警察学校を卒業後、独身の男性警察官であればほぼ間違いなく独身寮に入らなければいけません。
各警察署にはほぼ100%独身寮が完備されているので、警察学校卒業後に住所を移すことになります。
これは新人警察官ならば受け入れるしかなく、特別な事情がない限り拒むことはできません。
独身寮はメリットがあればデメリットもある場所なので、人によって考え方が大きく異なります。
私自身ももちろん警察学校卒業後は独身寮に入り、約2年を過ごしました。
どちらかと言えば独身寮が嫌いなタイプだったので、正直言っていい思い出の方が少ないです。
独身寮のメリット
- 通勤時間が短縮される
- 先輩と仲良くなれる
- 家賃が安い
独身寮のデメリット
- 呼び出しがある
- ボロアパートのような寮もある
- 休日でも雑用がある
独身寮を天国と称してなかなか出たがらない人がいれば、今すぐにでも退寮したいと考える人もいるので、思い出は人それぞれです。
当時を振り返れば色々なことがありましたが、すべてが今となってはいい思い出です。
新人警察官にとってはまさに登竜門と言えるでしょう。
そこで、この記事では新人警察官時代に過ごした独身寮の思い出について振り返り、独身寮で生活していて辛かったことを4つ紹介します。
独身寮の概要については下記の記事で詳しく紹介していますので、是非そちらもご覧ください。
独身寮に入寮した流れ
まずは警察学校を卒業して独身寮に入寮したときの流れについて紹介します。
独身寮に入寮するためにはなんといっても配属先の警察署が決まっていなければ始まりません。
独身寮というのはあくまでも配属先の警察署の施設であるため、警察署あってのものになります。
警察学校を卒業する2~3週間前には配属先の警察署が発表されるので、入寮に向けて動き出すのはそこからです。
単純に警察学校の寮から独身寮に引っ越しをする形となるため、警察学校を卒業したと同時に引っ越しを完了させることが目的となります。
全員が講堂に集まり、一人ずつ配属先の警察署が発表されていった。警察署によって仕事の難易度が異なるため、当時のドキドキ感は半端じゃなかった。
配属先の警察署が決まってからやるべきことは
- 警務課の担当者に挨拶の電話をする
- 荷物運びの日程を決める
- 引っ越しの準備をする
という流れでした。
まずはなによりも警務課の担当者にしっかり挨拶の電話をすることが大切で、明るく元気にハキハキと電話をする必要があります。
ここで第一印象が決まるので、その後を左右する大事な電話になるでしょう。
この電話で独身寮に荷物を搬入する日程を決めました。
警察学校の卒業式は終わったらそのまま配属先の警察署へ直行するため、大きな荷物は事前に搬入しておかなければいけません。
卒業式当日は手で持てる荷物くらいしか運べなかったので、卒業式の1週間ほど前には独身寮に荷物を搬入しました。
このときに初めて警察署に伺うことになるため、身なり等はきっちりしておく必要がある。ここでもしっかり挨拶することが大事。
警察学校で残り1週間に必要になる荷物以外はここですべて独身寮に搬入しました。
当時は車の運転が禁止されているので、親に乗せていってもらったことを覚えています。
ここまで来ると本当に警察学校を卒業する実感が湧きますし、新たな生活に対する期待と不安も入り混じってきます。
独身寮への荷物搬入は1つ区切りとなるポイントですので、すごく記憶に残っています。
入寮した独身寮の特徴
次に私が新人警察官として入寮した独身寮の特徴について紹介します。
警察学校を卒業する1~2週間ほど前、配属先となった警察署の独身寮に荷物を搬入することとなりました。
赴任先となったのは自宅から約1時間ほどにある警察署で、まったく知らない土地ではなかったのでその面では幸運だったかもしれません。
やはり警察官の仕事は土地勘があるに越したことはないからです。
しかし、いざ独身寮に到着すると目に入ってきたのはボロアパートのような外観の建物でした。
「これからここで生活するのか…?」
警察学校の寮が当時の新築で非常に綺麗だったため、逆にギャップを感じることとなってしまったのです。
さらに案内された寮内を確認すると
- 部屋は6畳1間の昔ながらの和室
- トイレ・風呂・洗濯機共同
- トイレは和式
- ネット環境なし
といった外観通りの中身でした。
特にトイレ・風呂共同というのは警察学校だから耐えられましたが、日常生活では考えたことがありませんでした。
本音を言えばこんなところで生活をするのは嫌でしたが、新人警察官であれば受け入れるしかないと思って腹をくくりました。
独身寮は場所によって設備が大きく異なり、トイレ・シャワーが個室に完備されているという独身寮もあった。赴任先を選ぶことはできないので、こればかりは運でしかない。
