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【実録警察学校#13】念願の初外泊 まさかの奇襲攻撃を受ける

実録警察学校 第13話

私の警察学校での実体験をお送りする【実録警察学校】の第13話です。

第12話は下記のリンクからご覧ください。

【実録警察学校#12】入校から約1か月、初めての外泊を迎える

警察学校に入校し、念願だった初外泊の日を迎えました。

警察学校に入校してから初めて携帯電話が手元に戻り、自宅に帰ることもできました。

もちろん気分はウキウキでしたが、大きな落とし穴にハマることとなります。

土曜日の夜に警察学校から奇襲攻撃を受けることになるとは夢にも思っていませんでした。

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自宅で朝を迎える

自宅で朝を迎える

警察学校に入校してから初めて自宅に帰宅し、自分の部屋で一夜を過ごした。

眠りにつく前にコンビニで買い込んだお菓子やジュースを存分に堪能したが、それよりも自分の部屋でゆっくり寝られることの方が幸福だった。

朝は時間を気にせずゆっくり寝たかったので、アラームはかけなかった。

それでも警察学校での生活が染みついてしまっていたのだろう、いつもと同じように6時30分頃には自然と目が覚めてしまった。

警察学校では1分でも寝坊をすれば瞬時に窮地に陥るので、1日の始まりは6時30分に必ず起きるということが大事になる。

この癖はやはり自宅にいても変わらなかった。

悲しいことにもはや恐怖感で脳が支配されていたのだろう。

しかし、この日は布団から飛び起きなくてもいい。

急いで着替え、慌ててグラウンドに集合する必要もない。

さらに言えば早朝のランニングだってないのだ。

とても不思議な感覚だったが、時間だけを確認して再び眠りについた。

この日は夜に彼女と食事に行く予定しかなかった。

彼女も就職していたので、彼女の仕事終わりに合流して食事に行く約束をした。

彼女の仕事が終わるのが午後8時頃なので、それまでは完全に自由だった。

一応、斎藤教官から作文の課題を与えられていたが、作文に取り組むとしても時間を持て余すほど余裕はあった。

そのため、せっかくの休日だから一人でどこかに出かけてもよかったのだが、運転免許証は教官に預けたままだったので移動手段は自転車しかない。

さらに髪型は坊主に近い短さだったし、声もガラガラだったので、友達と遊ぶというような気分ではなかった。

よって、作文の課題をこなしながら夜までは自宅でゆっくりすることにした。

警察学校にいればこんなに時間を持て余すことはないし、ある意味で非常に貴重な時間でもあった。

心からリラックスする余裕はない

初外泊 心からリラックスする余裕はない

警察学校で激動の3週間を過ごし、心身ともにとても疲れが溜まっていたのは間違いない。

実際に入校してから体重は約5キロ落ちていたし、様々なプレッシャーを受けて精神的にも疲れていた。

そのため、休日の目的は週明けからの警察学校に備えて心も身体も休ませることだった。

月曜日からは再び警察学校での生活が始まるし、もっと大変な試練が待ち受けているのもわかっていた。

まだまだ先は長いので、休日にしっかりリラックスをしておかないととてもじゃないが最後までもたない。

だから休日の目的を設定したのだが、残念なことに心からリラックスできないのが現実だった。

その理由は休日とはいえどうしても警察学校のことが頭に浮かんでしまうからだ。

月曜日からはどんな授業や訓練があるのか、今度はどんなことで教官から怒られるのか、今後も同期とはうまくやっていけるのか…。

このような先の見えない不安が頭に浮かんで仕方なかった。

休日に仕事のことで頭を抱えることは決していいことではないが、大変な警察学校での生活をしていれば無理もないと思う。

しばらくは休日でも心からリラックスできない日が続く。

とは言っても課題の作文だけはなんとしても終わらせなければいけない。

今どきの作文といえばパソコンで作成すればいいように思うが、斎藤教官の場合は違う。

提出方法はあくまで原稿用紙に手書きで書くという昔ながらのやり方だった。

さらにもう1つの難点が提出用の原稿用紙は警察学校で配られるということ。

これがなにを意味するかというと

  • 自宅に原稿用紙はない
  • 提出用の作文を書けるのは警察学校だけ
  • 清書するために早めに警察学校に戻らなければならない

ということだ。

さすがは斎藤教官といったところか。

とにかく我々初任科生を苦しめるのが得意である。

自宅では作文の課題を終わらせることができないので、あくまで下書きを考えるだけ。

下書きの持ち込みは禁止されていなかったが、自宅で下書きを完成させ、警察学校に戻ってから手書きで書き直すという面倒な手順を踏まなければいけない。

ここまで初任科生に面倒なことをやらせるかどうかは教官次第。

教官によってはすんなりと原稿用紙を渡してくれる人もいるだろう。

1つだけ言えることは斎藤教官が異常だということだ。

彼女と合流し食事を楽しむ

初外泊 彼女と合流し食事を楽しむ

そんな面倒な課題の作文だが、半日もあれば下書きは完成する。

合格点の内容かどうかはさておき、一応やるべきことは終わった。

あとは彼女の仕事が終わるのを待ち、食事に出かけるだけだ。

