警察官の仕事には様々な部署が存在し、それぞれで担当する仕事が決まっています。
警察官を目指している方の中には「○○課で働きたい」と既にイメージを持っている方もいるでしょうし、逆に「警察官の仕事がよくわからない」と思っている方もいるでしょう。
警察官を目指している段階では警察官の仕事についてわかっていなくても大きな問題はありません。
ただし、警察官採用試験の面接では
- どこの部署で働きたいのか
- 警察官になったらどんな仕事をやりたいのか
- 希望の部署に行けなかったらどうするのか
など仕事に直結する質問が必ずありますので、警察官採用試験を受験する段階では警察官の仕事についてある程度知っておく必要があります。
そこで今回は地域課の仕事について紹介します。
地域課とは交番やパトカーに乗って勤務をする部署で、誰もがイメージする制服を着ている警察官そのものです。
特に地域課は警察学校を卒業してから必ず2年間勤務する部署になりますので、警察官を目指すならば絶対に知っておきたい部署です。
この記事では地域課の仕事について詳しく紹介し、地域課の仕事や勤務体系、休日なども解説していきます。
地域課の仕事内容・勤務体系
地域課は警察官の仕事の中で最も知られている部署で、主に交番勤務かパトカー勤務になります。
そのほかには駐在所勤務や事務作業の地域総務係などがあります。
地域課の基本的な仕事としては
- 通報への対応
- 市民からの相談への対応
- 事件・事故への対応
- 職務質問
- 交通取締り
- 巡回連絡
- 立番(交番の前に立つ)
などとなっています。
地域課の仕事は警察のすべての仕事が凝縮されていると言っても過言ではなく、ありとあらゆる仕事に対応することになります。
そのため、ただ交番で勤務していればいいわけではなく、マルチに仕事をしていくことが求められます。
これだけ多くの種類の仕事を担当するのは地域課だけですし、通報に一番で現場に駆けつけるのも地域課です。
そのような理由もあり、警察学校を卒業してから2年間は必ず地域課で勤務することになっています。
地域課で勤務をしていると刑事事件があれば刑事課と連携するし、少年事件があれば生活安全課と連携するなど他の部署と協力することが多い。よって、地域課は広く浅くあらゆる知識と経験が必要になってくる。
多種多様な仕事を担当する地域課ですが、勤務体系としては3交代勤務となっています。
地域課は3交代勤務で完全に固定されているため、交番やパトカーで勤務する場合は3交代以外の勤務体系はありません。
地域総務係や駐在所の勤務は日勤勤務なので、土日休みとなっています。
なお、全国で一番警察官の数が多い警視庁の地域課は4交代勤務となっており、3交代勤務に比べると身体への負担が少なくて済みます。
3交代勤務については下記のイメージ図がわかりやすいと思います。
3交代勤務は上記のパターンを永遠に繰り返す勤務なので、GWや年末年始などの大型連休でも勤務をしなければいけません。
刑事課や生活安全課などに比べれば大型連休がとれない分、地域課は休日出勤をすることがほとんどないので、予定が立てやすいといえば立てやすい勤務です。
さらに3交代勤務のパターン的に平日が休みになることが多いので、世間とは違った働き方になります。
1回の勤務が24時間なので非常に身体への負担は大きいですが、3日に1回が確実に休みになるため、年間休日が120日以上あるのも特徴です。
地域課の勤務の考え方としては”当番の日は目一杯働いて、休日は確実に休む”といった形になっています。
地域課 交番勤務
最初に紹介するのは交番勤務です。
交番勤務は警察官の中で最も有名な仕事であり、みなさんがイメージする”おまわりさん”そのものと言えます。
交番勤務には警察官のすべての仕事が凝縮されており、あらゆる仕事に対応していくことになります。
通常の交番の仕事としては
- パトロール
- 相談業務
- 落とし物の受理
- 交通違反の取締り
- 巡回連絡
などが多いですが、このほかにも交番の管轄内で発生した事件・事故に対応していきます。
交番の中で書類作成に従事する場合もありますが、忙しい交番だと次から次へと人が訪れるため、なかなか落ち着いて仕事をすることはできません。
通報が連続すれば食事をとる時間もありませんし、休憩すらとれない日も全然あります。
交番の仕事は警察官として基本を身に付ける場所なので、警察学校を卒業した新人警察官は必ず交番勤務となり、指導員(上司)と24時間行動をともにします。
新人警察官は交番勤務を通じて警察官としての経験を積み、苦労しながらも日々成長していきます。
