警察官の仕事について、みなさんはどのようなイメージを持っているでしょうか。
人それぞれイメージを持っているかもしれませんが、多くの人はきつい、休みがない、上下関係が厳しい、人間関係が大変、ブラック…など警察官の仕事に対してはネガティブなイメージを持っていると思います。
実際、インターネットで警察官の仕事について調べても
- 警察官の仕事はとても楽
- 警察官の職場はホワイト企業のようだ
と書かれていることはほとんどないですし、いいイメージで書かれることも少ないと思います。
最初に言っておきたいのは警察官の仕事は激務で間違いないということです。
インターネットで書かれていることはあながち間違いではなく、実際に当てはまることも多々あります。
警察官の仕事は警察24時でよく目にする機会があり、ドラマや映画の題材になることも多い。一見すると華やかな仕事に見えるが、実際はそうではない。理想の警察官をイメージしていると大きなギャップを感じることになる。
将来警察官になりたいと思っている方はたくさんいることだと思いますが、現実的に警察官とはどういった職場環境なのかについてはあまり知られていないと思います。
また、これから警察官に転職しようとしている方にとっても警察官の仕事は転職先としてどうなのか?ついていけるのか?という点はとても気になることでしょう。
実際のところ警察官の仕事はどれくらいきついのか、普段の残業や休日、人間関係はどうなっているのか。
この記事では元警察官の経験談を含め、警察官の仕事がどれくらいきついのかについて詳しく解説します。
警察官の勤務体系は2種類
まず最初に警察官の勤務体系について紹介します。
警察官の仕事は大きく分けると日勤勤務と3交代勤務の2種類の勤務体系となっています。
他にも細かい勤務体系はいくつかありますが、ほとんどの警察官が日勤勤務か3交代勤務のいずれかの勤務体系です。
勤務体系については勤務する部署によって異なり、部署が変われば勤務体系も変わるので、部署の異動があれば勤務体系も変わることになります。
それぞれの違いについて解説します。
日勤勤務とは一般的な企業と同じ土日祝休みの勤務体系のことをいう。そのため、基本的に日勤勤務の警察官は月~金の出勤となり、なにもなければ土日祝が休日となっている。
ただし、必ず土日祝に休めるわけではなく、捜査の状況などによっては休日出勤も当たり前となる。
日勤勤務となるのは主に刑事課、交通課、生活安全課、警備課などの専務と呼ばれる部署です。
これらの部署は基本的に土日祝休みとなり、仕事がなければGWや年末年始の大型連休も休日となります。
意外と知られていないかもしれませんが、警察官でも仕事さえなければ世間と同じように大型連休を取得することができます。
こういった大型連休を利用して海外旅行をする人も珍しくありません。
ただ、事件などが重なっていると休日出勤が必要になってきますので、必ずしも休日が当たり前ではない点には注意が必要です。(急に休みがなくなることもある)
3交代勤務とは1回24時間の勤務を繰り返す勤務体系のことをいう。勤務例としては、月曜の朝に出勤→火曜の昼頃に退勤→水曜休み→木曜の朝に出勤…という流れがずっと続いていく。
3日に1回休みとなるため、予定が立てやすいというメリットはある。
3交代勤務となるのは主に地域課(交番やパトカー)、自動車警ら隊、機動捜査隊などです。(警視庁のみ4交代となっている)
1回の勤務が24時間になるので、休憩や仮眠があるとはいえ身体への負担はかなりのものがあります。
また、忙しいときは休憩もとれない状態で24時間勤務を続けなければならず、さらに残業があれば帰りも遅くなります。
残業が長引くと1回の勤務が30時間近くになることもあるので、まさに体力勝負の勤務と言えるでしょう。
3交代勤務のメリットとしては休日出勤がほぼないので、予定が立てやすいことが挙げられます。
私の所属していた県警では約3か月に1回程度、4連休を取得することができました。
ただし、3交代勤務の部署はずっと3交代勤務が続きますので、それは大型連休中でも変わりません。
よって、世間がGWや年末年始の大型連休中でも出勤しなければいけない点はデメリットと言えるかもしれません。
警察官の残業について
警察官の仕事はどれくらい残業があるのでしょうか。
部署によっても多少の違いはありますが、確実に言えることは警察官の仕事には残業が付きものであるということです。
警察官の仕事の特徴として
- 先の予定がわからない
- 5分後になにが起きるかわからない
ということがあり、通報や相談によって左右される部分が大きいです。
そもそも警察署は24時間365日開いており、市民からの通報や相談は昼夜を問わず入ります。
そのため、仕事を片付けて帰宅しようとしたときに事件が発生すればそのまま残業して対応しなければならないのです。
警察官の仕事は忙しい日があれば落ち着いている日もある。ただし、その日になってみないとわからないため、1日の仕事が終わって「今日は忙しかったor今日は落ち着いていた」とようやく振り返ることができる。
