以前、別の記事でも紹介した通り、警察官の仕事は大変激務ですが、女性警察官でも男性警察官と対等に働いていかなければいけません。
女性だからといって楽ができるわけではありませんし、優遇をしてもらえるわけでもないからです。
警察学校はもちろんですが、警察官の仕事はなによりも体力がなければやっていけないので、女性警察官でも男性と同じように体力が必要です。
もちろんまずは警察官採用試験における体力試験を通過しなければいけませんし、合格後は警察学校での厳しい訓練に耐えていかなければいけません。
さらに警察学校卒業後は夜勤を含む地域課での3交代(4交代)勤務をこなしていく体力が必要です。
警察官の仕事はとても特殊な仕事なので、一般的な仕事とは大きく異なります。
では、実際のところ女性警察官に求められる体力とはどれくらいなのか?
どのように対策をしていけばいいのか?
この記事では警察学校や実務において女性警察官に求められる体力について解説し、体力に不安がある方の対策法も紹介します。
体力試験の基準値の例
警察官採用試験においては筆記試験に加え、男女とも必ず体力試験が実施されます。
体力試験が必ずしも合否に直結するわけではありませんが、それでもある程度の結果は残さなければいけません。
都道府県によっては最低基準を設けている場合もあるので、体力試験の結果があまりにも低い数字では逆に目立ってしまうでしょう。
体力試験の基準値は各都道府県によって異なりますが、基準値が公表されている都道府県警察もありますので、1つ参考になる数値と言えます。
大阪府警と福岡県警の公式サイトで体力試験の基準値が紹介されていましたので、こちらを参考にしてみます。
- 腕立て伏せ
男性10回以上、女性7回以上
※女性は両膝をついて行う
- 反復横跳び(20秒間)
男性38回以上、女性32回以上
- 上体おこし
男性17回以上、女性7回以上
- バーピーテスト
男性2分間、女性1分20秒間
※制限時間内でやり続ける
- 握力測定(平均)
男性 左右30kg以上
女性 左右20kg以上
これを見ると大阪府警は若干数値が低めに設定されており、体力試験がそこまで重視されていない印象です。
続いて、福岡県警の体力試験の基準値を紹介します。
- 腕立て伏せ
男性30回以上、女性15回以上
- 上体起こし(30秒間)
男性25回以上、女性15回以上
- 20mシャトルラン
男性65回以上、女性35回以上
- 反復横跳び(20秒間)
男性50回以上、女性40回以上
- バーピーテスト
男性25回以上(100秒間)、女性15回以上(60秒間)
- 握力測定(平均)
男性 左右45kg以上
女性 左右25kg以上
公表されている数値はあくまで最低限の数値という意味ですので、この数値は絶対にクリアできるようにしておきたいところです。
大阪府警も福岡県警も大規模な組織なので、他の都道府県においてもこの数字を目標にしていればまず問題ありません。
この数字を見ると、やはり女性でもしっかりトレーニングをしておかないと届かない数字であることがわかります。
ただし、最初にも説明した通り、体力試験の結果が合否に直結するというわけではありません。
あくまで筆記試験や論文の勉強の時間を優先する必要があり、勉強を疎かにしてまでトレーニングをやる必要はありません。
実際に私の同期でも体力試験の結果がまったく基準値に届かず散々だった者がいましたが、最終的には合格しています。
警察学校での生活や訓練
警察官採用試験に無事合格した後は警察学校への入校が待ち受けています。
警察学校の厳しさはご存知の通りですが、女性でも男性と同じ訓練や筋トレをこなしていかなければいけません。
よって、警察官採用試験のためだけにトレーニングをするのではなく、警察学校入校も見据えた体力作りをしておくといいでしょう。
警察学校において女性警察官は特に体力面で不利になりやすく、ランニングをしていれば周回遅れになることも珍しくないので、事前準備だけはしっかりしておきたいところです。
- 早朝のランニング
毎朝2~3km程度のランニングがあるため、走ることには絶対に慣れておかなければいけない。クラスのペースについていけないと置いていかれてしまう。
- 柔道・剣道・逮捕術
女性警察官も柔道か剣道を選択することになり、それに加えて全員が逮捕術の訓練を行う。男性と同じように昇段審査では同期(女性同士)と真剣勝負をして勝たなくてはいけない。