一般的な交番は2人体制ですが、繁華街を受け持つような忙しい交番だと10人前後の体制になっており、交番によって忙しさがまったく違うのも特徴と言えます。
交番には日々色々な相談者が来訪するが、相談の内容は様々である。被害を訴える相談があれば、日常的なトラブルに関する相談もある。よって、警察官もあらゆる知識と経験を持っていないと上手には対応できない。
交番勤務は先ほど紹介した様々な仕事を1日の中でこなしていく必要があり、通報に対応するのはもちろんですが、パトロールに出て職務質問や交通取締りも行っていかなければいけないので、なかなか忙しいです。
本当に忙しい日だと昼ご飯を食べるのが夕方になる場合がありますし、仮眠時間をとることができず徹夜で働き続ける場合もあります。
交番はとにかく”通報が入れば出動する”という仕事なので、いつなにが起きるかはまったく予測できません。
さらに休憩をしていたら落とし物が届いたり、相談者が来たりするので、常に油断できないのも特徴と言えます。
3交代勤務の地域課は3つの係に分かれており、地域1係、2係、3係といった形となっている。これら3つの係が当番・非番・週休をローテーションしているので、同じ地域課でも係が違うとほとんど面識もない。
そんな大変な交番勤務ですが、最初の2年間を地域課で過ごしたあとは異動の時期がやってきます。
ここですぐに刑事課や交通課に入る人はそれ以降二度と地域課には戻ってこないというパターンも全然ありますし、逆に異動がなければずっと地域課ということもあります。
地域課の3交代勤務については「こんな生活無理だ」という人もいれば「自分はずっと地域課でいい」という人もおり、感じ方は人それぞれのようです。
中には地域課以外の仕事をしたくないという人もおり、警察人生のすべてを地域課で過ごすベテラン警察官も珍しくはありません。
いずれにしても交番勤務は警察官なら誰もが絶対に経験することなので、警察官の基本であるということは覚えておきましょう。
地域課 パトカー勤務
地域課のもう1つの代表的な仕事としてパトカー勤務(パトカー乗務員)があります。
パトカー勤務は常にパトカーに乗って勤務し、その機動力を生かした活動を行うのが特徴です。
交番勤務の移動手段としてはほとんどがバイクになりますが、パトカー勤務は24時間パトカーを使っての勤務となります。
同じ地域課なので、交番とパトカーでは基本的に行う仕事は変わりませんが、いくつか違う点もあります。
パトカー勤務が交番勤務と違うところは
- 交番に滞在しないので相談を受理することがなく、落とし物もほぼ受理しない
- パトロールがメインの仕事なので、巡回連絡は行わない
- パトカーなので緊急走行ができる
- 重要事件には一番に現場で到着する
- 交番勤務に比べるとノルマが厳しい
といったことがあります。
パトカー勤務というのはパトロール活動がメインであり、パトカーの機動力を生かして職務質問や交通違反の取締りで実績を挙げることが求められます。
また、パトカーは緊急走行が可能なため、重大事件があれば一番に現場で到着し、現場の指揮をとることも重要な役割です。
パトカー乗務員は「交番勤務員よりも仕事ができて実績もある人」というのが基本であるため、まずは交番で結果を出すことが必要。また、「難しい事案に対してどう対応できるか」ということも大事であるため、的確に仕事をこなす能力が求められる。
パトカーは一般的な警察署だと3~5台しかありませんので、パトカーに乗れるのは限られた警察官だけです。
誰にでもできる仕事ではありませんし、交番よりも高い能力が求められるのは事実です。
その理由としては事件があればパトカー乗務員が事件処理の中心的な役割を担いますし、難しい事案の場合はパトカーが対応することが多いからです。
よって、新人警察官がパトカー勤務になることはなかなかありません。
パトカー乗務員は周りから信頼される人でなければいけませんし、ある程度の知識と経験がないと務まりません。
交番で実績をあげた若手警察官がパトカーに抜擢されることはありますが、早くても交番勤務を1~2年程度はこなしてからというのが多いです。
私自身も警察人生のほとんどをパトカー勤務として過ごしましたが、パトカーに乗れたのは交番勤務を2年経験してからでした。
私はパトカーに憧れて警察官になったので、上司にはパトカー希望であることを伝えていましたし、認めてもらえるように実績の面でも頑張っていました。
実際にパトカー勤務になると大変なことも多かったですが、とてもいい経験を積むことができましたし、警察官として大きく成長できました。