また、私が入った独身寮は厳しい先輩が多く、住環境以外でも色々と大変でした。
5年ほど先輩にあたる絶対的な存在の先輩も当時はいましたので、とにかく休日においても気が休まらないという状況でした。
独身寮のルールとしては
- 門限は22時
- 外出する際はメモに行き先&帰宅時間を残す
- トイレやフロア掃除はすべて新人
- 禁煙者なのに灰皿の掃除を行わなければいけない
といったものがあり、なんでも雑用をやらなければいけない立場でした。
独身寮は厳しい先輩がいるかどうかで大きく変わってくるので、入寮するタイミングによって難易度は変わってくるでしょう。
この辺りのルールも警察署によってまちまちです。
とは言っても新人警察官はこのような試練を乗り越えて当たり前なので、独身寮のおかげで精神的には強くなれたと思っています。
独身寮の大変さは多くの警察官が同じ道を辿っていますし、新人警察官ならではの思い出です。
警察官としてやっていくためには大変なこともプラスに捉えるといった発想の転換も必要なのかもしれません。
辛かったこと①門限
ここからは実際に独身寮で生活していて辛かったことについて紹介していきます。
独身寮で辛かったことの1つ目は門限です。
独身寮のルールは警察署によって様々であることを紹介しましたが、私が入寮した独身寮は色々と細かいルールがありました。
その1つが門限です。
寮なので門限があってもおかしくありませんが、学生寮ではないので、門限の必要性については正直疑問に感じる部分がありました。
当時は遊びに行ってても22時までには寮に戻ってくるのがルールでしたので、非番や休日でも夜はあまりのんびりすることができませんでした。
「門限なんて守らなくてもバレないんじゃ?」と思っていましたが、外出する際に行き先と帰宅時間を記入するメモには実際に帰宅した時間も書かなければいけませんでした。
ですので、メモに帰宅時間を書いていないと先輩に「いつ帰って来たの?」などと聞かれることがあり、細かい人に目をつけられると面倒でした。
また、独身寮の1回には共用のリビングがあり、夜になるとよく先輩たちがそこで晩酌をしていたので、22時以降にそこを通過すると門限を守っていないことを追及されていました。
生活に慣れてからは100%門限を守っていたわけではありませんが、それでも門限を気にしなければいけない生活というのは苦痛でした。
新人警察官の立場で独身寮のルールを守っていないと評判の悪い噂が署内に広まってしまう。たかだか門限1つにしても守っておく方が無難。
地域課で勤務をしていると3交代勤務になりますので、24時間勤務が終わった非番というのは夜遊びに出かけたくなるものです。
非番の解放感というのは格別なものがあるので、20代の頃は早く寝るのがもったいないという意識が強くありました。
また、警察学校を卒業した直後は他の警察署に配属になった同期ともよく遊ぶので、門限の22時というのはきつかったです。
門限なんて守ってられない…と誰もが思うものですが、独身寮は後述する呼び出しがあるので、門限を守っていないとピンチに陥ることがあります。
門限がない独身寮もあるので、配属になる警察署によって色々と生活が変わる。当時は不運でしかなかった。
警察学校を卒業したら自由に羽を伸ばして生活することをイメージしていたので、そのギャップも辛かったです。
26歳にもなって門限というのは何とも情けない話でしたが、こういったルールは基本的に守っておいた方が無難です。
細かい先輩に目をつけられると大変なので、郷に入っては郷に従えを実践していくべきでしょう。
また、特に近年だと新型コロナウイルスの感染防止の観点もあり、夜間の外出は厳しく制限されていることだと思います。
一応、外泊届というものを上司に提出すれば実家に帰ることは可能でしたが、この門限というのが独身寮の生活で記憶に強く残っています。
辛かったこと②呼び出し
独身寮で辛かったことの2つ目は呼び出しです。
これは独身寮に住む新人警察官の宿命でもありますが、独身寮は別名待機寮とも呼ばれています。
なぜかと言うと、独身寮で生活する警察官は”何かあったときにすぐ出動する要員”なので、待機寮という別名があるのです。
何かあったときとは
- 殺人や強盗などの大事件
- 子どもの行方不明
- 台風や地震などの自然災害
- その他の人手が必要な事案
などが挙げられます。
これらはその日に出勤している警察官だけでは人手が足りないため、それを補うために独身寮の警察官に呼び出しがかかります。(呼び出しは招集とも呼ばれます)
逆に言えば、独身寮に住んでいるならこの呼び出しに応じて当たり前なので、その意識はしっかり持っておく必要があります。
