警察官が取締りをするときに隠れているのはなぜですか?堂々とやればいいと思うのですが…。
地域課や交通課の警察官は日々の業務において、交通違反の取締りを行っていかなければいけません。
交通課では白バイや覆面パトカーなど取締りを専門としている警察官がいますし、地域課においてもパトロールや事件対応と同じくらい取締りも重要な仕事となっています。
その取締りの方法は様々ですが、警察官が違反者から見えない状況で違反者を待ち伏せていることがほとんどです。
違反者を待ち伏せている状況は別名でねずみ捕りと呼ばれるほどで、多くのドライバーはいいイメージを持っていないことだと思います。
そのため、違反の取締りをしていると違反者からは
- なんで隠れてるの?
- 他にやることないの?
- 違反する前に止めてくれないの?
などの苦情に近い意見をもらうことも多いです。
違反をした人からすると点数や反則金が発生することなので、少しでも警察官に文句を言いたくなる気持ちはわかります。
実際、私自身も8年の警察人生で1,000件以上の取締りを行ってきましたので、数多くの苦情を目の前で受け止めてきたものです。
では、なぜ警察官は隠れて取締りをする必要があるのか?警察官側になにか事情があるのか?
この記事では元警察官が違反取締りの裏側について紹介し、隠れて取締りをする裏事情をわかりやすく解説します。
なお、本記事で紹介する内容はあくまで私自身の経験に基づくものであり、取締りの方法については肯定も否定もしない立場です。
当時の裏事情を紹介するものですので、その点に留意してください。
交通違反の取締りはなぜ必要?
まずは交通違反の取締りがなぜ必要なのかについて解説します。
交通違反の取締りは大きい警察署だと1日だけで50件近くの数字になることもあり、全国の警察署で合計すれば1日で数千件に上ることが容易に想像できます。
それくらい違反をするドライバーが多く、取締りを受ける人が多いのが現実です。
その違反内容は様々ですが、信号無視・一時不停止・携帯電話使用・速度違反などのごく一般的な違反が多くを占めることは間違いありません。
これらの違反で取締りを受けたことがある人も多いのではないでしょうか。
いずれも青切符で収まる違反ですが、ひとたび間違えば重大事故に繋がる恐れも秘めている違反なので、そういった危険なドライバーを取締るだけで意味はあるかと思います。
違反の取締りを受けたドライバーは少なくとも「次からは気を付けよう」と意識するもの。違反を繰り返して免許停止になる人もいるが、ドライバーに意識させるだけでも効果はある。
ただし、必ずしも違反の取締り=交通事故の抑止に繋がるわけではなく、取締りの件数が多いからといって交通事故が減るわけではありません。
実際、交通事故の件数は年々減少傾向にありますが、これが取締りの効果なのかどうかは不明です。
今では自動ブレーキ機能などが搭載された自動車があるため、そういった自動車性能の向上も交通事故減少の要因の1つには考えられます。
それでもドライバーに警察官が取締りをしていると意識させるだけでも無謀な運転は減っていくかもしれません。
警察官の取締りがなくなれば悲惨な道路状況になることは目に見えているので、そういった意味でも警察官が取締りをする必要はあると言えるでしょう。
警察官として取締りをしていた立場ですが、無謀な運転をして違反するドライバーは本当にたくさん見てきました。
そのようなドライバーを取締まるというのは意味のある仕事だと思います。
しかし、皆さんが気になっているところはそこではありませんよね。
なぜ隠れて取締りをするのか?
なぜ違反をする前に止めてくれないのか?
今回はこの辺りを解説していきます。
違反の取締りをする部署は?
