新着記事「警察学校の同期とは?」

【実録警察学校#3】遂に自分のクラスからも離脱者が出る

私の警察学校での実体験をもとにお送りする【実録警察学校】の第3話です。

第2話は下記のリンクからご覧ください。

【実録警察学校#2】食事が喉を通らないほどの緊張感が続き…

前回は様々な洗礼を浴びながらも昼食の時間までたどり着き、寮での荷物整理を送ったところまででした。

入校式で1名が退職するというまさかのスタートでしたが、まだまだ衝撃の展開は続きます。

緊張感が続く中、警察学校の入校初日で戸惑う様子や必死に食らいついていく状況をお楽しみください。

荷物整理を終えて教場に戻るが…

警察学校 荷物整理を終え…

寮での荷物整理の時間が終わり、教場に戻るよう指示を受けた。

教官の目から離れて束の間の時間だったが、そんな時間は長く続かない。

一瞬だけ緊張が和らいだものの、再び恐怖の時間に戻ることとなった。

このような場合、たかが寮から教場に戻るだけでもクラスで揃って行動するということが多い。

常に集団行動というのが警察学校の鉄則だ。

だからこのときも当たり前のように寮で全員が揃ってから教場に向かうことになった。

地味だが、こういったところが意外と辛いのである。

しかし、こういうときに必ず全員が時間通りに揃うわけではない。

これが集団行動の難しいところであり、厄介なところだ。

このときは私と同部屋だった織田(仮名)が集合時間に遅れていた。

どうも織田はゆったりとした性格で、マイペースな人間らしい。

まだ初日だったので特に誰も違和感を感じなかったが、後々、織田はことあるごとに時間にルーズな人間だということがわかっていく。

とりあえずこの場は遅れながらもなんとか全員が揃い、教場に戻ることとなった。

「これから何が行われるのか…」と高い緊張感が張り詰める中、教場に到着し、全員が着席した。

そして、先ほどと同様にドアマンが教場を出てドアの前に立ち、教官を待つ。

数分経った頃、教場のドア越しに教官の足音が聞こえてきた。

間違いなく教官が教場に近づいている。

その読みは当たり、ドアマンが元気よく声を出した。

なんとなくわかっていたが、またも聞こえてきたのは教官の怒声だった。

 「さっき言ったよなぁ!?やる気がないなら帰れよ!」

どうやらドアマンの声の小ささに納得できなかったらしい。

私は「こんなに怒られるならドアマンは絶対にやりたくないなぁ…」と完全に委縮していた。

警察学校においては同期が怒られている場面をよく目にすることになるが、決して他人事ではない。

いつ自分が怒られるかわからないし、なにより”怒られたくない”という気持ちが先行してつい消極的になりがちだ。

警察学校においては消極的な行動が許されないので、そのような心理状況でもいかに積極的になれるかが大事になってくる。

これは警察学校教育の狙いでもあり、追い込まれた状態でも前に出れるかどうかというのは警察官として必要な要素となってくる。

そうこうしているうちに斎藤教官が教場に入ってきた。

教場にいる全員が大きな声を揃えて出し、斎藤教官に挨拶をする。

しかし、これまた午前中の繰り返しであるが、挨拶をした全員の声が小さいということでまたも教官は激怒した。

教官に対して挨拶をする→怒られてやり直すということを繰り返し、ようやく挨拶を終えて全員が着席することができた。

ここからは色々な手続きのために書類を書くとのことであった。

警察学校に入校すると公的なものから私的なものまで様々な手続きが必要になる。

住民票を警察学校の住所に移すこともそうだし、身分が公務員になることから保険や年金の手続きも行わなければいけない。

なので、警察学校に入校したら早い段階でこのような手続きを済ませていく。

教官から様々な書類の書き方について説明を受けた。

書類を書くなんてことはなにも難しいことではないのだが、こういった緊張感のある場だとやはり書き方を間違えてしまう者が続出する。

教官が説明をしてくれているのにも関わらず、なかなかその通りにはいかない。

この状況を見た教官は当然のように声を荒げる。

「人の話も聞けないのに警察官できるの?お前向いてないよ?」

真剣な眼差しで怒る教官に対し、怒られた者はただ「すいませんでした」と言うしかない。

少しのミスでもあれば教官が怒鳴るので、相変わらず教場の中の雰囲気は緊張感で溢れている。

私は背筋をピンと伸ばしたまま座っており、まるで面接を受けているかのような姿勢でひたすら指示通りに手を動かした。

書類を書いたら全員分をまとめて教官に提出するという流れだったが、ここでも教官の雷が落ちる。