- 警備実施訓練
機動隊の装備を身に付け、大きな楯を持ちながらランニングを行う。女性は女性用の楯があるが、それでも女性にとっては重装備となる。
- 1500m走&20mシャトルラン
教官は初任科生を走らせることを好む人が多く、時間があれば走ることばかり。
女性は1500m走なら7分以内、20mシャトルランなら80回程度を目指したい。
このように警察学校では様々な訓練が行われますが、注意しなければいけないのはクラスのペースについてこれない者は置いていかれるということです。
走るのが遅い人はそのまま置いていかれますし、クラスのペースに全くついていけないと一人だけ周回遅れになることもあります。
警察学校はできない人に合わせるところではありませんので、クラスについていけない人は努力してついていけるようにならなければいけません。
そして、なにより大切なことは怪我をしないことです。
事前の体力作りはもちろん大事なのですが、入校前に怪我をすることだけは避けてください。
怪我を抱えたまま入校するのはとても大変ですし、すぐに集団行動から離脱することになってしまいます。
また、あまりにも運動に慣れていない人が警察学校に入校して突然激しい運動をすればすぐに怪我をするので、ある程度の負荷はかけておく必要があるでしょう。
短期間で体を仕上げたい、警察官採用試験&警察学校入校までに筋力をつけたいという方にはパーソナルトレーニングもおすすめです。
一人では運動が続かない、なにからやればいいのかわからないという方にはトレーナーから直接指導してもらえるパーソナルトレーニングも1つの手段と言えます。
実務における体力
警察学校卒業後は必ず2年間は地域課(交番やパトカー)での勤務となりますので、2年間は3交代勤務(警視庁は4交代)に従事することになります。
3交代勤務というのは休日を挟みながら24時間勤務を続けることになるので、体力的にも精神的にもかなりハードな勤務体系と言えます。
さらに地域課の仕事は事件や事故に対応するので、仕事中はいつなにが起きるかわからない仕事になります。
まさに仕事が終わって着替えが終わるまで緊張感が続くので、仕事の疲労はなかなかのものだと言えるでしょう。
上記の図は3交代勤務のイメージです。
3交代勤務は一見すると規則正しいように見えますが、実際はとても不規則な生活となります。
なぜなら仕事中は休憩時間も仮眠時間も通報が入ればなくなってしまうからです。
よって、女性警察官であってもこのような不眠不休になってしまうことは多々あるので、そういった状況にも耐えられる体力が必要になってきます。
なにより、女性は生理等で体調がすぐれない場合でも簡単に休むことができないという点が過酷だと言えます。
もちろん体調が悪ければ無理をする必要はありませんが、女性であっても気合いで乗り切るという場面はどうしても出てきてしまいます。
私の経験上でも体調が悪い中で頑張って仕事をする女性警察官をたくさん見てきました。
やはり、警察は男性社会であるが故に女性警察官が「調子が悪いので少し休みます」と言いづらい環境であることは確かなので、そういった状況でも仕事をする体力は必要と言えるでしょう。
この不規則な勤務には慣れてしまえば大丈夫なのですが、慣れるまでは少々大変かもしれません。
無理は禁物 自分で見極めを
場合によっては女性でも気合で乗り切らなければいけないということを紹介しましたが、どうしても体調が悪い場合は無理をしないようにしてください。
万が一、忙しい場面で誰かが倒れてしまった場合、介抱のため余計に人員が必要になってしまい、そちらの方が周りに迷惑をかけることになるからです。
これは警察学校においても現場での実務においても同じです。
倒れる寸前まで働く必要はありませんが、多少無理ができるのか、無理をせず休むのかは自分で判断する必要がありますし、自分自身でよく知っておくことが大切です。
警察学校では日々厳しい訓練が待ち受けており、吐く寸前まで走らされることも珍しくない。また、装備品を着装しての警備実施訓練は途中で脱落する者が続出する。
さらに外での訓練では熱中症で倒れる者もいるが、警察官が倒れるようではいけない。これが現場であれば世間に恥をさらすことになってしまう。
この辺りの見極めをするためには自分で自分のことを深く知っておかなければいけません。
自分は体調が悪いときにどこまでやれるのか?