呼び出しはすべて突発的にかかるため、予測することは一切不可能。独身寮で生活をしているうちはいつかかってもおかしくないと認識しておこう。
これは先ほどの門限にも繋がる話なのですが、門限が決まっている独身寮の場合、その門限には全員が戻ってきていると見られています。
つまり、夜中に呼び出しがかかった場合、待機している警察官は全員が出勤できて当然と思われているため、ここで門限を守っていないとルール違反が発覚してしまうのです。
門限はこういったところが厄介であり、面倒なところです。
実際、私自身も生活に慣れてからは何度か門限を破っていたことがありますが、そんなときに限って何度か呼び出しがかかったことがあります。
幸いにも近くにいたため、すぐに呼び出しに応じられたのでよかったですが、こういったことが頻繁に起きるようだと常に門限を守っておいた方がいいでしょう。
昔ながらの厳しい上司だと「待機寮の意味を考えろ」と外泊届をなかなか許可してくれない人もいる。待機寮であることを考えれば、あながち間違いではない。
呼び出しの恐ろしいところは何時に連絡が入るかわからないところです。
非番でぐっすり眠っている深夜に出動したことがあれば、なんでもないお昼の時間に出動したこともあります。
つまり、警察官の仕事というのはいつなにが起きるかわからないので、それに備えて常に心の準備をしておかなければいけないということです。
これは警察官の仕事の難しいところでもありますが、独身寮に入ったならば呼び出しには応じられるようにしておきましょう。
私にとっては辛い思い出でしかありませんでした。
辛かったこと③雑用
独身寮で辛かったことの3つ目は雑用です。
冒頭でも紹介しましたが、独身寮に関するあらゆる雑用はすべて新人警察官の役目でした。
これは寮によって違うことですが、基本的に面倒くさいことは新人警察官に回ってきます。
特に私が入った寮は先輩たちが厳しく、少しでも手を抜けば注意を受けたほどです。
リビングやトイレなど共有スペースが多い寮でしたので、余計に雑用が多いという事情もありました。
もちろんすべての独身寮に当てはまるわけではないですが、私自身の経験談を含め、実際に行っていた雑用について紹介していきます。
- トイレ掃除
まずはなんといってもトイレ掃除です。
トイレ掃除というのは誰もがやりたがらないものなので、必然的に新人警察官が押し付けられることになります。
私が生活していた独身寮は4階建てで、それぞれの階にトイレが1つあるというタイプだったので、これを同期と手分けして掃除することが日課でした。
ちなみにトイレは小便器が1つに和式便所が1つとなっており、まさに昔ながらのアパートでした。
このトイレを毎回非番に掃除するというのが決まりだったので、仕事が終わったらトイレを掃除するというのが当時のルーティンだったのです。
26歳にもなってトイレ掃除なんていうのはついサボりたくなるものですが、手を抜けば先輩から言われてしまうので、しっかりやらざるを得ませんでした。
細かいことを言ってくる先輩がいるとこのような部分が大変です。
24時間勤務が終わったあとにトイレ掃除をするのはなかなか辛かったですし、苦痛でもありました。
- 掃除&ゴミ出し
独身寮の掃除とゴミ出しを行うのも新人警察官の立派な役目でした。
これらは出勤する日の朝にやるという決まりだったので、掃除とゴミ出しのために少し早く起きるというのが日課でした。
掃除は独身寮の共有スペースを全体的に行い、ゴミ出しは決まった曜日に回収場所に出しに行っていました。
もちろんこれも怠ってしまうと先輩から注意を受けるので、特にゴミ出しは欠かすことができませんでした。
新人警察官はただでさえ警察署に出勤する時間が早いのですが、雑用をやるためにさらに早起きするというのは辛かったです。
場所によってはこういったことも含めて独身寮の生活だということは覚えておいた方がいいでしょう。
- 灰皿の掃除&洗い物
地味に苦痛だったのが灰皿の掃除&洗い物です。
独身寮のリビングにはテーブルやソファがあり、同時に多くの寮生がくつろげるようになっていました。
また、炊事場も併設されており、夜ご飯は寮母さんが作ってくれるという独身寮でした。
そんな中、新人警察官に課せられていたのが灰皿の掃除と洗い物です。
当時、独身寮にいた先輩は喫煙者が非常に多く、リビングは常にタバコ臭いという環境でした。
そして、先輩がタバコを吸うときは灰皿がきれいになっているのが当たり前という風潮もあったので、私自身は非喫煙者だったのですが、嫌々に灰皿の掃除を行っていました。