みんな緊張からか書類すらまともに集めることができず、書類の向きや順番がバラバラのまま提出してしまったのだ。

 「こんなこともできないの?大丈夫か?早めに自分から言え」

教官の言葉はなにかと厳しく鋭い。

普通の職場で考えればパワハラに当たるのだろうが、警察学校ではこれくらいが当たり前。

ようやく書類の作成も一通り終わり、時間にして午後3時過ぎだっただろうか。

ここからはもう一度寮に戻って荷物の整理をするよう指示を受けたので、全員揃って寮に戻ることとなった。

教官の目を離れて束の間の休息だったが…

警察学校 荷物整理の途中で…

再び寮に戻った。

警察学校には生活で必要になる衣類や生活用品などを事前に送っていたのだが、いかんせん量が多く、とてもじゃないが短時間では整理しきれない。

先ほどの荷物整理の時間では最低限のものだけを整えており、部屋を整理整頓するにまでは至っていなかった。

ここでもまた先ほどと同じように教官は来ておらず、寮には自分たちだけしかいなかった。

本当に束の間の時間である。

まだ初日とはいえ、この時点でかなりの疲労がたまっていた。

体力的にも精神的にもだ。

どちらかといえば精神的な疲れの方が大きかっただろうか。

一瞬とはいえ教官の目から離れられるこの時間は幸福とも感じたくらいだ。

このあとの動きについては特に指示がなかった。

どんなことが待ち受けているのか不安はあったが、個人的な希望を含めて今日のところはもう終わりでいいんじゃないかと思っていた部分もあった。

手際よく荷物を整理しながら、ゆっくりとした時間を過ごした。

「初日はこれくらいで終わりか」

段々と時計の時間を気にし始めた頃、そんな甘い考えは一瞬にして吹き飛ばされた。

そのきっかけは突然の校内放送だった。

声の主は斎藤教官。

「5分以内に全員揃って教場に集合せよ」

完全な不意打ちであり、気を抜いていた全員が軽くパニック状態に陥った。

当然ながらまだ全ての荷物整理は終わっていない。

予定も聞いていなかったからしばらくは荷物整理の時間が続くものだと思っていた。

慌ててクラス員が寮の前に集合する。

そう、5分以内に来いと言われても全員揃って教場に行かなければいけない。

これが警察学校の鉄則であることは忘れてはいけない。

このような場合、基本的にはまず部屋ごとに集まって、クラスの集合場所に向かう。

それは人数の把握がしやすいからだ。

誰かが遅れているならばそれを全体で情報共有しなければいけないし、遅れている者を待っていなければならない。

そんな中、またも同部屋の織田が遅れをとった。

他の部屋からは続々とみんなが出ていくのだが、私たちの部屋では織田のせいですぐに出られなかった。

必然的に集合場所に遅れたのは私たちの部屋だった。

既に集合していたクラス員からは冷たい視線がそそがれていた。

冷たい視線の理由はわかっている。

寮から教場までは走ったとしても1分以上はかかるので、もうこの時点で指定された5分以内という時間制限が危うい。

遅れた私たちが集合場所に着いた時点でもう3分以上が経過していた。

全員がなんとなくわかっていたことだが、5分以内に教場に到着することはかなり厳しい。

「また怒られるぞ…」

誰もがそう思った。

それでも遅れるのがわかっていながら素早く教場に向かうしかない。

今できることはそれだけだ。

予想はしていたが、教場に到着すると先に教官が待ち構えていた。

そしてこれまた予想通り、教官は怒った。

 「時間も守れないなんて信じられんな。全員腕立て伏せしろ!」

その場で全員が腕立て伏せを行った。

私たちはまだスーツを着ていたのだが、回数は50回くらいだっただろうか。

 「1、2、3…」

必死に歯を食いしばりながら全員で大きな声を出して回数を数えた。

だが、それもむなしく教官は再度怒る。

「声を出せ!!聞こえん!!終わらんぞ!」

こんな怒声を浴びせられながらなんとか50回の腕立て伏せをこなし、ようやく着席が許された。

みんな息があがり、大汗をかいている。

そして、教官が色々な話を始めた。

息を切らしながらも全員の視線が教官へと集まった。

正直に言えば、このときにどんな話をしていたか覚えていない。

そこまで重要な話ではなかったのだろうし、午前中と同じくほぼ説教だったに違いない。

だが、急に教官が雷を落としたことだけは鮮明に覚えている。

 「てめぇどこ見てんだ?人の話も聞けないのか!!」

私は怒られている者の方をそっと見た。

案の定と言うべきか、斎藤教官から怒りの矛先を向けられたのは織田だった。

