今回は前編と後編に渡って新人警察官のリアルな1日について紹介します。
警察官の仕事について、1日のスケジュールがどんなものになっているか知っている方は少ないはずです。
そのため、警察官志望者の中には
「警察官の仕事はどのような1日になるのか」
「どういった通報があるのか」
という疑問を持っている方は多いでしょうし、警察官を目指す上で詳しく知りたい情報だと思います。
結論から言うと、警察官の仕事はその日に何が起きるかわかりません。
なぜなら、どんな凄腕の警察官でも事件が起きることは予想がつかないからです。
その中でも特に新人警察官は大変な立場になります。
私自身にも新人警察官の時代はありましたが、「あの頃には絶対に戻りたくない」と思えるほどの時期でした。
それでも警察学校を卒業した後は誰もが新人警察官ですし、乗り越えていかなければならない山場となります。
【関連記事】警察学校を卒業した後はどうなる?警察学校卒業後の流れを詳しく解説
- 上下関係が厳しい
新人警察官は一番下の存在なので、とにかく言われたことに従うしかない。仕事がなにもできない分、上司からきつく当たられることも多い。
- 雑用が多い
雑用はすべて新人警察官が行うので、仕事以外でも負担が大きい。
- 機敏な動きが求められる
新人警察官には元気と明るさに加え、機敏な動きが求められる。
新人警察官が大変な原因は警察署で一番下っ端の存在というところにあります。
新人なので仕事ができなくて当たり前なのですが、厳しい目で見られる機会も多いです。
また、なにかあれば一番に率先して動かなければいけないですし、仕事と並行して雑用もこなしていく必要があります。
そのため、新人警察官はなかなか息をつく暇もありません。
警察学校卒業後2年間は地域課での勤務となりますので、まさにこの2年間は修行の期間となるでしょう。
では、そんな新人警察官はどのようにして1日を過ごすのか?
1日の仕事の流れはどうなっているのか?
この記事では新人警察官の1日について紹介し、新人警察官の大変な1日をリアルに伝えていきます。(前編)
なお、私の実例を交えて紹介していきますが、あくまで私が所属していた県警での話となりますので、その点は留意してください。(地域課での勤務例となります)
目次
AM6:30 起床|寮から出勤
新人警察官の朝は早いです。
その理由は新人警察官は誰よりも早く警察署に出勤し、掃除や準備などを行わなければいけないからです。
新人警察官が朝出勤してやるべきことは
- 警察署内の掃除、ゴミ捨て
- 通告の準備
- 配布資料のコピー
- その他の雑用
などなどです。
これらは新人警察官が毎回必ずやらなければいけないことなので、まずは雑用のやり方をしっかり覚えなければいけません。
最初は先輩が付きっきりで教えてくれるはずなので、必要に応じてメモをとるようにしましょう。
POINT
雑用に関してもメモをとることで後から見返すことができる。何度も同じことを聞いているようではいけない。
また、独身の新人警察官はほぼ必ず独身寮に入ることが義務付けられていますので、入寮した場合は寮からの出勤となります。
独身寮は警察署から近いところにあることが多く通勤は楽なので、朝は6時~6時30分頃に起床します。
独身寮は近いところなら警察署まで徒歩で行けますし、遠くても自転車で通える距離にあることが多いです。
独身寮については下記の記事で詳しく解説していますので、是非ご覧ください。
【関連記事】新人警察官が入る独身寮ってどんなところ?規則、門限などについて解説
朝食をとり、身支度を整えたらスーツで出勤します。
朝食についてはしっかり食べることをおすすめします。
出勤が始まればいつ休憩がとれるかわかりませんし、最悪の場合は朝から夕方まで休憩がない場合もあります。
また、出勤時の身だしなみもしっかりしなければいけないので、出勤用のスーツは必ず用意しておいてください。
出勤する前に寮の掃除やゴミ捨てが必要な寮もあるので、独身寮に入る場合はその寮のルールに従いましょう。
AM7:15 警察署に到着
警察署に到着したら、まずは制服に着替えます。
制服に着替えるのもダラダラやっていると時間が無駄に過ぎてしまうので、素早く着替えます。
制服に早く着替える術は時間に追われる警察学校で身に付けておいた方がいいでしょう。
着替えが終わったら、まずは警察署の掃除とゴミ捨てを行います。
