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【警察学校】初任補修科ってなに?なぜ2回も警察学校に入校するの?

警察学校を卒業した後、もう1度警察学校に入校すると聞きました。なぜ2回も入校するのですか?

警察官採用試験に合格し、最初に警察学校に入校するのは初任科(しょにんか)といいます。(初任科に入校する者を初任科生と呼ぶ)

初任科は大卒程度なら約6か月、高卒程度なら約10か月を警察学校で過ごします。

警察学校に入校した時点で身分は警察官となりますが、警察学校では現場で働ける警察官になるために法律を勉強したり、訓練を行ったりします。

初任科を卒業すると同時に警察署へ配属され、地域課において交番勤務がスタートし、ようやく警察官としての実戦が始まることになります。

つまり、そもそも警察学校を卒業しなければ警察官として勤務することはできず、警察学校の途中で辞める人はその時点で警察官を退職することとなります。

そんな警察学校は規律が厳しいところであり、自由もないため、誰もが卒業には達成感を感じるものです。

卒業が間近になるとどこか寂しさも感じることでしょう。

しかし、もう一度警察学校に入校したいか?と聞かれたらほとんどの経験者はノーと答えるはずです。

「大変だった警察学校ともこれでお別れ。二度と来ることはないだろう…」

警察学校を卒業するときにはこう思いたいところなのですが、残念ながら警察学校との関係はこれで終わりではありません。

初任科を卒業してから約半年後、次は初任補修科(しょにんほしゅうか)として再び警察学校に入校しなければいけないのです。(初任補修科生と呼ばれる)

せっかく頑張って卒業した警察学校になぜ戻らなければいけないのか?

警察学校に2回も入校するのはなぜか?

この記事では2回目の警察学校入校となる初任補修科について詳しく紹介し、警察学校に2回入校する意味などを解説します。

初任補修科とは?

初任補修科とは

初任補修科とはその名の通り「初任科の補修をする」課程となります。

基本的な生活は初任科と変わりませんが、授業の内容や各種検定が初任科とは違ってきます。

そもそも初任科は警察官の基礎として

  • 厳しい上下関係
  • 厳しい規律
  • 協調性の重要性
  • 法律・実務の基礎

を学び、警察官としてのスタートを切る課程でした。

既に身分は警察官ですが、現実的に言えば「ちょっと法律を学んで、ただ制服を着ているだけ」の状態です。

警察官として現場に出たわけではないので、残念ながらなんちゃって警察官の状態と言えるでしょう。

しかし、初任科を卒業すれば交番での勤務が始まり、名実ともに警察官となりますし、警察学校を卒業してから数日後には色々な事件を経験する人も出てくるでしょう。

また、警察学校を卒業したばかりでも市民から見れば1人の警察官として見えますので、毅然とした態度で仕事に臨まなければいけません。

「わからない」は通用しない

新人警察官は右も左もわからない状態で勤務をすることになるため、わからないことばかり。しかし、市民は一人の警察官として見てくるため、「新人だからわかりません」では通用しない。

では、現場に出れば初任科の経験を活かしてすぐに戦力になれるのか…と言えばまったくそうではありません。

警察学校を卒業したばかりの新人警察官は残念ながらまだまだ半人前にも満たない戦力でしかありません。

むしろ上司からすれば新人は動きがまったくわかっていない分、危険な目にも遭いやすいためマイナスの存在であることは確かです。

厳しい言い方になってしまいましたが、これは仕方のないことです。

なぜなら、初任科では実践的なことよりも基礎的なことを学ぶ方が多いので、初任科を卒業したからといって即戦力になれるわけではないからです。

警察学校を卒業していきなり一線級で活躍する人はほぼいません。

そこで、改めて警察官の仕事について学ぶのが初任補修科になるわけです。

初任科を卒業して4か月ほど現場での勤務を経験した後、全員が初任補修科に入ることになります。

初任補修科は職務質問の訓練通報への対応事件処理のための書類作成など、現場で役に立つ実践的な授業が多いのが特徴です。

また、無線検定、鑑識検定などあらゆる検定試験があるのも初任補修科ならではのことです。(検定については各都道府県によって異なる)

