警察官採用試験に合格したら誰もが入校することになるのが警察学校です。
警察学校は警察官を目指していない人でも聞いたことがあるものだと思いますし、最近ではドラマ教場も放送されてさらに馴染みのあるものになりました。
警察学校は学校という名前がついていますが、一般的な学校とは大きく異なる場所です。
集団行動、厳しい規律、恐い教官、自由のない生活などなど、これまでの生活環境から180度違う世界となるため、それだけ”思い出深い場所”でもあります。
警察学校のことは警察官経験者なら誰もが忘れられないものでしょう。
今となっては笑い話になることが多数ありますが、私自身も当時は歯を食いしばって辛い生活に何とかしがみついていたものです。
警察学校はただ何となく生活しているだけでは流れについていけない場合があり、平均すると入校者の1割以上が退職していく厳しい世界。生半可な気持ちでは続かない。
そんな警察学校では日々様々な出来事があり、楽しい思い出があれば辛い思い出もあります。
教官から怒られた思い出や同期と和気あいあい楽しんだ思い出など、これらを語り出したら止まりません。
警察学校に入校していた時期からかなりの時間が経過していますが、当時のことは未だに鮮明に覚えています。
また、警察学校で行われる授業や訓練は厳しいものがたくさんあり、こちらは辛い思い出の方が圧倒的に多く、脳裏に焼き付いています。
訓練によっては”もう二度と受けたくない”と思えるものもありますし、毎回憂鬱な気分になっていた授業もあります。
とにかく怖かった教官、厳しすぎて離脱者が続出した訓練など、当時を思い出すとおぞましい記憶がよみがえります。
そこで、この記事では警察学校で辛かった授業&厳しかった訓練について紹介し、当時を振り返りながらその中でのベスト5を発表します。
あくまで当時の思い出話ですが、今でも大きくは変わっていないと思いますので、1つ参考にして頂ければ幸いです。
目次
警察学校はなぜ厳しい?
まず始めになぜ警察学校は厳しいのか?について紹介します。
よく勘違いをされるのですが、警察学校は警察官になるための勉強をする専門学校ではありません。
あくまでも警察学校は警察官採用試験に合格した人だけが入校する訓練校であり、逆に言えば警察官採用試験に合格したら絶対に入校しなければいけない場所です。
学校という文字が使われているので誤解を受けやすく、私自身も当時は「警察官を目指しています」と周りに言ったら「警察学校に通って勉強するの?」というのはよく言われました。
警察学校は普通の学校ではないので、様々な独自の規則があり、ひとたび入校すれば自由な時間も奪われるほどです。
警察学校が厳しい理由はいくつもありますが、
- 教官に怒られる機会が多い
- 教官から理不尽なことを言われることが多い
- 都道府県によっては平日は携帯没収
- 朝から晩まで授業や訓練がある
- 週末しか外出できない
といったところが大きいと思います。
これらすべてを当たり前にこなすのが警察学校ですので、一般的な生活ではないことがわかって頂けると思います。
警察学校で大変なのは常に集団行動であるということ。一人になれる時間は布団に入るときくらいだし、誰かが問題を起こせば連帯責任となる。
もちろん警察学校が厳しいのには明確な理由があります。
当然ながら警察学校は一人前の警察官を育成する訓練校であり、ただ単に思い出作りをするところではありません。
警察学校を卒業して警察署に赴任すれば、すぐに現場での勤務が始まることになります。
制服を着て勤務をしていれば、数日前に警察学校を卒業したばかりの新人警察官であっても一人の警察官です。
市民は新人だからといって甘く見てくれるわけではないですし、すぐに重大事件の現場に臨場することになるかもしれません。
警察学校で生ぬるい生活をしていても弱い警察官しか育たないので、警察学校は厳しい場所となっているのです。
この厳しい生活を乗り越えてやっと警察官としての勤務がスタートできます。
よって、警察学校が厳しいというのは至極当たり前のことなのかもしれません。
そんな中で辛かった授業や厳しかった訓練について、ランキング形式で紹介していきます。
厳しかった訓練 第5位 教練
ここからはランキング形式で警察学校で辛かった授業&厳しかった訓練について紹介してきます。
まず、厳しかった訓練の第5位は教練です。
