”警察学校の教官”
警察官なら誰もがゾッとするキーワードで、既に警察官を退職している私でもこのキーワードを耳にすると未だに背筋が凍る感覚が残っています。
警察学校を卒業してかなりの年月が経過していますが、それだけ警察学校の教官には色々な思い出がありますし、強く記憶に残っている存在でもあります。
当時怒られたことや理不尽に怒鳴られたことは今でも鮮明に覚えていますので、自分にとってどれだけの存在感であったかは計り知れません。
経験したからこそわかることですが、警察学校の教官は良くも悪くも一生忘れられない存在であることは間違いないでしょう。
警察学校の教官といえば”とにかく怖い”とイメージする人が多いと思います。
これは概ね正しいイメージで、警察学校に入校したら怖い教官の下で日々生活をしていかなければいけませんが、それと同時に苦楽をともにしていく存在でもあります。
警察学校の教官は普通の学校でいうところの担任の先生と同じ存在。警察学校ではクラスに必ず担任教官がおり、卒業までの時間をともに過ごす。
どうしても警察学校の教官は”怒る人・怖い人”というイメージが先行してしまいますが、実は怒るだけが教官の仕事ではありません。
警察学校の教官には入校する初任科生を一人前に育成するという大きな使命があります。
ドラマ「教場」でも木村拓哉さん演じる警察学校教官・風間公親が話題になりましたが、実際のところ警察学校の教官とはどんな存在なのか?
また、どんな人が警察学校教官になるのか、普段はどんな仕事をしているのか?
この記事では警察学校の教官について特集し、誰もが恐れる教官についてわかりやすく解説していきます。
警察学校の教官とは
まず始めに警察学校の教官とはについて紹介していきます。
警察学校に入校すると初任科生はそれぞれのクラスに分かれますが、各クラスには必ず一人の担任教官が付きます。
担任教官は入校から卒業までをともに過ごす存在になるので、教官と初任科生はとても密接した関係になります。
警察学校の生活についてはもちろん、警察官のイロハを教えてくれるのも担任教官です。
警察学校においては朝のホームルームから始まり、夜の消灯時間に至るまで教官が中心的存在となるため、それだけ時間を共有することが多くあります。
また、教官は担任であると同時に直属の上司となるため、強い上下関係でも結ばれることになります。
教官の指示や言うことは絶対に従わなければいけないので、それだけ厳しい上下関係になることは覚えておきましょう。
教官が間違ったことを言っていたとしても「はい」という答え以外はありません。
この辺りは初日から洗礼を受けることになると思いますので、前もって心構えをしておくといいでしょう。
教官からは理不尽な指示を受けるときもあるが、愚直に従っていくしかない。これは警察官の世界に慣れるためにも大事なことになる。
教官はなによりも初任科生を教育し、現場で通用する警察官を育成することが求められている立場です。
教官自身が生半可なことをやっていては初任科生は育成できませんし、強い警察官は生まれません。
だからこそ厳しい上下関係でなくてはならず、ときには理不尽な指示を飛ばしてでも初任科生を追い込む場面があります。
教官の目線で考えれば初任科生を無事に卒業させることが目的ではなく、あくまで肉体的にも精神的にも強い警察官を現場に送り出すことが使命になっています。
ですので、警察学校の教官はとても厳しくて怖い存在で当たり前であることを覚えておきましょう。
基本的には気軽に話しかけられるような存在ではないですし、教官の前では直立不動になるのが普通です。
教官の追い込みに耐えられず初任科生が警察学校を辞めるというのは決して珍しいことではありませんので、その点も覚悟しておいてください。
警察学校の教官はどれくらい怖い?