再度説明しておくが、この時点ではまだ運転免許証を教官に預けたままだったので、移動手段は電車か自転車しかない。

当時は車を持っていたが、しばらく乗る機会がなさそうなので早めに売却する予定にした。

斎藤教官からいつ運転免許証が返してもらえるかわからないし、卒業まで返してもらえない可能性もある。

さすがに運転免許証を持っていない状態で運転するわけにはいかないし、そこまでのリスクをとるつもりもなかった。

これは1つの分岐点でもあるのだが、私のように運転免許証がないから運転はしないという選択は当たり前のことである。

しかし、「少しくらい大丈夫でしょう」と思って運転する者だっている。

確かに警察官に見つからなければ免許証不携帯が発覚することはないが、あまりにもリスクが高すぎる。

不祥事を起こす警察官というのはこの分岐点で判断を誤る場合がほとんど。

1つ参考にしてもらいたい。

初めての休日をゆっくり過ごしていたところ、予定の午後8時が近付いてきた。

車が使えないため、自宅近くの最寄り駅の飲食店に行くことにした。

考えてみれば彼女と会うのは約1か月ぶり。

警察学校入校前は当たり前のように遊んでいたし、何不自由なく一緒に楽しい時間を過ごしてきた。

それが警察学校に入校してから一変し、強制的に二人に距離が生まれてしまった。

初外泊があるまで連絡すら取れない日々を過ごしてきたが、この日はようやく顔を会わせることができる。

長く付き合っていた彼女だったが、久しぶりの再会ということもあって変な緊張感はあった。

待ち合わせの午後8時を少し過ぎた頃、彼女が駅から降りてきた。

なんだか照れくさい再会となったが、お互い自然と笑みがこぼれる。

警察学校での指導強化期間を耐えられたのは間違いなく彼女の存在が大きかった。

彼女と再会することを目標に頑張ってきたと言っても過言ではないし、成長した姿を見せたいという思いもあった。

だから当時の彼女には感謝の気持ちがあり、なにか恩返ししていければという気持ちもあった。

だから久しぶりの再会は嬉しかった。

話したいこともたくさんあったので、二人きりでの会話は自然と弾んだ。

あっという間に時間は経過していき、午後10時が近付いていた。

この午後10時というのは初外泊前に斎藤教官から何度も釘を刺されていた門限の時刻である。

当然ながら門限のことなどすっかり頭から消えていた。

午後10時を回って30分くらいが経過したときだっただろうか。

私の携帯電話に一本の着信が入った。

それは自宅からの電話だった。

自宅から電話がかかるなんてなんとも不思議なことだったが、この電話が悲劇の始まりだった。

警察学校からの奇襲攻撃

初外泊 警察学校からの奇襲攻撃

電話をかけてきたのは母親だった。

「警察学校から電話かかってきたよ」

この内容を聞いた瞬間、一気に血の気が引いた。

楽しかった彼女との食事もすべてが吹き飛んだ。

完全にやられた。

これは警察学校からの奇襲攻撃だ。

結論から言えば、これは非常連絡網を利用した在宅チェックだとすぐにわかった。

一応説明しておくと、初外泊の前にクラスには非常連絡網が配布されていた。

これは非常時にクラスで連絡事項を伝達するための連絡網で、全員の電話番号と伝達順が載っている。

伝達順に連絡を回し、最後は総代が情報をまとめて斎藤教官に連絡するという流れになっていた。

警察学校 非常連絡網のイメージ図

門限が午後10時だということは重々理解していたが、完全に隙を突かれた。

これで私が門限を破って外出していたことはすぐに斎藤教官まで伝わっていた。

非常連絡網なので、一人と連絡がつかなければそのまま伝達順に連絡が流れていく。

「藤田は連絡がつかなかった」

このように斎藤教官まで報告が回ったはずだ。

それでも折り返しの電話は必ず入れなければならない。

斎藤教官から激怒されることをわかっていながらも警察学校に電話をする必要がある。

まず、このときの状況は彼女と最寄り駅で外食をしている。

やるべきことは急いで自宅に帰って警察学校に電話をすることである。

つまり、彼女との外食はここで打ち切り。

食事をすることはできたが、なんとも後味の悪い再会となってしまった。

彼女に事情だけ説明し、私は急いで自宅に戻った。

このとき時刻は午後11時前。

厳しく言われていた門限からは約1時間が経過している。

もうここまでくると警察学校に電話をすることは恐怖でしかない。

電話をせず寝ていたフリをするということを何度考えたことか…。

しかし、警察学校で嘘をつくのはいけない。

嘘をついたところで怒られるのは一緒。

勇気を振り絞って電話を折り返すことにした。

電話口で雷を落とされる

初外泊 電話口で雷を落とされる

幸いなことに食事をしていたのが自宅の最寄り駅だったので、走ることによって素早く帰宅することはできた。

それにしても時間は門限から1時間が経過している。

早い話が、あり得ないほどの大失態である。

初外泊でこんなことをやらかしてしまい、本当に恐怖を感じた。

あれだけ斎藤教官から門限について言われていたのにそれを簡単に破ってしまったのだ。

もちろんすべて自分が悪い。

油断していたことがすべての元凶である。

このときの状況をまとめておくと

  • 自宅にいても門限は午後10時とキツく言われていた
  • その門限を無視して彼女と外食していた
  • 非常連絡網が回り、門限を破っていることが教官にバレている
  • 謝罪の意味も込めて警察学校に折り返しの電話をしなければいけない