次に交通違反の取締りをする部署について紹介します。
一番知られているのはやはり白バイだと思います。
白バイは交通機動隊や交通課の隊員ですが、違反取締りのプロフェッショナルであり、日々多くの取締り活動に従事しています。
鋭い眼光で違反を見抜き、颯爽と違反者を追跡する技術は白バイならではのものです。
同じ交通機動隊で言えば、覆面パトカーも有名であり、周りから警察官と気付かれないように取締りができるメリットがあります。
その他にはもちろん地域課の交番やパトカーの警察官も取締りを行いますし、自動車警ら隊も取締りを行います。
逆にこれら以外の部署の警察官は取締りを行うことはほぼありません。
刑事課や生活安全課に入れば、取締りをする機会はほぼないです。
もし、違反の取締りを頑張っていきたいと思っている警察官志望者の方はこれらの部署を目指すようにしましょう。
違反者を見つけるためにはある程度の経験が必要。最初は先輩や上司についていくだけで精一杯だが、慣れれば違反者は見つけられるようになる。
地域課と交通課はときにタッグを組み、大規模な取締り活動を行うことがあります。
大規模な取締りをしている現場は車を運転するドライバーなら見かけたことがあるのではないでしょうか。
違反が多発する場所では大人数の警察官がいなければ対応できませんので、そういった場所で地域課と交通課が協力し、一気に取締りを行う日もあります。
こういったときは10件・20件の違反が発生することも珍しくなく、いかに違反が多いのかがわかります。
私自身も交番で勤務しているときは何度も交通課と一緒に取締りを行ったことがありますが、次から次へと違反者がくるのでとても大変だった記憶があります。
このような取締りがいつどこで行われるか詳しくはわかりませんので、ハンドルを握るドライバーなら常に運転には気を付けたいところですね。
違反取締りを隠れて行う理由
さて、今回の記事の本題ですが、なぜ警察官は隠れて違反の取締りを行うのか?について様々な角度から解説します。
これは私自身の経験談を含む主観的な目線ではありますが、隠れて取締りを行う理由は大きく3つあると考えます。
冒頭でも紹介した通り、違反の取締りが必ずしも交通事故の減少に繋がるわけではありません。
交通事故が年々減少傾向にあるのは間違いないですが、これが取締りの効果かどうかというのはまだ解明されていないところです。
それでも隠れて取締りをするには理由があり、隠れる効果があるのも確かです。
3つのポイントをそれぞれで見ていきましょう。
【警察タイムズ公式note】痴漢冤罪…任意同行には応じるべき?現場でとるべき対応とは?元警察官が徹底解説
理由① 隠れなければ誰も違反しないため
いきなり「??」と思ってしまうような理由ですが、隠れて取締りをする大きな理由の1つ目は警察官が隠れなければ誰も違反しないからです。
これは元警察官の私自身が実感していたことでもありますが、基本的に取締りをするときは相手からは見えない位置に隠れます。
はっきり言って、警察官の目の前でわざと違反をする人はいません。
違反をすれば点数や反則金が課せられるので、わざわざ警察官がいるのに違反をしようと思う人はいないでしょう。
ごくたまに警察官が堂々と立っていても気付かず違反をしていく人もいますが、基本的には警察官がいる状況での違反はありません。
例えば、パトカーが相手から見えていると誰もがパトカーの存在には気付きますので、スピードなり信号なりには普段以上に注意深くなるものです。
一時停止がある交差点でもいつも以上に誰もがブレーキを踏んでいきます。
結局のところ、これでは違反の取締りをやっても違反をする人がいないので、取締りをする意味が薄れてしまうのです。
しかし、「警察官は市民が違反するのを待ってるのか?!」と思われるかもしれませんね。
その点については理由②で述べます。
理由② 検挙数を稼ぐため
今回の記事の本題でもありますが、隠れて取締りをする大きな理由の2つ目は検挙数を稼ぐためです。
理由①で説明しましたが、警察官が見ている目の前で堂々と違反をする人はほぼいません。
警察官が取締りという業務に従事するのに検挙が0では何も意味がないので、やはり隠れなければいけないということになります。
言い方は悪いですが、結局のところは検挙数を稼ぐために隠れる必要があるとも言えます。
警察官の仕事でも目標の数字があることは当たり前なので、「取締りに行ったけど件数は0でした」では本当に仕事をしていたのかどうかわかりません。
目標の数字に近づくためには色々と工夫をしなければいけませんし、ただ立っているだけではなかなか件数を上げることも難しいでしょう。
ここではあえてノルマという言い方はしませんが、警察官でも目標の数字をどれだけ達成できたのかというのが評価の基準になります。
検挙数を上げるためには隠れて取締りを行うのが最も効率がいいと言えます。
理由③ 繰り返し違反するドライバーを道路上から排除するため
隠れて取締りをする大きな理由の3つ目は悪質なドライバーを道路上から排除するためです。
これは私自身が警察官を経験して強く感じたことなのですが、違反を繰り返す人というのは本当に何度も繰り返します。
中には不注意で違反を繰り返してしまったという人もいますが、故意に違反を繰り返す悪質なドライバーもいるのが現実です。
そういった故意に違反をするドライバーはいつ大きな事故を起こすかわかりませんし、運転をすること自体が危険でもあります。
運転免許証の点数制度はたくさん違反をする人を免許停止にして道路上から排除していくという意味合いがあるため、取締りをする意義は非常に大きいと思います。
こういった故意に違反をする人を検挙できるのも隠れて取締りをするからこそでしょう。
実際、取締りをして「これで免停だよ…」と言われることは多かったです。
件数を稼ぐというのはこういった意味合いがあるのも事実です。
【警察タイムズ公式note】自動車警ら隊vs機動捜査隊 仁義なき戦いとは?
