確かに警察官の仕事についてインターネットで調べると、必ずと言っていいほど「警察官=ブラックな仕事」という評判や噂が出てきます。
ブラック企業といえば巷でもよく話題になることですが、わざわざ分かっていてブラック企業に就職したいと思う方は少ないですよね。
私だって就職活動をするとき、事前にブラック企業と分かっている会社の採用試験を受けようとは思いません。
同じように将来警察官になりたいと思っている方の中にはネット上の評判が気になり、「警察官になりたいけど、ブラックだと…」と不安に思っている方もいるでしょう。
警察官の仕事が楽と考える人はいないですし、そんなイメージを持っている方もいないですよね。
私が考える結論としては「人によってはブラックに感じるし、ブラックに感じない人もいる」ということです。
警察官の仕事はとても特殊な仕事なので、一概に語ることが本当に難しいと思います。
果たして、本当に警察官の仕事はブラックなのか?
ネット上で語られている評判や噂は本当なのか?
この記事では8年間の警察官人生でわかった警察官の仕事について徹底検証し、本当に警察官の仕事がブラックなのかどうかについて解説します。
目次
警察官=ブラックと言われる理由
そもそもなぜ警察官の仕事=ブラックというイメージになっているのでしょうか?
警察官の仕事=公務員だから楽ができるというイメージはないでしょうが、やはりどちらかと言えばブラックなイメージが強いと思います。
私自身も会社員から警察官に転職するときは「会社員とは違って大変な仕事だろうけど頑張ろう」と決心したことを覚えています。
まずは警察官の仕事がブラックだと思われる要因について考えていきます。
- 不規則+長時間の勤務
警察官の仕事は事件や通報に対応する仕事であるため、不規則で長時間の勤務になりやすい。勤務時間は決まっているが、残業をすることが当たり前の仕事。
- 厳しい上下関係
警察官は圧倒的な階級社会であるため、上下関係がとても厳しい。そのため、非常にパワハラが起きやすい職場環境だと言える。
- 休日出勤
大きな事件が発生した場合、警察官(刑事など)は休日を返上して捜査をしなければならない。残業に加えて休日出勤も珍しいことではない。
- 警察学校が大変なイメージ
警察官に採用されるとまずは警察学校に入校することとなる。警察学校で退職してしまう者も多く、大変なイメージが強い。
要因を数えだすとキリがありませんが、警察官の仕事に対する最も強いイメージとしては労働環境が過酷ということではないでしょうか。
これについては確かに警察官は労働環境が過酷であり、仕事が激務であることに違いありません。
私も警察官をやっていて「楽だなぁ」と思ったことはほぼありません。
むしろいつ事件が起きるかわからないし、どんな通報が入るかもわからないので、先が見えない緊張感が常にありました。
また、それに加えて職場の上下関係がとても厳しいため、上司からきつい言葉を浴びせられることも珍しくありませんでした。
「てめぇはアホか!」
「お前なんて帰っていけ!」
こんな罵声が職場で飛び交うこともよくありました。
さらに公務員は「上司の指示に従わなければいけない」という法律が定められているため、基本的には上司の指示に背くことはできません。
意見交換や議論すらできませんので、この辺りはブラックと呼ばれても仕方がないことかもしれません。
>>【関連記事】「これだけは習得しておきたい!警察官の必須スキル5選」
警察官の身分保障は手厚い
警察官の職場環境が過酷であることは間違いありませんが、その反面、公務員であるため身分保障は手厚くなっています。
不祥事を起こさなければ解雇されることはありませんし、どれだけ不景気になっても退職を迫られることはありません。
つまり、普通に仕事さえしていれば定年まで働くことができるのです。
さらに警察官は公務員の中でも給料の水準が高いため、生活に困ることもないでしょう。
警察官は身分保障に加え、福利厚生も非常に充実している。例えば、生命保険や車の保険に安く加入できるし、住宅ローン等も一般より低金利で組むことができる。また、映画館や動物園などの施設を利用する際も優待券がもらえるため、かなりお得に遊ぶことができる。
