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【実録警察学校#10】初めての外泊を目指して奮闘

私の警察学校での実体験をもとにお送りする【実録警察学校】の第10話です。

第9話は下記のリンクからご覧ください。

【実録警察学校】第9話「同部屋の織田が退職、これで二人目の退職者に」

退職をほのめかしていた同部屋の織田が正式に退職し、クラスからの退職者は2人目となりました。

入校して1週間が経過し、警察学校の生活もなんとなくわかってきた頃です。

ここからの生活はあと2週間後に迫った「初めての外泊」を目指して奮闘する日々が続きます。

しかし、斎藤教官はさらに退職者を増やそうと考えているため、厳しい指導は止まりません。

ぽっかり空いた1つの部屋

退職した同期の個室は空室に

警察学校に入校して1週間が経過し、この日から入校2週目の生活が始まった。

これまでに同じクラスからは高橋と織田が退職したため、入校時より2人少なくなった。

特に織田は同部屋だったので、ショックが大きかった。

2人の退職者が出たところで残った私たちのやることは変わらないのだが、同部屋の個室が1つぽっかり空いているというのはどうも違和感を感じる。

それは昨夜の消灯時間ギリギリまで必死に準備やら片付けやらをしていた仲間がいなくなったからだろうか。

「自分は絶対に辞めない」と強く誓ったものだが、どうしても喪失感は出てしまう。

しかし、惑わされてはいけない。

退職した織田が戻ってくることはあり得ないし、もう織田のことを気にしていてはいけない。

残った自分たちはやるべきことをやるだけ。

気持ちを切り替えてやっていくことにした。

警察学校で1週間を過ごしたので、起床からの流れは段々とわかってきた。

起床時はいかに早く着替えるか、いかに早くグラウンドに集合するかが大事になってくるのである。

この流れは体に叩き込むしかない。

ただ、数十秒で布団をきれいに畳むことは中々難しいし、落ち漏れなく完璧にして部屋を出ることも意外と難しい。

起きてからやるべきことはわかっているのだが、細かいミスは何度かやってしまったことがある。

それは「布団の畳み方が汚い」「窓が空いていなかった」などで、ミスがあったときは朝礼後に教官に呼び出しを受けてこっぴどく怒られた。

以前も説明したが、初任科生が起床してから寮を飛び出してグラウンドで体操やらランニングをしているときは若い教官たちが寮の各部屋をくまなくチェックしているのだ。

なので、ミスがあれば朝礼後に放送で呼び出しを受けることになる。

内心は「そんなどうでもいいことで時間を使わせないでくれ…」と思うのだが、もちろん反抗的な態度を示すことはできない。

警察学校ではただただ耐えるしかない。

授業でも追い込みが始まる

警察学校の授業でも追い込みが始まる

入校2週目になると、一通り各科目の授業が始まる。

各科目によって担当の教官は異なるので、教官の顔と名前はもちろんだが、教官の性格まで見抜いていなかなければならない。

この日、入校して初めての体育の授業があった。

体育の授業と聞くと、一般的にはスポーツを楽しむような授業をイメージするが、警察学校の体育はまるで違う。

まず授業で何が行われるのかわからないし、そもそもスポーツをやることもない。

「どんな授業なんだろう」という不安を覚えながらジャージに着替え、グラウンドに集合した。

