしょう。
- 毅然とした態度
白バイ隊員は1人で活動しなければいけないため、違反者に負けない毅然とした態度が必要。違反者に言い訳をされて見逃すようではいけない。
- 違反者を納得させる話術
違反者はなにかと文句を言ってくるが、それでも丁寧な説明で納得させる必要がある。そのため、話術は必須スキルと言える。
- 違反を見つける目
交通違反を見つけるための動体視力、判断力が必要。ときには一瞬で違反を見つけなければいけない。
- 高度な運転技術
大型バイクを完璧に乗りこなす高い運転技術が必要。白バイ隊員が交通事故を起こすようでは示しがつかない。
交通機動隊は警察署にある部署ではなく本部所属の部署となりますので、まずは各警察署から交通機動隊へと異動をしなければいけません。
なお、警察学校を卒業してからいきなり交通機動隊に配属となることはありません。
最初の2年間は必ず地域課での勤務となりますので、「すぐに白バイ隊員になりたい」と思っていても最低2年間は我慢が必要です。
そのため、まずは地域課で交通取締りの能力、技術を身に付けることが必須となります。
この2年間ですべてが決まると言っても過言ではないので、とにかく警察学校を卒業してから最初の2年間を大事にしてください。
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白バイ隊員になるまでの流れ
白バイ隊員になるには本部の交通機動隊へ異動することが必要になります。
警察官の異動は半年に1回機会がやってきますが、新人警察官は警察学校を卒業してから2年後に初めて異動の対象となりますので、最初の2年間は異動することがありません。
そして、2年を経過した後でも若手警察官が地域課から交通機動隊に直接異動することもなかなかないので、まずは警察署の交通課に入ることを目指す必要があります。(地域によって多少の違いはあります)
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異動には様々な要素が絡んでくるのですが、交通機動隊に入隊する隊員を選ぶのは交通機動隊の幹部です。
そのため、白バイ隊員になるためには交通機動隊に選ばれるということが大前提となります。
よって、当たり前のことですが、異動先となる交通機動隊の幹部に名前が知られていなければいけません。
なぜなら幹部がまったく知らない人間を入隊させるわけにはいかないですし、白バイ隊員を希望していない人間が入隊することもないからです。
白バイ隊員は希望する警察官の中から選抜される形となり、選ばれた警察官だけが交通機動隊に入隊することができる。よって、希望者全員が入隊できるわけではなく、どちらかと言えば入隊できない可能性の方が高い。
さらに白バイ隊員を希望する場合は所属する警察署の幹部から推薦をもらわなければならず、ただ単に希望しているだけでは入隊することができません。
幹部から推薦をもらい、入隊希望のリストに載ってようやく交通機動隊の幹部に名前が知られることになるので、段階を踏んでいく必要があるのです。
私が所属していた県警ではその推薦者が白バイ隊員の研修に参加し、そこで筆記試験+実技試験を受けてさらに人数が絞られるという形になっていました。
都道府県によって選抜される流れは異なると思いますが、白バイ隊員には簡単になれるものではないことは覚えておいてください。
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方法①実績でアピールする
ここからは白バイ隊員になるための具体的な方法について解説していきます。
まず1つ目は「実績でアピールすること」です。
最初に説明した通り、白バイ隊員は人気が高い部署なので、それだけ同じように白バイ隊員を目指しているライバルの警察官が多いということになります。
そのため、「私はこれだけ実績があります」と数字で幹部にアピールすることが一番大事になりますし、それは「私は白バイに乗りたいんです」という姿勢を見せることにも繋がります。
どれだけ仕事を頑張っていても実績という結果がなければ評価は低くなってしまうので、そうなると必然的に憧れの白バイも遠ざかってしまいます。
白バイ隊員を目指すなら交番勤務において積極的に交通取締りを行う必要がある。他の人よりも2倍、3倍の量をこなすことは当たり前で、数字でしっかりインパクトを残したい。