これらは同期や直近の先輩と一緒に作業をすることになると思うので、手分けして効率よく行うことが大切です。
掃除を行っていると先輩や上司だけでなく、警察署の幹部も出勤してきますので、しっかり元気に挨拶することを忘れないようにしてください。
普通規模の警察署でも署員は200人程度いるので、早めに署員の名前と顔を覚えることが大事。同じ係の先輩や上司はもちろんだが、他部署の人も覚えておいて損はない。
掃除とゴミ捨てが終わったら、次は通告(つうこく)の準備です。
通告とは朝の打ち合わせみたいなもので、
- 前日に管内で発生した事件や事故について伝達
- 幹部からの指示事項
- 幹部からの教養・指導
などが係内で共有されます。
この通告には係の勤務員がすべて出席し、あらゆる情報を共有することになりますので、必要事項は逐一メモに残していきます。
一般的な警察署であれば地域課の1つの係の勤務員は約30~40人で、大きな警察署だと1つの係で約60~70人程度にもなります。
(地域課はこの係が3つあり、3交代勤務での運用となっています。警視庁のみ4交代)
新人警察官は通告で使われる資料を人数分用意しなければいけないので、コピーから配布まで手際よく行う必要があり、手際よくやっていかないと通告開始の時間までに間に合いません。
AM8:30 通告&朝礼
これくらいの時間になってようやく朝の雑用が終わります。
ここで一息といきたいところですが、残念ながら新人警察官はゆっくりすることはできません。
朝の雑用が終わってから間もなくして、警察署の講堂など広い場所で通告が始まります。
通告では地域課長代理や警部補などが係員の前に立って話をします。
この通告では
- ○○町で○○の被害が発生した
- ○○町で○○の相談があった
- ○○町で○○に関する警戒を行う
- 天気が悪いので事故に気をつける
などといった話が係全体に向けて行われ、係員は情報をインプットします。
事件については大きな事件であればニュースで知ることになりますが、そのほかの細かい情報はこの通告で知ることになります。
通告では細かい情報から重要な情報まで次々と幹部からの話が行われる。後から聞かれても困らないよう、その内容は必ずメモをとるようにしよう。
通告は大体20分程度で終了し、この次は朝礼が行われます。(通告と朝礼の順番が逆の地域もあるかもしれません)
朝礼はその日に警察署に出勤している署員全員が参加するもので、朝礼には署長や副署長といった幹部も出席します。
朝礼が行われる場所は警察署の規模によって様々ですが、武道場や屋外の駐車場で行われることが多いです。
ここではまず朝礼の参加者全員で警察体操を行い、続いて署長や副署長といった幹部から教養や指示事項があります。
通告と朝礼は似たようなものなのですが、通告は係単位で行うもので、朝礼は警察署全体で行われるものと覚えておいてください。(朝礼も約20分程度で終わる)
なお、新人警察官は朝礼時の警察体操を全体の前に立って行うので、その点も覚えておきましょう。
AM9:00 前日の係と交代、勤務開始
通告と朝礼が終了すると、いよいよ1日の勤務が始まります。
地域課の勤務は3交代なので、このくらいの時間になると前日から24時間勤務にあたっていた係の警察官が続々と警察署に戻ってきます。
そして、戻ってきた前日の係の同じ交番の警察官から無線機などを引き継ぎます。
「A交番の人はこの無線機を使う」と決まっていることが多いので、前日の係員が使っていたものをそのまま使用することがほとんどです。(潔癖症の人は注意)
交番の管内でなにか引継ぎ事項があれば、この場で「昨日○○町で事件があったよ」などと話を聞くこともあります。
ときに重要な引継ぎ事項がある場合もありますので、前日の係員から話を聞くときはしっかり聞いておきましょう。
このときもメモをとる姿勢を見せると好感を持ってもらえるはずです。
交番の備品について「トイレットペーパーがなくなった」「書類がもう少しでなくなりそう」などの引継ぎを受けることも多い。こういった備品を用意するのも新人警察官の役目である。
無線機の引継ぎや引継ぎ事項の確認が終わったら交番に向かう準備をします。
自分の荷物を二輪車に積み込み、まずは1日お世話になる二輪車の点検を行います。
点検を怠ると重大な事故に繋がる恐れもあるため、二輪車を使用する前に灯火類やオイルの確認は欠かせません。