初任補修科入校までのスケジュールについては次項で詳しく解説します。

初任補修科入校までの日程

初任補修科入校までの日程

初任科を卒業したあと2年間は必ず地域課(交番やパトカー)での勤務となるので、まずは全員が各警察署の地域課に所属することになります。

そして、地域課での勤務+その他の研修を合わせて約4~5か月経ったくらいで初任補修科に入校することとなります。

つまり、初任科を卒業して半年以内には再び警察学校に入校することになるわけです。

感動的な卒業式を終えた半年後にはまた警察学校に戻ることになるので、本当にあっという間のことだと思います。

この間は仕事を覚えたり、雑用を覚えたり、先輩との付き合いがあったりで本当に慌ただしい日々を送ることになるでしょう。

初任補修科入校までのスケジュール
  1. 初任科卒業
  2. 警察署の地域課に配属
  3. 約4~5か月、現場での勤務を経験
  4. 初任補修科入校、再び警察学校での生活が始まる

初任補修科に入校するまでのスケジュールは都道府県によって様々ですが、おおよそ初任科を卒業してから半年以内には入校することとなります。

「せっかく頑張って初任科を卒業したのにもう警察学校に戻るの…?」

警察学校に戻らなければいけない現実に対し、こう思う気持ちは理解できます。

初任補修科は大卒程度なら約2か月、高卒程度なら約3か月の入校期間となり、生活スタイルは初任科と変わりません。

初任科と同じく入校中は警察学校の寮で生活をすることになりますし、自由に外出できるわけでもありません。

では、初任補修科でもまた厳しい生活が待っているのか?教官に怒られる日々が続くのか?

初任補修科の生活については次項で詳しく解説します。

初任補修科での生活は?

初任補修科でも教官に怒られる?

初任補修科生として警察学校に戻ったとき、また初任科のように教官に怯えながら過ごす生活になるのか…?

入校して最初の1か月は外泊できないのか…?

安心してください、その答えはノーです。

結論から言うと、初任科と初任補修科ではまったく扱いが変わり、初任科のような厳しい生活にはなりません。

実際に私も初任補修科のときはほとんど怒られませんでしたし、授業や訓練を淡々と受け、課外時間もゆっくり過ごしていました。

初任科では鬼のように怖かった教官たちの変わりっぷりに驚いたくらいです。

また、初任科のように最初の1か月は指導強化期間で家に帰れないということもないので、初任科に比べれば生活はかなり楽になります。

初任補修科と初任科の違い
  • 所属は警察署

初任補修科に入校するとき、所属は警察学校ではなく、勤務する各警察署になっている。つまり、教官=直接の上司ではなくなるため、初任科のように怒られることがない。

  • 能力向上が目的

初任補修科では初任科と違い、実戦的な授業や訓練が多い。よって、あくまで実務能力を向上させるのが目的のため、どちらかと言えば規律よりも育成に注力される。

  • 先輩の立場になる

初任補修科に入校する際、警察学校には後輩期生の初任科生がいる。つまり、既に先輩の立場となっているため、必要以上に怒られない。

当然、初任補修科として入校するということは既に初任科を卒業しているということなので、改めて警察学校の厳しさを教える必要がないという理由もあります。

さらに各警察署で現場の勤務を経験しており、規律についても十分理解をしています。

そのため、初任補修科では初任科のように厳しさを叩き込むのではなく、現場で活躍できるよう実務能力を向上させるのが狙いなのです。

ただし、生活自体は初任科と一緒なので、朝からランニングをしたり、日々課題をこなしたりというのは変わりません。

また、常に後輩が自分たちのことを見ていますので、先輩らしくしっかりした態度を取ることも必要になります。

あまりにもダラダラ過ごしていると教官から怒られることはありますので、誤解がないようにしてください。

ちなみに私のときは初任科と同じく平日は携帯電話が使えませんでしたし、外出&外泊も週末のみでした。

生活自体は初任科と大きな差はありませんが、精神的にはかなり楽になるので、必要以上に心配はいりません。

余談ですが、私の場合は初任科でお世話になった担任教官が本部に異動してしまったので、初任補修科では別の教官が担任教官となりました。(初任科のときから知っていた教官)