次に警察学校の教官はどれくらい怖い?について解説していきます。
皆さんのご想像の通りですが、警察学校の教官はとても怖いです。
警察官の上下関係は厳しいので、担任と言えども気軽に話しかけられる存在ではありませんし、礼儀を欠くことはできません。
話をするだけで緊張する存在とイメージしておくといいでしょう。
私自身も担任教官と話をするときは冷や汗が止まりませんでしたし、とにかく緊張感があって怯えていたといっても過言ではありません。
当然、何かミスがあれば怒られますし、大きな声で怒鳴られることもあります。
「てめぇはアホか?」
「やる気がないなら辞めていけ!」
このような怒声が響くことは日常茶飯事でした。
上下関係が厳しいので、このような言葉に対して反論することは許されませんし、ふて腐れることもご法度です。
そのため、教官がなにか話をするときは「どんなことで怒られるだろう?」ということが気になって仕方ありませんでした。
それくらい警察学校において教官は絶対的な存在であることを覚えておく必要があります。
- 目の前で提出書類を破る
- 激怒して机を蹴り飛ばす
- やる気がない者を外につまみ出す
- ひたすら筋トレを課してくる
これだけ怖い警察学校の教官ですが、特に入校してから最初の1か月が強烈に厳しいです。
最初の1か月は指導強化期間と呼ばれ、警察学校の洗礼を浴びせるためにとにかく各所で怒号が響き渡ります。
あまりの厳しさにこの1か月で退職する初任科生も珍しくなく、実際のところ私の同期は入校初日に2人が退職しています。
この指導強化期間が警察学校の山場となるため、どれだけ怒られたとしても教官からの追い込みには耐えるしかありません。
ここを乗り切れば教官の厳しさや怖さには慣れることができるので、これから警察学校に入校する方は参考にしてください。
教官にも様々なタイプがあり、とにかく声を荒げて怒る教官がいれば物静かに冷静に怒る教官もいる。
思い出話を紹介しておくと、私の担任教官はとにかく大きな声で怒鳴るタイプの教官でした。
朝のホームルームから説教が始まり、ときには集中砲火を浴びる同期もいました。
入校当初はスーツに革靴の状態でよくランニングをさせられましたし、コンクリートの上で筋トレを課せられたこともありました。
早い段階で2名の同期が教官の追い込みに耐えられず退職していきましたが、当時の教官の怖さを考えれば無理もなかったと思います。
全員が全員このようなタイプの教官ではありませんし、今の時代ではここまで厳しく追い込まないかもしれません。
しかし、これだけ厳しい教官のおかげで成長できた実感はありますし、その後の警察人生にもいい影響がありました。
現場に出てから恐い先輩や上司と一緒に仕事をしても心が折れることはなかったので、今では感謝の気持ちでいっぱいです。
警察学校は楽をする場所ではありませんので、苦労した分だけ自分自身の財産になることは間違いありません。
厳しい教官と生活をすることは苦難も多いですが、プラスになる面も多いはずです。
担任教官によって警察学校の生活は大きく異なるため、一期一会の出会いを大切にしたいものです。
どんな人が警察学校の教官になる?
