警察官は地方公務員であるため、景気に左右されない仕事である上、不祥事を起こさない限りはクビになることもありません。
警察官は安定した給料を得ることもできますし、社会的なステータスも高いものがあります。
そうした理由から一生安泰と言われる職業で間違いありませんが、働いている身からすると決してそうではなく、警察官退職を考える人もいます。
実際、私自身は30代に入ってから警察官を続けるべきかどうかを考えるようになり、最終的には警察官を退職しました。
もちろん周りにも警察官を退職した同僚はいましたし、安定の職業とはいえ決して珍しいことではないのかもしれません。
現代社会では転職を行うのが当たり前の世の中になり、それは警察官でも例外ではないのでしょう。
警察官に限らず、消防士や自衛隊でも退職する人は一定数存在する。自分が納得できる退職なら自信を持てばいい。
当然のことながら警察官の仕事に誇りを持ち、定年まで勤める人の方が多いです。
60歳で定年を迎え、その後は再任用で65歳まで働き続ける人もたくさんいます。
どちらかと言えば少数派の”警察官退職者”ですが、理由はどうあれ「警察官を辞めたい」と思う人は一定数おり、最終的にはその決断を行う人もいます。
ただ、安定している職業だからこそ「警察官を辞めたらどうなるのか?」と不安に思うものですし、辞めたくてもなかなか決断できないという人も多いはずです。
また、どのように転職活動を行っていいかわからず、実際の行動に移せない方も多いでしょう。
この記事では警察官を退職した元警察官が実体験をもとに警察官を退職するとどうなるのか?について解説していきます。
警察官を辞めようかどうか悩んでいる方に少しでも参考になれば幸いです。
警察官の転職活動は?
まず最初に警察官の転職活動について、解説します。
警察官の転職活動が特殊な方法で行われるかというとそうではなく、警察官を辞めたいと思ったら転職活動を始める形で問題ありません。
大手求人サイトで自ら情報収集してもいいですし、転職エージェントに登録してサポートを受けてもいいでしょう。
なによりも転職に向けて動き出すことが大事になりますので、最初は求人サイトで情報を閲覧するくらいでも大丈夫です。
ただし、転職活動をする前に「なぜ警察官を辞めたいのか?」は明確にしておく必要があります。
なぜなら選考を行っている段階で退職理由は必ず聞かれますし、それが志望理由に繋がる場合もあるからです。
「警察官がきついから辞めたい」「人間関係が合わない」といった理由だけだと、どこの職場に行っても大差がない可能性があります。
警察官を辞めてどんなチャレンジがしたいのか?を明確にすると自ずと転職活動の軸が決まる。
警察官は多忙な仕事であるため、転職活動を行うことはそう簡単ではありません。
実際、私自身も地域課で勤務しながら転職活動を行いましたが、職務経歴書の作成や面接の日程調整は難しさを感じました。
まだ子どもも小さかったことから転職活動に100%の時間を使うことができなかったので、コツコツ転職活動を行うことを大切にしていました。
私の場合は”今すぐにどうしても辞めたい”という心境ではなかったため、ある程度ゆったりと転職活動を行いました。
大体、転職活動には3か月ほどかかるものですが、私は6~7か月かけて地道に行い、無事に転職活動を終えました。
焦って転職活動を行い、まったく興味がない仕事に転職するのは本末転倒。転職活動の目的を見失わないように注意。
警察官が転職活動を行う上で、気を付けなければいけないポイントは3つあります。
- 勤務中は転職のことを考えない
警察官は激務な仕事であるため、勤務中は転職のことを考える余裕がありません。
勤務中は警察官の仕事を全うするべきなので、一旦頭から切り離して考えるようにしましょう。
浮ついた気持ちで勤務していると、思ってもみない事故を引き起こす可能性があります。
- 同僚には内緒にする
警察官で転職をする人の割合はかなり少ないと思われます。
多くの警察官が定年まで勤め上げるので、転職の相談を同僚に行うのは容易ではありません。
もし情報が漏れてしまい、上司から引き留めにあうと予定していた転職計画も1から考え直す必要性が出てきます。
基本的には家族以外の人に転職の話をするのはやめておきましょう。
- 転職の時期を意識する
警察官は春と秋の年2回異動期があるので、転職のタイミングはよく考えなければいけません。