グラウンドで行われる授業の場合、5分前には完全に整列を完了し、教官を出迎える体制をとっておかなければならない。

そして、教官が現れたら大きな声で挨拶をする。

不機嫌そうな表情を浮かべながらグラウンドに現れたのは体育担当の島田教官(仮名)だった。

見た目からして30代半ばだったが、目つきは非常に鋭く、担任の斎藤教官と同じようになにかあれば声を荒げて激怒するタイプの教官だった。

全員で揃って挨拶をしたが、お決まりのように島田教官からは「声が小さい!やり直せ!」の言葉。

これを何度か繰り返し、ようやく授業が始まった。

まず、島田教官から説明されたのは1週間後に体育の授業で警察体操のテストを行うとのことだった。

警察学校の朝礼では必ず警察体操を行うし、警察署に赴任してからも朝礼では警察体操を行う。

警察体操は警察官ならば誰でも覚えているものだし、警察官として基本中の基本であるため、体に叩き込んでおかなければならない。

警察体操は入校早々に完全にマスターする必要があるので、体育の授業でテストを行うようだ。

今では音楽を聴けば警察体操を完璧に行うことができるが、覚えるまでは意外と苦労する。

教練と同じで警察体操も体の向きや体の使い方、指の角度まで細かく決まっており、警察学校にいるうちはこれを完全に体現しなければならない。

よって、テストでも完璧な警察体操が求められるので、当然ながら島田教官の目線もかなり厳しかった。

練習中に少しでも間違えれば怒られるし、順番を忘れて周りをキョロキョロしていれば「お前は覚えてないんか!」と容赦なくつまみ出される。

もちろんこれは全員で大きな声を出しながら行うので、それも辛い。

警察体操はレジュメを見ているだけでは覚えられないので、体で覚えるしかない。

さらに体育の授業では警察体操の練習だけでなく、強度の高いランニングや筋トレもやらされるので、体力の消耗も大きい。

授業においても本格的に追い込みが始まったと感じた。

一筋縄ではいかない指示伺い

警察学校では教官室に指示を伺いに行く

本格的に色々な授業が始まったが、警察学校での授業には各科目で準備するものが異なる。

授業で準備するものについては前日に担当の教官に指示を伺いに行って確認することになっている。

教官に確認しに行くのは各科目に割り振られた委員である。

例えば、先ほどの体育なら体育委員が準備について確認に行くし、教練なら教練委員が教練担当の教官に確認をしに行く。

慣れてこれば何も難しいことではないのだが、あれもこれも初めての状態だと指示を伺うだけでもまったくうまくできない。

これがうまくできない原因は指示を伺う場所が教官室というところにある。

警察学校の教官室とは、一般的な学校の職員室と同じなのだが、教官室は恐い教官たちが一堂に会しており、なにより雰囲気が重い。

さらに教官室では至るところで教官の怒鳴り声が響いているという点が恐ろしい。

つまり、教官室とは怒られる場所みたいなものなので、警察学校の中でも特にいい思い出がない。

もちろん私自身も教官室ではよく怒られた。

もう1つ面倒なことが、教官室では完璧に礼儀作法をこなさなければいけないということである。

まず、教官室に入るときはドアをノックし、「失礼します」と大きな声で言わなければいけない。

さらにドアノブは両手で持ち、閉めるときは音を立てない、教官の後ろを歩くときは必ず「後ろを失礼します」と頭を下げなければいけない、教官に声をかけるときは「お仕事中失礼します」と一言言ってからじゃないといけない…などなど、細かいルールがいくつもある。

