総代(そうだい)とは警察学校のクラスにおいて最上位の役員であり、それと同時にクラスのまとめ役でもあります。
さらに総代はリーダーシップを発揮し、自分のクラスを引っ張っていかなければいけないので、総代は非常に重要なポジションとなります。
今回はそんな警察学校の総代に焦点を当て、あまり知られていない総代について詳しく解説していきます。
総代とはなかなか聞き慣れない言葉ですが、学校でいうところの学級委員長と同じ役割です。
いわば総代はクラスの代表者であり、クラスのまとめ役でもあります。
警察学校のクラスにおいてはクラス運営のために役員が選出される。役員は数人が選出されることになるが、その役員の最上位が総代となる。
よって、総代はとても重要なポジションになるため、誰でもできる役割ではありません。
総代はほとんどが教官から指名されますが、ときには指名された総代がうまくリーダーシップを発揮できず、途中で交代になることも珍しくありません。
ではどんな人が総代に選ばれるのか?具体的にどんな役割があるのか?など、この記事では警察学校のクラス運営の要である総代について詳しく解説します。
これから警察学校に入校する方は是非参考にしてください。
私が所属していた県警の警察学校を例に解説していきます。
総代とは?
冒頭でも説明した通り、総代(そうだい)とは警察学校のクラスにおける代表者であり、クラスのまとめ役のことです。
総代は中学校や高校のときにクラスにいた学級委員長と同じ役割であり、先頭に立ってクラスを引っ張っていく存在です。
警察学校では各クラス必ず1名が総代に選出され、それぞれがクラスのために尽力します。
私自身も総代という言葉は警察学校に入校して初めて知りましたし、最初はなんのことだかさっぱりわかりませんでした。
しかし、警察学校で生活していたときに総代の苦労を色々と間近で見てきたため、総代がいかに大変なポジションかがよくわかりました。
上記の画像が警察学校におけるクラス運営のイメージです。
当然ながらクラスの頂点は教官でありますが、総代は教官のすぐ下に位置するので、いかに重要なポジションかがわかります。
総代のほかに副総代や幹事といった役員がおり、これらの役員が力を合わせてクラス運営を行っていきます。
その中でも総代は最上位の役員なので、最終的な決定権や発言権が確立されており、クラス員は総代の意向には従わなければいけません。
これが警察学校において大事になってくる協調性の部分であり、例え自分の考えと違ったとしても総代が決めたことには基本的に従う必要があります。
役員になっていないクラス員にもそれぞれクラス運営に対する考えや意見があるものですが、これらをまとめるのも総代の役割となります。
よって、全員が同期なのでフラットな関係なのですが、役員はそれぞれリーダーシップを発揮しなければならず、その中でも総代はすべての責任を負う立場になるものです。
総代によってクラスの色はガラっと変わるので、とても重要なポジションになることは間違いありません。
総代はどうやって選ばれる?