特に春の異動期は多くの警察官の勤務先や部署が変わる時期になるため、異動期が終わったあとに転職を申し出るのは非常にバツが悪いです。
警察官は人員に余裕があるわけではないので、一人が退職することで編成を見直す必要も出てきます。
基本的には異動期の前に退職しておきたいところです。
警察官の転職が不可能なわけではないので、転職活動を行う際はポイントに気をつけて行うようにしよう。
警察官から転職するのは確かに少数派ですが、人それぞれの事情があれば、人それぞれの人生があります。
周りを気にしすぎる必要はありませんので、転職をするならばあくまでも円満退職を目指すようにしてください。
警察官の転職活動は簡単ではない
次に警察官の転職の難しさについて解説します。
まず先ほども述べたように警察官は普段の勤務が非常に忙しく、場合によっては休日でも出勤しなければいけない場面があります。
また仕事の状況によっては簡単に休みがとれないときもあるので、転職を考えていてもなかなか思うように物事が進められません。
私自身も現役警察官として転職活動を行い、その大変さがよくわかりました。
求人情報の検索はもちろん、履歴書や職務経歴書の作成に加え、選考が進む中での面接日程の調整は容易ではありませんでした。
そのため、転職を諦めかける場面も多くありましたが、粘り強く続けることを意識していました。
転職活動はどれだけ時間をかけられるか、どれだけ行動できるかで結果が大きく変わってくる。転職を決意しているなら少しづつでも前に進めたい。
警察官の転職活動が難しい理由はこれだけではありません。
もう1つ大きなポイントがあり、それは
- なぜ警察官を辞めるのか
- 民間企業でも通用するのか
という内面的な部分です。
安定した職業である警察官を辞めようとする人に対して、「なぜ辞めるのか?」は誰もが疑問に思うところですし、選考を進める中で絶対に避けては通れない部分です。
ここがぶれていては内定を勝ち取るのが難しいため、警察官の退職理由は明確にしておく必要があります。
この退職理由が前向きに説明できるかどうかで選考の結果は変わってくるでしょう。
警察官が激務なのは事実だが、「きついから辞めたい」「人間関係が合わない」など後ろ向きな退職理由は好まれない。
また、もう1つ重要になるのが「民間企業でも通用するのか?」という点です。
とても残酷な話ですが、警察官はあくまで警察官の仕事しかできないので、転職市場において価値が高いわけではありません。
警察官の仕事をしていると自分がスペシャルな存在に感じてしまうかもしれませんが、それは警察官の世界だけです。
職務質問や取締りの技術が民間企業で生かせるかというとそう単純ではありません。
これは選考においても必ず見られる部分なので、警察官のスキルを民間企業でどう生かしていくかはアピールポイントになるでしょう。
繰り返しになりますが、警察官としてどれだけ結果を出していても転職活動でアピールできるところはほとんどありません。
ですので、精神力の強さや責任感の強さ、チームをまとめるマネジメント力など民間企業でも生かしていける強みを自己分析していきます。
それと警察官の給与水準は世間一般の平均よりは高いものがあります。
もちろん転職して年収がアップすることに越したことはありませんが、警察官と同水準の年収を求めて転職するのはやや難易度が高いと言えます。
年収を上げたくて警察官を辞めるならば一度考え直した方がよく、どちらかといえば警察官を辞めて一からスキルを磨いていくという考えの方が妥当かもしれません。
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警察官からの転職を成功させるために
次に警察官からの転職を成功させるためのポイントを紹介していきます。
警察官からの転職を考えたとき、まず最初に考えるべきことは「本当に転職したいのか?」ということです。
確かに警察官の仕事は激務になる場面も珍しくなく、上下関係も厳しいため、大変な仕事であることは間違いありません。
これは民間企業の経験もある私だからこそはっきりと断言できることで、警察官の仕事を楽だと思う人はそうそういないでしょう。
その分、警察官は安定した身分で高い給与水準にあるので、世の中が不景気になろうが生活に困ることはありません。
物価高で騒がれる昨今ですが、警察官である以上はそうそう影響はないでしょう。
そういった背景も踏まえて、
- なぜ転職を考えるのか?
- 本当に警察官を辞めていいのか?