その日にどんな事件があるのかは誰にも予測ができないため、先が読めない独特の難しさがある。
私は会社員時代に営業マンをやっていましたが、1週間のスケジュールが大体決まっていました。
なので、事前に「この日は忙しい、この日はゆっくりできる」という大体の予測を立てることができました。
その一方、警察官の仕事は1日の動きがまったく予測できません。
残業がどれだけ必要になるかもその日の忙しさ次第というところがありますし、大事件が発生すれば家に帰っていても呼び出しを受けることがあります。
「今日は落ち着いているな。そろそろ退勤の時間だな」と思っていても、その瞬間に事件が入れば長時間の残業が発生します。
これは日勤勤務でも3交代勤務でも同じことで、退勤する最後の最後まで油断できない点は警察官の仕事の難しいところだと言えます。
特に忙しい警察署の刑事課であれば次から次へと事件が発生するので、常に残業をして対応することになります。
どうしてもプライベートを犠牲にする部分が出てきてしまうのは事実です。
よって、警察官の仕事は残業が必ずつきものですし、残業の平均時間というのも明確には出せません。
警察官の休日について
続いて警察官の休日について紹介します。
先ほど警察官の勤務体系は大きく分けて2種類であることを解説しましたが、それぞれの勤務体系で休日は異なります。
まずは刑事課、生活安全課などの日勤勤務の休日から解説します。
日勤勤務は基本的に土日祝が休みとなっており、GWや年末年始の大型連休も休日となっています。
一般的な土日休みの会社と同じような勤務になるイメージで、有給を使えば平日にも休みをとることができます。
ただし、捜査によっては休日出勤をして対応したり、事件の処理を休日に行ったりすることは当たり前なので、その点は気を付けなければいけません。
さらに専務は夜中でも大事件があれば呼び出しを受けるので
- 家でくつろいでいたら急きょ出勤になった
- 家族で出かけていたら呼び出しを受けた
なんてことも全然あり得ます。
また、通常の勤務に加えて10日に1回程度は当直勤務(泊り勤務)が入ってきますので、専務でも必ず夜勤があることは覚えておきましょう。
休日出勤をした場合、代休をとれるかどうかは上司次第となる。上司が積極的に休みを推奨する人ならば代休を取得できるが、上司自身が休日返上で仕事をするようなタイプの場合は代休の取得も難しい。
次に地域課などの3交代勤務の休日について解説します。
3交代勤務は3日に1回の出勤というパターンが完全固定なので、平日だろうが土日だろうが関係ありません。
そのため、GWや年末年始でも3日に1回が出勤になりますので、基本的に大型連休はありません。
世間が大型連休でゆっくり休んでいる間も仕事をしなければいけないのは辛い部分がありますが、3交代勤務を続けるならば永久に3交代勤務が続きます。
その反面、3交代勤務は休日出勤がほぼありませんので、3日に1回はしっかり休むことができます。
有休を使えば連休を取得することもできるので、日勤勤務に比べれば予定が立てやすいというメリットはあります。
3交代勤務でも完全に休日出勤がないわけではなく、訓練や行事などのために休日出勤をすることがある。
3交代勤務の休日出勤は出勤→非番(昼頃帰宅)→仕事(休日出勤)→仕事という流れになるので、休む時間が少なくかなりハードな1週間になる。
日勤勤務か3交代勤務かは部署によって変わるので、自分で選ぶことはできません。
それでも警察学校卒業後2年間は地域課での勤務となりますので、必然的に最初の2年間は3交代勤務となります。
3交代勤務はほぼ確実に休日があるという点はメリットですが、3日に1回の出勤日は3時間程度しか寝れないという点はデメリットと言えます。
警察官によっても好みが分かれ、「3交代勤務が好き」という人もいれば、「3交代勤務なんて体がもたない」という人もいます。
特に年齢を重ねていくと3交代勤務は非常にきつい勤務になりますので、その点は考えておかなければいけません。
私自身、40代や50代になって3交代勤務を続けることはイメージできませんでした。
警察官の人間関係について
次に警察官の人間関係について解説します。
他の記事でも紹介している通り、警察官の人間関係はとても難しいものがあります。
そもそも警察官は階級社会なので、階級が1つ違うだけで厳格な上下関係が存在することになり、階級が2つ3つ違うと気軽に話しかけられる相手ではなくなります。
そのため、度々ニュースでも報じられるようにパワハラが発生しやすい環境であると言えますし、残念ながらフラットで風通しがいい職場ではありません。
警察官の上司とはどんな人たちがいるのか?については下記の記事で詳しく解説しています。
人間関係に関してはやや大変な部分があるので、上下関係が厳しい職場が嫌だという人には向いていない仕事だと思います。
人間関係が大変な理由は
- 上司の指示は絶対
- 部下から意見することはできない
- 仕事について話し合う機会すらない
- 若手には発言権がない
- 基本的に上司の指示に従うしかない
という環境であるからです。