教練とは警察礼式を身に付ける訓練で、わかりやすい例で言うと敬礼や回れ右などがあります。
これらは警察官ならば絶対に身に付けておかなければいけないものなので、警察学校では基礎から徹底的に叩き込まれます。
私自身が入校していたときは入校初日から教練の訓練が行われたくらいでした。
警察官なら誰もが行う敬礼ですが、敬礼1つにしても制帽を被っているときと脱帽しているときでは動作が異なります。
実は一般の方でも知っている右手を横に向けて行う敬礼は制帽を被っているときにしか行いませんし、この敬礼にあっても腕の角度が決まっています。
また、警察手帳を素早く取り出したり、警棒を素早く抜いて構えるなどの動作も必要になってくるので、様々な動作を覚えていかなければいけません。
教練の難しいところは体で覚えるというところにあると思います。
教練の難しいところは参加者全員で動きを合わせるというところにもある。一人でも乱れれば全体が乱れているように見えてしまうため、全員で息を合わせる必要がある。
教練が厳しかったと感じる理由は初任科生を囲む教官たちの存在です。
教練の訓練は期生のすべてのクラスが合同で行う場合が多いので、それだけ訓練を見守る教官も数多くいました。
そんな張り詰めた空気の中、教官たちは初任科生を囲むように立っており、初任科生に対して鋭く目を光らせています。
目を光らせる理由は少しでも間違った動きをした者や乱れた動きをした者をすぐに叱るためです。
むしろ教官たちはミスをする者を探しており、それはまるで獲物を探すかのような視線でプレッシャーをかけてきます。
私はこの教官たちのプレッシャーがすごく嫌でした。
少しでも間違えると「お前やる気あんのか?!」と怒鳴られるのが当たり前でしたので、常に「間違えたらどうしよう…」と不安を抱えていました。
実際、少しミスをして隊列から除外されたことは何度もあるので、苦い思い出が多いです。
ただし、教練で学ぶ動きは警察学校を卒業してからもずっと必要になるものなので、警察学校で身に付けておかなければいけないものでもあります。
辛かった授業 第4位 体育
警察学校で辛かった授業の第4位は体育です。
警察学校でも中学校や高校のように体育の授業があり、週に1回はスケジュールに組み込まれていました。
そんな体育の授業の思い出と言えば、ひたすら走らされたことしかありません。
とにかくしごかれた記憶が強いので、辛かった授業の第4位にランクインとなりました。
当時を思い出すと体育=憂鬱という記憶ばかりが残っています。
体育というとサッカーやバスケットボールを行うイメージがあるかもしれませんが、警察学校の体育はそのようなものではありません。
警察学校の体育は体力強化を目的にしたものが多く、
- ランニング・持久走
- 腕立て伏せ・腹筋
- スクワット
などの体力トレーニングが中心となります。
また、体育を担当する教官は初任科生を追い込むのが好きな人ばかりだったので、必然的に強度も強いものになりますし、受ける側としては辛いものばかりでした。
体育担当の教官で優しかった人は記憶にありません(笑)
警察学校では体育以外にも体力トレーニングを行う時間が多いので、やはり体力作りは大事になる。入校までに基礎体力をつけておくことは必須と言えるだろう。
体育が辛いと感じた理由は教官の存在というのも大きかったかもしれません。
私のクラスの体育を担当していた教官は当時の警察学校で一番ヤバいと言われていた教官だったので、授業はとにかく鬼畜なものばかりでした。
吐く寸前まで追い込まれることも珍しくなく、毎回体力の消費が半端じゃなかった記憶しかありません。
そのおかげで当時はかなり体力が向上しましたが、やはり辛かった思い出の方が強いので、体育の授業だけはもう受けたくないと思っています。
また、体育は必ず着替えをしなければいけないので、地味にその点も辛かった記憶があります。
警察学校の座学の授業は制服で受けるのですが、体育などの着替えが必要な授業は短い休憩時間でジャージに着替えをしなければいけません。
もちろん授業は5分前集合が当たり前なので、瞬時に着替えて瞬時に移動するというのはなかなかの負担でした。
こういったところではスピード勝負になりますし、一人でも遅れるとクラスに迷惑をかけることになるので、周りについていくスキルというのはとても大事になります。
また、体育は体力トレーニングが多い分、怪我をしやすいという面もあるので、怪我だけは注意をしましょう。