を改めて考える必要があります。
警察官の仕事を続けていても辛い、新しいことに挑戦したいというような事情があるなら転職を検討すべきです。
まずは転職求人サイトに登録し、情報収集から始めるだけでもいいでしょう。
自分のやりたい仕事はどんな勤務条件なのか、自分のスキルでどんな仕事に挑戦できるのか。
情報に触れることで、警察官からの転職がより明確になっていきます。
POINT
希望の求人があればすぐに応募を行うことが大事。いつまでに転職を決めるかは目標をしっかり決めておこう。
転職活動を行えば必ず希望通りの求人に出会えるかというとそうではありません。
時期によっては求人自体が少ないことがありますし、地域によっても求人の量は大きく異なります。
私自身も警察官時代に転職をしていたからこそ転職の難しさはよく知っています。
ずばり、転職を成功させられるかどうかの分岐点は”希望の求人を見つけられるかどうか”になります。
転職したいと思える仕事でないのに転職するのは自らの価値を下げてしまいますし、年収も大幅に下がる可能性があります。
こればかりはタイミングがすべてです。
そもそも”元警察官”がどのように評価されるかは人事担当者によって様々であり、必ずしも即戦力になれるわけではありません。
ですので、とにかく焦らずに着実に転職活動を進めていくことが成功に鍵になると考えます。
一人で転職活動を行うのが不安な場合はコーチングや転職エージェントを活用するのがいいでしょう。
これらのサービスを活用することは転職成功までに近道になりますし、特に初めて転職活動をするという場合は勉強になることも多いはずです。
こういったサービスを使う場合でも自分の軸だけはぶれないようにし、無理に転職することがないようにしてください。
いずれにしても警察官を退職したら二度と警察官には戻れません。
警察官として身に付けたスキルや積み上げてきた実績があるはずですし、警察官に思い入れがある場合もあるでしょう。
仕事をしていくと誰でも壁に当たるものですので、その度に転職を考えていてはキリがありません。
私は警察官からの転職経験者として、決して警察官を辞めることを推奨しているわけではありません。
”転職を考えたけど思いとどまった”ということがあってもいいですし、”警察官の仕事の方が自分に合っていた”と考え直すきっかけになってもいいと思います。
今一度自分の状況や置かれている立場を考え、ベストな決断をしてください。
警察官退職を職場で告げたとき
続いて、警察官退職を職場で告げたときの体験談を紹介します。
私は26歳で警察官採用試験に合格し、そこから警察学校を含めて計8年間警察官として勤務しました。
この8年間で覚せい剤、大麻、強制わいせつ、未成年者誘拐、殺人未遂など大きな手柄を数々挙げることができ、苦難も乗り越えながら順調に経験を積んでいました。
警察官人生で一生に一度あるかないかの本部長表彰も受賞することができ、警察官としての実績は申し分なかったと記憶しています。
しかし、次のステップとしてなにを目指すかという段階で警察官退職を考えるようになりました。
もちろん何か不祥事を起こすタイプではありませんでしたし、周りから辞める人間だとも思われていませんでした。
そんな中、以前から興味のあった会社への採用が決まり、ついに警察官を辞めるときがきました。
警察官を志してから8年、当初は定年まで勤め上げる予定でいましたが、人生なにがあるかわからないものです。
自分で決めた道なので後悔はまったくないし、今でも警察官退職は間違っていなかったと思っている。
転職活動は誰にも相談せず進めていたので、最初に退職の決意を伝えた直属の上司(パトカーの相勤者)はとにかく驚いていたことが印象的です。
また、その日の勤務終わりにさらに上の上司にも退職の意思を伝え、同様にとても驚かれました。
「どうしてそんな急に?」
「事前に相談してくれればよかったのに…」
怒られることはありませんでしたが、突然すぎる報告に戸惑いのリアクションが多く、絶句に近いような感じでした。
転職活動をしていることを事前に上司に相談することは難しいため、報告としてはどうしても突然になってしまうでしょう。
自分自身は正式に発表されるまで誰にも言いませんでしたが、やはり署内で噂が広まるスピードは速く、一部の同僚にはすぐに情報が伝わっていました。
上司に退職を報告したのは退職予定日の2か月前で、正式発表されるまでは自ら言いふらすことは避けて我慢を続けました。
ただ、知っていて私に接してくる人とまったく知らずにいつも通り接してくる人がいて、気持ちとしてはやや申し訳ないという気持ちでした。
退職に関することは簡単に口に出していいものではないので、部署内で正式に発表されるまでは明かさないことが基本。
そして、退職予定日のちょうど1か月前、部署の朝礼の場で私の退職が発表されました。
そこで同僚や上司に向けて挨拶も行い、最後の1か月を過ごすこととなりました。
気持ちとしてはホッとしたのが本音で、どこか緊張の糸が途切れた感覚もありました。
もちろん最後まで警察官の仕事を全うする気でしたので、職務は手を抜くことなく取り組み、最後の最後で検挙もあげています。
また、私はパトカーに乗っていましたが、後任には後輩が抜擢されたため、必要な引継ぎを行う形となりました。
退職が決まっても仕事への姿勢は変わることがなく、最後の出勤日まで全力で働きました。
ちなみに余談ですが、急な退職の申し入れで部署に迷惑をかけたのは間違いなかったので、有給をすべて消化することはありませんでした。
正直、8年務めた職場を去るのは寂しいものがありますし、もう二度と警察官に戻れないと考えたときにはなんとも言えない感情がこみあげてきました。
それでも自分で決断したことなので、警察官を退職したことに後悔はありません。
警察官を退職して数年が経ちますが、決断は間違っていなかったと思いますし、警察官に戻りたいと思ったことは一度もありません。
自分自身でも納得できる転職ができたのではないかと思っています。
警察官を辞めるとどうなる?