警察官=パトカーというイメージが強いかもしれませんが、実はパトカーというのは簡単に乗ることができないものなのです。
そのため、「警察官になったらパトカーに乗りたい!」と思っている方は交番勤務でしっかりと結果を出すことを目標にしてください。
地域課 駐在所勤務
続いて紹介するのは駐在所勤務です。
駐在所とは人口の少ない地域に置かれている交番のことで、役割としては一般的な交番とまったく変わりありません。
駐在所でも住民の相談事を聞くことはありますし、落とし物を受理することもあります。
駐在所が交番と違うところは
- 3交代勤務ではなく土日休みの日勤勤務となる
- 基本的には夜中に勤務しない
といった勤務体系の部分が違います。
さらに駐在所の特徴として家族で駐在所に住み込むという特徴があります。
駐在所は警察官が生活できるよう住居と一体型になっており、駐在所で勤務する場合は駐在所で家族と一緒に生活をすることになります。(独身なら一人で住む)
そのため、配偶者と一緒に勤務することがあり、警察官が不在時には配偶者が内線電話に出たり、来訪者の用件を聞いたりします。
また、駐在所は人口の少ない地域に置かれているため、管内に住んでいる住民とは深い付き合いになります。
交番よりも住民との関係づくりは重視しなければいけませんし、住民と触れ合う機会も多いです。
駐在所勤務は希望しなければ配属になる可能性は低いが、警察官の中では意外と人気がある。その理由として「住民と深く接する仕事がしたい」「家族に身近なところで働きたい」といったものが多い。
駐在所は極端に人口が少ないところであれば1日で1件も通報が入らないということが当たり前で、仕事がなにもない日も珍しくありません。
逆に「なんでここに駐在所?」と疑問に思うような忙しい場所に駐在所がある場合もあり、このような場所だと普通に忙しい日々を送ることになります。
駐在所はどちらかと言えばベテラン警察官が多く、若手警察官で駐在所に行くことはほぼありませんでした。
基本的に駐在所は落ち着いて働けるところなので、あまりにも暇すぎると仕事を忘れるほどです。
それでも「警察人生で一度は駐在所を経験したい」と一部では根強い人気がありました。
補足ですが、地方の警察だと駐在所が多いので、希望をしていなくても駐在所勤務になる可能性は十分あります。
ある地方の警察官から聞いた話だと、勤務実績が悪い人やなにか問題を起こした人が左遷の意味で駐在所に異動することもあるんだとか…。
地域課 地域総務係
続いて紹介する地域総務係は地域課の事務作業を担当する係になります。
地域課は3交代勤務のため地域1~3係と3つの係が存在するので、それだけ地域課の警察官の数は多くなります。
当然ながら警察署の中でも人数が一番多いのは地域課です。
大きい警察署だと地域課だけで約200人、小さな警察署でも約50人はいます。
そのため、地域総務係は地域課に関する事務作業を担っており、交番やパトカーの警察官が現場の仕事に専念できるようサポートしています。
よって、地域総務係はよほどのことがない限り現場に出ることがありません。(大事件があれば手伝い等をすることもある程度)
勤務も土日休みの日勤勤務なので、地域課ながら落ち着いて仕事をすることができます。
地域総務係はどちらかと言えば裏方のような仕事であるため、現場で勤務する地域課の警察官をサポートする役目となる。例えば、パトカーやバイクが故障した場合には業者を手配するし、物品購入の要望があれば予算を使って購入する。
地域総務係は比較的ゆっくり働くことができるため、冗談で「俺も地域総務に行きたいな~」と口にする警察官は多いです。
完全にデスクワークとなり、現場に出ることもほぼありませんので、密かに希望している警察官は多いかもしれません。
しかし、地域総務係は
- 持病等で深夜業務に従事できない
- 時短勤務や休職明けで現場に出られない
- 定年間近
- 人間関係のトラブルで配置換えになった
などの人たちが勤務する例が多く、希望して入れるようなところではありません。
また、一般的な警察署だと地域総務係は2~3人程度しか定員がありませんので、普通に勤務をしていれば異動する機会はないでしょう。
出産を控えた女性警察官や育休明けで時短勤務の女性警察官は地域総務係に配置になることが多かったので、女性ならば地域総務係で勤務する機会はあるかもしれません。
地域部 自動車警ら隊
警察24時でもお馴染みの自動車警ら隊は本部所属のパトロール専門部隊です。
自動車警ら隊は職務質問のプロ集団ですので、警察署のパトカー勤務で実績をあげた凄腕の警察官が集まっている部署です。
