警察官の仕事には様々な部署が存在し、それぞれで警察官が活躍する場がたくさんあります。
警察官を目指している方の中には「○○課で働きたい」と既にイメージを持っている方も多いと思います。
警察官の仕事を知ることは警察官採用試験対策にもなりますし、志望動機を考える上でも大事なものになります。
なにより、警察官採用試験の面接では
- どこの部署に興味があるのか
- 警察官になったらどんな仕事がしたいのか
という質問が関らずありますので、警察官の仕事については知っておかなければいけませんし、志望動機として答えられるようにしておく必要があります。
そこで、今回は生活安全課の仕事について詳しく紹介していきます。
生活安全課の中には様々な係が存在し、それぞれで取り扱う業務も変わってきますし、やりがいも違います。
生活安全課の仕事はあまり表に出るものではないので、警察官志望者にもあまり知られていないのではないかと思います。
この記事では生活安全課の仕事を解説し、生活安全課の仕事内容から勤務体系、休日などについて紹介していきます。
生活安全課で働きたいと思っている方に参考になれば幸いですし、警察官採用試験の対策にも役立てて頂ければと思います。
目次
生活安全課とは?
生活安全課は全国どこの警察署にも必ず置かれている部署です。
生活安全課の仕事としては
- 日常的な相談への対応
- 少年事件への対応
- ストーカー、DV事件への対応
- 風俗事犯の取締り
など多種多様な仕事があり、生活安全課の中でもいくつかの係に分かれて業務を担当しています。
それぞれの係については後述します。
近年では家庭のトラブルが増加していることを背景に忙しさを増している部署でもあり、家庭の身近な問題に対応することが多いです。
また、生活安全課は女性の相談者が多いという特徴があるため、それだけ女性警察官も多く配置されていますし、女性警察官が活躍しやすい部署となっています。
【積極採用】女性警察官が活躍しやすい部署&活躍しにくい部署は?
生活安全課は基本的に内勤となり、警察署内での事務作業や書類作成が多いですが、相談者は交番だけでなく警察署に直接来る人もいるため、そういった来署者への対応も行います。
そして、勤務体系としては日勤勤務となるので、土日祝が休日となっています。
日勤勤務なので勤務時間はおおよそ午前8時30分から午後5時30分ですが、日によって残業もあります。
これに加えて月に3回程度は当直勤務がありますので、日勤勤務と並行して24時間勤務も入ってくることになります。
また、刑事課と同じように事件があれば休日出勤も発生しますし、捜査のために突然休日がなくなることもあるので、その点は覚えておきましょう。
発生する事件にはどうしても迅速に対応していかなければならないため、先がまったく読めない難しさはあります。
警察官の仕事は警察署によって忙しさが異なり、忙しい署であれば休みが潰れやすいし、暇な署であれば休日出勤は少ない。
生活安全課はそこまで人気がある部署ではないので、希望すれば異動できる可能性は高いです。
家庭のトラブルは増加傾向にあり、それに伴って生活安全課も忙しくなるので、生活安全課の人気は低下傾向にありました。
後述しますが、特に夫婦喧嘩やDVについては内容が複雑で、対応には苦慮する場面も多いです。
ただし、生活安全課の中でも少年係だけは人気がある部署ですので、少年係を目指す場合はしっかりアピールするようにしましょう。
生活安全課に入るためには?