最後に警察官を辞めるとどうなる?について、経験談を交えながら解説します。
先ほども述べた通り、警察官を辞めると二度と警察官には戻れません。
さらに警察官退職後は”元警察官”の肩書がずっと消えず、この肩書を背負って生きていくことになります。
無事に転職できたとしても「元警察官が入社してきた」と社内からは色々な意味で注目を浴びることは間違いありません。
警察官を辞めるとどうしてもこの辺りのしがらみがあるので、最初のうちはどうしても慣れないものだと思います。
私自身もそうでした。
「なんで警察官を辞めたんですか?」という質問は月に一回は聞かれる質問ですし、「前職は何をされていたんですか?」という質問も避けては通れませんでした。
今では完全に慣れましたが、転職して数年は「元警察官ってどう思われてるんだろう?」と無駄にプレッシャーを感じていた時期もありました。
人によっては「この人、悪いことをやって警察官を辞めたのかな」と思う人もいるでしょうし、場合によっては肩身が狭く感じることもあるでしょう。
円満退職ならまったく関係のない話ですが、不祥事で警察官を辞めた場合はなかなか表立って話すこともできないはずです。
元警察官であることを自分から積極的に話すことはなかったが、噂は次第に広まるもの。自分の場合は円満退職だったので、何も問題はなかった。
脱サラをしてから警察官を8年務めたので、民間企業に戻るのは8年ぶりでした。
この民間企業に戻るというのが幸いで、当時営業職をやっていた実務スキルがまだまだ残っており、仕事を進めていくには大きくは困りませんでした。
この辺りはもともとがサラリーマンだったので救われたところです。
また、警察官の仕事はパソコンを使うことはありますが、せいぜい司法書類を作成するくらいなので、民間企業で通用するスキルは限られます。
そのため、事務的なスキルは1から学び直し、数か月で民間企業の仕事の流れにも慣れていきました。
”元警察官”という肩書は一切通用しませんし、仕事を進めていく上では何も関係がありません。
仕事そのものが警察官と大きく異なるので、戸惑うことも多々ありましたが、とにかく結果を出さなければいけない立場でしたので、奮闘しました。
その結果、今では管理職にまで抜擢されることができたので、1つ成功は収められたと思っています。
人によっては元警察官としてのプライドを持っている人もいるかもしれませんが、それは職場で出すものではありません。
ひっそりと胸のうちに秘め、目の前の仕事を全力で行う気持ちが大切だと考えます。
警察官時代は中堅的な立場だったが、転職をすれば1からのスタート。謙虚な態度や姿勢が求められる。
もし警察官を辞めて転職するのであれば、元警察官としてのプライドや肩書は捨て、一番下からやり直す覚悟が必要です。
「元警察官だから」
「元公務員の自分がこんな雑用を?」
なんていう気持ちを持っていると周りからは評価されませんし、仕事も回ってこないでしょう。
警察官時代の実績や経験値は一旦忘れ、新しい職場で新入社員として心機一転頑張っていくことが求められます。
警察官を辞めるということはこういうことなので、悩んでいる人は本当に警察官を辞めて転職するのか今一度考えることをおすすめします。
まとめ
今回は警察官からの転職について詳しく解説しました。
今回の記事をまとめると
- 警察官からの転職は簡単ではない
- 本当に警察官を辞めたいのか考えるべき
- 警察官からの転職は計画的に行う
- 元警察官の肩書は通用しない
となります。
警察官からの転職経験者として、無計画で警察官を辞めるのはおすすめしません。
深くまで考え、自分の出した結論なら問題ありませんが、一度辞めたら警察官に戻ることはできません。
警察官を辞めることによって良くも悪くも人生は変わりますので、後悔のない決断を行うようにしてください。
警察官を辞めようと思っていますが…。警察官を辞めたらどうなりますか?