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【警察官採用試験】高卒と大卒の警察官はどう違う?昇任・給料・進路などについて解説

警察官 高卒と大卒の違い
警察官は高卒と大卒の区分がありますが、実際どれくらい違うものなんですか?

警察官採用試験には大きく分けて高卒大卒の2つの区分があります

これは受験を申し込む際に選択することになるもので、受験者の最終学歴によって分けられています。

当然ながら高卒の受験者が大卒区分の試験を受けることはできませんし、その逆もできません。

高卒区分と大卒区分の採用試験においての違いは筆記試験や論文試験の難易度が少し違うくらいで、その後の面接試験や体力試験の内容が大きく変わるわけではありません。

ですので、採用試験の段階では高卒も大卒もさほど変わらないものと考えていいでしょう。

決して高卒だからといって簡単に合格できるわけではないですし、高卒と大卒では採用人数も違うため倍率も異なっています。

では高卒と大卒はなにが違うのかというと、それは警察官採用試験合格後にいくつか違いが出てくることになります。

高卒と大卒の主な違い
  • 警察学校の入校期間
  • 給料・昇給の違い
  • 昇任試験の受験資格
  • 警察官としてのキャリア形成

警察官の仕事内容としては「高卒だからこの仕事はできない」「大卒だからこの仕事ができる」という違いはまったくありません。

どちらかが有利不利というものではありませんし、結論を言えば高卒と大卒については気にしすぎる必要はないでしょう。

それでも実際どれくらい違うのか?というのは知っておいて損はないので、この記事では警察官における高卒と大卒の違いについて、元警察官の実体験も含めてそれぞれ詳しく解説していきます。

これから警察官を目指す方に少しでも参考になれば幸いです。

高卒・大卒の制度面での違い

警察官 高卒と大卒の制度面での違い

まずは高卒区分と大卒区分の制度面での違いについて紹介します。

冒頭でも説明した通り、警察官採用試験の受験段階においては高卒・大卒に大きな差はありません。

もちろん筆記試験の難易度は異なりますが、それぞれの学歴に沿った内容になっているだけです。

高卒と大卒で差が出てくるのは警察官採用試験に合格した後になります。

採用後はどうしても区分によって差が生まれますので、知識として覚えておくといいでしょう。

高卒と大卒の制度面での違いをいくつか紹介していきます。

①給料・昇給

まず、一番に知っておきたいことは高卒と大卒では給料に大きな差があるということです。

これは警察官だけに限ったことではありませんが、どうしても高卒と大卒では待遇の面で違いが出てきます。

待遇の違いというと主に給料昇給についてですが、下記の違いを見てもらえればわかる通り、大卒の方が金額的には優遇されています。

警察官の初任給について、警視庁の場合では

  • 大卒(Ⅰ類)初任給 25万3,300円
  • 高卒(Ⅲ類)初任給 21万3,900円

となっています。(令和4年度警視庁募集要項より)

これを見ると高卒と大卒では初任給で約4万円もの差があることがわかります。

ちなみに大阪府警の初任給は

  • 大卒初任給 約20万2,900円
  • 高卒初任給 約16万4,800円

となっており、やはりここでも約4万円の差があることがわかります。(大阪府警公式HPより引用)

警視庁は全国でも一番給与水準が高くなっているので、他の県警の場合は大阪府警の初任給の水準を参考にするといいでしょう。

また、公務員は原則年1回の昇給がありますが、昇給の面でも高卒と大卒では少し違いがあり、大卒の方が昇給する金額は高めです。

年齢を重ねて階級も上がっていけばその差は縮まっていきますが、しばらくは大卒の方が給料が高いということになります。

なお、学歴に関係なく警察官の給料に反映されてくるものは他にもいくつか要素があります。

給料に反映されるもの
  • 各種手当

地域課など現場で勤務する部署であれば危険手当が付くし、夜勤を行えば夜間勤務手当が付くので、部署によっても給料が異なる。

  • 年齢

同期でも年齢が高い方が給料は高く設定されている。(18歳と30歳では同じ新人でも給料が違う)