次に生活安全課に入るための方法について解説します。
先ほども少し触れましたが、生活安全課はそこまで人気がある部署ではないので、希望すればすんなり入れる可能性が高いです。
刑事課や白バイ隊員は希望しても入れない場合が多いですが、私の経験上では「生活安全課に入りたかったのに入れなかった」という警察官は見たことがありません。
ですので、必要なアピールさえしっかりしておけば生活安全課で働くという目標は実現できるでしょう。
生活安全課でもそれぞれ係がありますので、警察学校卒業後に配属される地域課で入りたい係の事件を積極的に検挙していくと大きなアピールになります。
地域課の勤務において、アピールすべきことについては一例を紹介しておきます。
- 生活安全係
地域課で勤務していても夫婦やカップルのトラブルを扱うことが多いため、その際に生活安全係の人に希望を伝えておくといい。入りたい部署に人脈を作っておくのが一番早い。
- 少年係
少年係に入りたいなら不良少年などを検挙し、少年事件の検挙実績を作っておくのが望ましい。少年事件は成人事件と扱い方が少し異なるため、少年事件に慣れておくことも大事。
- 保安係
とても特殊な係であるため、地域課で取り扱う事件は少ない。それでもゴミの不法投棄や銃刀法違反などを検挙する機会はあるので、そういった機会を大事にしたい。
実績でアピールすることはもちろん大事なのですが、やはり人脈を作ることが一番効率がよいと言えます。
地域課の仕事においても生活安全課の人と接する機会は多いので、仲良くできる人を見つけて生活安全課に入りたいことを伝えておくのがベストです。
生活安全課の人事を決めるのはあくまで生活安全課の課長ですが、いきなり課長クラスと仲良くするのも難しいので、まずは話しやすい先輩や上司を見つけておくといいでしょう。
そして、ある程度の人脈ができたらことあるごとに生活安全課を訪問し、自分の顔と名前を覚えてもらうようにすることが大切です。
さらに地域課の勤務が終わった後に雑用でも手伝いに行く姿勢を見せておくと尚良いでしょう。
生活安全課 生活安全係
ここからは生活安全課の各係について紹介していきます。
市民の日常生活に密接した事案に対応するのが生活安全課生活安全係です。
生活安全課の中で最もベーシックな係で、生活安全課を代表する係と言えます。
夫婦喧嘩やカップルのトラブル、親子喧嘩などの身近な問題から、行方不明者の保護事案なども取り扱っています。
特に夫婦やカップルのトラブルはただの軽いトラブルから殺人事件などの重大事件に発展する可能性があるので、きめ細やかな対応とアフターフォローが必要となります。
また、家出をして行方不明になる人、認知症などの影響で徘徊する老人が発見されたとき、生活安全係が家族や役所と連絡をとって適切に引き継ぐこともあります。
生活安全係のその他の業務を紹介していきます。
- 防犯広報…防犯広報や防犯診断を行い、市民が犯罪被害に遭わないように広報活動を行う。
- 特殊詐欺対策…金融機関と連携し、多発する特殊詐欺に対して注意を呼びかける。ときにはポスターを作って配布することもある。
- 福祉事犯…少年少女が犯罪に加担しないよう、または犯罪の被害に遭わないようSNSにも目を光らせる。
生活安全係が市民から相談を受ける件数はとても多く、特に家庭の問題では深くまで介入していくこともあります。
一昔前の警察は民事不介入という言葉が有名でしたが、今はまったく逆です。
民事的な部分にも積極的に入っていきます。
現代ではどれだけ簡単な相談でも重大事件に発展することを想定しておかなければならないので、民事不介入とは言ってられない時代に変わりました。
生活安全係は人から相談を受けることが好きだったり、些細なことでも解決していったりすることが好きな方には向いている係です。
また、夫婦喧嘩やカップルのトラブルについては当事者の気持ちを理解して適切な指導をしなければいけないので、対応する警察官の人生経験は十分必要になります。
警察官自身が恋愛についてわかっていないと上手に話をすることができませんし、説得力にも欠けてしまうでしょう。
生活安全課 少年係
次に紹介するのは生活安全課少年係です。
少年係は20歳未満の少年のみを取り扱う係となります。
少年の事件とは万引きや自転車盗などの軽い犯罪から、ときには少年による殺人事件などの重い犯罪もあります。
また、少年を食い物にする援助交際や淫行、児童虐待なども生活安全係と連携して積極的に事件化していきます。
特に援助交際などは近年SNSの発展に伴い、インターネット上でやり取りをされることが多くなっており、真っ向勝負の捜査では行き詰ることもあります。
そのため、時代に則したサイバー補導やサイバーパトロールによって事件を捜査することがあり、警察官が身分を偽ってパパ活をする少女を呼び出して注意を与えることもあります。
治安の悪い地域は未だに暴走族が深夜に暴走している状況が見られるが、治安の良い地域ではそのようなことが滅多にない。少年の性質は地域差が激しいという特徴がある。
20歳未満の少年といっても小学生から19歳まで幅広く、思春期が故に警察官に反発する少年も多いので、少年の更生のためには広い心を持って対応していかなければいけません。