そんなとても重要な役割を担う総代ですが、どんな人が選ばれるのでしょうか。
警察学校入校前に総代に指名されることはありませんが、入校していきなり教官から「お前を総代にする」と言われることはあります。
総代を含む役員が最終的に決まるのは入校して1か月以内である場合が多く、役員に指名された者は警察学校長からの役員任命式を経て正式に役員に就任となります。
たかが役員と思われたかもしれませんが、警察学校における役員は任命式というものが行われるほどなので、厳格な位置付けであることは覚えておいてください。
総代の選び方は教官によって様々なので、いくつかのパターンを紹介しておきます。
誰しもが総代に選ばれる可能性はありますので、もし選ばれた場合は思い切ってやるようにしてください。
- 教官の独断
教官は事前に入校者の経歴等(スポーツ歴や社会人歴)をしっかり確認しており、その経歴等から教官が独断で指名する。
- 立候補形式
教官がクラス員に対し「総代をやりたいやつは手を上げろ」と自薦方式をとる。複数人が手を挙げた場合は期間を区切って交代で総代を務めさせ、最終的にその中から教官が指名する。
- 最年長者を指名
教官がクラスの中で最も年齢が高い者を総代に指名する。その他の役員も年齢順で指名する。
- 日替わり方式
入校初日から何人かに日替わりで総代を務めさせ、評価が高かった者やクラス員に投票させて総代を決める。
総代の選び方は教官によってまったく違いますので、どんな方法がとられるかはわかりません。
最終的には教官が指名することがほとんどですが、総代の選出方法を見てもらってわかる通り、いきなり「今日はお前が総代をやれ」と指名を受ける場合があるので、心の準備だけはしておかなければいけないでしょう。
入校当初はなにをやればいいのか、どこになにがあるのかすらわからない状態なので、その中でクラスをまとめる総代を務めるというのは本当に大変です。
うまくできなくて当たり前の状況なのですが、教官はそれを簡単には許しません。
教官の一声で急に総代が変わることはよくありますし、次から次へと総代が変わるクラスもあります。
最初は恐らく誰がやってもうまくいかないものなので、ミスを恐れず積極的な姿勢だけは忘れないようにしましょう。
あくまで私の経験上ですが、総代を含む役員に選ばれるのは体育会系の部活動出身者が多かったです。
やはり部活で厳しい上下関係を経験している人は礼儀をわかっていますし、クラスのまとめ方もわかっています。
また、警察学校では走る機会が非常に多いので、体力のない総代では周りに示しがつきません。
よって、高校や大学で一生懸命に部活に打ち込んでいた人は体力もありますし、総代に選ばれやすい傾向にあると言えます。
総代の仕事や役割は?
では実際に総代とはどんな仕事を任されるのでしょうか。
ここからは総代の仕事について解説していきます。
総代の仕事は細かく分ければ数多くの仕事が存在するのですが、大きく分けると2つです。
- 教官への指示伺い
教官から細かい指示事項があれば総代がまとめて話を聞き、クラスに伝達する
- クラス運営
クラスが協調性を持って集団行動できるようクラス運営をする
総代は教官とクラス員のパイプ役のようなポジションなので、教官からの指示や伝達事項をクラス員に伝えるという大きな役割があります。
もちろん教官からホームルームなどでクラスに対して直接話をする場合もありますが、それ以外の細かい話は総代がまとめて聞いておくということもあります。
また、クラス運営に関して決まったことを代表して教官に報告するのも総代の仕事です。
役員についていないクラス員はなにかあれば個人的に教官に相談することはできるのですが、どちらかと言えばまずは総代に一度相談してからということが多かったです。
そこで必要があれば相談を受けた総代が代表して教官に話を持っていくということもあります。
背景としては教官も多忙なので、クラス員一人一人の話を聞いている時間があまりないという事情があります。
深刻な相談であれば個人的に行くこともありますが、一般的な相談であれば総代が話をまとめ、「○○がこういうことで悩んでいるのですが」などと教官に話を持っていく場合があるのです。
役員以外のクラス員が細かい話を次から次へと教官に持っていくのは大変失礼にあたることなので、教官の手間を省くためにも総代が代表することが多くなります。
また、総代や副総代などの役員は毎日ほぼ必ず教官室に行って教官と話をする機会があるので、必然的に役員をやっていると教官とはより深い関係になっていきます。
総代は教官とのパイプ役やクラスのまとめ役になることが多いので、絶対的にリーダーシップが必要になる。ときにはクラス員から反対意見が出ることもあるが、それでも信念を持って行動していくことが大事になる。
