
警察官の世界は厳格な階級社会となっていますので、ご存知の通り、人間関係の構築はとても大変です。
まず大前提として公務員は上司の指示に従わなければいけないと法律で定められているため、基本的に上司の指示は絶対となります。
よって、上司の指示に従わないことや歯向かうということは規律違反となり、処分の対象となるほどです。
それくらい上下関係が厳しい世界なので、当然ながら人間関係を作っていくのも大変な世界です。
>>【合わせて読みたい】「警察官の仕事はブラックなのか…?元警察官が徹底検証」
特に警察学校を卒業してしばらくは上司と付きっきりで仕事を行うことになりますが、どんな上司に付くかによって大きく変わってきます。
では、実際のところ警察官の上司とはどんな人がいるのか?
個性的な上司とはどうやって付き合っていけばいいのか?
この記事では元警察官の経験談として、本当に実在した個性的な上司たちについて紹介し、上手な付き合い方について解説します。
警察官の階級について
まず、警察官の階級&上司の定義について簡単に解説します。
警察官は厳格な階級社会ですので、すべての警察官は階級が決まっています。
警察学校に入校すると巡査からのスタートとなり、数年経つと自動的に巡査長となります。(巡査長は昇任試験もありません)
昇任試験は高卒・大卒によって、受験できるタイミングが異なります。
警察官の高卒・大卒の違いについては下記のリンクで詳しく解説しています。
>>【関連記事】高卒と大卒の警察官はどう違う?昇任・給料・進路などについて解説
巡査長というのは厳密に言えば巡査と同じですので、上司にはあたりません。
呼び方としても巡査長の先輩は○○さんと呼びます。
そして、最初に昇任試験に合格すると巡査部長となり、ここからが上司という存在になりますので、呼び方も○○部長と呼ばなければいけません。
巡査部長の次が警部補、その次が警部です。(警部以上は省略とします)
ちなみに警部補のことは○○係長と呼び、警部のことは○○課長、○○代理、○○補佐と呼ぶことになります。
一般の感覚ではあまり階級というのは馴染みがないが、実際は階級が1つ違うだけでそこには厳格な上下関係が存在することになる。
巡査から見れば巡査部長は上司だし、警部補ならばさらに上の上司となる。馴れ馴れしく話すことはできないし、指示されたことは絶対に守らなければいけない。
巡査と巡査部長はわずか1つしか階級が変わりませんが、しっかり上司と部下という関係になります。
つまり、自分より1つでも上の階級の人はすべて上司になるということです。
階級が1つ違うだけで厳格な上下関係が存在しますので、しっかり覚えておきましょう。
>>【関連記事】「要注意!新人警察官が絶対に言ってはいけないNGワード6選」
警察官は異動が多い
警察官は春と秋が人事異動の時期となりますので、半年に1回は異動の機会がやってきます。
早い人であればわずか2年程度、遅い人でも5~6年程度で異動することになります。
一般的な企業と比べれば異動する機会は多く、それだけ人が入れ替わるペースも早いということです。
よって、ずっと同じ上司と働くわけではありませんし、逆に自分自身も何年かのサイクルで働く環境が変わることになるので、メリットもあればデメリットもあると言えるでしょう。
- メリット
- 嫌いな上司と一緒に働くことになっても数年の我慢で済む
- 異動で職場が変わることによって気分を一新できる
- 自宅近くの警察署で勤務できる可能性がある
- デメリット
- 気の合う人たちと一緒になっても数年で変わってしまう
- 職場に慣れてきた頃に異動になることもある
- 自宅から遠い警察署に異動する可能性もある
異動というのは本当にメリットもあればデメリットもあるので、一概にはなんとも言えません。
ただ、メリットで紹介したように嫌いな上司と一緒に働くことになっても数年の我慢で済むというのは非常に大きなメリットだと思います。
異動のない会社であればずっと同じ上司の下で働かなければいけませんが、警察官は半年に1回異動期があるので、人間関係をリセットできる機会は多いです。
再び異動によって嫌いな上司と再会することはよくありますが…(笑)
>>【関連記事】「警察学校を卒業した後はどうなる?警察学校卒業後の流れを詳しく解説」
実在した個性的な上司①
ここからは私が実際に見た個性的な上司について紹介していきます。
実在した個性的な上司の1人目は「仕事をしない上司」です。
ある意味、警察官あるあるな人なのですが、残念ながら警察官はベテランになればなるほど仕事をしなくなります。
特に定年間近の警察官は交番から一歩も出ないという人も珍しくありません。
そのため、そんな上司についてしまう人は大きな負担を抱えることになります。
なぜなら、その人は動かない上司の分も働かなければいけないからです。
- 事件や事故が入ればすべて私が対応。
- 上司は何も手伝ってくれず、本人はずっと交番で休憩している。
- 残業が必要な場合でも残業せず帰宅する。もちろん私が残業して対応。
- 仕事をしない上、口だけは出してくる。
当時は本当に苦労して勤務をしていました。
相手は上司でしたので、もちろん「手伝ってください」ということも言えず、ほぼすべての仕事を1人でこなしていました。
その苦労もあってか、このとき色々な経験をしたことによって警察官として急成長できましたが…。
>>【合わせて読みたい】「これだけは習得しておきたい!警察官の必須スキル5選」
実在した個性的な上司②
実在した個性的な上司の2人目は「スマホゲーム強要上司」です。
なぜだかわかりませんが、警察官はスマホゲームが大好きな人が多いです。
休憩中はずっとスマホゲームをやっているという人も少なくありませんでしたし、熱心に課金している人もたくさん見てきました。