  • 警察署の規模

警察署の規模によって予算が異なるため、大きな警察署であれば多少変わってくる。

高卒は給料や昇給の面がやや不利に設定されていますが、高卒と大卒で仕事の内容はまったく変わりません。

仕事の面では学歴が関係ないので、同じ激務なのに高卒だから給料が低いというのは高卒のデメリットと言えるかもしれません。

これは警察官に限った話ではありませんが、まだまだ日本社会は学歴によって差が設けられている証拠だと思います。

②警察学校の入校期間

そして、もう1つ忘れてはならないのが警察学校の入校期間についてです。

警察官採用試験に合格した後、合格者は必ず警察学校に入校することとなりますが、高卒と大卒では警察学校に入校する期間が異なります。

警察学校の入校期間については

  • 高卒 約10か月
  • 大卒 約6か月

となっており、高卒の方が約4か月長く警察学校に入校していなければいけません。

そのため、同じ4月に入校したとしても大卒は9月末で卒業するのに対し、高卒は1月末に卒業することになるので、現場に出るタイミングは大卒の方は早くなっています。

高卒は約10か月の期間を警察学校で過ごすことになるので、大卒に比べて授業の回数が多いですし、それに伴い試験の回数も多くなります。

規律が厳しくて自由の少ない警察学校はなるべく早く卒業したいものですが、この点でも高卒はややデメリットと言えるかもしれません。

なお、警察学校を卒業した後の流れについては下記の記事で詳しく解説していますので、是非こちらもご覧ください。

>>【関連記事】警察学校を卒業した後はどうなる?警察学校卒業後の流れを詳しく解説

警察学校の生活も慣れてしまえばそこまで苦ではないのですが、それでも長い時間を過ごしたい場所ではありません。

また、警察官に憧れを持っている人からすれば早く現場で勤務したいという思いもあるでしょう。

プラスに考えればそれだけじっくり勉強する時間があるということなので、先を見据えてこの長い期間を有意義に過ごしたいところです。

③昇任試験の受験資格

高卒と大卒で違いが出るのは昇任試験の受験資格もあります。

警察官は巡査や巡査部長など階級が定められていますが、階級を上げるためには昇任試験に合格しなければいけません。

昇任試験は警察官になったからといってすぐに受験できるわけではなく、採用されてからある程度の年数を必要とします。

この昇任試験の受験について、受験資格を得るまでに高卒と大卒では年数が異なります。

昇任試験の受験資格
  • 高卒区分

採用から4年後に巡査部長試験の受験が可能

  • 大卒区分

採用から2年後に巡査部長試験の受験が可能

給料と同じようにここでも高卒と大卒では差があり、昇任試験を初めて受験できる年数に2年の違いが出てきます。

なお、警察官の階級については下から

巡査(巡査長)→巡査部長→警部補→警部

となっており、いずれも昇任試験に合格しなければ昇任することはできません。

キャリア組を除いては全員が警察学校に入校した時点で巡査からのスタートとなりますので、大卒の新卒23歳で警察官になれば、25歳の頃には初めて巡査部長への昇任試験を受けるチャンスがきます。

一方、高卒の場合は巡査部長試験を受験できるのは採用から4年後になりますので、高卒18歳で警察官になれば、22歳の頃には受験できます。

年齢に関係なくチャンス
高卒は昇任試験の受験資格を得るのに年数がかかるが、その後は年齢に関係なくチャンスがあるので、若くしてステップアップすことは十分可能。

また、巡査部長試験に合格した後は

  • 大卒 2年後に警部補試験
  • 高卒 4年後に警部補試験

という受験資格になっています。

大卒ならば25歳で巡査部長になったとして、27歳の頃には警部補の試験が受験できるということです。

高卒の場合だと、巡査部長試験に合格してから4年後に警部補試験の受験が可能となりますので、22歳で巡査部長になったとして、26歳の頃には警部補の試験が受験できます。

