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【実録警察学校#7】初めて迎える週末 ついに織田が退職を口にする

私の警察学校での実体験を基にした【実録警察学校】の第7話です。

第6話は下記のリンクからご覧ください。

【実録警察学校#6】遂に警察官の制服に袖を通す

警察学校に入校して3日目まで過ごし、警察学校で初めての週末を迎えました。

私は「週末だし少しくらいゆっくりできるだろう」と甘い考えでいましたが、現実はこれまでと変わらない騒がしい週末でした。

そんな中、マイペースで集団行動に遅れをとる織田がついに退職を口にすることに…。

土曜の朝から徹底的にしごかれる

警察学校で迎える初めての土曜日。

これまでと変わらず朝6時半に起床となったが、先輩たちは前日の金曜に警察学校を出て自宅に帰っているため、全体の朝の点呼はなかった。

この土日に限れば私たちの期生しか警察学校には滞在していないので、これまでと比べて静けさを感じる朝だった。

だが、もちろんやることには変わらない。

起床してから急いで着替え、グラウンドに集合。

そこには既に教官たちがスタンバイしている。

もちろん全体の点呼がないため、グラウンドに集まったのは私たちの期生3クラスのみだった。

余談だが、警察学校教官も基本的には土日休みとなっている。

警察学校で勤務する教官は事件や事故に対応するわけではないので、何もなければ土日は休みとなる。

しかし、初任科生が入校すると最初の約1か月は付きっきりでの指導となるため、実は教官たちにも休みがない。

もっと言えば私たちが朝6時半に起床してグラウンドに集合する頃には既に教官たちは準備万端なので、かなり早い時間に出勤していることが容易にわかる。

(このことに気付いたのは警察学校での生活に慣れた頃で、当時はそんなことを考える余裕もなかった)

入校当初は土日であろうと関係ないので、この日もいつも通りに警察体操を行い、ランニングを行った。

ランニングをしている私たちを囲むように教官たちも並列して走っている。

「声出せ!!もっと出せるだろ!!」

真横から大声で怒鳴られながらランニングを行う。

これまた余談だが、警察学校教官は初任科生と同じくらい体力が必要な仕事である。

朝のランニングのように初任科生と一緒に走る機会も多いため、教官も体力を鍛えておかなければいけない。

若い教官ならともかく、多くの教官は40歳前後。

警察学校教官はただ怒鳴るだけの仕事だと当時思っていたが、思っていた以上に色々と大変な仕事なのである。

ランニングを終えると恒例の筋トレが始まった。

この日は私たちの期生しかいないため、時間的にも場所的にも余裕がある。

それに乗じてか、いつもの腕立て伏せやスクワットに加え、腹筋、坂道ダッシュなどフルコースを味わった。

改めて言っておくと、これはすべて寝起きに行うことである。

起きてから水分補給もしていないし、もちろん食事も摂っていない。

トレーニングが大好きな人ならばこれくらい朝飯前かもしれないが、寝起き+空腹の状態で行うトレーニングは一般人にはなかなかきつい。

終わる頃には汗もびっしょりだし、お腹もペコペコである。

教官からテストを行うと通達される

朝やるべきことをすべて終わらせ、制服に着替えて教場に集合した。

そして斎藤教官から、この日の午後一番で筆記試験を行うと通達されたのである。

それに付け加える形で、斎藤教官から

「お前らには給料が発生しているからテストで悪い点数をとることなんて許さんぞ。簡単なテストなんだから満点取れないやつなんて辞めていけよ」

と脅しに近いハッパをかけられた。

テストの内容については

・職務倫理の基本+警察法2条を一言一句書く

というものだった。

これは警察学校に入校したら必ず覚えなければいけないもので、警察官経験者なら誰もが通る道だ。

警察学校で行うテストは一言一句というのが多く、丸暗記するのが肝となっている。

人それぞれ暗記の仕方はあるだろうが、要はすべて書ければそれでいい。

ちなみにどれくらいの量なのか、参考で内容を紹介する。

職務倫理の基本

一 誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕すること。

二 人権を尊重し、公正かつ親切に職務を執行すること。

三 規律を厳正に保持し、相互の連帯を強めること。

四 人格を磨き、能力を高め、自己の充実に努めること。

五 清廉にして、堅実な生活態度を保持すること。

警察法第二条一項

(警察の責務)