辛かった授業 第3位 拳銃訓練
警察学校で辛かった授業の第3位は拳銃訓練です。
拳銃訓練はその名の通り拳銃を撃つ訓練をするものですが、とにかく体力的にも精神的にも疲労する訓練でした。
訓練自体が短時間では終われないので、大体拳銃訓練は2コマ連続して行われるものです。
そんな疲労する訓練が2コマ連続であるという点も辛かった記憶に残りやすいのでしょう。
拳銃訓練は特に体力トレーニングなどがあるわけではないのですが、なぜか疲れてしまうので第3位にランクインしています。
警察学校には必ず射撃場があり、拳銃訓練は射撃場で行います。
教場から射撃場までは距離があるのですが、射撃場までは走っていかなければならないルールがあったので、まずは移動が大変でした。
拳銃は意外と重量があるので、これを腰につけた状態で走るというのは想像以上にきついものになります。
ですので、射撃場に移動するまでに意外と疲れるというのが拳銃訓練の特徴でした。
拳銃訓練は警察学校の中でも絶対にミスが許されない訓練といっても過言ではない。実際に射撃を行うので、万が一ミスがあれば単なるミスでは済まない。
そして、射撃場に到着してからは一瞬の気の緩みも許されない厳格な雰囲気なので、精神的に疲労することになります。
射撃場では笑ったり、ふざけたりすることが許されないので、それだけ訓練に集中しなければいけません。
射撃をする際にわずかなミスが発生すれば重大な事故に発展する可能性も十分あるので、本当に集中して臨まなければいけない訓練です。
実際、ちょっとしたミスをすれば教官からはかなり叱られます。
また、射撃をする姿勢は簡単に崩すこともできず、同じ姿勢で拳銃を構え続けることも多いのが特徴です。
拳銃を構える姿勢はいくつか決まりがあるので、それに従って訓練を続けていくことは辛いものがあります。
さらに拳銃訓練は基本的には2コマずっと立ちっぱなしになるので、そういった面でも疲れがきます。
拳銃は発射をする際に大きな反動があるため、手指が痛いという特徴もある。地味だが、何発も発射をすると痛みがどんどん増していく。
冒頭でも書いた通り、拳銃訓練は体力的にも精神的にも疲れるという思い出が強く残っています。
拳銃訓練は警察学校を卒業してからも定期的に行うものですが、やはりいつ行っても疲れる印象は変わりませんでした(笑)
何年やっても最後まで苦手な訓練の1つでしたので、特に記憶に残っているのかもしれません。
ちなみに拳銃の腕前は下手でもなく上手でもなくという程度でした。
落ち着いた状態で発射をしても完璧には狙ったところにいかないので、実戦で拳銃を発射することがいかに難しいことなのかは容易に想像がつきます。
厳しかった訓練 第2位 柔道
警察学校で厳しかった訓練の第2位は柔道です。
これまた強烈にしごかれた記憶しかないので、堂々の第2位にランクインです。
警察学校に入校すると全員必ず柔道か剣道を選択することになり、ほぼ毎週授業があります。(これらを術科訓練と呼びます)
絶対にどちらかは選択しなければいけないので、術科訓練を避けて通ることはできません。
もちろん柔道の訓練も毎回のように憂鬱になっていましたが、逃げ道がないので立ち向かっていくしかありません。
安心して頂きたいのは9割以上が初心者なので、「経験がないから…」と不安に思う心配は不要です。
柔道と剣道のそれぞれの特徴について簡単に紹介します。
- 柔道
柔道着だけを買えばいいので費用が安い
剣道に比べて体力の消耗が激しい
現場においては剣道よりも役に立ちやすい
柔道は体力を必要とするスポーツなので、それだけ授業内でもトレーニングが多くなります。
先ほど紹介した体育とはまた違ったキツさがあると言えるでしょう。
ただし、柔道は剣道に比べて費用が安く済みますし、現場においても犯人を制圧するときは非常に役に立つ技術になります。
柔道 基本と戦術 (PERFECT LESSON BOOK)- 剣道
防具を一式揃えるので初期費用が高い
体力的には消耗が少ない
防具の装着は夏場だと大変暑苦しい
剣道はなんといっても初期費用が高いという点が大きな特徴で、5~7万前後することも珍しくありません。
体力的には消耗が少ないですし、激しい筋力トレーニングなどもないですが、現場ではなかなか技術を生かす機会が少ないです。
私自身は心身共に強くなりたいという思いがあったので、迷わず柔道を選択しました。