「タバコを吸わない自分がなんで…」と毎回思っていましたが、新人警察官ならば受け入れるしかありませんでした。
また、先輩たちが使った食器なども当たり前のように洗わなければいけなかったので、こういった点は辛いと感じていました。
このような経験を乗り越え、警察官の上下関係の厳しさを改めて学ぶことができました。
- 警察署の雑用
休日が潰れるほどの雑用だったのが警察署における雑用でした。
独身寮が警察署に近かったこともあり、警察署での雑用によく呼ばれていました。
とにかくコキ使われるのが独身寮の宿命なのですが、警察署における雑用はときに休日を使ってのものも珍しくありませんでした。
警察署の模様替えで休日に呼び出しを受けたことがありますし、警察署でのイベントの設営・受付といったものもありました。
いずれも時間がかかるものでしたので、休日がほぼ1日潰れていました。
もちろん何か予定があったとしても「予定があるので…」ということは中々言えません。
「はい、大丈夫です」と即答するのが正解な世界ですので、そういった流儀も覚えていく必要があるでしょう。
それでもさすがに貴重な休日が雑用でなくなってしまうのは辛かったです。
【Amazon】警察官という生き方 仕事と生き方 (イースト新書Q)独身寮で生活していた辛かった雑用について紹介しました。
すべて実体験したものですが、新人警察官としてはいい経験ができたと思います。
これほど雑用がある独身寮も珍しかったかもしれません。
今となってはいい思い出ですが、当時は仕事と並行して辛い思いをしながら雑用をこなしていました。
辛かったこと④人付き合い
独身寮で辛かったことの4つ目は人付き合いです。
独身寮というのは当然ながら色々な警察官が生活をしていますので、それに伴って人付き合いというものがどうしても発生します。
人付き合いが得意な人にとってはいい環境かもしれませんが、人付き合いが苦手な方にとっては少々辛いことになるかもしれません。
独身寮で生活しているのは基本的に
- 警察学校を卒業したばかりの新人警察官
- 2~3年目の若手警察官
ということになります。
先輩も後輩も警察学校の期生が近い人ばかりなので、必然的に仲良くなりやすいです。
警察学校での苦労や新人警察官としての悩みは誰もが共感できるものになりますので、寮生というのはそういった話にも花が咲くものです。
また、プライベートでも一緒に出掛けることが珍しくありませんし、先輩が食事に連れていってくれることもあります。
独身寮は同じ悩みを持った新人・若手警察官が集まっているので、悩みを分かち合うことができる。先輩に愚痴を聞いてもらう機会もあり、お互い励まし合う関係でもある。
人付き合いというのも自分のプライベートが確保されてのことであればいいのですが、後輩を連れ回す先輩がいると厄介です。
新人警察官の立場としては先輩の誘いを断りにくいですし、断ると本気で怒る先輩も珍しくありませんでした。
仕事が終わって非番の昼は一緒に食事、夜は飲み会、さらに次の日の休日は一緒にパチンコなんてところまで付き合いが必要になることもありました。
また、コロナ禍の今では考えられませんが、当時は定期的に飲み会がありましたし、フットサルや草野球などもよく行われていました。
私はプライベートを一人で過ごしたいという気持ちがありましたので、こういった人付き合いは少々辛い部分がありました。
お酒が苦手だったというのも大きかったかもしれません。
ただし、こういった先輩との付き合いは非常に大切なことですし、断ることなく参加しておいて損することはありません。
先輩と仲良くなっておけば色々と助けてもらうことができますので、仕事の面ではいい影響があるでしょう。
逆に先輩からの誘いをすべて断っているとやがて干されてしまうため、断りすぎることはあまりオススメできません。
私自身はこのような人付き合いが辛いと思いながらも参加率は高かったので、先輩たちとは上手にできていたと思います。
まとめ
今回は独身寮で生活していて辛かったことを4つ紹介しました。
今回の記事をまとめると、独身寮で辛かったことは
- 門限
- 呼び出し
- 雑用
- 人付き合い
ということになります。
独身寮は良くも悪くも新人警察官にとっての登竜門のような場所ですので、1つ1つ経験を積んでいくしかありません。
辛いことも多々あるでしょうが、警察官ならばすべてを受け入れていく必要があります。
私自身も辛いと思いながら逃げ出さずに乗り越えてきたので、今となっては笑い話になりますし、いい思い出にもなっています。
今回の記事がこれから独身寮に入る新人警察官の方の参考になれば幸いですし、将来警察官を目指している方にも参考にして頂ければと思います。
独身寮で生活していて大変だったことはなんですか?