年齢だけで見れば大差はないように見えますが、若くして昇任するということは容易ではありません。

昇任試験は一発で受かる人の方が稀なので、早く受験できるに越したことがありません。

よって、昇任試験の面でも大卒の方が優遇されていると言えるでしょう。

④機動隊に行く確率

警察学校を卒業して2年間は必ず地域課での勤務となりますが、その後すぐに部署を異動する機会がやってきます。

そのまま地域課から変わらない人も多いですが、警察学校を卒業してから2年後というのは機動隊留置管理課に行くタイミングでもあります。

特に機動隊は若い人材が必要になる部署ですので、例えば20歳と27歳がいれば、20v歳の方が機動隊には必要とされやすいです。

もちろん大卒でも機動隊に行く人はたくさんいますが、年齢が1つの基準になることは間違いありません。

実体験としても26歳で警察官になった私は機動隊に行く機会はありませんでした。

機動隊は上下関係が厳しく、大変な勤務も多いので、希望する警察官が少ない傾向にあります。

どちらかと言えば「機動隊は行きたくない…」という人の方が多いので、若いというだけで高卒の警察官が選ばれやすいと言えます。

機動隊のメリット

機動隊は勤務評価が高くなりやすく、勉強する環境も整っているので、若くして昇任試験に合格する人が多い。この点は機動隊の大きなメリットと言える。

ちなみに機動隊には2種類あり、一般的な機動隊(本部警備部)のほか、管区ごとに区分けされている管区機動隊があります。

いずれも仕事内容には大きく差はありませんが、機動隊は所属の都道府県内での活動が多く、管区機動隊は県外へ派遣されることが多いです。

また、管区機動隊は警察署の部署となりますので、職務質問や交通違反の取締りも行うのが特徴です。

高卒警察官のメリット

高卒警察官のメリット

ここからは高卒で警察官になるメリットについて解説していきます。

高卒警察官のメリットはなにより若くして警察官になれることが考えられます。

警察官の世界は早くに警察官になった者が自動的に先輩となりますので、18歳で警察官になった場合、自分より後から入ってくる人たちはすべて後輩となります。

いくら年齢が若くても先輩は先輩ですので、若くして警察官になれば先輩扱いされる機会はとても多いです。

上下関係が厳しいので、後輩が増えれば増えるほど楽ができるようになります。

例えば、自分の同級生が大卒で警察官になったとき、高卒で入った自分とは4年もの差があります。

警察官の世界で4年というのはとても大きな差なので、同級生なのに警察官としては”大先輩”という扱いになります。

なんだかんだで先輩後輩の関係というのは一生続くので、早く警察官になることはそれだけでメリットだと言えます。

たかがそれくらいかと思われるかもしれませんが、警察の世界は先輩の言うことが絶対なので、十分なメリットと言えるでしょう。

見た目だけではわからない

警察官の世界は期生、階級、年齢など様々な要素で上下関係が決まるので複雑だが、一番大事になるのが期生。つまり、早く警察官になればなるほど期生が上になるので、必然的に先輩の立場となる。