柔道を選択したことに後悔は一切ありませんが、訓練の中身は非常に過酷なものでしたので、それだけ記憶にも残っています。
腕立て伏せやスクワットは当たり前で、うさぎ跳びや馬跳びといったキツいメニューもたくさんあり、毎回ヘトヘトになるまでトレーニングしていました。
柔道は技をかける、技を受けるという練習もありますが、ひたすら組み合いを続けるといった練習もありました。
とにかく全身疲労して頻繁に筋肉痛にもなっていたので、本当に大変だった思い出ばかりです。
柔道は激しい試合になることもあるので、怪我に注意しなければいけない。どうしても脱臼や骨折といった怪我をする者も出てしまう。
当時、初めて柔道を経験して強くなった気分になれたので、警察官としては大事な要素なのかもしれません。
警察学校卒業後は凶暴な者を相手にすることもあるので、柔道で身に付けた制圧術というのは非常に役に立ちました。
「強くなりたい」と思っている方には柔道を選択することをおすすめします。
厳しかった訓練 第1位 警備実施
警察学校で厳しかった訓練の栄光の第1位に輝いたのは警備実施訓練です。
これは警察学校経験者なら誰もが同じように1位に挙げる方が多いかと思います。
もはや警察学校の名物の訓練ですし、これを経験しなければ警察学校とは言えないくらいです。
警察学校の思い出はたくさんありますが、警備実施訓練だけは本当に今までに経験したことがない過酷な訓練でしたので、今でも鮮明に覚えています。
そんな辛い思い出を紹介していきます。
警備実施訓練とは機動隊と同じ装備を着装し、各種訓練を行うものになります。
機動隊の装備とは出動服に身をまとい、
- 防護用のヘルメット
- プロテクター
- 警備靴
を装着することになります。
これだけでも十分身動きがとりにくいのですが、ここに重量のある大楯を持つことになるので、歩くだけでも大変という装備になっています。
これだけ重厚な装備を身に付けているにも関わらず、炎天下の中でもランニングを行うのが警備実施訓練の名物と言えるでしょう。
警備実施訓練はとても過酷なものとなるため、足元にダメージが蓄積されやすい。特にすぐ靴下がダメになってしまうので、当時は靴下を2枚重ねて履いていた。
警備実施訓練はこれらの装備を身に付けてランニングを行うので、実は倒れる者が続出する訓練でもあります。
夏場であれば熱中症のような症状でダウンする者は珍しくなく、連鎖するように次から次へとクラス員が倒れていきます。
私自身のクラスでも同様のことがありました。
他のクラスが訓練を行っているときは意識朦朧で何名かが倒れてしまい、救急車が出動する騒ぎになったこともありました。
警備実施訓練はそれだけ過酷な訓練となりますので、二度と受けたくない訓練の1つです。
私は何とか倒れることはなく最後まで食らいつくことができましたが、これまでの人生で経験したことがないくらいの大量の汗をかいたことを覚えています。
もちろん警備実施訓練を担当する教官は機動隊出身なので、バリバリしごかれることになります(笑)
警備実施訓練も拳銃訓練などと同じように2コマで組まれることがほとんどです。
毎週必ず行われる訓練ではありませんが、訓練を迎える前日からクラス全体が憂鬱な気分になっていたのはいい思い出です。
とにかく気合を入れて臨んでいたので、訓練が終わったあとは大きな達成感を感じていました。
今になって警備実施訓練を受けたくはありませんが、あの達成感だけはもう一度味わってみたいと思う今日この頃です。
まとめ
今回は警察学校で辛かった授業&厳しかった訓練についてランキング形式で5つ紹介しました。
今回の記事をまとめると
- 第5位 教練
- 第4位 体育
- 第3位 拳銃訓練
- 第2位 柔道
- 第1位 警備実施訓練
ということになります。
いずれも体力的にきつかったものばかりで、今思うと精神的に追い詰められるものはあまり記憶に残っていませんでした。
やはり体を張って汗を流したものは記憶に残りやすいのだと思います。
今回紹介した授業や訓練はすべて辛かったですが、それと同時に達成感を感じるものも多かったのは間違いありません。
これらを乗り越えたから警察官として自信をもってやっていけましたし、長年警察官を続けることができました。
警察学校で行う授業や訓練は必ず自分の成長に繋がるものだと言えるでしょう。
警察学校で辛かったことや厳しかったことの思い出話を教えてください。