どうやら織田は教官が話をしているのにキョロキョロと視線を動かしていたらしい。

基本中の基本ではあるが、教官が話をするときは全員が教官の目を見ていなければいけない。

教官以外に視線を向けることは許されない。

やはり、こういった悪い意味で目立つ者はそれだけで教官のターゲットにされる。

百戦錬磨の教官ならば、初日の動きを見ただけでターゲットを定めるものだろう。

こういった者はことあるごとに雷を落とされる。

そして、他の者はそれを見て委縮する。

警察学校ではこのような構図が続く。

だから、悪い意味で目立ってはいけないし、ターゲットにもなってはいけない。

不思議なものであるが、教官からターゲットにされる者はクラス員からも責められる場面が多い。

夕食・風呂も教官の監視が続く

警察学校 夕食・風呂も監視が続く

教官の話が終わったのは午後5時頃。

ここからは夕方の清掃の時間だった。

警察学校では朝と夕の2回清掃の時間があり、各自が持ち場の清掃を行う。

そして、夕方の清掃の終わりには国旗降納があり、警察学校全体に国歌が流れる。

警察学校にいると当たり前のように国歌を聴く機会があるが、入校初日に初めて聞いたときはその独特の雰囲気に戸惑った。

清掃が終了し、なんとなく1日が終わりそうな雰囲気だったが、実際のところはまだまだこんなものではなかった。

次は夕食で、その後に入浴の時間であると指示を受けた。

夕食は昼食と同じように複数の教官が監視をする中での食事だった。

昼食に比べればさすがにお腹は空いていたが、それでも食が進むという雰囲気ではなかった。

このときも与えられた時間は5分あったかどうかで、のんびりする余裕はまったくなかった。

相変わらず教官たちから「ゆっくり食ってる暇はねぇぞ!」などと煽られながらの夕食だったが、これをなんとか乗り越え、浴場に向かった。

食事の時間と同じく、浴場に向かうところから着替えるところまでは教官が張り付いていた。

風呂に入って少しは身体を休めよう…と思っていた矢先、またも教官の怒声が響いた。

 「チンタラしてる時間はねぇぞ!急げ!!」

風呂に浸かっている余裕なんてなく、シャワーで軽く頭と体を洗っただけで入浴の時間は終わってしまった。

もちろん頭を乾かしている時間なんてない。

坊主に近い髪型なので乾かす必要はなかったが、そもそも男子浴場にはドライヤーが置いていなかった。

冗談抜きで、着替えを含め、最初から最後まで5分少々の時間だったと思う。

入浴の時間が終わり、間髪入れずに次の指示が出た。

次はジャージで体育館に集合ということだった。

「こんな時間にまだなにかあるのか…?」

先が見えない恐怖に誰もが怯えていた。

体育館で待ち受けていたのは…

警察学校 夜の体育館で待ち受けるのは

体育館に到着すると、中にはたくさんの教官が待ち受けていた。

夕方の清掃を終え、夕食と入浴を済ませた後の時間だとはとても思えない空気が漂っていた。

そんな異様な雰囲気の中、私たち初任科生はクラスごとに整列するよう指示された。

指揮台に立ったある教官が「今から教練の練習を始める」と言った。

もちろん、なんのことだかさっぱりわからない。

教練というのは警察礼式の1つで、定められた礼式を行うものだ。

教練といっても多彩なものがあるが、わかりやすいところで言うと敬礼回れ右などが該当する。

警察官としてはすべてこなして当たり前のものであり、警察学校を卒業してからも必要になってくる動きになる。

そのため、教練については警察学校で徹底的に叩き込まれるし、警察学校にいるうちに完璧に身に付けておかないと卒業後に恥をかく。

誰もが小学生や中学生の頃に運動会の練習で経験していると思うが、警察では全員が息を合わせてピタリと揃って行わなければいけない。

教練に至っては軍隊のような動きが求められるので、とにかく機敏に動くことが必要になる。

その教練の中でも敬礼というのは警察官として基本中の基本であり、絶対に正確にできるようにならなければいけない。

特に入校当初はひたすら敬礼を練習すると言っても過言ではない。

敬礼は腕を曲げる角度や指の角度が明確に決まっているし、さらに制帽を被っているときと被っていないときではやり方が違う。

簡単そうに見える敬礼だが、実は物凄い時間をかけて練習をしていくものなのである。

そして、実際に敬礼の練習が始まった。

時間にして午後7時過ぎだったと思う。

一応、指揮台に立つ教官から敬礼のやり方の説明は受けたが、初見でいきなりできるわけがない。

その上、全員が動きを合わせることなんていうのは不可能に近いだろう。

しかし、教官たちからすればそこが狙い目なのである。