という状況だ。

もはやどうすることもできない。

言い逃れもできないし、弁解する余地もない。

門限をわかっていたのにそれを破ったのは自分だ。

自分のミスは自分で責任をとるしかない。

このような場合、ミスへのリカバリーは早ければ早いほど結果的にダメージは小さくなる。

ミスを隠そうとすればするほど事態は深刻になり、リカバリーが利かなくなるからだ。

これから警察官になる人には是非覚えておいて欲しい。

つまり、考えているだけで時間は刻一刻と進んでいくので、選択肢としては警察学校に電話をするしかない。

どうにもならない恐怖心があったが、崖から飛び降りるような気持ちで警察学校に電話をかけた。

受話器を持ちながら冷や汗をかく。

電話に出たのは予想通り斎藤教官だった。

正直に言えば、どのような言葉で教官から激怒されたかはっきり覚えていない。

間違いなく激怒されたのだが、受け止めるだけで精一杯だったのだろう。

それだけ怖かったし、私はひたすらに謝っていた。

だが、最後の言葉だけは今でも脳裏に焼き付いている。

というよりも一生忘れられない。

「てめぇはそういうことをやるやつなんだな。覚えとけよ」

なにも言い返すことはできなかった。

この強烈な言葉を残して、斎藤教官から電話は切られた。

謝罪だけは済んだが、日曜日に警察学校に戻るのが10倍以上憂鬱になった。

ただでさえ警察学校に戻りたくない気分だったのに余計に嫌な気持ちが増した。

もちろん、この事態を招いたのは自分自身である。

言い訳はなにもできない。

気を引き締めて門限だけ守っておけばこんなことにはならなかったが、彼女との食事を楽しんだ代償はとてつもなく大きかった。

こんなショッキングな出来事で、この日は終わってしまった。

初外泊にして最悪の気分である。

門限さえ守っていれば…。

まさかこんな奇襲攻撃を受けるとはまったく予測していなかった。

早いもので、翌日にはもう警察学校に戻らなければならない。

なんとも後味の悪い土曜日だった。

日曜日、警察学校へ

初外泊 日曜日、警察学校へ

最悪な土曜日となったが、それでも夜は明けた。

日曜日の朝。

そう、この日はもう警察学校へ戻らなければいけない。

初外泊というテンションの上がるイベントから一転、再び地獄の生活へと戻る。

気分のいい時間というのは本当にあっという間で、儚いものである。

金曜日のあのテンションはどこに行ったものか。

この気分の浮き沈みは警察学校経験者にしかわからないだろう。

朝のんびりと目を覚まし、一人でゆっくり1日を過ごし、誰にも怒られない至福な時間。

好きなだけ携帯電話を触り、好きなだけ自分のペースで食事をする。

こんな夢のような生活も終わりがやってきたのだ。

警察学校入校者なら誰もが憂鬱になる日曜日だが、それでも警察学校には戻らなければいけない。

このまま自宅でのんびりできたら…

このまま警察学校に戻らなければ…

こんなことを考えるのが当たり前だろう。

外泊から警察学校に戻る際はその日の予定によって帰校する時間が異なる。

最初に言っておくと、警察学校生活が終盤になれば日曜日の夕方に警察学校に戻る形でまったく問題ない。

そこまで生活に慣れてくると休日にそこまで時間に追われることはなくなるからだ。

しかし、斎藤教官の場合は今回のようにやたらと休日に課題を与えてくる教官だったので、日曜日は早い時間に警察学校に戻ることが多かった。

この初外泊も同じで、作文を提出するための原稿用紙が警察学校にしかなかったため、早めに警察学校に戻る必要があった。

時間にすると午後12時頃には警察学校に到着するスケジュールだった。

卒業間近は午後7時頃に警察学校に戻る日もあったが、それはあくまで卒業間近だから。

入校してしばらくの間は休日でもあまりゆっくりする時間はなかったのが現実。

念願の初外泊だったが、終わりが来るのは早いものだ。

そして、予定通り午後12時頃に警察学校に到着するよう家を出た。

当然、駅に向かう足取りは重い。

戻りたくないという気持ちの方が圧倒的に強いからだ。

ましてや前夜に門限を破ったことが斎藤教官に発覚し、月曜日はどのように怒られるのかもわからない。

わざわざ自ら地獄の生活に戻っていくのだから、ある意味で滑稽なのかもしれない。

しかし、何を言ってもまだ初外泊をしただけである。

この先、こんな気持ちになる場面は数え切れないほどやってくるだろう。

警察官として現場で働くためにはこんな試練を何回も乗り越えていかなければならない。

今一度、気持ちを入れ直し、私は警察学校に向けて電車に乗り込んだ。

-続く-

noteACT

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