次にどんな人が警察学校の教官になる?について解説していきます。
鬼のように怖い警察学校の教官ですが、どのような人が教官を務めることになるでしょうか。
まず大前提として、教官も初任科生と同じ警察官ですので、警察官としてのスタートは警察学校です。
教官自身も警察学校で厳しい生活を経験していますし、新人警察官という大変な時期も経験しています。
その後、あらゆる経験を積み、一定以上のレベルに達した人たちが警察学校の教官になっています。
警察学校の教官になるためには選抜試験を受けなければならないので、誰でも簡単になれるというわけではありません。
初任科生に対して、警察官のイロハを教え込むのが教官の仕事になりますので、警察官としての十分な実績も求められるところです。
教官というポジションは階級でいえば、警部補もしくは警部という階級が多いです。
巡査の初任科生から見れば2つや3つ上の階級になりますので、必然的に教官というのは雲の上の存在という関係になります。
警察官は階級が1つ違うだけで厳しい上下関係が成立する世界のため、階級が2つ上ともなると気軽に話しかけられる存在ではありません。
警察官は”上司の指示に従わなければならない”という法律が定められている。教官の指示が理不尽だとしても従うしかない。
教官は各科目の授業を受け持つことになるため、それ相応の知識と経験がなければ成り立ちません。
警察学校の授業は「交通」「捜査」「地域」「生活安全」などがあり、他にも「拳銃訓練」や「柔道・剣道」まで幅広くあります。
例えば、交通担当の教官であれば長く交通課で勤務している教官になりますし、捜査担当の教官であれば刑事課で多くの経験を積んでいる教官になります。
それぞれの部門で経験を積んできたエキスパートが教官になっていますので、そういった方々の授業を受けられるのは貴重な機会と言えるでしょう。
また、警察学校の教官になる人は自ら希望を出して教官の立場になっている方が多い印象です。
よほど優秀な人なら推薦のような形で教官になる人もいますが、基本的には自分から希望を出しています。
警察学校の教官というのは初任科生に全力でぶつかり、ときには感情を爆発させて初任科生を指導していく場面もあるため、とても大変なポジションです。
警察学校にいるときは「教官は怒ってばかりだな…」と思っていましたが、怒ることを毎日続けることも非常にエネルギーを使うものです。
そんな役割をこなすことをわかっていて教官を志望しているので、初任科生を一人前の警察官に育てる意欲は並々ならぬものがあるでしょう。
初任科生が全力で警察学校の生活に向き合っていく中で、教官もまったく同じ気持ちであることは間違いありません。
その結果、初任科生と教官は強い絆で結ばれるものですし、警察学校を卒業した後も師弟関係は一生続きます。
そんな教官の存在は警察学校を語る上で外せないでしょう。
警察学校の教官はどんな存在?
続いて、警察学校の教官はどんな存在?について解説していきます。
ここまで警察学校の教官について様々な角度から紹介してきましたが、皆さんはどんなイメージを持ったでしょうか。
多くの方が「教官はめちゃくちゃ怖そう」と思われたかもしれません。
それはほぼ正解で、優しい教官やぬるい教官というのは警察学校においてはそうそう存在しません。
先ほども紹介した通り、警察学校の教官は厳しくて当然であり、その厳しさがあってこそ警察官としてのメンタルが養われると考えます。
警察学校では同期だけでなく、教官とも長い日々をともに過ごすことになります。
教官=直属の上司なので、上司といかに上手に付き合っていくか、上司からどうやって評価を受けるかはしっかり考えていきたいところです。
同期とは日常生活を共にすることでとても深い関係になっていきますが、教官とも長く一緒に過ごすことで深い関係になっていきます。
教官が気軽に話しかけられる存在でないことは確かですが、悩み事があれば真剣に相談に応じてくれる存在でもあります。
私の担任教官も非常に厳しい方でしたが、「俺もお前らと同じ初任科生の時代があった。だからお前らが考えることも悩むこともわかる」と言っていました。
つまり、教官というのは警察学校において最も頼りになる存在であることは間違いありません。
人によって教官に対する思いは様々ですが、私自身は警察学校の担任教官が人生の恩師であると胸を張って言えます。
担任教官は自分の上司となるので、困りごとがあれば何でも相談するべきで、話をすれば真剣に聞いてくれる。
また、なにかトラブル等が発生した場合も教官に迅速な報告が必要になる。