なにより白バイ隊員になってからは取締りがメインとなるため、取締りの経験や能力を向上させることが必要となる。
後輩が交通機動隊に入隊した実例を紹介します。
白バイ隊員を希望していた後輩の女性警察官は毎回の勤務で数多くの取締りを行い、毎月優秀な成績を収めていました。
女性警察官が取締りで数字を稼ぐことはなかなかないのですが、失敗も経験しながら確実に成長し、やがて警察署の交通課幹部にも名前が知られるほどになっていきました。
そして、誰にも負けない実績を作ってきた結果、交通課幹部との人脈作りにも成功し、2年間の地域課勤務を経て希望通り交通課に入りました。
交通課に入ってからはより専門的な仕事をこなしながら経験を積み、その1年半後には目標であった交通機動隊へと入隊が決まり、警察官になって約4年で白バイに乗るという目標を叶えたのです。
彼女は白バイ隊員を目指していたことから実績作りに妥協せず、当時パトカーに乗っていた私でも届かない数字をあげていました。
こうなると自然と幹部にも名前が知られることになるので、幹部から直接「君はどこの部署に入りたいの?」という声がかかるようになります。
逆に実績をあげないと誰にも名前を知られる機会がないので、どんどんライバルに差をつけられることになってしまいます。
彼女はまさにしっかりと実績を作って白バイ隊員になった良い例だと思います。
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方法②人脈を作る
2つ目の方法は「人脈を作る」ということです。
これは方法①で説明したことと共通するのですが、結局は実績を作ることが人脈を作ることに繋がります。
何度も説明している通り、白バイ隊員になりたければまずは幹部に自分の存在を知ってもらうことが大切になります。
それは実績でアピールして初めて幹部に名前を知ってもらえるので、そこから人脈作りがスタートするということです。
実績が十分であれば場合によっては警察署の交通課長から「交通課に入りたいの?」なんていう声が直接かかることも全然あります。
そうなるとそこからは交通課長と直接話をすることができるので、仲良くなれば交通課長も「次の異動でこいつを交通課に入れよう」という考えにも至るわけです。
多くの場合、交通課で経験を積んでから交通機動隊に入隊するという流れになりますので、まずは警察署の交通課を目指す必要があります。
逆の立場で考えてみるとわかりやすいが、知り合いの人材とまったく知らない人材であれば前者を優先することは間違いない。そのため、人脈を作っておけば多少実績で劣っていたとしても選ばれる確率が上がる。
逆に人脈を作ることから始めるのも有効な手段です。
交通課長は交通課に入りたい若手にはウェルカムな姿勢ですので、いきなり交通課に行って課長に挨拶をするというのもアリでしょう。
また、交通課に仲のいい人を作っておけば間接的に交通課の幹部とも面識を持てる可能性が高まります。
地域課で勤務をしていると交通事故の現場などで交通課と一緒に仕事をする機会は多いので、交通課に知り合いを作っておくといいでしょう。
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方法③運に任せる
3つ目の方法は「運に任せる」ということです。
これはふざけた話にも聞こえますが、実はやるべきことをやった上での運任せというのはとても真面目な話です。
今回紹介している白バイ隊員の場合は希望者が多いため、ほとんどの若手警察官がアピールするために実績を作る+人脈を作るという方法は実践してきます。
そのため、白バイ希望者ならば実績を作ることは当たり前だし、人脈を作ることも当たり前になってくるので、逆に差がつきにくいという難点があります。
そうなると結局は運の要素が強くなる場合もあるため、流れに身を任せるという考えも大事になってくるのです。
警察官の数が多い都道府県警察の場合は希望した部署に入れる保証がない。そうなると白バイ隊員になれなかったときのことを考える必要があり、気持ちを切り替える準備も必要となる。
ただし、あくまで運に任せるという考えはやるべきことをやった上での話です。
実績も人脈も作らずに運に任せることはできませんので、まずは精一杯の努力をするようにしてください。