体調が悪くても薬を飲めば回復するものなのか、思い切って休むべきなのかなど、これらについて自分自身で判断しなければいけません。
最悪、警察学校で倒れてしまうならいいのですが、現場で警察官が倒れてしまっては問題となります。
なぜなら市民を守るのが警察官の仕事なので、先に警察官が倒れてしまっては話にならないからです。
体調が悪い中でも勤務を続けることはよくあるので、無理ができる体調不良なのか、無理ができない体調不良なのかを見極められるようにしておきましょう。
警察官は女性だからといって甘く見てもらえる世界ではないので、しっかり自覚を持つようにしてください。
体力をつけるためにやるべきこと
では、女性警察官は具体的にどんなことをやって体力強化をしていけばいいのか。
まず、警察官採用試験の体力試験については課題となっている種目をやり込むようにしてください。
腕立て伏せなら腕立て伏せをやり、反復横跳びなら反復横跳びをやって、その種目に慣れるようにしましょう。
いきなり回数が伸びることはありませんが、継続して続けることがとても大事になります。
ほとんどが家の中でできるものですので、無理にジムに通って筋トレをする必要はないですし、そこに時間を割きすぎる必要もありません。
行われる種目が決まっているので、その種目の数字を伸ばすことを目標にしていけば大丈夫です。
私自身も特別なにか対策をしたわけではなく、体力試験で行われる種目をしっかりやり込みました。
トレーニング後にはプロテインを積極的に摂取しましょう。(筋力アップや回復の効果が見込めます)
プロテインは様々なメーカーがあり悩みますが、一番人気なのはマイプロテインです。
安価で味もたくさん選べるので、私も愛用しています。
スタミナをつけるためのランニングは外で走ることをおすすめしています。
その理由としては
- 暑さや寒さなど気候に体を慣らすことができる
- 警察学校ではアスファルト上を走る機会も多い
- 勉強の気分転換になる
等の理由があります。
特に②に関しては警察学校でいきなりアスファルトを走ることになると怪我に繋がりやすいので、絶対に事前に慣らしておいた方がいいです。
また、ランニングは下半身の怪我をすることが多いので、いきなり長い距離を走るのは控え、徐々に距離を伸ばしていくようにしてください。
警察学校で一番多い怪我が下半身の怪我なので、慣らしておくことも大事なのですが、運動に慣れていない人はいきなり追い込むのはやめましょう。
警察学校では初日から走る機会があるので、怪我を抱えた状態での入校となるといきなり出遅れてしまう。入校前に怪我をすることだけは避けよう。
そして、実務における体力に関しては実際に勤務をして慣れていくしかありません。
いくら夜更かしの練習をしたからといってあまり効果はありませんし、やはり仕事とプライベートでは感覚も違います。
慣れるまではついていくのに必死ですが、それは誰しもが同じですので、必要以上に心配する必要はありません。
ただし、体力強化&筋力強化ということは警察学校卒業後も続けるようにしましょう。
現場で働くようになれば女性警察官でも相手を制圧しなければいけない場面が出てくるので、特に筋力はしっかり鍛えておく必要があります。
制服を着て外で働くようになれば、いつ自分が襲われるかわからないという意識を持つことが大事。現実に警察官が襲撃される事件は相次いでいるし、気を抜いているとやられてしまう。
また、先ほども説明したように体調が悪くなったときにどう対策をするのかはあらかじめ考えておきましょう。
女性であればどうしても生理の問題が出てくるので、事前に考えておく必要があります。
実際に私は頭痛持ちでしたので、仕事中もよく頭痛に悩まされました。
頭痛薬を飲めば治る程度でしたので、頭痛が起きたときはすぐに薬を飲んでいましたし、頭痛薬は常備していました。
なにか不安要素があるという方は警察官の仕事をする以上は簡単に休憩がとれる仕事ではないので、うまく付き合っていくしかありません。
まとめ
今回は女性警察官に必要な体力について解説しました。
警察官採用試験においては体力試験が行われますし、警察学校入校後も日々厳しい訓練が行われます。
女性でも男性と対等にやっていかなければいけない世界なので、それに向けた体力&筋力強化は必須と言えます。
体力試験に関しては
- 課題となっている種目をしっかりやり込む
- ランニングはなるべく外で行う
- 追い込みすぎて怪我をしない
という点に気を付けてください。
いきなり回数が伸びることはありませんが、継続することにより伸びていきます。
また、実務における体力に関しては
- 慣れるしかないので必要以上に心配しない
- 体調を崩しやすい人は対策が必須
- 簡単に休憩がとれる仕事ではない
という点を覚えておいてください。
警察官の仕事は最初はとても辛いと思いますが、3交代勤務は慣れていけば自然と働く体力はついていきます。
ただし、現場ではどんなことが起きるかわかりませんので、女性であっても筋力強化だけは続けていくようにしましょう。