「もっとこうしたらいいんじゃないか?」「こうした方が成果が上がるんじゃないか?」と思うことがあっても幹部にならない限り提案することはできません。
また、上下関係が厳しいため、上司から厳しい言葉を浴びせられることは日常茶飯事です。
「これやっとっけって言ったよな?!」
「なんだそれ!アホか!」
「もっとやれよ!!結果出せ!」
これくらいの言葉はよく飛び交いますし、こう言われても「はい、すいませんでした」と言うしかありません。
威圧的で厳しい上司が多いのは警察官の特徴だと思います。
厳しい上司が多いのは事実だが、もちろん部下思いの優しい上司も存在する。さらに人情派の人が多いのも特徴で、厳しい反面、根はいい人も多い。
警察官を続けるならば、上司とは仕事の関係ということで割り切る気持ちも必要。
警察官の人間関係で良かったと思うことは「誰かが困っていたらみんなで解決しよう」というところです。
警察官の仕事は1人で行うものではなく、チームで取り組んでいくものがほとんどです。
そのため、困ったことがあれば必ず誰かが助けてくれるという組織になっているので、1人で困る場面は少ないでしょう。
現場の仕事で言えば、「応援求む!」と応援を要請すればすぐに先輩や上司が助けに来てくれます。
ときには「応援要請したけど、応援来すぎ…(笑)」というくらい警察官が集まることもありました。
これはみんなで助け合うという意識がしっかり根付いている証拠だと思います。
人間関係が厳しいのは事実ですが、決して悪いことばかりではないことをお伝えしておきます。
警察官の仕事はきついのか?
あくまで経験者としての主観的な結論になってしまいますが、私は警察官の仕事は大変な仕事だと思います。
警察官の仕事を楽だと思ったことはほとんどありませんし、「この仕事を定年まで続けることはできるのか…?」ということはよく自問自答していました。
もちろんやりがいのある仕事はありますし、警察官にしかできない仕事を行う楽しさもありますが、それでも困難なことの方が多かった記憶があります。
その主な理由としては
- その日なにが起きるかわからない難しさ
- 身体に大きな負担となる夜勤
- 風通しのない職場
の3つです。
予測がつかない仕事というのはもちろん他にもあるでしょうが、警察官の場合はその規模が違います。
なぜなら、毎回の勤務で先が読めない緊張感があり、休憩中でも完全に気を抜くことができません。
さらにひとたび大きな事件が入れば数時間は働き続けることになりますし、休憩時間や仮眠時間が吹き飛ぶことも珍しくありません。
そして、ここに夜勤が重なってくるので、身体・精神への負担は相当なものがあります。
単なる夜勤だけであればいいのですが、警察官の場合は朝から勤務をした上での夜勤なので、想像以上にきついものになります。
そのせいか、警察官は「年齢以上の見た目になる、老けるのが早い」ということはよく言われていることでした。
実際に警察官は見た目+10歳で見られることも珍しくありません。
単純な夜勤を経験したことがある人は多いと思うが、日が明けるまで休憩もなしで働き続けた経験がある人は少ない。忙しい警察署であればそんなことが当たり前の勤務となる。
寿命を犠牲にして働いている感は否めず、身体にかかる負担は大きい。
ただし、警察官にしかできない仕事はたくさんありますし、市民から直接感謝される機会もあり、やりがいは大きい仕事です。
また、子どもが憧れる職業でもありますので、家族にとっては自慢の存在であることは間違いないでしょう。
仕事がきつい分、公務員の中でも給与水準が高く、身分保障も手厚いものがありますので、その点をどう考えるかにもよります。
さらに各都道府県の規模によって仕事の大変さは大きく異なり、地方であればあるほど仕事の難易度は低くなります。(楽になるわけではありません)
そのため、警察官の仕事については一概には語れないのですが、都市部の県警で勤務していた経験者の私が考える結論としては、警察官の仕事はきついということになります。
まとめ
今回は警察官の仕事はどれくらいきついのか?について解説してきました。
先ほども説明した通り、都道府県によって警察官の忙しさは大きく異なるので、警察官の仕事を一概に語ることはできません。
地方であればあるほど通報も少なく事件も少ないので、そこまで厳しい勤務ではないと推測できます。
その反面、人口が多ければ多いほどそれに比例して通報や相談は増えますので、都市部で警察官をやるならばある程度の覚悟が必要です。
私自身は人口の多い都市部で、所属する警察官の数も全国で上位の県警でしたので、大変な勤務を経験してきました。
警察官の給料はそこそこ高いので、生活水準が上がったのは間違いありませんが、仕事が終わった後の疲労感は大きなものがありました。
激務で大きく疲弊し、帰宅して倒れ込むように寝る日もありましたので、「この生活があと30年以上できるか…」とよく考えていたのは事実です。
ただ、今後警察官も働き方が変わっていき、環境が良くなる可能性も十分あり得ます。
あくまで私の経験談を紹介したまでですので、これから警察官になる方には頑張って頂きたいと思っています。
今回の記事が1つ参考になればと思います。