警察官から見れば子供を相手にすることになりますが、粘り強く真剣に対応しないと取調べをうまく進めることもできません。
成人を相手にするのとは違った対応になるので、頭ごなしに叱っていくのか、丁寧に話をしていくのかなど、少年事件の捜査は自分なりに試行錯誤していく必要があるでしょう。
少年が起こしやすい犯罪は万引き、自転車盗、オートバイ盗、暴行、傷害などがある。
- 年齢切迫少年
また、法律的な話をすると19歳と20歳では被疑者としての扱い方が違いますし、刑事処分の結果も大きく異なります。
現行の日本の法律では少年に対する刑事処分は「とにかく罰を与える」というわけではなく、更生を目的とした寛大な処分が多いのが特徴です。
わかりやすく言うと「少年は軽い処分で済むけど成人はそうはいかないよ」という制度です。
なので、19歳で事件を起こした少年を捜査する場合、その少年が20歳にならないうちに捜査・裁判を終わらせなければいけません。
なぜなら少年が20歳になってしまうと成人の扱いとなるため、少年にとって著しく不利が生じてしまうからです。
このように20歳に迫っている少年のことを法律用語で年齢切迫少年(ねんれいせっぱくしょうねん)と言います。
もっと細かく言えば19歳のうちに刑事処分が下るようにしなければいけないので、もし19歳10か月の少年を検挙した場合、少年係は多忙を極めることになります。
普段なら1~2か月程度で捜査をすればいいものが、この場合は約2週間程度で捜査を終わらせなければいけません。
どうしても捜査が間に合わない場合もありますが、こうなると当然ながら休んでいる暇はないですし、残業も長時間となってしまいます。
少年係を見ていて特に大変だと思ったのはこの年齢切迫少年を扱う場合でした。
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少年係の醍醐味はなんと言っても少年の更生を支援できるところです。
不良少年を検挙し、自らの手で真っ当な道へと導くことは少年係にしかできないことです。
ときには全力で少年にぶつかり、取調べで少年と大喧嘩になることも珍しくありません。
それくらい警察官側も全力で取り組まなければならず、その分やりがいも大きい仕事です。
そのため、少年係はとても人気の部署で、希望する警察官が多いため、希望したからと言って必ず入れるわけではありませんでした。
少年係に入るためには地域課での勤務において少年補導をたくさんしたり、少年事件を検挙したりすることでアピールに繋がります。
生活安全課 サイバー犯罪対策係
続いて紹介するのが生活安全課サイバー犯罪対策係です。
ニュースでよく目にするサイバー犯罪捜査も生活安全課の大事な仕事です。
サイバー犯罪といっても不正アクセスやフィッシング詐欺など犯罪の手口が多岐に渡るため、警察官自身が知識・技術を日々磨いていく必要があります。
まだまだ警察がサイバー犯罪捜査を得意としているとは言い難く、高度な専門知識を持っている警察官は限られていますし、人材が豊富なわけでもありません。
ですので、地域によっては採用時に「サイバー人材採用枠」が設けられているところもあります。
これはもともと民間企業でエンジニアをやっていた人や大学や専門学校でIT関係を学んでいた人が特別枠で受験し、採用されてからある程度の年数が経つとサイバー犯罪対策係に入ることができるというものです。
サイバー犯罪捜査に興味があり、知識や経験があるという方はそういった受験方法も可能です。
巧妙化するサイバー犯罪に対応するため、サイバー知識に長けた警察官の育成は警察の課題となっており、元エンジニアなどの転職組にかけられる期待は大きい。
ただし、元エンジニアが警察官採用試験に合格してもすぐにサイバー関係の仕事ができるわけではなく、地域課での勤務を必ず2年経験しなければいけないのが構造上の課題である。
サイバー犯罪捜査の採用枠で採用されたのに地域課からなかなか抜け出せない人がいたのも事実なので、この辺りの構造は早急に改善していくべきだと思いました。
「結局、サイバー犯罪捜査に携わることができなかった…」という理由で退職する警察官もいるほどで、せっかく採用した人材を活かしきれていない面もありました。
サイバー犯罪捜査はかなり専門的な知識が必要になる部署ですので、元々サイバー関係に興味のある人しか希望しない部署です。
ただ、各警察署に必ずサイバー犯罪対策係があるわけでもないので、まだまだ限られた規模で仕事をしているのが現状となっています。
生活安全課 保安係
次に紹介するのは生活安全課保安係です。
保安係の仕事はわかりやすく言うとなんでも屋であり、警察官の仕事の中でも特殊な事件を扱うことが多い係でもあります。
取扱う業務は非常に幅広く、普通の警察官では取り扱わない仕事がたくさんあって面白味があるため、希望する警察官は意外と多いです。
警察24時などで保安係が特集されることは少ないので、あまり知られていない部署ですが、保安係は意外と人気がある+人員も少ないという係ですので、希望を出しても必ず入れるわけではありません。
同じ警察官として保安係の仕事を見ていて、
- そんな犯罪あるの?
- どうやって捜査するの?