総代はクラスの代表者なので、クラスでなにか失態があれば総代が教官からお叱りを受けるという場合もあります。
また、教官からの指示伝達事項が上手にクラスに伝わっていないと総代の能力が問われることにもなります。
それだけ総代は重責な役割なので、誰でも務められるポジションでないことは間違いありません。
総代がうまくできなければいきなり総代を変えられてしまうこともありますし、プレッシャーもあってとても難しい仕事です。
特に入校当初の慣れない時期は大変ですし、責任を一人で抱え込むことも珍しくありません。
総代をやってみたいと思っている人がいるならばそれ相応の覚悟を持って臨むようにしてください。
総代という大変重要な役割をうまくこなすことができれば、それは自分にとって大きな自信となるでしょう。
総代の苦労
総代というポジションはとても苦労するポジションであることは間違いありません。
実際、総代をいきなり軽くこなしてしまう人は中々いないものです。
しかしながら総代に選出された場合は任務を遂行しなければいけませんし、ときには自分を犠牲にしてクラスのために動く必要も出てきます。
リーダーシップはもちろんのことですが、責任感・協調性・マネジメント力・精神力などあらゆるスキルが必要になってくるので、大前提として人間性に優れていないと務められるものではありません。
総代を務めると苦労する理由は以下の通りです。
- 入校当初は誰もが警察学校についてわからない
- たださえ大変な生活の上で総代をこなすのはもっと大変
- クラスのために動くことが多いので自分の時間がとりにくい
- クラスで起きる問題のすべての責任を負うことになる
- 30~40人のクラス員をまとめなければいけない
はっきり言って、「なにがなんでも総代をやりたい」という人は少ないです。
上記の理由を見てもらえればわかる通り、普通のクラス員にはない苦労が多く、自分を犠牲にする場面も多いからです。
警察学校は誰しもができるだけ楽に生活をしたいと思う場所であり、総代を含む役員を務めるということはそれだけ責任が増すので、気楽に生活することはできません。
ときには総代として決めたことをクラス員に反対されることもあり、嫌われ役になってしまう場面も出てきてしまいます。
警察学校は集団行動が基本なので、警察学校で自分のために使える時間量は全員がほぼ同じです。
そのため、役員は他のクラス員より役員業務で時間を使うことが多いので、必然的に自分の時間が少なくなっていきます。
自分の時間が少ないということは課題に取り組む時間も少ないですし、試験勉強に取り組む時間も少なくなってしまいます。
そういった面では苦労をしながらも人より時間をうまく活用しなければいけないので、不利になる面も多いでしょう。
特に苦労する入校初期
警察学校に入校して間もない頃はとにかく時間に追われることが多く、役員に選ばれた者は特に苦労する時期である。クラス全体が色々と混乱する中、そこを仕切って先頭に立つ総代はとてもプレッシャーを感じることになる。
よって、自ら手を挙げて「総代をやりたいです」というのは中々できることではありません。
意欲の強い人であれば自ら立候補する人もいますが、大抵の人は手を挙げられないでしょう。
ただし、警察官の仕事は何事も積極性が求められる仕事です。
特に新人警察官には積極性しか求められていないので、こういったところで積極的にいけるかどうかは今後を占う場面でもあります。
最初は誰もが総代を上手にこなせるものではないので、失敗して当たり前です。
もし今回の記事を読んで総代に興味を持った方がいるならば、是非積極的に自ら手を挙げてもらいたいものです。
総代を務めるメリット
ここまで総代について解説してきましたが、多くの方が「総代は大変そうだ…」「総代はやりたくない」と思ったのではないでしょうか。
どちらかと言えば、そう思うのが普通だと思います。
私自身も入校当初は総代に立候補するなんてことはできませんでした。
警察学校に入校して1~2週間なんていう時期はとにかく生活についていくのに必死でしたし、なにより「失敗して怖い教官に怒られたくない」という気持ちが強かったからです。
そんな時期になにをやっていいかわからない総代に立候補するなんてことはできませんでしたし、積極性なんてまったく出せませんでした。
多くの同期が同じ気持ちでしたので、そこは心配する必要はありません。
積極性に自信がある人はどんどん積極性を出すようにしよう。
警察学校では消極的な姿勢は好まれず、失敗してもいいから積極的にいくことが評価される。
ただし、総代を務めると苦労することばかりではなく、確実にメリットもあります。
総代は最初はとても苦労するものですが、生活に慣れてしまえば総代にも慣れていきます。