教官の個人差があるかもしれませんが、初任補修科では教官の態度もガラっと変わり、とても話しやすい雰囲気でした。

初任科では教官と初任科生という関係でしたが、初任補修科では同じ組織の警察官(上司と部下)というような感じです。

なお、授業の科目としては初任科のときとほぼ変わりはありません。

待ち受けているのは各種検定

初任補修科では各種検定に追われる

ここまで初任補修科について紹介してきましたが、多くの方は「初任科とは違って楽ができそうだ」「そんな生活なら楽勝だ」と思ったのではないでしょうか?

確かに初任科に比べれば必要以上に追い込まれることはありませんし、怒られる機会も少ないので、初任科よりゆっくりできるのは間違いありません。

なので、初日から退職者が出るなんていうことはありませんし、全体の1割が退職していくなんてこともありません。

しかし、初任補修科で一番気を付けなければいけないのは各種検定です。

これは各都道府県によって違いがあるかもしれませんが、私がいた県警では初任補修科で様々な検定が待ち受けていました。

検定は合格しないと実務に影響が出るものもいくつかあるので、確実に合格しなければいけません。

初任補修科での検定
  • 柔道・剣道の段位検定

初任補修科では柔道・剣道の初段を取得する。合格するためには同期との試合で勝利しなければならない。

中には警察署で訓練を積んで急激に成長している者がいるので、油断は禁物。

  • 刑事検定

事件を想定した現場での鑑識活動、事件処理を想定した書類作成など、現場で必要になる知識・技術の習得を目指す。

  • 四輪検定

警察車両(パトカーや覆面パトカーなど)を運転するための運転検定。この検定に合格しないと仕事で車を運転することができない。(不合格だと所属でかなり怒られる)

この他にも色々と検定がありますが、これらの検定は最終的にすべて必ず合格しなければいけません。

もし合格できなかった場合は不合格のまま初任補修科を卒業することになります。

不合格のままでは許されませんので、所属に戻ってから休日を使って警察学校に行き、各検定を受け直すことになる可能性もあります。

初任補修科を卒業してからわざわざ再度検定を受けることは本当に大変ですし、不合格の検定があると上司からも怒られます。

初任補修科では楽な生活ができることは間違いありませんが、このような検定に合格しなければいけないプレッシャーは強いです。

しっかり勉強や訓練をやっておかないと簡単には合格できませんし、初任科と同じく定期試験もありますので、勉強の面ではしっかり準備が必要でしょう。

私の失敗談ですが、私自身、初任補修科では少し気が抜けており、ある1つの検定で不合格になってしまいました。

この結果に対して所属の上司や先輩には怒られましたし、再度検定を受けてるために警察学校に通うなどしてとても苦労をしました。

これは自分の警察人生でもワースト3に入るほどの失敗だったので、「あのときもっとしっかりやっておけば…」という後悔が残っていることでもあります。

生活が楽だからと言って気を抜きすぎるとこのようなことになってしまうので、十分注意してください。

初任補修科の卒業後は?

初任補修科を卒業した後は?