違反取締りの裏事情
ここからは違反取締りの裏事情について紹介していきます。
実は違反の取締りといってもいくつかやり方があり、それぞれで事情が異なります。
見ている側からするとすべて同じ取締りに見えるかもしれませんが、個々の警察官によって取り組み方は違います。
私自身は地域課でパトカーに乗っていましたので、交番で勤務する警察官よりは結果が求められるポジションでした。
それだけにおよそ1,000件は取締りを経験しましたし、色々と辛い思いもしてきました。
そんな当時の裏事情をちょっぴり紹介します。
取締りの方法については先ほど少し触れましたが、地域課と交通課がタッグを組んで大々的に取締りを行う場合も珍しくありません。
これは本当に多くの検挙を達成できますし、走行するドライバーには「ここは取締りポイントなのか」と周知することもできます。
ねずみ捕りとも表現されるものですね。
大きな警察署であれば交通課の取締り係だけで大々的な取締りをやってしまう場合もあります。
それでも一般的に日々たくさん取締りを行っているのはやはり地域課になります。
パトカーやバイクに乗って朝から取締りをすることも当たり前です。
私自身もパトカーに乗っていたので、取締りの件数を稼がなければいけない立場でした。
パトカー勤務員は24時間パトカーに乗ることができるため、その機動力を生かした活躍が求められる。職務質問はもちろんだが、取締りにおいても立派な実績を残さなければならない。
取締りの裏事情① 件数が稼げない…
パトカーに乗っているときは1日で3~4件の取締りをやっていました。
仕事ですので、このような目標を持って取り組むことは当然です。
これはノルマがどうという話ではなく、どんな仕事でも目標がなければモチベーションを保つことは難しいでしょう。
そのため、私も違反の検挙という目標を持って業務に取り組んでいました。
来る日も来る日も取締りを行います。
朝から晩まで、取締りだけで終わってしまう日も珍しくありませんでした。
鋭い眼光で違反者に目を光らせるものの、実は毎回必ず取締りができるとは限りません。
1時間やっても、2時間やってもダメなときはダメです。
しかしながら、「なにもありませんでした」では通用しない世界なので、件数が稼げない日は本当にしんどかった記憶があります。
そんな日は夜10時だろうが、夜中の1時だろうが泣く泣く取締りをやっていました。
取締りの裏事情② 雨の日はできない…
毎回、取締りでは結果を出さなければいけないのですが、これは雨の日でも例外ではありません。
「雨だからやらなくていいよ」と言ってくれる上司もいますが、その逆もいます。
雨の日は違反かどうかが見にくい、声をかければ相手が濡れてしまう、切符が濡れてしまうという悪条件なので、本音を言えばやりたくありません。
大雨の日なんかだと少し窓を開けてもらっただけで、相手の車内はかなり濡れてしまいます。(状況によってはこちらも傘をさしますが)
しかし、鬼のような上司であれば雨というのは一切関係なく、いつもと同じような結果を求められます。
そんな上司の下でパトカーに乗っていたときは雨の日でもびしょびしょになりながら取締りをやっていました。
はっきり言って、違反者にも申し訳なかったです。
それでも上司の指示には絶対に従わなければいけませんので「雨の日はやめましょう…」と言うこともできないのが警察官の宿命でしょうか。
雨の日だと追跡をするのも危ないので、雨の日くらいはやらなくていいんじゃないかなぁとは思っていました。
取締りの裏事情③ 判断が難しい…
意外と知られていないかもしれませんが、違反の基準というのは法律で定められているわけではありません。
もちろん、違反については法律に書いてあるのですが、その書き方としては「○○の場合は停止しなければらない」といった表現です。
これがすごく抽象的な表現なので、違反かどうかの判断は個々の警察官によって変わります。
つまり、ある警察官が見れば違反じゃないけど、別の警察官が見れば違反ということが起こり得るものです。
若手警察官の場合で言えば、上司が違反と言えば違反ですし、違反じゃないと言えば違反じゃありません。
それくらい曖昧なものなので、実は取締りをする警察官側も違反の判断は難しいのです。
パトカーに乗っているときも「今のは違反…ではない…いや微妙…うーん…、、」と判断に迷うことは当たり前でした。
取締りをしていて一番大変だったのはこの違反の判断だったかもしれません。
違反をしないためには…?