総代を務めるメリットについては次の通りです。
- クラスの顔になれる
総代はなにかとクラスの最前線に立つことが多く、朝礼や夜点呼でも先頭に立って号令をかける役目となる。そのため、総代=クラスの顔なので、他のクラスや他の期生の人にも存在を知ってもらえる。
- 教官と親しくなれる
総代は毎日教官の下に顔を出すため、必然的にクラスの中で最も教官と親しくなれる。そのため、警察学校卒業後も総代などの役員は教官と交流が続きやすい。
- 役員加点がもらえる
総代を含む役員を務める最大のメリットは加点がもらえること。これは試験や検定の成績に加え、役員を務めた者だけは”役職手当”のような点数が加算される。よって、卒業時の成績は上位にいきやすい。
- リーダーシップを学べる
警察学校においてクラスをまとめることは簡単ではなく、絶対的なリーダーシップが必要になる。総代の経験は今後の警察官人生においても大きくプラスの経験となる。
警察学校を卒業するときはこれまでの定期試験や検定、訓練などがすべて点数化された上で全員の順位が決まります。
成績上位者は警察学校長賞や警察本部長賞などの特別な表彰を受けることになり、いきなり勤務成績が優秀になります。
この成績において総代などの役員は役職手当が加算されることになるので一気に点数が高くなり、成績上位に入りやすくなります。
成績上位に入ると大きな警察署に配属される可能性が高くなるので、それだけいい経験を積めることにも繋がります。
また、それによって赴任先の警察署においても「今度来る新人は総代らしい」という情報が広まり、最初から信頼感を持ってもらえることも大きなメリットとなります。
このように総代を務めることは決して苦労することばかりではないので、メリットもあることは知っておいてください。
警察学校ではすべてが点数化されることに要注意。
手を抜いていいことはなに1つとしてない。
総代は出世しやすい?
最後に総代は出世しやすいのか?という点について解説します。
結論から言いますと、ずばり総代は出世しやすいと言えます。
ここまで総代について詳しく解説してきましたが、見て頂いてわかる通り総代は誰にでも務まるものではありません。
そのため、必然的に総代に選ばれるのは優秀な人が多く、それだけポテンシャルを秘めている人だと言えます。
総代に選ばれたもののまったく上手にこなすことができず、教官がいきなり総代を変えることは珍しくありません。
やはり総代は確実にクラスを運営していかなければいけませんし、常に先頭に立てるレベルの人材でなければこなすことができないからです。
よって、総代=出世しやすいというわけではなく、総代に選ばれる人=優秀な人が多いということから結果的に総代は出世しやすい傾向にあるのです。
総代に選ばれる人は優秀な人が多いので、警察学校卒業後には早期に昇任していく人が多い。しかし、あくまで本人の努力次第なので、総代を経験したからといって必ず出世できるわけではない。
私自身の経験でもポンコツな総代というのは見たことがありません。
どのクラスでも総代はリーダーシップがとれる人でしたし、中にはスパルタでクラス員をどんどん追い込むという総代もいました。
総代はクラスの中で一番の権限を持っていますし、クラス員は基本的に総代に従わなければいけません。
やはりそれだけ能力がある人でなければ総代は務まりませんし、なによりクラス員も言うことを聞かなくなってしまいます。
そういった人材が警察組織において好まれることは間違いないので、必然的に出世しやすい傾向にあるのだと思います。
まとめ
今回は警察学校の総代について解説しました。
総代はクラスをまとめるリーダー的な存在なので、それに見合った人でなければ務めることはできません。
そのため、総代に絶対的に求められる能力は
- リーダーシップ
- 協調性・責任感・犠牲心
- マネジメント力
- 体力
となっており、簡単にこなせる仕事でないことは確かです。
また、総代は様々な苦労を経験しますし、他のクラス員より自分のために使える時間が少ないのも特徴です。
それでも自分を犠牲にしてクラスのために動き、クラス員が困らないようにしていくのも重要な役割です。
その一方、総代を務めることによって
- クラスの顔になれる
- 教官と親しくなれる
- 役職手当が成績に加算される
などのメリットも存在します。
いずれにしても大変な役割であることは変わりませんが、総代を務めて警察学校を卒業できれば大きな達成感を得られることは間違いありません。
我こそはと思う方は是非、総代に立候補してみてください。
これから警察学校に入校する方や警察官を目指している方の参考になれば幸いです。
警察学校の総代ってどんなものなんですか?詳しく知りたいです。