その上で目標が実現しなかったならば仕方ありません。
悔いは残るでしょうが、白バイ隊員になれるチャンスは何度もやってくるわけではないので、気持ちを切り替えてやっていくべきです。
実際、「白バイに乗りたかったんだけどな~」と夢が叶わなかった先輩たちをたくさん見てきましたので、やはり競争率が高い部署なのだと思います。
”人事を尽くして天命を待つ”とはまさにこのようなことを言うのでしょう。
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最初の2年が大事な理由
先ほども少し触れましたが、警察学校を卒業してから最初の2年が大事な理由というのはしっかりした根拠があっての話です。
それは自分がいつまでも若手警察官という立場ではいられないからです。
自分と同じように約半年に1回のペースで警察学校から初任科生が卒業してきますので、時間が経てば経つほど立場は先輩になっていきます。
そうなると白バイ隊員を希望する後輩もどんどん増えるということなので、さらに競争の倍率が上がるというわけです。
なにより年齢が若い方が選ばれやすいという傾向もあるため、最初の2年で結果を出しておかないと年齢を重ねるだけ不利になることもあります。
警察官が希望の部署に入る場合、どちらかと言えば年齢が若い警察官の方が選ばれやすい。それは若い方が育てがいがあり、仕事に対するこだわりも少ないからである。
年齢を重ねて中堅になればなるほど、能力は別として”使いにくい人材”という目で見られる。
なので、後輩と希望の部署を競う場合は年齢の面で見れば先輩の方が不利になりやすいです。
特に白バイ隊員は上下関係が厳しいので、余計に新隊員は若い人材の方が好まれる傾向にあります。
そのため、「白バイを目指すのはまだまだ先でいいや」なんて思っているといつの間にかチャンスがなくなっているなんてこともあるので、最初の2年を大事にするようにしてください。
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警察官になるまでにやっておくこと
最後に白バイ隊員になるために警察官になるまでにやっておくべきことを紹介しておきます。
まずはなんと言っても大型二輪の免許を取得しておくことです。
厳密に言えば警察官になってからでも免許の取得は遅くないのですが、大型二輪の運転に慣れておくと有利なので、白バイ隊員を目指すなら早く取得しておいて損はないでしょう。
実際、私が所属していた県警では白バイ隊員を選抜する研修で実技試験がありました。
この実技試験は走法+タイムが重要視されていたので、いかに正確に大型二輪で走行できるかが大事なポイントでした。
そうなると免許を取りたての人よりも長く大型二輪を運転している人の方が少し有利なので、あらかじめ運転に慣れておくといいと思います。
また、白バイ隊員が所属する交通機動隊は機動隊と同じように上下関係が厳しく、体力トレーニングもよく行われます。
特に入隊して最初の頃は体力トレーニングばかり行われますので、白バイを目指すならばしっかりトレーニングを積んで体力を強化しておきましょう。
女性でも倒れた白バイを起こせるくらいの筋力は必要になります。
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まとめ
今回は白バイ隊員になる方法について実例を交えて具体的に解説しました。
あくまで私が所属していた県警をベースに紹介しましたが、簡単に白バイ隊員にはなれるものではないことが分かって頂けたのではないでしょうか。
実は白バイと同じように警察官になってやりたい仕事があっても必ずその希望が通るわけではないのです。
逆に希望していない部署で勤務することも十分にあり得るので、その辺りは警察官を目指す人ならば理解をしておかなければいけません。
例え自分の希望が通らなかった場合でも警察官として仕事をしていかなければいけないので、気持ちを切り替えることも1つ重要なことになります。
それでも目標があるならばそれに向かって努力をするべきですし、結果も受け入れなければいけません。
白バイに憧れている方には今回紹介した方法も参考に是非頑張って頂きたいですし、今回の記事が1つでも参考になれば幸いです。