最後に車を運転するドライバーが違反をしないために気を付けるべきことについて解説していきます。
大きな警察署であれば1日だけで50件程度の違反取締りがあるので、これを全国で見れば1日で物凄い数の違反が起こっていることがわかります。
つまり、それだけ違反をするドライバーが多いということです。
1,000件近くの取締りをした私自身も多種多様な違反を見てきましたし、色々な”言い訳”を聞いてきました。
そんな経験を踏まえて言わせて頂くと、違反をしてしまう理由は2つだけです。
それは故意(わざと)か過失(うっかり)かの2つです。
ほとんどの違反が「知っていたけどやった」という故意か「見落としていた」「違反になることを知らなかった」という過失です。
そんな事情を踏まえ、わずかながら違反をしないためのコツを伝授致します。
違反しないコツ① わざと違反しない
当たり前のことですが、わかっているのに違反をするというのは大変悪質です。
これは取締りを受けて然りですし、しっかり反省してもらいたいものです。
こういう悪質なドライバーは免許停止などになって運転ができないようになるべきだし、取締りをする警察官としてもやりがいはありました。
なかなか信じられない話ですが、故意に違反をしたのに「なにが悪いんだ!」と怒ってくるドライバーがいるのも事実です。
こういったドライバーは警察官としても呆れてしまいます。
最低限、わざと違反をするようなことはやめましょう。
違反しないコツ② 速度に気を付ける
車を運転する際はなによりも速度に気を付けましょう。
速度が出ていれば、当然スピード違反には引っかかってきますし、標識の見落としも出てきてしまいます。
そう、違反する人で意外と多かったのが標識の見落としなんです。
特に一時停止なんかは速度が出たまま停止せず通過するパターンが多く、「標識を見落としていた…」という過失が多かったです。
速度が速ければ速いほど視界は狭くなり、それだけ周りも見えなくなってしまいます。
車を運転するときはとにかく速度に注意してもらいたいです。
違反しないコツ③ 法律を知る
そして、違反者の中でもう1つ多かったのが「これが違反なんですか?」ということです。
そもそも違反になるとは知らずに違反をする過失犯で、非常にもったいないことだと思います。
道路交通法を調べるようなことは中々難しいとは思いますが、ハンドルを握る以上はどんな行為が違反になるのかは知っておきたいところです。
よく取締りをする違反でいうと、(1)携帯電話の注視(2)横断歩行者妨害があります。
(1)については運転中に携帯電話の画面を見る行為です。
よく「見るのもダメなんですか?!」と言われました。
走行中は携帯電話で通話するのも画面を見るのも同じ違反になりますので、知らなかった人は覚えてください。
また、(2)については横断歩道では歩行者が最優先になるという原則に基づいています。
歩行者が横断歩道を渡っていたら必ず手前で停止する必要がありますし、渡ろうとして待っている場合でも車は歩行者を優先しなければいけません。
これも「え?そんな違反知らない」という人がとても多かったです。
こちらも近年取締りが強化されている違反になりますので、覚えておく必要があります。
まとめ
今回は警察官が隠れて取締りをする理由や取締りの裏事情について解説し、違反をしないために気を付けるべきことも紹介しました。
警察官が隠れて取締りをする理由としては
- 隠れなければ誰も違反しないから
- 検挙の件数を稼ぐ必要があるから
- 悪質なドライバーを排除する必要があるから
といった理由が挙げられます。
取締りを受けるドライバーからすれば不快に思うこともあるかもしれませんが、警察官だって仕事上の目標があって当然です。
仕事をして「成果がありませんでした」では通用しません。
もちろん違反をしないことがベストですので、違反をしないために普段の運転から高い意識を持つ必要があります。
逆に警察官志望者の方はこういった方法で取締りをやっていかなければいけないので、1つ参考としてください。
違反の取締りをして文句を言われることは当たり前ですので、それを上回る強い気持ちを持つようにしましょう。
自分が違反しなきゃネズミ捕りにも引っかからないのに
文句言ったところで自分が悪いだけだし
警察官が立っていれば違反しなかった、点数稼ぎだろ、とか言うやつも、自分は警察官がいなきゃ違反をします。って宣言してるようなもんなのに
頭悪いクズどもの相手するのは大変ですね