他にも様々な細かいルールがあるのだが、これらを1つでもミスすればすぐに怒られる。

挙げ句の果て、うまくできないと「もうてめぇなんて出てけ!」と退室させられることもある。

そのため、用事があって教官室に来ているのになにもできないまま退室するなんてことも珍しくなかった。

このように教官室では色々と面倒なことがあるため、授業の指示を伺うのも一苦労なのである。

そして、教官から指示をうまく聞けなかったときに困るのが「授業の準備がわからない」ということ。

また、指示をしっかり聞いていても担当委員がクラス全員に対してうまく伝達できなかった場合も困る。

この「クラスに伝達する」というのが意外と難しく、聞いたことをそのまま理解できるように全員に伝達することは容易ではない。

人によって理解が違うし、まったく別の解釈をする人もいるので、これが集団生活の難しいところである。

だが、授業の準備は完璧にしておかなければいけないし、忘れ物をすれば教官は激怒する。

早速起きた伝達ミス

警察学校 初めての授業ではミスが続出

早速、伝達ミスはこの日の午後一番の授業で起きた。

刑事訴訟法の授業だったが、この授業では教官がプロジェクターを使用するため、授業が始まるまでにプロジェクターを準備しておかなければいけなかった。

ちなみにこのような場合に準備を担当するのは教場当番(きょうじょうとうばん)である。

教場当番は学校でいうところの日直と同じで、その日様々な雑用を行う2人1組の当番のこと。

この日は刑事訴訟法担当の委員が教場当番にプロジェクターの準備について伝達するのを忘れ、授業までに誰も準備していなかったのだ。

ちなみに少しややこしいが、流れとしては各科目の委員が授業の準備を確認→教場当番に伝達→教場当番が準備するという流れになっている。

そして、教官が入室してくると開口一番、プロジェクターについて激怒した。

「なんで準備してないんだよ!!そうかお前らは授業を受ける気がないんだな!じゃあ俺はもう帰るよ!!」

教官はこう言い残して教官室へと帰ってしまった。

教官が激怒すると色々なパターンがあるのだが、教官室に帰ってしまうのはよくあるパターン。

こうなると授業は中断してしまうので、クラスでは”犯人探し”が始まる。

「刑事訴訟法の委員から教場当番には伝えたのか?!」

「教場当番は聞いてなかったのか?!」

今さら議論をしても仕方がないのだが、警察学校では反省検討というのがとても大事。

ミスが起きた場合は連帯責任となるが、もう1度同じミスをするわけにはいかないので、しっかりミスを検討する必要がある。

結局、担当委員が教場当番にプロジェクターについて伝えるのを忘れていたということだったが、このまま時間が過ぎるのを待っているわけにはいかない。

教官は帰ってしまったが、すぐにプロジェクターを準備し、担当委員と教場当番が教官室へと謝罪に向かうことにした。

数分後、教官は戻ってきた。

「しっかり伝達もできないのかよ!言われたことくらいしっかりやれよ!!」

授業の時間はほぼこのような説教だけで終わってしまった。

警察学校はこういう面倒なことがたくさんある。

「普通に授業をやってくれればいいのに…」と思うのだが、色々な課題や困難に直面するのが警察学校の大変なところなのだ。

これが集団行動の難しいところであり、協調性が必要になってくるところでもある。

一人のミスは連帯責任となるため、ときにはクラスから責められる場面も出てくるが、1つ1つ乗り越えていかなければならない。

個性を出し始める同期たち

警察学校は個性的な同期が多い

刑事訴訟法の授業で起きた伝達ミスのようにしばらくは色々なミスが続出する。

ようやく警察学校の生活がわかってきた段階だが、授業の受け方についてはまだまだわかっていないからである。

そして、これくらいの時期になると同期生の性格が段々とわかってくる。

なぜなら生活にも慣れてみんなが個性を出すようになるからである。

先ほどあった”犯人探し”のように、ミスが起きたときに「誰だよ!」なんていう声を上げる者も大体が同じである。

逆になにも声を上げない者もいるし、見て見ぬフリをする者だっている。

入校して2週目にもなれば、今まで見えてこなかった同期生の性格がはっきりしてくるのだ。

協調性や思いやりを持って我慢することも大事だし、逆に出来の悪い者がいればはっきり指摘することも大事になる。

さらに”できる人間””できない人間”もわかってくるので、同期生からの追い込みが始まるのもこの頃だろう。

1つアドバイスをしておくと、これくらいの時期に大体クラスの立ち位置というのも決まってくる。

そのため、個性を出したいなら早めに出しておいた方がいい。

同期から怒られる者はいつも同じだし、ミスをする者も大体同じメンバーである。

それを叱る立場になるのか、フォローする立場になるのか。

リーダーシップを発揮できる人ならしっかり発揮しておいても問題ない。

同期との関係は警察学校卒業後も一生続くものになるので、関係性ははっきりさせておいた方がいいだろう。

そして、この時期に一人の同期が悪い意味で目立ち始めた。

その同期は田中(仮名)だった。

以前にも少し触れたが、入校して2週目にもなると怪我人が出てくる。

入校していきなり負荷の高い運動を行うため、しっかり準備してこなかった者は特に下半身に怪我をする。

田中も怪我をしたうちの一人だった。

どうやら膝を痛めてしまったようで、この頃からランニング等にも参加せず、座学の授業以外は見学をしていた。

準備不足は許されることではないが、怪我をしてしまったのなら仕方ないし、無理もできないので見学をするしかない。

だが、見学をする場合は見学者としての心得が大事になってくる。

はっきり言って、怪我をしているとは言え、みんなが辛い思いをしているのにそれを見学している者に対して良い思いはしない。

どちらかと言えば”あいつはサボっている”という目線が注がれて当然だ。

だから見学をするなら準備や片付けを率先して行う、誰よりも声を出すなど、見学者としてふさわしい行動が求められるのである。

だが、田中は違った。

「怪我をしているんだから見学して当然だ」と言わんばかりの態度で、見学者としてふさわしい行動をとっていなかった。

もちろん同期はそれを許さない。

「走ることができないなら他のことしっかりやれ!」

田中に対してこのような厳しい言葉をかけるのは一人や二人ではなかった。

それでも田中は謝罪などすることなく、態度を改めることもない。

田中自身が招いたことだが、完全にターゲットとして照準を合わせられることになってしまった。

-続く-

実録警察学校 第11話「指導強化期間も佳境に突入」

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