少しでも動きや角度が違えば、まるで”恨みでもあるんじゃないか”というくらいの勢いで怒鳴ってくる。

流れとしては指揮台から号令を発する教官が「敬礼!」と言ったら全員で敬礼を行う。

みんな必死にやっているのだが、もちろん動きはバラバラである。

個々の姿勢や腕の角度もまったくダメなので、周りと動きを揃えるなんて段階ではない。

このような状況に対し、教官たちは「言われた通りやれ!違うだろ!」と容赦なく攻めてくる。

初任科生をぐるっと囲むように教官が配置されているので、至るところから怒号が聞こえる。

あくまで私たちは入校初日なので、うまくできるはずがないが、容赦ない教官たちの攻撃が止むことはなかった。

本当に敬礼の練習だけで1時間半くらいの時間が過ぎただろう。

普通に考えれば異常なのだが、入校初日にしてもう感覚が麻痺している。

結局、合格点がもらえることはなく、この日の練習はこれで終わりとのことだった。

誰もが「ようやく1日が終わった。長かった」と安堵感に浸ったが、斎藤教官から驚きの発言が飛び出す。

「全員でスクワットしろ」

もう精神的にはとっくに限界がきていたし、体力的にも激しく消耗していた。

この状況でなぜスクワット…

だが、教官の言うことは絶対である。

整列していた私たちは素早く間隔を作り、全員でスクワットを行った。

予想がつくかもしれないが、次の指示は「全員で腕立て伏せしろ」だった。

先ほどシャワーを浴びたばかりなのにもう汗びっしょりである。

もうめちゃくちゃだ。

これが警察学校というところなのだろう。

この状況を受け入れるしかないので、大声を出しながらなんとか全員で頑張った。

この後、すぐに夜の点呼が行われた。

夜の点呼とは教官から明日の指示があったり、各クラス員が揃っているかを確認する作業があったりする。

同じような点呼は朝にもあり、朝夕の点呼は警察学校で生活している初任科生がすべて集まる。

夜の点呼も動き方がすべて決まっており、各クラスがきっちり整列した状態で行われる。

入校初日の私たちは動き方がわからないため、この日は先輩たちの動きを見学するだけだった。

すべてが終了したのは午後10時頃。

消灯時間が午後11時なので、あと1時間で寝れるところまでようやくたどり着いた。

あとは寝るだけ…と思いきや、この日から実習日誌毎朝提出するよう指示を受けた。

実習日誌とはその日学んだこと、反省点などを書いて翌朝教官に提出するものだ。

この日は残り1時間で実習日誌を書き上げなければいけない状況であった。

そのため、寮に戻って寝る準備をしながら、急いで実習日誌を書き上げる予定だった。

ところが、寮に戻ってから衝撃の展開が待ち受けていた。

突然の退職

寮に戻ると、同じクラスの高橋(仮名)が深刻そうな顔をして廊下に立っていた。

何をやっているのかと思いきや、どうやら寮に戻ってくる間に斎藤教官に退職することを申し出たらしい。

入校式で退職した者に続き、初日にして2人目の退職者である。

しかも高橋にあっては同じクラスの者だった。

生憎だが、高橋は同じクラスとはいえ部屋も違うし、会話をする機会すらなかった。

どんな人物だったのかもまったくわからず、顔もハッキリとは覚えていない。

せっかく日中に荷物整理をしたばかりだったが、高橋はすぐに退寮することになったそうで、帰る支度をしていた。

しかし、残酷なことに彼の手伝いをしている時間は私たちにはなかった。

なにせ消灯時間まで1時間を切っているし、実習日誌も書き上げなければいけない状況だったからだ。

一般の感覚で言えば、高橋に対して私たちはあまりにも冷たい対応と思われるだろう。

荷物の片付けを手伝ったり、せめて見送りくらいするのが普通なのかもしれない。

だが、高橋はもう退職が決まった者であり、今後会うことはよほどない。

警察学校は集団生活についてこれない者は容赦なく切り捨てられるし、切り捨てられた者に温情をかけることもない。

温情をかけていれば自分の首を絞めるだけだ。

警察学校はこれくらい厳しい世界であることを知っておいて欲しい。

もちろん、高橋の退職はクラスにとって衝撃だった。

まさか自分のクラスから1日で離脱者が出るとは誰もが思っていなかっただろう。

この時は誰もが精一杯だったため、自分のことに必死だった。

私が消灯時間までになんとか実習日誌を書き上げた頃、既に高橋は警察学校を後にしていた。

-続く-

【実録警察学校】第4話「なんとか初日を乗り越えたと思ったが…」

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