高卒で警察官になるもう1つのメリットは希望の部署に行きやすくなることです。

これも年齢が関わってくることなのですが、希望の部署に行くためには年齢が若ければ若いほどチャンスになります。

警察官は様々な部署があり、きっと「警察官になったらこの仕事がしたい」という希望を持っている方も多いと思います。

ところが、警察官の仕事は希望しているからと言って必ずその部署に行けるわけではありません。

希望の部署に行くためには色々な要素が必要になってくる中、なにより見られるのが年齢です。

ですので、年齢が若ければ若いほどチャンスは多いですし、希望の部署には行く可能性は広がります。

例えば「刑事を希望している若手を育てよう」となったとき、能力や実績が同じ25歳と30歳が同じタイミングで刑事を希望していたらどうなるのか。

これは大多数が「若いから」という理由で25歳の若手警察官を選ぶことになります。

それだけ年齢というのは重要な要素になってくることを覚えておくといいでしょう。

もちろん年齢だけで左右されるわけではないですし、若いからといってなんでも優遇されるわけではありません。

年齢を重ねていても希望の部署に行くことは可能です。

警察官になって希望の部署に行くためにはどうするべきか?については下記の記事で詳しく解説しています。

高卒警察官のデメリット

高卒警察官のデメリット

続いて、高卒警察官のデメリットについて解説しいきます。

ずばり、高卒警察官のデメリットは金銭面で差が出てしまうことです。

先ほど紹介した通りですが、高卒と大卒では給料や昇給の面で大きく差が出てきます。

高卒の警察官からすれば、大卒に対しては「同じ仕事をしているのになんでこんなに給料に違いが…」という気分になってしまいがちですし、実際にそう嘆く人はいました。

さらに昇給の金額にも少し違いがあるので、大卒で入ってきた後輩の方が給料が高いという現象が起きてしまいます。

後輩よりも給料が低いというのはなんだか違和感を覚えるところですが、警察官の世界では致し方ありません。

日本はまだまだ学歴社会なので、高卒と大卒で給料に差がつけられているのは受け入れるしかないでしょう。

仕事量や残業時間も変わりない

高卒と大卒では仕事内容に違いがあるわけではなく、仕事量や残業時間も変わりない。どうしても不満を感じるところであるが、自ら給料を上げていくしかない。

学歴だけで見られてしまうのは残念ですし、同じ結果を残しても大卒の方が給料が高いというのは何とも残念なところです。

しかし、逆にそれをモチベーションとしていく方法があります。

それは

  • こっちは高卒だけどこんなに仕事ができるぞ
  • 大卒より結果を残しているぞ

と上司にアピールしていくことで、勤務評価は相対的に上がっていきます。

実際、高卒と大卒の警察官はお互いをライバル視することも珍しくないので、

また、警察官は昇任試験に合格すれば年齢に関係なく昇任できるので、高卒ならば若くして幹部のポジションも十分に狙えます。

そうすれば出世した分だけ給料が上がっていきますので、大卒との差を埋めることは可能です。

金銭面のデメリットが大きいのは確かですが、嘆いていても仕方ありません。

見返すチャンスは十分にありますので、誰よりも仕事を頑張ってアピールできるようにしていきましょう。

大卒警察官のメリット 

大卒警察官のメリット

次に大卒警察官のメリットについて解説します。

大卒警察官のメリットは金銭面で優遇されていることに加え、昇任試験が早く受けられることが挙げられます。

給料や昇給で恵まれていることも大きいですが、出世のチャンスが高卒よりも早く用意されているのも大きなメリットと言えます。

大卒警察官の場合、警察学校でも警察署に赴任してからも高卒の若い先輩に指示を受けることが多くあります。

中には自分より若いのに命令口調で指示を出したり、とても生意気を言ってきたりする高卒の先輩がいます。

これらを「おもしろくない」と思う大卒警察官は多いですし、実際に私もそうでした。

私は26歳で警察官になりましたが、警察官になってからは18歳や19歳の先輩に指示を出されることが当たり前であり、従うしかありませんでした。

警察官の上下関係は絶対なので、いくら自分より若いからと言っても後輩の立場からは何も言えません。

勘違いする高卒

上下関係が絶対であるため、それを勘違いして偉そうな態度をとる高卒警察官は珍しくない。大卒警察官はどうしても耐えていかなければいけない。

この立場を逆転するには昇任試験に合格するという方法しかありません。

これが最も手っ取り早く、確実な方法になります。

大卒であれば採用2年後にはもう昇任試験を受ける機会がやってきますので、ここで合格すれば一気に上下関係は逆転します。

昇任試験に一発で合格するのは非常に難易度が高いですが、決して不可能なことではありません。

階級を上げることができれば今度は逆に自分が上司となりますので、1つモチベーションになることでしょう。

よって、これだけ早く昇任する機会がくるのは大卒警察官の最大のメリットと言えます。

大卒警察官のデメリット

大卒警察官のデメリット

最後に大卒警察官のデメリットについて紹介します。

大卒警察官のデメリットついて色々考えましたが、結論、特に見つかりませんでした。

繰り返しにはなりますが、高卒の若い先輩に大きな態度をとられるのがデメリットと言えるものの、慣れてしまえばそこまで苦ではありません。

私自身も大卒警察官だったのですが、デメリットを感じることはなかったです。

生まれ変わってもう一度警察官を目指すとなった場合でも大卒を選ぶと思います。

少し趣旨は異なりますが、大卒でも30歳前後で警察官になると希望の進路がかなり限られてくるので、やはり警察官になる年齢は大事だと考えます。

その他に高卒と大卒でなにが違うかというと、大卒区分の方が採用人数は多いので、必然的に同期が多くなると言うメリットがあります。

知らない仲でも同期というだけで共通の話題は多いですし、仕事もやりやすくなります。

高卒と大卒でのメリット・デメリットについて紹介してきましたが、最終学歴というのは変えられるものではないので、気にしすぎる必要はありません。

いずれにしても受け入れるしかありませんし、警察官として仕事をすることには変わりがないです。

参考程度で覚えておいて頂ければと思います。

まとめ

今回は警察官における高卒と大卒の違いについて紹介しました。

今回の記事をまとめると

  • 高卒と大卒では金銭面で違いがある
  • 昇任試験の受験資格も異なる
  • それぞれにメリットがある
  • 大卒には特にデメリットはない

ということになります。

やはり一番大きな違いは給料の面なので、高卒であればしばらく給料については我慢をしなければいけません。

同じ仕事をしているとに給料に差があるというのは不満に感じやすい部分でしょう。

さらに昇任試験の受験に関しても大卒の方が早く受験できるので、出世のチャンスは大卒の方が早く訪れます。

ただし、高卒であれば18歳で警察官になれますので、後輩が多くできることはメリットになります。

警察官の上下関係は非常に厳しいですので、先輩になればなるほど楽でしょう。

いずれにしても最終学歴というのは今さらどうしようもないので、高卒・大卒の違いをそこまで気にする必要はないと思います。

確かに多少の違いやメリット・デメリットはありますが、警察官として年数が経てば差は縮まっていきますし、気にならないレベルになっていきます。

あくまでこれくらいの違いがあるということを紹介しましたので、1つ参考としてください。

noteACT

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