点検の仕方については警察学校でも学びますので、その通りに行いましょう。
このとき、優しい上司なら点検について一緒に見てくれますし、厳しい上司なら点検の手順を間違えると「警察学校で何を学んできたんだ?」といきなり怒られることもあります。
この辺りは上司次第ですので、その状況を受け入れるしかありません。
二輪車の点検を終えたらいよいよ警察署を出発です。
新人警察官の場合は単独で行動することができませんので、上司とともに警察署を出発し、交番に向かいます。
AM9:30 交番に到着
警察署を出発し、安全運転に務めながら交番に到着しました。
まずは荷物を整理し、前日の係から聞いた引継ぎ事項を確認します。
このとき、いきなり通報が入って対応することになる場合もありますので、緊張感は常に保っておく必要があります。
地域課の警察官の仕事は24時間このような緊張感が続くので、いつでも出動できる態勢は整えておきましょう。
また、一緒に行動する上司がコーヒーを好む人ならば、ここで朝のコーヒーをいれます。
もちろん、事前に上司の性格や好みについて先輩に聞いておかないと対応することができませんので、事前の情報収集はとても大事です。
なお、交番には交番相談員という警察官OBが配置されているので、交番相談員の方にもしっかり挨拶をしましょう。
新人警察官の場合、上司とは24時間付きっきりで仕事をするため、良い関係を作ることがなによりも大事になる。そのためには上司の性格を知り、好みまで知っておく必要がある。
通報がなにも入っていなかったら、ここからは巡回連絡やパトロール、交通取締りを行います。
巡回連絡とは担当する地域の各家庭や会社を訪問し、家族構成や困りごとについて住民から直接話を聞く仕事です。
巡回連絡は交番で勤務している場合は必ず毎回行わなければならず、地域課警察官にとって重要な仕事となっています。
もちろん最初はうまく住民と話すこともできないと思うので、上司のやり方を見て学びます。
警察官にコミュニケーション能力が必要になるのはこういうところです。
住民から個人情報を聞くことになるので、初対面ながら「信頼できる警察官」と相手に思われなければいけません。
あまりにもコミュニケーション能力が低いと、「この人、本物の警察官ですか?」「警察官を名乗る人が家に来ている」という通報を入れられることもあります。
初対面で相手に信頼感を与えるためには何よりも清潔な見た目が必要になります。
見た目については常に気にするようにしましょう。
そして、巡回連絡が終わったらパトロールがてら交通取締りを行います。
これらの仕事は特に順番が決まっているわけではありません。
その日の気分や通報の入り具合によって前後するものです。
取締りを行うことも地域課警察官の大事な仕事ですので、パトロールを行いながら行き交う通行車両に神経を研ぎ澄ませます。
早ければ30分以内に違反者を見つけることができますが、時間がかかるときは1時間以上かかる場合もあります。
違反者を発見したら、すぐさま上司とともに追跡し、運転手に声をかけます。
もちろん、新人警察官は切符の書き方や違反者への声のかけ方もわからないので、すべて上司から教わることになります。
1つ1つ経験を積んでいき、新しい仕事を吸収していきます。
ただし、切符の書き方については警察学校でもある程度は勉強しているはずです。
実践しないとなかなか身に付くものではありませんが、「まったくわかりません」では怒られる場合もあります。
また、「見て覚えろ」という厳しい上司もいますし、「警察学校で勉強した通りにやってみろ」といきなり仕事を任せてくる上司もいます。
この辺りは上司に合わせて臨機応変にやっていくしかありません。
巡回連絡、パトロール、取締りを終えたら、交番に戻ります。
PM12:00 昼食 通報があればすぐ対応
一通りの仕事を終え、交番に戻る頃にはお昼の時間です。
特にやることがなにもなければここで昼食をとります。
もちろん、どれだけお腹が空いていても上司より先に食べてはいけません。
上司が食べ始めるのを見てから自分も食べるようにしましょう。
この辺は社会人なら一般常識になりますし、特に礼儀が厳しい警察官の世界ではこういったことに気を付けてください。
また、食後のコーヒーやゴミの片付けなども積極的に行いましょう。
とにかく新人警察官はこのような姿勢が重要になります。