そんな中、私が遭遇した上司は「スマホゲームを強要してくる上司」だったのです。
私自身はスマホゲームをほとんどやりませんし、大流行したパズドラやモンスト、ツムツムといった人気ゲームもダウンロードしたことがないレベルです。
そのため、私はほぼスマホゲームに興味がないのですが、この上司は「俺もやってるからお前もやれよ」と強要してくる上司だったのです(笑)
なんでもゲームによっては紹介特典だったり、アイテム交換だったりと知り合いがプレイすることによってメリットになるゲームもあるそうで…。
上下関係が厳しいからこそ、こういったお願いでも断ることは難しい。断れば機嫌を損ねる上司も珍しくないので、うまく付き合っていくしかない。
上司との関係が悪化すれば仕事がやりにくくなるので、多少の我慢は必要。
同じ交番の上司ではなかったのですが、隣の交番で一緒に仕事をする機会も多い上司だったので、仕方なく興味のないスマホゲームも我慢してやっていました。
いかんせん、「僕は興味ないので…」と断った後輩がこの上司から追い込みをかけられていたのを間近で見ていたので、嫌でもやるしかなかったんですよね(笑)
この上司とは2年程度しか一緒に働く機会はありませんでしたが、とても対応に苦労した記憶があります。
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実在した個性的な上司③
実在した個性的な上司の3人目は「とにかく部下に休憩させない上司」です。
この上司は係をまとめる幹部(階級は警部)で、自分とは階級が3つも違う上司だったので、気軽に話しかけられる存在ではありませんでした。
すなわち、この上司から言われたことは絶対服従であり、ただただ言うことに従うしかない関係です。
この上司が個性的だったのは「休憩する暇があったら仕事しろ」という鬼のような指示を出すところでした。
地域課の交番やパトカーは3交代勤務なので、1回の勤務が24時間になります。(残業を含めれば24時間以上になる)
そのため、とてもじゃありませんが休憩や仮眠を挟みながらではないと24時間勤務は続けられません。
もちろん事件や事故が入れば休憩をせずに対応するのですが、それ以外で休憩できるときにはしっかり休憩します。
ところが、この上司はその休憩すらも認めてくれないとんでもない上司だったのです。
実際、少しでも休憩をしていると「いつまで休憩してるの?」と電話がかかってくるレベルでした。
当時は休憩すらさせてもらえなかったので、とにかく過酷な勤務だったのを覚えています。
警察官は上下関係が厳しいので、とにかく部下に厳しい鬼上司というのは実は珍しくない。部下からはなにも言えないので、上司の権限が絶対的になりやすい。
ただし、幹部は約2年に1回のペースで異動があるので、我慢は一時で済む。
見方によっては「休憩もせず働く」ということが良いことに見えるかもしれませんし、未だにこういうことを美徳とする幹部は少なくありません。
しかし、こういった考えはもはや時代遅れです。
休憩をせずに働き続けると、本当に力を出さなければいけないときに力が出ません。
民間企業ならば間違いなくブラックと認定されることでしょうが、残念ながら警察官の仕事はまだまだ環境が整っていないのが現実です。
>>【関連記事】「刑事課の仕事・勤務体系・休日などについて紹介」
個性的な上司との付き合い方
ここまで実在した個性的な上司について紹介してきました。
恐らく、これから警察官になる方々も似たような上司と仕事をする機会は出てくるものだと思います。
警察官は半年に1回は異動の機会があると説明しましたが、それでも長ければ3~4年は同じ上司と仕事をしていかなければいけません。
そのため、強烈に個性的な上司と一緒になったとしても、タイミングによっては長いこと我慢して仕事を続けていく必要があります。
では、そんな上司と一緒に働くことになったらどうすればいいのか?
これは自分がどれくらいの立ち位置にいるのかによって対応が変わってきます。
- 新人警察官の場合
上司から仕事を教えてもらわなければなにもできないため、上司に従うしかない。
個性的な上司であっても距離をとることはできない。
- ある程度の経験年数がある場合
1人で仕事ができるため、個性的な上司とは距離をとっても影響は少ない。
どうしても一緒に仕事をしなければいけない場面は出てくるため、多少の我慢は必要。
また、その他のポイントとしては
- お願いされたことはむやみに断らない
- 機嫌を損ねないように努める
- うまくいかないときは割り切る
- 早く仕事を覚えて1人で動けるようにする
ということが挙げられます。
はっきり言って非常に疲れることなのですが、警察官は複雑な人間関係に耐えていかなければいかないのが現実ですので、この辺りは割り切りましょう。
どうしても今の状況から抜け出したいと思うなら、自分自身が昇任するという方法がある。新人警察官はすぐに昇任試験を受けることはできないが、その他の警察官なら毎年昇任試験を受験できる。
昇任すれば1年以内には異動できるため、嫌な状況から抜け出す”必殺技”となる。
まとめ
今回は私が経験した個性的な上司について紹介しました。
民間企業でも人間関係に悩むことは当たり前ですが、警察官の世界はさらに個性的な上司が揃っているというのが特徴です。
実際に会社員から転職した私が驚いたことの1つがこの個性的な上司の存在でした。
数多くの上司と一緒に仕事をしてきましたが、「こんな上司いるの?!」と思ったことは何度もあります。
もちろん普通の上司もたくさんいますが、ときには今回紹介したような個性的な上司とも一緒に仕事をしていかなければいけません。
嫌でもうまく付き合っていく必要がありますので、今回紹介したポイントも参考に割り切って対応していくようにしてください。