と感じることは多かったので、特殊な経験が積めることは間違いありません。
保安係の主な業務について紹介していきます。
- パチンコ機器の認可業務
パチンコ店に出向き、パチンコ機器の検査を行い設置許可を出す。
- 風俗事犯の取締り
違法風俗店や闇カジノなどの取締りを行う。張り込みなど捜査は長期間に渡るため、様々な警察署と連携して捜査を行うこともある。
また、違法なわいせつDVD販売や児童ポルノ動画事件にも対応する。
- 猟銃の検査
猟銃などの正当な理由で銃砲を所持している人は年に1回警察署で検査を受けなければいけないため、この検査を保安係が行う。
また、日本刀などの刀剣類も検査が必要なものは保安係が検査する。
- ゴミの不法投棄問題
家庭ゴミや産業廃棄物などの不法投棄に対する捜査を行う。投棄されているゴミの中から個人情報を探し出し、犯人を追っていく。
保安係は本当に幅広い業務を行うため、新鮮味があって面白味もある仕事です。
警察官の中でも保安係にしか経験できない業務が数多くあるのが特徴です。
保安係の難しいところは取り扱う事件がかなりマニアックなため、経験を積んでも次から次へと難しい事件が入ってくることです。
また、保安係自体の人数が少ないため、困っても周りに簡単に相談できる環境ではないので、他の部署とは少し異なる難しさがあります。
そのため、常に知識の習得が欠かせず、法律に反するのか反しないのかが判断できるようにならなければいけません。
それでも貴重な経験ができるので、警察官の中でも意外と人気がある係となっています。
生活安全課 子ども女性安全対策係
続いて紹介するのは生活安全課子ども女性安全係です。
子ども女性安全対策係は昔からある係ではなく、近年増加する家庭問題や子供が狙われる事件に対応するために設立された割と新しい係です。
生活安全係でも子どもや女性問題に対応するのですが、特に事件になりそうな問題や大きな事件は専門部署である子ども女性安全対策係が担当することになります。
よく扱う事件としてはDV、家庭トラブル、ストーカー、児童虐待、性犯罪などです。
また、小学生や中学生が不審者に声をかけられるなどの事案が発生した場合も覆面車両で付近の警戒を行ったり、捜査を行ったりします。
昔の警察は家庭の問題にはあまり介入することはありませんでしたが、時代の変化とともに積極的に介入していく方針に変わりました。
被害者になりやすい子供や女性の安全を確保するのが一番の任務となります。
子どもや女性を狙った犯罪はいつ重大事件に発展するかわからないので、丁寧かつ大胆な対応が必要になる。スピード感を持って取り組むことも大事。
私のイメージでは生活安全係が忙しさを増している中、子ども女性安全対策係はその上をいっている忙しさでした。
ひとたび子どもや女性の安全が脅かされる事件が起きれば深夜まで仕事をすることも珍しくなく、事件解決後もアフターフォローが必要なため、多忙を極める部署だと思います。
ただし、子ども女性安全対策係は子どもや女性の安全を守るとても使命感の高い仕事ですし、今の世の中には欠かせない係でもあります。
事件を解決すれば被害者から直接感謝の言葉をもらえる係でもありますので、やりがいはとても大きなものがあるでしょう。
生活安全係で経験を積んでから子ども女性安全対策係に異動していく警察官が多かったです。
まとめ
今回は生活安全課の仕事について紹介しました。
生活安全課は身近なトラブルに対応することが多い部署です。
それだけ対応する件数は多いですし、特に子どもや女性の問題はスピーディーに解決していくことが求められますので、残業や休日出勤して対応することも少なくありません。
以前の警察であれば家庭のトラブルなどには対応していませんでしたが、近年では家庭の問題やカップルのトラブルから殺人事件に発展することも珍しくなく、警察が積極的に対応していかなければいけない時代になりました。
ですので、必然的に生活安全課は忙しさを増しており、密かに不人気な部署となりつつあります。
生活安全課は女性警察官にとっては活躍する場がたくさんありますし、すぐに仕事にも慣れていける環境だと思います。
ときには女性警察官でしか対応できない場面もあるので、ますます女性警察官が必要になってくることは間違いありません。
生活安全課は身近な問題を親身になって対応していく必要がありますので、ちょっとした相談などにもしっかり話が聞ける方には向いている部署だと思います。
生活安全課で働きたいと思っている方は今回紹介したことを是非参考にしてください。
生活安全課の仕事に興味がありますが、どんな仕事をするのですか?