さらに警察官という肩書は社会的な地位や信頼も高い。
なので、本物のブラック企業のように「仕事も激務で給料も安い」ということはありません。
警察官は仕事が激務である分、給料や身分保障はしっかりしているので、単純に比較すればそこまでのブラックではないのかもしれません。
また、残業や休日出勤が当たり前ですが、休みをとれるときはしっかり休めますし、連休を取得することも可能です。(旅行にも行けます)
さらに女性警察官なら育児休暇などの長期休暇を取得することも可能で、長期的に休んでも不利益を受けることはありません。
この辺りは公務員であるからこそしっかり制度が使えるようになっています。
>>【関連記事】「これだけは覚えておきたい警察官として必要な心構え10選」
警察官の仕事はやりがいだけではない
警察官を目指す人の中には「警察官の仕事はやりがいがある」と言う人が多くいます。
確かに警察官の仕事は犯人を捕まえる、被害者の無念を晴らす、困っている人を助ける等、やりがいのある仕事がたくさんあります。
しかし、その反面「これは警察官が必要なのか?」という仕事もたくさんあるのが現実です。
それは無意味な110番通報や警察に関係ない相談等、内容は様々です。
警察は通報があれば無意味な通報でもとりあえずは対応しなければいけませんし、警察に関係ない相談でも話は聞かなければいけません。
そのため、「なんのために警察官になったのか?」と疑問に感じる場面も少なくありません。
24時間365日、110番通報は止まることがない。通報の内容は様々であるが、110番をするまでもない内容のものが多いのも事実。
ただし、通報を聞いただけではことの重大性が判断できないため、結局は警察官が現場に行くことになる。結果的に「なんでもなかった」ということが多いが、その度に警察官が出動している現実がある。
将来警察官になりたいと思っている方に伝えたいことは「警察官はくだらない通報に対応する方が多い。決してやりがいのある仕事だけではない」ということです。
この事実を知っておかないと、いざ警察官になったときにギャップを感じることになってしまいます。
そのため、「警察官の仕事はやりがいがある」ということについては否定はできませんが、そこに期待しすぎるのはよくないでしょう。
これがブラックな仕事であるということには直結しませんが、無意味な仕事ばかりに従事していると精神的に参る部分があるのは確かです。
>>【関連記事】「【最初の2年が勝負!】警察官になって希望の部署に入れる確率はどれくらい?」
プライベートを犠牲にできるか
警察官にとって避けては通れないのが休日出勤です。
最初にも少し説明しましたが、警察官の仕事は休日出勤が珍しいことではありません。
特に憧れを持っている人も多い刑事課の場合、忙しいときは長時間の残業+休日出勤が当たり前の世界なので、事件が多発するときはプライベートの時間を確保することも困難です。
さらに家族がいる人であれば多忙な時期は家族との時間を取ることも難しく、家族から反対を受けて刑事課から別の部署に異動した人も見たことがあります。
なにも刑事課だけではありませんが、多くの事件を抱える部署で働く場合はプライベートを犠牲にする覚悟があるかが重要になってきます。
世間を騒がすような殺人事件が発生した場合、事件を担当する刑事課は多忙を極める。それは日数が経過すればするほど証拠は消えていくし、犯人も遠くへ逃げていってしまうからである。
そのため、ドラマでは華やかに描かれる捜査一課は殺人事件が発生すれば家に帰れなくなるのが当たり前。それくらいの覚悟と仕事に対する気持ちがなければ続けられない。
警察24時やテレビドラマでは警察官の仕事はどうしても華やかに見えてしまいますが、実際にはプライベートを犠牲にしている現実があります。
今の時代、「休日出勤が当たり前」という仕事をやりたいと思う人は少ないでしょう。
どちらかと言えば、「仕事は仕事、プライベートはプライベート」ときっちり分けて考えるのがスタンダードになってきているため、少し時代錯誤な点は否めません。