昼食は警察官個々によって異なり、弁当を持ってきている人、カップラーメンを食べる人、毎食コンビニ弁当を買う人など様々である。交番によっては出前を頼むこともあるので、食事についても事前に確認しておこう。
昼食をとっていると、交番の内線電話が鳴りました。
内線電話が鳴ったら、瞬時に電話をとるのが新人警察官の役目です。
1コールですぐに反応するようにしてください。
先輩や上司に電話をとらせることは避けましょう。
電話にでると指令担当者から「○○町で物損事故が発生した。行ってくれ」と指令を受けました。
食事の途中でしたが、すぐに気持ちを切り替えて出動です。
通報はいつ入るかわかりませんので、常に心構えをしておくことが大事ですし、食事はとれるときに急いでとるのが鉄則です。
一旦食事をやめ、上司とともに物損事故の現場に向かうことにします。
このようなとき、現場までの道のりを調べるのは部下の役目になりますので、地図の見方も覚えておく必要があります。
なるべく最短ルートで現場まで向かえるようにしましょう。
なお、まったく知らない土地で勤務をすることが多いですので、事前に地形を覚えておくと役に立ちます。
道を調べることすら最初はうまくできませんが、これも経験を積んでいくことでできるようになります。
PM2:00 事案対応が続く
交通事故は1日で何度も対応することになるので、対応要領はすぐに習得する必要があります。
事故の現場でどのように動かなければいけないのかは上司に確認するようにしてください。
事故の処理を終え、交番に戻ろうとしたとき、またも指令が入りました。
事故の現場からそのまま次の現場へと向かいます。
ここでも地図を調べて上司に場所を伝えるのは新人警察官の役目になりますので、無線で住所番地を聞いたら絶対にメモをするようにしましょう。
次の現場はちょっとしたトラブルの通報。
お互いから話を聞いたところ、事件性はなかったため、仲裁に入る形でそれぞれに注意を与え、和解してもらうことで終了。
指令担当にも解決した旨を伝え、一旦交番に戻ります。
物損事故とトラブル対応の連続で通報に対応し、交番に戻ったのは午後3時過ぎ。
先ほど食べきれなかった昼食をとりながら少し休憩をします。
せっかく休憩中だったのに…と思いたいところですが、警察官の仕事はこのようなことが当たり前です。
休憩時間や仮眠時間は決められていますが、それはあってないようなもの。
精神的にも肉体的にもダメージが少しあるものの、切り替えてやっていくしかありません。
なお、食事に関して言えば、このような場合に麺類を食べていたら麺が完全に伸びるので要注意。
カップラーメンにお湯を注いだ瞬間に通報が…というのは私も何度か経験があります。
食事のジンクス
警察官は意外とジンクスを気にするところがあり、「カップ麺を食べると通報が入る」「カレーを食べると忙しくなる」などはよくある話。
食事をとり終わったら、先ほど受理した事故の書類をまとめ、さらにその次に対応したトラブルについても書類をまとめます。
基本的にこの辺の雑務は新人警察官が行います。
書類は早くまとめないと時間だけが過ぎていきますので、手際よくやることがポイントです。
すると、ここで内線電話が鳴りました。
またも交通事故が発生したとのことでした。
今度は大きな幹線道路での事故ということで、すぐに現場に行くよう指令を受けました。
地図で場所を調べ、再び上司と現場に向かいます。
現場に到着すると、事故の影響で渋滞が発生。
このような現場では事故の処理+交通整理を行わなければいけないので、上司と手分けをして素早く処理にあたります。
新人警察官は交通整理を任されますので、第二の事故が発生しないよう大きく手を振って通行する車両を誘導します。
運悪く、事故を起こした車が自走不可能ということで、レッカー車を手配することになりました。
こういった場合、レッカー作業などすべてが終了するまで交通整理のために手を振り続けなければいけません。
交通量が多いところでは途中で休むことはできませんし、交代をしてもらえる機会もほとんどありません。
事故の処理とレッカー作業は約2時間で終了。
腕を振り続けていたため、このときには腕も肩も悲鳴をあげていることでしょう。
もう1度、交番に戻ります。
-続く-
後編は下記のリンクからご覧ください。
【関連記事】警察官の仕事を知る!新人警察官のリアルな1日|日常編②