初任補修科は初任科に比べて入校期間がかなり短いので、本当にあっという間に終わってしまいます。

精神的に余裕がある生活ができますし、同期と談笑する時間もあるので余計に短く感じます。

そんな初任補修科ですが、卒業したあとは一人前の警察官として上司からは見られるようになります。

逆に言うと初任補修科卒業後は「わかりません」だけでは済まされず、一人前の警察官としての行動が求められるということでもあります。

初任科を卒業したあとは単なる新人警察官の扱いでしたが、初任補修科を卒業後は仕事の幅も広がっていくことになります。

もちろん実務上ではまだまだわからないことが多いのが現実ですが、その頃には後輩もできていますので、先輩として手本となるような仕事ぶりが必要になってくるでしょう。

一人前の階段を上がっていく

初任補修科を卒業したあとは「仕事がある程度わかっている」とみなされるようになるので、新人警察官であることは変わらないが、いつまでも新人の気分ではダメ。ここからは一人前の警察官としての階段を上がっていくタイミングになるので、自らの手で実績を作っていくことも求められる。

初任補修科を卒業すると人によっては異動のタイミングで交番が変わることがありますし、上司が変わることもあります。(警察署は変わらない)

また、早い人であればパトカー乗務員に抜擢され、パトカーに乗れるようになる人もいます。

さらにこれまでは上司と付きっきりで行動していたものが、1人でパトロール取締りに従事するようになりますので、これまで以上に知識や技術が必要になってきます。

通報にも1人で対応する場面が出てきますので、しっかり処理できるようになっていなければいけません。

初任科と初任補修科では卒業後の扱いが変わってくるので、自分自身の意識も変えていく必要があるでしょう。

※近年は警察官が狙われる事件が相次いでいるため、単独行動が禁止されている場合も多いです。

3回目の入校はある?

3回目の警察学校入校はある?

実はあまり知られていない初任補修科について解説しましたが、回目の警察学校入校はあるのか?と気になった方も多いのではないでしょうか。

結論から言いますと、クラス単位で警察学校に入校することは初任補修科以降はありません。

同期と警察学校で集団生活をするのは初任補修科が最後になります。

実際のところ、初任補修科を卒業した後は同期と顔を合わせる機会も減り、会うのは仲のいい同期だけになっていきます。

初任補修科卒業後も同期が集まってクラス会(飲み会)が行われるものですが、年数が経つにつれて回数は減っていきます。

最初の2年間は全員が地域課で勤務しますが、それ以降は部署もバラバラになるので、同期で予定を合わせることも難しくなっていくものです。

仲間でもありライバルでもある

初任科、初任補修科と長期間一緒に過ごした同期は最高の仲間でもあり、ライバルでもあるので、初任補修科を卒業した後はそれぞれ切磋琢磨する存在となる。中には一発で昇任試験に合格する同期もいるので、同期が上司になることも当たり前になる。

初任補修科を卒業した後は個人で研修訓練のために警察学校に入校する機会はありますが、そのような機会は頻繁にあるわけではありません。

例えば、刑事課に入る場合は警察学校において泊まり込みで刑事研修がありますし、白バイ隊員を目指す場合も泊まり込みでの研修があります。

また、昇任試験に合格すると管区警察学校に入校することになり、1か月半程度生活することになります。

これら以外では警察学校に入校する機会はよほどありませんので、初任補修科卒業後はひとまず警察学校での生活とはお別れになります。

警察学校には本当に数多くの思い出がありますので、少し寂しい気持ちにもなりますが、仕方ありません。

今後はどんどん先輩になっていく立場ですし、人によっては教官として警察学校に戻ることもあり得るでしょう。

まとめ

今回は2回目の警察学校入校となる初任補修科について詳しく紹介しました。

初任補修科は意外と知られていないので、「2回も警察学校に入るの?」と驚いた方もいるのではないでしょうか。

初任補修科は初任科とは違って生活自体は楽ですし、教官から怒られる機会もほとんどありません。

ただし、各種検定があるので、勉強しなければいけないのは変わりなく、気を抜きすぎると痛い目を見ます。

さらに卒業後は一人前の警察官として上司から見られますし、新しい後輩も入ってきますので、いつまでも新人の気分ではいられなくなります。

初任補修科卒業後はしっかり気持ちを切り替え、一人前の警察官として仕事をするよう意識してください。

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