そのため、新人警察官が配属される場所ではありませんし、経験3年程度の若手警察官でもある程度の腕を持っていないと入れません。
また、それだけ実績に厳しいところですので、軽い気持ちで目指すような部署でもありません。
自動車警ら隊の特徴としては
- パトロール専門のため、重大事件以外の通報には対応しない
- 交通事故に対応することもほとんどない
- とにかく職務質問での実績が求められる
- 凄腕の警察官がたくさんいる
といった特徴があります。
自動車警ら隊は基本的に1日中パトカーに乗り、好きなところをパトロールして職務質問を行う精鋭部隊です。
自動車警ら隊は重大事件や大きな事故がない限り通報に対応することがないので、パトロールに専念することができる。自分のペースで自由に行動できる反面、それだけ実績を求められる部署なので、プレッシャーはとても強い。
自動車警ら隊に入るためには警察署の勤務においてとにかく実績を挙げる必要があります。
それは交番勤務でもパトカー勤務でもどちらでも構いませんが、「自動車警ら隊に入りたいので頑張っています」ということを幹部にアピールする必要があります。
また、私が所属していた県警だと自動車警ら隊に入るためには幹部からの推薦状が必要でしたので、やはりなによりも実績が必要でした。
自動車警ら隊は職務質問のプロ集団ですので、大前提として職務質問が得意な警察官でないと生き残ることはできません。
職務質問が苦手なのに自動車警ら隊に入れることはないでしょう。
警察24時で取り上げられる機会が多いので、とても華やかな仕事に見えますが、実際は職務質問で検挙することは簡単なことではありません。
検挙の裏ではとてつもない時間のパトロールをしており、1日で何十人という人に職務質問を行っているのです。
検挙にこだわる人だと6時間や7時間連続でパトロールをする人もいますし、「検挙するまで寝ない」という気合の入った人もいます。
さらに実績を挙げることができなければ幹部から指導を受けるような部署なので、確かな実力と自信を持った人でないと務まらない仕事だと思います。
なお、自動車警ら隊で結果を残せる人は職務質問指導班というさらなるプロが集まる部署に異動することもできるので、意欲のある人はそこまで目指してみてください。
地域部 鉄道警察隊
最後に紹介するのは鉄道警察隊です。(鉄道警察隊も自動車警ら隊と同じ本部所属の部署です)
鉄道警察隊は新幹線があるような主要駅を主として勤務しており、電車内でのトラブルや痴漢・盗撮などの事件に対応することが多い部署です。
やはり鉄道関係で多いのが痴漢・盗撮ですが、被害者から相談を受けた鉄道警察隊が電車に乗り込んで張り込み捜査を行うシーンはテレビでも見たことがあると思います。
痴漢・盗撮以外にも乗客同士のトラブルや駅員に対する暴行事件など、電車内は意外と色々なことが発生するものです。
また、電車内を私服でパトロールし、痴漢や盗撮を行いそうな動きをしている怪しい者に予防・警告するため職務質問をする場合もあります。
鉄道警察隊は通勤通学の時間帯が一番忙しくなるというのも特徴です。
新幹線の場合、車内でトラブルが発生してもその場で停車することはできない。新幹線は長い距離を走るため、走行中にトラブルが発生した場合は他の都道府県警と連携をとる。そのため、東京駅で起きた事件を横浜駅や静岡駅で処理するという場合もある。
鉄道警察隊は人数もそこまで多くないので、希望したからといって必ず入れるような部署ではありません。
鉄道警察隊に入るためのアピールというのも特にありませんので、どちらかと言えば人脈が必要になってくるでしょう。
なかなか大変なことですが、もし「鉄道警察隊に知り合いがいる」という先輩や上司がいた場合にはその人を通じて鉄道警察隊に入りたい旨を伝えてもらいましょう。
こういった特殊な部署は最終的に人脈がものを言うので、どうしても鉄道警察隊に入りたい場合は人脈を探すようにしてください。
まとめ
今回は地域課の仕事について詳しく紹介しました。
地域課の交番勤務は警察学校を卒業したら誰もが配属になるところなので、警察官ならば絶対に経験する部署です。
交番勤務は警察官のすべての仕事が凝縮されていますので、将来刑事課や交通課を目指している人もまずは交番で仕事を覚えていく必要があります。
また、交番で実績が認められれば警察署のパトカー勤務に抜擢されることがありますし、さらにパトカーで結果を出せば自動車警ら隊への道も見えてきます。
これから警察官を目指す方は是非今回の記事を参考にしてください。
地域課はどんな仕事をするんですか?