警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持の維持に当ることをもつてその責務とする

ボリュームとしてはまだまだ序の口だが、私たちに暗記する時間として与えられたのはわずか2時間程度。

2時間で暗記して、すぐにテストを行うというものだった。

白紙の紙を1枚渡されたので、私は暗記するためにひたすら書き続けた。

警察学校でいう一言一句というのは句読点の位置まで完璧でなければいけない。

暗記方法は人それぞれだが、私はひたすら書くことで覚えていく手法がメインだった。

緊張感が続く中、制限時間がやってきた。

今思うとこれくらいの内容なら2時間で簡単に暗記できそうだが、当時はとにかく余裕がない。

なにより初めて目にする条言葉ばかりだったし、書いてある内容も見慣れないものばかり。

恥ずかしい話、私は満点を取ることはできなかった。

概ねの内容は書けていたが、100%一言一句は書けていなかった。

救いは満点を取れているのがクラスでわずかな人数だったこと。

だが、斎藤教官がこの内容に納得するわけがなかった。

「お前らはこんなこともできないんだな。本当に能力が低いやつらだ」

斎藤教官は呆れた様子でこう言い放った。

そして、続けて

「この後にもう一回同じ試験をやる。それでも満点をとれないやつはすぐに辞めろ」

休憩を挟んで、もう一度試験を行うとのことだった。

膨大な量の課題を与えられる

休憩を挟んで、すぐに再試験が始まった。

再度行われた試験では半分以上の者が満点をとることができたが、3分の1程度は満点に満たなかった。

満点に満たなかった者の解答用紙を見た斎藤教官は

「2回もやってできないってどういうことだよ!能力が低いやつは現場で通用しないぞ!本当によく考えろよ!」

と私たちを一喝し、さらに

「こんなもの見る価値もねぇな!!」

と全員分の解答用紙をゴミ箱に捨てたのである。

”そこまでやるのか”

教場には一瞬にして緊張が走った。

続けて斎藤教官は言った。

「全員外に出ろ。連帯責任の罰だ。」

半分以上の者が満点をとれたのだが、逆に全員が満点をとることができなかった。

警察学校は連帯責任であるので、満点がとれなかった者だけが罰を受けるのではなく、全員で罰を受ける。

外に出た私たちに命じられたのはアスファルト上での腕立て伏せ、腹筋などの筋トレだった。

土の上で行う筋トレとは違い、アスファルトは手のひらなど自分の体重が乗っかるところがとりあえず痛い。

さらにそこから大声を出してのランニングを命じられた。

そして斎藤教官から

「全員が満点をとれなかったから課題を与える。明日までに今日の試験内容を30回ずつ書いてこい」

と指示が出た。

とんでもなく膨大な量の課題である。

今日の授業はこれで終わりとのことだったが、残り数時間で課題をやらなければいけない。

警察学校で出される課題は、このようなひたすら書く系のものが多い。

後々わかることだが、これくらいの課題は当たり前のように出される。

日常生活の中で課題をこなしていくので、色々と時間が足りないのである。

不意を突かれた教練の練習

日中の予定は終了し、わずかではあるが夜までの時間は落ち着いて過ごすことができた。

落ち着くと言っても各自部屋で課題をひたすらに書きまくっているのだが、教官の目から離れられることが至福の時間なのである。

静かな場所で過ごすことができるのも貴重な時間だと感じた。

夕食と風呂も済ませ、あとは課題をやり切って寝るだけ…と思っていた矢先、校内放送が入る。

「只今より体育館で教練の練習を行う。全員揃って集合せよ」

またも不意を突かれた。

全員が完全に油断していた。

部屋を出ていくときは机の上になにも置いていない状態にしなければいけないのだが、各自それぞれ課題をやっている途中だったので、片づけるのにも時間がかかった。

とるべき行動は机の上を片付けながら体育館に向かう準備をすることだ。

このようなとき、やはりマイペースな人間は出遅れる。

私の部屋では着々とみんなが外に出る準備を進めていたが、なぜか織田だけ遅い。

何度も言っているとおり、全員が揃ってからじゃないと体育館には向かえないため、またも私の部屋が迷惑をかけた。

クラス員からは

「いつもお前らの部屋が遅いぞ」

「お前(織田)いい加減にしろよ」

という声も飛んだ。

正確に言えば織田だけが遅いのだが、これも連帯責任である。

さすがの織田も責任を感じているような表情を浮かべていた。

体育館に集合すると、昨日までと同じように教練の練習が行われた。

この日は夜の点呼がないため、時間ぎりぎりまで目いっぱいにしごかれた。

教練の練習においてもやはり周りについていけない者は大体決まっている。

織田もそのうちの一人だったが、周りから浮くと即座に教官のターゲットにされる。

ターゲットになると晒し者にされたかのように徹底攻撃を受けるため、精神的に強くないと耐えられない。

周りと同じことをするというのは簡単に見えて簡単ではない。

教練の練習が終わったのは夜10時くらいだっただろうか。

部屋に戻って、いつものように実習日誌を書き上げる。

消灯時間まであと1時間だが、同部屋の同期とまともに会話をできるのはこの時間くらいである。

そして各自実習日誌を書いていると、織田が思わぬことを口にした。

「俺、もうついていけないっすわ。辞めようと思います」

この日で入校4日目だったが、ついに織田が退職することを口にした。

私たちは「そのうち慣れるって。頑張ろうよ」と言うことくらいしかできなかったが、どこか織田はすっきりした表情を浮かべていた。

そして、4日目の消灯時間がやってきた。

私はベッドに入ってからも織田のすっきりした表情が忘れられなかったが、1日の疲れもあり、すぐに眠りについた。

こうして警察学校入校4日目が終わりを迎えた。

-続く-

>>【実録警察学校】第8話「クラスの足を引っ張る織田が退職を決意…」

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