私は長いこと地域課でパトカーに乗っていましたが、地域課でも年に数回は休日出勤がありました。
振替の休日もありませんでしたので少し損をした気分になりますが、警察官である以上は仕方ないので受け入れていました。
警察官の仕事は休日出勤をして当たり前ですので、これをブラックな仕事と捉える人には向いていない仕事と言えるでしょう。
>>【関連記事】「【警察官の仕事紹介】刑事課の仕事・勤務体系・休日などについて紹介」
警察官にしかできないことがある
警察官が行う仕事は警察官にしかできない仕事ばかりです。
例えば
- 事件の捜査をする
- 現場で鑑識作業を行う
- 職務質問で薬物使用者を検挙する
- 犯罪被害に遭った人を助ける
- 取締りをして悪質な違反者を検挙する
などは警察官以外では絶対にできない仕事です。
これは仕事のやりがいと言えることだと思います。
これまで説明してきた通り、確かに警察官の仕事はブラックな面も多々ありますが、その反面、大きなやりがいを感じられる仕事でもあるのです。
「自分にしかできない仕事」を行ったときは警察官になってよかったと思える瞬間だと思います。
また、警察官という職業は子どもが憧れる職業ランキングで必ず上位にくる職業です。
子どもたちからすれば警察官=正義のヒーローであることは間違いありませんし、実際に制服を着て働いていると子どもたちから大人気です。(パトカーに元気よく手を振ってくれたりします)
正義のヒーローと呼べる仕事はなかなかありませんが、警察官ならすぐにその気分を味わうことができますし、家族からも自慢の存在であることは間違いありません。
>>【関連記事】「【元警察官が解説】警察学校ってどれくらい厳しいの?」
周りの声を気にする必要はない
ここまで「警察官の仕事はブラックなのか…?」について詳しく検証してきました。
どう感じたかは人それぞれだと思いますが、みなさんにお伝えしたいことは「最終的に決めるのは自分」ということです。
つまり、どれだけインターネットで警察官の評判を調べても、周りからなにを言われても、最後に決断するのは自分しかいないのです。
実際に私も警察官の仕事に対してはあまりいい印象はありませんでしたし、インターネットで調べると不安になることばかりが出てきました。
それでも「警察官になりたい」という気持ちに変化はなく、自分自身で決断して警察官になりました。
確かに警察官の仕事は過酷でしたし、大変な思い出ばかりでしたが、警察官を経験して後悔していることはありません。
警察官の良いところ、悪いところは経験した者にしかわからない。イメージだけで語ってしまえばブラックに見えてしまうかもしれないが、過剰に心配する必要はない。
警察官になるかどうかを決めるのも自分だし、警察官がブラックかどうか感じるのも自分次第。
ただし、実際に「警察官の仕事は合わなかった」「職場環境に馴染めなかった」という理由で警察官を退職する人はいます。
警察官の離職率がどれくらいの数字なのかは定かではありませんが、やはり退職してしまう人は一定数います。
そもそも警察官の場合は警察学校で約1割が退職してしまうので、他の職業に比べれば多少高いのかもしれませんが…。
>>【関連記事】「警察学校でこれだけはやるな!警察学校でのNG行動集」
まとめ
今回は警察官の仕事がブラックであるかどうかについて検証しました。
警察官の仕事は過酷、休日出勤がある、上下関係が厳しい等の理由からブラックだと見られますが、この辺りは間違ってはいません。
実際に仕事は過酷ですし、部署によっては休日出勤が当たり前で、全体的に上下関係が厳しいです。
ただし、警察官にしかできない仕事は多く、子どもたちからはとても人気がある職業です。
さらに警察官は公務員であることから身分保障が手厚く、給与水準も高いのは事実です。
この辺りをどう考えるのかによってブラックであるかどうかは変わってくるものだと思います。
将来警察官になりたいと思っている方は警察官について色々とインターネットで調べているものだと思いますが、最終的に決断をするのは自分自身です。
周りの声を必要以上に気にする必要はないので、あくまで自分の考えを大事にしてください。