警察学校の教官は”性格が悪い””ただ怒りたいだけ”とイメージされることが多いですが、決してそうではありません。
実は教官という立場であることから無理をして怒っていることがほとんどです。
よく考えてみてください。
部下を叱るというのは叱る側もとても嫌な気分になりますし、怒るだけで相当なストレスがかかります。
しかし、警察学校の教官が怒らないわけにはいかないので、仕事と割り切って演技をしてでも厳しく接している方がいるほどです。
警察学校の教官というのはそれだけ重責ですし、気軽にできる仕事ではありません。
私の担任教官は鬼のように厳しい人で、辛いこともたくさんありました。
最初の頃は「どんだけ理不尽なことばっかり言ってくる教官なんだ…」と嘆くことが多く、担任教官が違えばよかったのにと思ったこともありました。
それでも教官から厳しい指導を受けたことで
- 警察官としての心構え
- 強い精神力
- 激務にも耐えうる体力
- 同期との協調性
などを学ぶことができ、自分にとって大きな財産となりました。
警察学校を卒業してから順調に警察人生を歩むことができたのは教官のおかげです。
教官の存在があったからこそ警察官として仕事を続けられましたし、辛いことがあっても乗り越えることができました。
それくらい警察学校の教官からは学ぶことが多く、特別な存在であることは間違いありません。
警察学校に入校される方は是非教官との師弟関係も楽しんで頂ければと思います。
警察学校の教官も体力勝負
最後に警察学校の教官も体力勝負という話を紹介します。
警察学校で生活をしていると、「教官はただ怒っているだけ」と思いがちですが、実は教官も体力勝負の仕事なのです。
教官は初任科生のお手本となるような存在であり、初任科生と共に行動することも多いです。
そのため、教官は自然と初任科生と同じ生活リズムになりやすいので、早朝から一緒に走るなんて場面もあります。
早朝の6時30分から始まる初任科生のランニングに付き合うためには何時に出勤しなければいけないのかを考えればそれだけで大変なことがわかります。
前日の指導が夜遅くまで続いたとしても、翌日の早朝からエンジンを全開にしていくのは容易ではありません。
また、教官が弱々しいところを初任科生に見せるわけにはいきませんので、体調管理も重要な仕事になってきます。
全体的に模範となるような行動をとらなければいけないのが教官の立場になりますので、その一挙手一投足に気を遣っていかなければいけないでしょう。
特に入校当初は早朝から深夜まで初任科生に付きっきりになる場面も多いので、教官の勤務自体もかなりハードなものになる。
教官が前面に出てクラスを引っ張れば、それだけクラスのモチベーションも高まります。
教官はただ厳しくすればいい、ただ叱ればいいという単純なものではありませんので、いかにやる気を引き出しながら指導をしていくかも大事になります。
初任科生と教官には厳格な上下関係が存在していますが、何もコミュニケーションがとれないではいけません。
距離が近すぎると厳しさは失われてしまいますし、遠すぎても初任科生に寄り添った指導ができないので、この辺りの初任科生との接し方も簡単なものではないでしょう。
ただ怒るだけが仕事ではなく、色々なことを考えながらではないと務まらないのが警察学校の教官です。
警察学校の教官が大変なポジションであるということは当事者のときはわかりませんでしたが、卒業して振り返ってみると「教官の方が大変だったのではないか」と思いました。
ですので、警察学校の教官も初任科生と同じ体力勝負の仕事なのは間違いないでしょう。
まとめ
今回は警察学校の教官について詳しく解説しました。
今回の記事をまとめると
- 警察学校の教官は厳しい
- 教官との師弟関係は一生続く
- 教官というポジションは務めるのも大変
- 厳しい教官の方が後々プラスになる
ということになります。
警察学校の教官は優秀な人が多く、専門的な知識を持ったエキスパートたちです。
教官は厳しくて怖い存在ですが、それにはしっかりした理由があり、教官が厳しければ厳しいほど強い警察官になれます。
警察学校で楽をしても意味はありません。
現場で通用する警察官を育てるため、教官は無理をしてでも怒っていることが多数です。
また、教官とは警察官をやっている以上は一生続く関係ですし、警察学校を卒業すれば一緒に働く可能性もあります。
そんな警察学校の教官は、やはり特別な存在です。
なぜそんなに厳しいのか?なぜそこまで怒るのか?
警察学校を卒業したとき、その意味はきっとわかるはずです。
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